ゴーストレストランとは、実店舗を持たない出前専門店のことです。ニューヨークで誕生した新しい飲食店スタイル「ゴーストレストラン」は日本でも注目されており、顧客が飲食する実店舗を持たない仕組みとデリバリーサービスの発展、新型コロナウイルスの影響で出店の検討や企業による出資の動きが見られます。
この記事ではゴーストレストランでの出店を考えている飲食店経営者に向けて、その仕組みから開業条件、注目される要因、メリット・デメリットについて解説します。
ゴーストレストランとは
ゴーストレストランとは、デリバリーサービスで配達される料理を調理するレストランです。ゴーストレストランは多くの場合来店客のためのスペースを持たず、外観もレストランのように見えない状態で経営しているところもあります。
フードデリバリーの需要が高まる現在、ゴーストレストランは現在、大手・個人が経営する飲食店から出資を検討する関係企業まで、さまざまな事業者から注目を集めています。
ゴーストレストランの仕組みや開業条件、支援の動きについて解説します。
ゴーストレスランの仕組み
ゴーストレストランは、間借りしたシェアキッチンで調理し、「Uber Eats（ウーバーイーツ）」などのデリバリーサービスやアプリ通して注文を受け、ユーザーのもとへ配達するデリバリー専門の飲食店を指します。
ユーザーは注文した料理を自宅や職場などで待ち、受け取るのみという仕組みです。
ニューヨークで誕生したこのサービスは、客席はないどころか実店舗を持たないため、バーチャルレストランとも呼ばれています。
ゴーストレストランの開業条件
ゴーストレストランを開業するにあたり必要なのは、調理場となる店舗物件、食品衛生責任者の講習、飲食店営業許可、UberEatsなどのデリバリー代行サービスへの登録とその費用です。
ゴーストレストランは店舗を持つ必要がないことが特徴の1つですが、自宅のキッチンで料理を作り、その自宅をUberEatsに登録することはできません。
飲食店営業許可をとるには設備要件を満たす必要がありますが、自宅でその要件を満たすには多額の金額が必要となるため、現実的とはいえません。
ゴーストレストラン支援の動き
Ghost Kitchensを運営する株式会社ゴーストレストラン研究所は、ゴーストレストランに参入する飲食店へ、厨房の空き時間や顧客が少ない時間帯の営業をサポートする事業支援を行っています。
開業1年で坪100万の売上げを達成し、その1年で得た簡略調理やレシピなど、Ghost Kitchensのノウハウを活用し、利益が出るまでサポートするというものです。
この株式会社ゴーストレストラン研究所には、丸亀製麺などを運営する株式会社トリドールホールディングスが2020年5月に出資したことを発表しています。
日本でゴーストレストランへの注目が高まった要因は？
ニューヨークで誕生、発展したゴーストレストランが日本で注目されている要因には、新たなサービスの発展と、古くから根付いた日本の飲食文化があります。
なぜゴーストレストランが注目されているのか、その理由を解説します。
デリバリー代行サービスの発展
2016年に日本に上陸し、サービスを開始したUber Eatsをはじめ、楽天デリバリーや出前館などデリバリー代行サービスが増加しています。
これまでの宅配ピザや宅配寿司といったはデリバーリーサービスは、デリバリースタッフを店舗側が用意していました。
デリバリー代行サービスの誕生は、配送コストの大幅削減やゴーストレストランなど新たなスタイルの普及を後押ししており、飲食業界を牽引しています。
日本に根付く出前や仕出しの文化とコロナウイルスの影響
ゴーストレストランという名前から全く新しいサービスのように感じられるかもしれませんが、日本では出前や仕出しといった形態は古くから親しまれていました。
日本には出前や仕出し文化があったからこそ、ゴーストレストランという店舗を持たないデリバリー専用スタイルが、受け入れられている理由と推測できます。
そして、新型コロナウイルス対策における外出自粛によるデリバリー需要の高まりも、ゴーストレストランが注目されている理由の1つといえます。
ゴーストレストランのメリット・デメリット
注文や決済が簡単で顧客にとってのメリットが多いゴーストレストランですが、経営者側にとってもメリットがあり一方でとデメリットもあります。
ゴーストレストラン出店を検討するにあたり、知っておくべきメリットとデメリットについて解説します。
メリット：初期費用を抑えられる
ゴーストレストランは初期費用を抑えられるというメリットがあります。
新しく店舗を立ち上げる際にかかる初期費用は、数100万から1,000万円ほどといわれていますが、ゴーストレストランの場合、初期費用はシェアキッチンなどの手続きや利用料などを含め、数十万円ほどと安価に抑えることが可能です。
飲食業界では初期費用を回収できず、開業から数年以内の閉店を余儀なくされる店舗が後を絶ちません。
この点を考えると、初期費用を抑えられることは、ゴーストレストランの最大のメリットといえます。
メリット：人気メニューの分析がしやすい
人気メニューの分析は、飲食店にとってリピーターを獲得するうえで重要です。
オンラインで注文を受け付けるゴーストレストランは、蓄積したデータから人気商品やリピートされている商品、ユーザー層などの分析が、実店舗に比べて容易にできます。
実店舗がなく、客席に置くメニューブックなどが必要ないゴーストレストランでは、分析結果を踏まえたメニュー変更にも費用はかかりません。
メニューの分析と変更がフレキシブルに行える点も、ゴーストレストランのメリットです。
デメリット：実店舗経営とノウハウが違う
多くの競合が出店しているプラットフォーム上で自店を選んでもらうためには、商品力だけでは不十分であり、実店舗よりも営業難度が高いという側面もあります。
ゴーストレストランで提供する料理は、オンラインでしか販売できません。実店舗を持つ飲食店のように近くを通り、見た目や雰囲気で入店する顧客の取り込みはできません。
オンラインでの集客を成功させる必要があるということから、Webマーケティングの領域での知見がない場合には、利益の拡大はそこまで簡単ではないでしょう。
またアプリの手数料の負担についてもしっかり理解し、価格設定をしなければなりません。
ゴーストレストランの開業にはメリット・デメリットがある
通常に比べ初期費用を圧倒的に抑えられるゴーストレストランは、飲食店の新規参入にはとても良い方法です。
莫大な金額がかかる設備投資を抑えられる一方で、その代わりにWebマーケティングの力が必要なため、味だけでは勝負できない土俵でもあります。
ゴーストレストランは、横並びのブランドを立ち上げる場合や飲食店に一度チャレンジしてみたい、シェアキッチンで業界内の横のつながりを作りたいなど目的によってはメリットを最大限に活かせる可能性も高いスタイルです。
ゴーストレストランでの出店を考える際には、そのメリットとデメリットを踏まえると同時に、デメリットをカバーする方法を考えることが、利益を上げるカギとなるでしょう。
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