新型コロナウイルスの流行により食事のデリバリーサービスの需要が高まるなか、実店舗を持たない「ゴーストレストラン」に注目が集まっています。
「店内席を構えずにデリバリーのみで対応する」というスタイルが、デリバリー需要に応える飲食店の新しい形として急速に認知されています。
今回はゴーストレストランの特徴やメリットをふまえ、コロナ禍で注目されている理由と今後の課題について解説します。
ゴーストレストランとは
ゴーストレストランとは、事業者が実店舗を持たず、オンラインでの注文受付とデリバリーのみでサービスを提供する飲食店を意味します。アメリカのニューヨークで誕生した飲食店の新しいスタイルとして、日本でも注目が集まっています。
ゴーストレストランは実店舗を持たないため、店内席はなく、ユーザーが客席に座り飲食をするということはありません。レストラン自体は他の飲食店やシェアキッチンなどを間借りして調理をし、「Uber Eats」といったデリバリーサービスを活用し注文を受け付けて料理を配達します。
完全デリバリー専用のレストランとして営業するという点が大きな特徴です。
ゴーストレストランのメリット
「ゴーストレストラン」という新しいレストランのスタイルは、新型コロナウイルスの感染が長期化していることによるデリバリー需要の高まりに合わせ、注目を集めています。
実店舗の飲食店ではなくゴーストレストランを開業するメリットとして、感染症対策以外の3つが挙げられます。
開業費用の削減
1つは、開業費用の安さです。個人で飲食店を始める場合、一般的に開業資金は300〜1,000万円かかるとされています。
一方ゴーストレストランはシェアキッチンの利用、またはどこかの飲食店を間借りし開業するため、開業費用は数十万円程度と大きく抑えられます。
ゴーストレストランはユーザーの来店利用がないため、内装や食器にこだわったり、駅からのアクセスを考慮したりする必要もレジや店内のテーブルや椅子といった設備を用意する必要もあまりありません。
経費削減
2つ目には経費削減のしやすさが挙げられます。一般的な飲食店では、経費として家賃、人件費、光熱費、食材費、雑費などが必要ですが、ゴーストレストランでは家賃や人件費、光熱費の部分で大きく経費を削減できます。
接客が必要ないためホールスタッフを雇う必要がないほか、ユーザーが来店しやすいような立地を気にせずに済むことから、人件費と家賃は特に抑えやすい点がメリットといえます。
外的環境に左右されにくい
3つ目は、売り上げが天候に左右されにくいことです。実店舗を持つ飲食店では、雨の日は客足が少なくなり売り上げが大きく落ち込むことが考えられます。
一方でゴーストレストランは、商品の提供はすべてデリバリーで対応するため、天候によって客足が落ち込むといった心配がありません。
コロナ禍でのゴーストレストランの可能性
緊急事態宣言の解除後も3密を避けることが推奨されており、飲食店の利用も慎重になることからデリバリー需要の高まりが継続すると考えられます。
そのような状況において、ゴーストレストランが注目されるようになった3つの理由を解説します。
コロナ禍で注目されるゴーストレストラン
ゴーストレストランの運営や事業開発支援を手がける「株式会社ゴーストレスラン研究所」は、2019年1月より「Ghost Kitchens(ゴーストキッチンズ)」の運営を開始しています。東京都目黒区の住宅街にある雑居ビルにてキッチンを間借りし、1年経った現在は月商500万円にまで達しました。
さらに2020年5月25日には、日本のうどんチェーン店「丸亀製麺」などを運営する「トリドールホールディングス」がゴーストレストラン研究所に出資したと発表されました。新型コロナウイルスの流行が長期化する見通しのなか、ゴーストレストラン市場の拡大や成長の可能性を見込んだものと考えられます。
新型コロナの流行による飲食店の経営難から働き口を失ってしまった料理人などへの支援策として、シェアキッチン利用に伴う初期費用を無料にするキャンペーンを独自に実施する施設も見られます。
2020年6月1日に京都市下京区でオープンした「BeChef+ 京都シェアキッチン」は、2020年8月31日まで初期費用と退去費用を完全無料にするキャンペーンを開始しました。デリバリーサービスへの登録サポートや審査通過後の即日利用が可能など、新たにゴーストレストランの運営を始める上で便利な条件が揃っています。
感染リスクが低い・時間をかけずに始められる
ゴーストキッチンでは、従業員と来店客や来店客同士の接触が発生しないため、衛生面での安全性が高いのが特徴です。感染リスクの低さから、新型コロナが流行している現在でも、安心して利用しやすくなります。
また新たに通常通り店舗を構えレストランを開業するよりも低コストで始められるのはもちろん、開業時間までの時間を短縮できるのもゴーストキッチンの特徴の1つです。新型コロナの影響で資金面が苦しい場合でも、お金と時間をかけずに開業できる点は、ゴーストキッチンの大きなメリットといえるでしょう。
ゴーストレストランの課題
ゴーストレストランはさまざまなメリットがある一方で、課題も見受けられます。ここでは、ゴーストレストランが抱える3つの課題を整理します。
実店舗がないため集客が難しい
一般的な飲食店とは違い、販路がほぼオンライン上に絞られてしまうことが大きなデメリットです。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの飲食店がデリバリーサービスに参入しています。
今後ますます競争が激化することが予想され、InstagramやTwitterなどのSNSを使用したPRを実施し、情報をこまめにアップデートし常に最新情報を届ける努力が必要です。また実際に食事をしているユーザーの反応が見られないことから、サービス改善につなげるのが難しいといった懸念点も挙げられます。
Uber Eatsなどのフードデリバリーサービスに寄せられる店舗評価から対応の見直しを図ったり、メニューを試行錯誤しながら売り上げの増減を分析したりといった定期的なサービス改善の取り組みが求められます。
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プラットフォームでよりコストがかかってしまう可能性
ゴーストレストランでは、注文を受けてから料理を作り、商品を配達員に預け、配達員が顧客に届けるといった流れを円滑に進めるために、フードデリバリーサービスのプラットフォームの利用が必要不可欠です。そのためプラットフォームを利用する際は広告費や配送料などを支払う必要があります。
その費用はプラットフォームでコントロールされるため、今後費用が高くなる可能性も否定はできません。初期費用が少ない一方で、継続した運営はプラットフォームへ依存することでコストが高くなるといった懸念点があります。
運営の管理が難しい
ゴーストレストランは実店舗を持たないため、冷蔵庫などの食材を保管するスペースも持たない状態でスタートすることとなります。基本的には、間借りするレストランやシェアキッチンから食材の保管スペースを借りることになるでしょう。
冷蔵庫や調理器具などの使用ルールについては、あらかじめ間借り先とコミュニケーションを取り確認しておくことが大切です。
シェアキッチンでは限られたスペースを利用することになるため、スペースを有効活用する上で他店舗に配慮しながら、スペースをお互いに分け合うなどの工夫と協力が必要となります。
増加するデリバリー需要に対応できるゴーストレストランに期待
ゴーストレストランは、新型コロナウイルスの流行によるデリバリー需要増加に対応できるほか、非対面営業から感染リスクを下げられるといった点から注目を集めています。
また低コストで時間をかけずに始められることから資金の余裕が少ない場合でも、新たなビジネスモデルとして開業できるメリットがあります。
一方で集客の難しさや自社のみで運営をコントロールすることが難しいなどのデメリットもあります。
ゴーストレストランはWithコロナ時代の増加するデリバリー需要に対応する新しい形の飲食店として高まっていますが、メリットとデメリットを踏まえた上で運営方針を決定する必要があります。
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