Googleマイビジネスのメリット・デメリットについて、Googleマイビジネス プラチナプロダクトエキスパート(※)の永山卓也氏に取材する連載企画。全3回でお送りします。
※2021年10月25日追記
:永山氏は2021年10月、Googleマイビジネス ダイアモンドプロダクトエキスパートに昇格されました。
前編では、Googleマイビジネスのメリット、デメリットに関する内容のうち、「一般の店舗オーナーにとってのメリット、デメリット」を、初心者向けにわかりやすく永山氏に解説いただきました。
中編では、複数の店舗を展開する「チェーンビジネス」がGoogleマイビジネスを活用する場合のメリット・デメリットを解説いただきます。
チェーンビジネスの中でも、特に「Googleマイビジネスに登録はしたけど運用について迷っている」「メリット・デメリットを把握した上で運用を始めたい」と考えている初心者の方に必見の内容です!
※Googleマイビジネスは、2021.11.5よりGoogle ビジネスプロフィールという名称に変更されました。
これに伴い、2022年にスマートフォン向けGoogleマイビジネスのアプリが終了します。
アプリ終了前に、これまでと同じように快適に使えるよう今から準備しておきましょう!
チェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用するメリット
ーーチェーン展開している店舗だと、単独店舗のオーナーとは少しメリット・デメリットが違ってくるのでしょうか。
永山:
チェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用するメリットは、どこまで機能を使うかによりますが、まず大きなポイントは「情報の間違いを減らすことができる」ところですね。
ブランドが大きければ大きい程とにかく閲覧者がたくさんいるので、「正しい情報を伝える」メリットは非常に大きいです。反対に「情報が正しくない」「望む情報が入っていない」状態は大きな損失になります。
特にコロナ禍だと営業日や営業時間の変更がローカル情報では変わっていないという問題が多くなっていますが、これをきちんと修正し反映させて、さらに投稿機能やビジネスの説明で言及することで「ここは今営業しているのかどうか」がお客様に伝わります。
ーー確かに、営業日・営業時間が間違っているところは多いですね…。弊社調査で、都内飲食チェーン500店のうち、52%が間違った営業時間を掲載しているというデータもあります。
関連記事:
52%の飲食店が「間違った営業時間」をGoogleマップに掲載…都内の飲食チェーン500店の店舗情報を調査
ーーこういったガッカリ体験を防止するだけで、お客様からのお店に対する印象もずいぶんと変わりそうですね。
はい。情報整備をするだけで企業への評価や信頼など「行ったけどやっていなかった」という最悪の体験を防いだり、逆に「今営業しているなら行く」「営業時間変わってないから行く」という後押しに繋がったりする大きな導線なのですが、ここに手を入れていない企業も多々あるわけですね。
正直、新商品などのPRをしなくても「情報を正しく」し「それを伝える」ためだけに運用するという選択肢でも、十分な価値があると思いますので是非取り組んで欲しいですね。
他にも、店舗数が多いからこそ、「データをまとめて分析できる」というメリットもあります。これはチェーン店ならではですね。
ーー確かに!Googleマイビジネス以外のマーケティングなどにも活用できそうですよね。単独の店舗で運用する場合との違いが、なんとなく分かってきました。
チェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用するデメリット(ハードル)は?
ーーチェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用するデメリットというのはあるんでしょうか?ここまで聞くと、メリットしかないと思うんですが・・・(笑)
永山:
逆になぜそれでもGoogleマイビジネスに取り組んでいない企業が多いのかというと、デメリット・・・というかこれも「ハードル」に近いですが、店舗数が多い場合1店舗ごとの修正や情報整備、発信が必要なため、全店舗でしっかり行うと、なにをするにしても作業工数が膨大になってしまうという問題があるからですね。
元々Googleマイビジネスは小規模ビジネスでの運用を主眼に作られているため、通常の機能の中には複数の店舗を一括で投稿したり、修正したりするといったチェーンビジネス向けの機能はサポートされていません(※スプレッドシートなどで一部の基本情報は登録できますが、投稿はサポートされていなかったりします)。
そのため店舗数が多くなればなるほど、一括で作業ができるツールをAPI* などを用いて自社内で構築するか、サードパーティのツールを導入するなどしないと、ちょっとした修正作業や発信に多くの人・時間のリソースを割くことになってしまいます。
* Google My Business API:Google マイビジネスのサーバーのビジネス情報と直接連携するアプリケーションを作成できるサービス
ーーAPIやツールに頼らないと、管理画面を一つひとつ開いて情報更新や投稿を行わなければならないんですよね…。
はい。これがデメリットとして考えられるひとつです。
ツールの導入にも当然お金はかかりますが、店舗数によっては手作業で行えるレベルを超えている場合もあるため、ビジネスによってはツールで削減できる手間・人件費を考慮して導入を検討されても良いでしょう。
実はこういったツール登場も、ここ1〜2年の話なのでようやく比較検討・導入できる状態になった、とも言えます。
ーーそうですね、チェーンビジネス向けの管理ツールはかなり増えてきていますね。
宣伝っぽくなってしまいますが(笑)、弊社でも「口コミコム」というGoogleマイビジネス・口コミサイト一括管理ツールを提供しています。
ぜひこの記事を読まれているチェーンビジネスの担当者の方に検討していただければと思います!
関連リンク:
Googleマイビジネス・口コミサイト一括管理ツール「口コミコム」
ーー他にも、チェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用する上でのデメリットやハードルは存在するのでしょうか?
永山:
チェーンビジネスのGMBを運用する際の記事などの情報が、インターネット上には圧倒的に少ないというのが結構大きなハードルと言えるかもしれません。
インターネット上で記事化されているGoogleマイビジネスの運用テクニックなどの情報は、ほとんどがどうしても個人店に向けた内容になっていますよね。
チェーンブランドの担当者がマイビジネス運用に踏み込めない理由はこの辺りにもあると思います。
ーー今はネット上にあまり載っていない情報の中で、「特にこういう点に留意した方がいい」という例はありますか?
たとえばチェーンと単独店舗を比較すると、大型チェーンになればなるほどブランド名で検索する比率が多くなってきます。そこで「すでにブランドを知っている人」への新たな価値の提供も意識する必要があります。
また有名ブランドになれば単独店舗よりも「名前だけ知っている」という状態の人が多いという特徴もあります。対象となる検索利用者層まで意識した情報整備、発信が求められますね。
あとは、居酒屋を検索した際にあえてよく行くチェーンを外したいといったニーズがありますよね。そういった場合、「居酒屋」と業種で検索した時の検索結果には候補として出てくるわけですが、そのときに「チェーン店には行こうと思ってなかったけど、見てみたら美味しそう」「期間限定のキャンペーンがあるから行ってみようかな」という流れにさせたいですよね。
このように、ある意味、単独店舗とは違った戦略や誘導が求められる場合も多いわけです。
ーーなるほど…!基本情報の整備だけでもメリットが大きい一方で、一歩先の施策へと推し進めようとすると、さらなる課題が見えてきますね。
関連記事:
すかいらーく、口コミコム導入で約3,000店の店舗情報整備が可能に
チェーンビジネスのGoogleマイビジネス運用では「使わない機能」を決めておく
永山:
先程お話したとおりチェーンビジネスでは作業工数が膨大であることや、ひとつの施策が全店舗に波及する状況が多いため、ある程度運用にルールを設け、効率化を図ったほうが良い場合もあります。
言い方を変えると、すべてやろうとするのではなく「使わない機能、項目を決める」とか、「本社一括で行うのではなく権限を分け立場によって行う業務を決める」といった運用です。
これは小さい店舗でもある程度有効ですが、チェーンビジネスの場合は特にこれが重要です。
ーー使わない機能、項目というのは、例えばどんなものがありますか?
