2022年は、年初から日本政府によりまん延防止等重点措置が発令され、約2ヶ月半もの間、飲食店は時短営業やアルコールの提供の制限など厳しい経営環境が続きました。
また、3月にまん延防止等重点措置が全面解除となり、コロナ禍がひと段落した矢先に、円安や物流費の高騰などの影響で、多くの飲食店が値上げに踏み切ることとなりました。
一方、テイクアウトの推進や、「おひとり様」をターゲットにした運営方針の変更、セルフレジや配膳ロボットの導入により運営コストの削減など、苦境を乗り越えようと試行錯誤する企業の姿も多くみられました。
この記事では、2022年1月〜12月に起きた飲食業界の最新ニュースや動向をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ 本レポートの内容は、原則各月レポート作成当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。(本レポート作成時に追記したものに関しては 「※編集部注:」としています)
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- 1月:計36都道府県にまん延防止等重点措置が発令
- 2月:すかいらーく、「おひとり様」をターゲットに
- 3月:まん延防止等重点措置解除 飲食店に活気戻る
- 4月:特許技術を活用した「紙ストロー」導入/タリーズコーヒー
- 5月:東京都 2020年11月ぶりに外食制限なくなる
- 6月:すかいらーく、800店にセルフレジ導入
- 7月:外食チェーンの約半数が値上げ、原材料・人件費等高騰で
- 8月:飲食店検索、「Google」が初めてトップに
- 9月:物価上昇、再値上げラッシュ
- 10月:「Go To イート」再開<東京>
- 11月:ガストでコース料理:すかいらーく
- 12月:3000台のロボット導入完了、すかいらーく
目次
1月:計36都道府県にまん延防止等重点措置が発令
政府はコロナの新規感染者数の急増を受け、1月9日より広島・山口・沖縄に「まん延防止等重点措置」を発令し、期間は2月20日までとしました。さらに、1月21日(~2月13日まで)に東京や埼玉・千葉県などに続き、1月27日(~2月20日)には大阪、兵庫、京都なども追加されました。
なお、2月からは計36都道府県に拡大されています。
「まん延防止等重点措置」の発令により、各自治体では飲食店に対して時短営業や酒類提供の制限などの要請をおこなうところもあります。また、感染状況によってはさらなる延長の可能性もあり、飲食業界は再び苦境に強いられるものと予想されます。
※編集部注:しかし結果として、まん延防止等重点措置は2月で終了する予定が3月21日まで延長され、全ての都道府県で全面解除されるまで約2ヶ月半の期間を要しました。
<参照>東京都防災ホームページ:【1月21日から2月13日】新型コロナウィルス感染症まん延防止等重点措置に関する質問と回答
2月:すかいらーく、「おひとり様」をターゲットに
すかいらーくでは、2022年度に約360店舗に対して「おひとり様」をターゲットにしたカウンター席を導入すると発表しました。
1月から都市圏を中心にまん延防止等重点措置が発令されている情勢を受けて、集団需要よりも、コロナ禍で生まれたテレワークなど新しい働き方へ対応し、「おひとり様」の需要を狙います。
すかいらーくは以前から客席からタブレット端末を使い注文できるよう環境を整えており、今後はカウンター席の導入で1人でもさらに利用しやすい店舗づくりに取り組みます。
<参照>すかいらーくグループ:すかいらーくグループの新店・転換店・リモデル店※1 約 360 店に「カウンター席」導入
3月:まん延防止等重点措置解除 飲食店に活気戻る
3月21日をもって、まん延防止等重点措置が全面解除されました。1月9日に沖縄などに適用されて以来、全国で対象地域が1県もないのは約2か月半ぶりのことです。
この全面解除を受けて、マクドナルドやすき家、スターバックスコーヒーなどの外食チェーン店や、居酒屋などが通常営業を再開し始めています。
基本的な感染防止策は引き続き求められます。飲食店に対しては時短営業の要請は解除され、非認証店での酒類提供は各自治体の判断に委ねることになりました。
東京都では、4月24日までを「リバウンド警戒期間」とし、利用人数は「同一テーブル4人以内」、滞在時間は「2時間以内」となるよう飲食店に協力を依頼する形を取っています