永山:
例えば、メッセージ機能(※2024年7月31日以降、メッセージ機能は利用不可)は現場対応には向いていますが、本社の一括管理では難しいです。管理体制によっては使わない機能としておいても良いわけです。
口コミも返信するメリットはありますが、それでも現場での真偽確認や、本社での判断が必要な場合もあります。
とりわけ特例のような対応をした場合にチェーンビジネスの画一的なサービス、ブランド形成の妨げになる事もあるため、この部分は非常に人的工数を要する可能性があります。
その辺りを考慮して「口コミはデータとして活用するが、返信については行わない」という選択肢だってあるわけです。
逆に、口コミ返信をブランディングとして活用するという考え方もあります。何のために行うのか、そこにどれだけの人的工数がかかるのか、を考えることになるというのが単独の店舗とはかなり異なりますね。
ーー確かに、チェーンビジネスならではの取り組み方ですね。
永山:
この部分も場合によっては全ての機能を本社一括にせず、ある程度の権限を店舗ごとに付与することでこれらの機能も活用する方法だってあると思います。店舗ごとの個性などが発揮されるため、こういったブランド展開を行う場合は非常に強みになります。
いわゆる、基本情報は本社側、メッセージ(※2024年7月31日以降、メッセージ機能は利用不可)や返信は店舗側、店舗側の運用に対して何らかの判断が必要な場合はエリアマネージャー確認 というように、ある程度行うタスクを分散するといったルールにするなどの選択肢ですね。
ーー店舗ごとに、お客様に合わせた口コミ返信や情報発信ができるのはいいですよね。実際に本社・店舗・エリアマネージャーでタスクを分散して取り組んでいる企業様もいらっしゃいます。
関連記事:
口コミ管理に悩むチェーン店必読!ワイドレジャーが実践する口コミ活用のノウハウを大公開
永山:
そうですね、お客様に合わせられるというメリットもありますが、当然ながら現場やエリアマネージャーの負担にはなるので、本社一括管理という選択肢にするほうがいいのか等も含めて決定するといいでしょう。
この辺りはどう扱うかによって、メリットにもデメリットにもなり得ます。どちらの要素もしっかり洗い出した上で検討してください。
ーー権限をどこに置くか、というのは事前に考えておかなければいけないわけですね。
永山:
そうですね。
チェーンビジネスではGoogleマイビジネスの運用方法も様々あり、無計画に運用を行うと、デメリット(ハードル)が大きくなってしまう場合があるので慎重に検討する必要があります。
一般的な小規模の単独店舗と違い「Googleマイビジネスをやらないと露出できない」状況ではないと思うので、先にどういった方針で、どの情報整備を優先的に実施するのか決めた上で取りかかるのがいいですね。
ーーなるほど、わかりやすい解説ありがとうございました。後編もよろしくお願いします!
まとめ
今回はGoogleマイビジネスのメリット・デメリット 中編として、チェーンビジネスがGoogleマイビジネスを活用するメリット・デメリットについて、永山氏に語っていただきました。
<中編のまとめ>
- 元々知名度が高く閲覧者が多いチェーンビジネスでは、Googleマイビジネスを用いて「情報の間違いを減らす」ことができること自体が大きなメリット
- 店舗数が多ければ取得できる情報も増え、分析など活用の幅が広い
- 作業工数が膨大になるというデメリットがある。ツールの導入や、優先度を決めるといった方法での解決が場合によっては必要
- 更に集客効果を高める口コミ返信や投稿施策はブランドにとってメリットとなる要素とデメリットになる要素があるので見極めが重要
次回、後編は9月27日(月)にお届けします。
前編・中編の続きとして、「自治体・DMO担当者」にとってのGoogleマイビジネスのメリット・デメリットについて永山氏に解説いただきますので、お楽しみに!
この連載を見逃さないためにも、ぜひ口コミラボのメールマガジンにご登録ください。
口コミラボメールマガジン ご登録はこちらプロフィール
永山卓也(ながやまたくや)- Googleマイビジネス プラチナプロダクトエキスパート(※)
「口コミコム」テクニカルアドバイザー&「訪日ラボ」アドバイザー
ローカルビジネスコンサルティング、店舗マネジメント業を行い、 デジタル、アナログ両面で小売・飲食・宿泊業、観光業に豊富な経験。
各都道府県の地方自治体、地域団体などを中心にセミナー、講演実績多数。観光庁 インバウンドの地方誘客促進のための専門家。
Googleマイビジネス プラチナプロダクトエキスパート。Google Maps, Google広告プロダクトエキスパート。東京観光財団 観光おもてなしアドバイザー。
株式会社movが運営するお客様の声のDXサービス「口コミコム 」テクニカルアドバイザー&インバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」アドバイザー。
※2021年10月25日追記
:永山氏は2021年10月、Googleマイビジネス ダイアモンドプロダクトエキスパートに昇格されました。