また、非認証店に対しては、酒類提供を午後9時までとするよう協力を求めています。
一方、大阪府では4月24日まで「同一テーブル4人まで」、または「同一グループ4人まで」の人数制限を求めました。営業時間の短縮や酒類提供の制限はなくなりました。
これらの措置には強制力や罰則はないため、効果については未知数です。
<参照>
- 日本経済新聞:まん延防止を全面解除へ 首相表明、東京など18都道府県
- 日本経済新聞:まん延防止を全面解除 政府は時短・酒制限求めず
- 朝日新聞:東京都、時短要請解除 会食は「4人以内」「2時間まで」に協力依頼
- 日本経済新聞:大阪府、飲食店の人数制限要請 4月24日まで継続
- 東京都防災ホームページ:【3月22日から4月24日】リバウンド警戒期間における取組
- 大阪府:令和4年3月22日から4月24日までの要請について【年度替わりの集中警戒期間】
- テレ朝news:“まん延防止”きょう期限 外食各社は時短解除へ
4月:特許技術を活用した「紙ストロー」導入/タリーズコーヒー
全国にタリーズコーヒーを展開するタリーズコーヒージャパン株式会社では、環境対策の一環として紙ストローを導入したことを発表しました。
タリーズコーヒーでは以前から環境保護を目的として、プラスチックを使用した容器を紙製のものに変更し提供していました。
なお使用される紙ストローは、タリーズコーヒーで提供しているコーヒー豆を焙煎する工場で排出されたコーヒー豆皮である「シルバースキン」を使用したもので、株式会社伊藤園が有する特許技術「茶殻リサイクルシステム」をもとに開発されています。
<参照>タリーズコーヒージャパン株式会社のプレスリリース:タリーズコーヒーが取り組む環境へのアクション
5月:東京都 2020年11月ぶりに外食制限なくなる
4月25日から東京都が独自に設定していた「リバウンド警戒期間」が5月22日に終了します。制限がなくなるのは2020年11月27日以来、約1年半ぶりとなります。
まん延防止等重点措置は3月21日に解除されましたが、以降2か月間は「リバウンド警戒期間」として、引き続き飲食店に一定の制限(認証店:8人以内滞在時間2時間以内、非認証店:4人以内滞在時間2時間以内・酒類提供21時まで)が要請されていました。
しかし、GW後も感染拡大が見られず、感染者数は下げ止まりの状況であることから解除することとなりました。
さらに大阪も5月23日、「大阪モデル」の信号を黄信号(警戒)から緑信号(警戒解除)へ引き下げました。
5月14日以降から現地点で新規感染者の明らかな増加傾向がみられないことから、警戒解除に移行してもよいと判断したようです。
これに先駆け、認証店については「人数制限と時間制限について、23日から解除することが決定しました。
<参照>
- 東京都防災ホームページ:【終了】【4月25日から5月22日】リバウンド警戒期間における取組 質問と回答
- 大阪府:大阪モデル/感染拡大・医療提供体制のひっ迫状況を示す指標
6月:すかいらーく、800店にセルフレジ導入
株式会社すかいらーくホールディングスは6月19日、ガストやバーミヤン、ジョナサン、しゃぶ葉など800店舗以上に、「セルフレジ」を7月から2022年末までに順次導入すると発表しました。
人材不足を解消する狙いに加え、会計の待ち時間を解消して顧客満足度を向上させ、店舗運営の効率化を図るものです。
<参照>株式会社すかいらーくホールディングス:すかいらーくグループ 2022 年末までに800 店舗以上で「セルフレジ」導入
7月:外食チェーンの約半数が値上げ、原材料・人件費等高騰で
東京商工リサーチが大手外食業者120社に対し実施した調査により、2022年1月以降53社でメニューの値上げを実施したことが明らかになりました。
53社66ブランドの中でも、ファーストフードが11ブランドと最多で、そこに中華9ブランド、コーヒー店とステーキ、焼肉チェーンがそれぞれ8ブランドと続きます。
<参照>東京商工リサーチ:53社66ブランドで値上げ・価格改定 「原材料高」の影響が8割 大手外食チェーン値上げ・価格改定調査
8月:飲食店検索、「Google」が初めてトップに
株式会社TableCheck(テーブルチェック)は8月16日「グルメサイトに関する意識調査」を発表しました。
飲食店検索に利用するツールを訪ねた質問に対し、「Google」の利用が初めてグルメサイトを抜いてトップに躍進しました。
また、20代の若者はInstagramを中心にSNSを飲食店検索に利用することも多いこともわかりました。
ただし、予約においては未だグルメサイトの利用も根強く、店舗検索・予約に使用されるプラットフォームの多様化が進んでいます。
<参照>TableCheck:【第3回グルメサイト意識調査】加速するグルメサイト離れ。「Google」利用率トップに。「食べログ敗訴は妥当」、飲食店で多数派
9月:物価上昇、再値上げラッシュ
円安による輸入原材料価格の高騰や物流費の上昇の影響で、多くの飲食店で値上げに踏み切る動きがみられます。
日本マクドナルドは9月30日より、「ハンバーガー」を店内価格(税込み)で130円から150円に値上げするなど、約6割の品目の商品価格を10円〜30円引き上げました。
またミスタードーナツは11月25日より、約9割の商品において値上げを行うとし、ドーナツ「ポン・デ・リング」は120円から140円の商品価格(税抜き)になります。
吉野家も10月1日より、一部の商品を除く価格を平均18.8円引き上げるとし、「牛丼 並盛」は店内価格(税込み)で426円から448円に値上げするなど、各種丼商品の商品価格を全サイズにおいて一律20円値上げしました。
値上げ後も顧客に来店を促す取り組みが重要と考えられており、マクドナルドはコーヒーやドリンク、サイドメニューの価格を据え置きとし、吉野家は定食・御膳メニューのご飯の増量、おかわり無料サービスを今後も継続するとしています。
<参照>
- 日本マクドナルド株式会社:ニュースリリース 価格改定のお知らせ
- 株式会社ダスキン(ミスタードーナツ):ニュースリリース 商品価格改定のお知らせ 2022 年 11 月 25 日(金)より
- 株式会社吉野家ホールディングス:ニュースリリース 商品価格改定のご案内
10月:「Go To イート」再開<東京>
東京都は、10月26日より「Go To Eat」のプレミアム付食事券の販売を再開しました。
「Go To Eat」キャンペーンは、新型コロナウイルス感染症の影響で苦境に立たされた飲食店や食材を提供する農林漁業者を支援することを目的に、2020年に国がスタートしたキャンペーンです。
プレミアム付食事券を販売する事業と、オンライン予約でポイントを付与する事業の2つで構成されています。
東京都では、紙の場合1万1,000円分が1万円、デジタルの場合1万円分が8,000円で販売されました。
食事券の販売額については、一部を国が負担します。
<参照>Go to Eat Tokyo
11月:ガストでコース料理:すかいらーく
すかいらーくレストランツが運営するファミリーレストラン「ガスト」は11月24日より、初のコース料理を全店で提供開始しました。
コース名は「感動ハンバーグコース」で、前菜、メイン、ライス、デザートの全4品から構成され、価格は税込1,869円で販売されます。
2023年1月18日までの販売を予定しています。
メインの「感動ハンバーグ ~トリュフ香るポテトチーズクリームIN~」は、「ミシュランガイド東京」2020年度から4年連続で一つ星を獲得している「sio」オーナーシェフ鳥羽周作氏と、食材や調理法などにこだわった共同開発メニューです。
客単価を増やす狙いがあると思われます。
<参照>株式会社すかいらーくレストランツ:ガスト初となるスペシャルコース『感動ハンバーグコース』11 月 24 日(木)発売
12月:3000台のロボット導入完了、すかいらーく
すかいらーくホールディングスは12月21日、「ガスト」「しゃぶ葉」など全国約2100店舗に、自動搬送型の配膳ロボットを12月27日時点で3000台の導入を完了すると発表しました。
同社では顧客満足度の向上と働きやすい職場環境を目指し、2021年8月から配膳ロボットの導入を進めてきました。
試験的に導入していた67店舗で実施した顧客アンケートによると、ロボット導入に「満足」「大変満足」と回答した割合が9割に上り、提供時間の短縮や、従業員がおもてなしに集中する時間の増加によって、サービスの品質が向上したとみられます。
また、店舗で実施した調査では、ロボット導入後にランチピーク時の回転率が改善したほか、片付け完了時間の削減、従業員の歩行数の削減といった効果もみられました。
今後は、中長期にわたる成長を目指し、ITデジタルを活用した顧客満足度の向上や従業員の働きやすい環境整備に積極的に取り組むとしています。
<参照>株式会社すかいらーくホールディングス:約 2,100 店に 3,000 台のロボット導入完了
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