消費者にとって飲食店は身近な存在ですが、飲食店経営の実情は厳しく、閉店率は1年目で約3割、2年目になると約5割にも上るといわれています。
この記事では、経営に成功する飲食店の店舗づくりをするために、どのような手順とスケジュールをもって開業すればよいのか、また、開業にあたって必要な資格や届出についても解説します。
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飲食店開業の手順
飲食店開業までの事前準備は、1年前から行う必要があります。ここでは、開業の準備やその手順について、一例を解説します。
1. 店舗のコンセプトを固める(1年前~)
店舗のコンセプト選びは、店舗づくりにおけるテーマ設定ともいえます。経営者は店舗を作る際、まず初めにどのようなテーマでお店を作っていくかを考える必要があります。
最初に決めたコンセプトに沿って計画を進めることで、内装のデザインやメニュー内容、価格帯などを決めやすくなります。また、店舗の特徴や強みを活かせるコンセプトを設定できれば、顧客の満足度も高まり、安定した集客につながります。
コンセプトを決めるにあたっては、5W2H(Why:開業の動機、When:開業時期、Where:立地、Who:客層、What:商品、How:接客形態や営業時間、How much:店舗数や売り上げ見込み)を意識するとよいでしょう。
これらの項目を明確にし、すべての項目で整合性が取れ、矛盾はないかを確認します。
コンセプトを決定する際には、繁盛店を参考にしたり、セミナーに参加したりするなど、積極的に情報収集を行うことも必要です。
2. 立地を決める・物件を探す(10~6か月前)
次に、決定したコンセプトに基づき、設定した内装デザインやターゲットにする客層を意識したうえで、それにあった物件・立地を探していきます。
物件の検討を付ける際には居抜き物件かスケルトン物件かでまず絞り込むこともあります。
居抜き物件とは、前に入居していたテナントが使っていた設備や備品が残っている物件のことです。メリットは、以前使われていた設備をそのまま利用できるため、店舗の改装にかかる時間や費用を抑えられることです。
前テナントのイメージをそのまま引き継いでしまうこと、すでに決まっているレイアウトで店舗づくりをするため、店舗設計の融通が利きにくいことなどがデメリットとして挙げられます。
一方のスケルトン物件とは、柱、床などの構造のみで、それ以外のものが残っていない状態の物件のことです。店舗のコンセプトが明確に定まっており、オリジナリティを出したいオーナーにとってはメリットになります。
しかし、居抜き物件より内装費用がかかる場合が多いことや、1から作り上げるため、内装工事に時間を要することなどがデメリットとして挙げられます。
これらの他にも、自分のコンセプトやターゲット客層に基づき、適しているのはオフィス街か、商業エリアか、住宅地かといった立地についても決める必要があります。
飲食店を開業する際は、資金調達をするケースが多いですが、融資する側にとっては、どこに出店するのか決まっている方がその店への融資を検討しやすいといえます。そのため、資金調達よりも先に物件を探すことが重要です。
3. 事業計画を立て、資金を調達する(5~4か月前)
開業に伴い資金調達をする際、事業計画書を作成する必要があります。
この事業計画書には、コンセプトに基づいた客単価や立地、回転率を考えたうえで、売上計画、収支計画、返済計画、資金調達計画、投資計画等に具体的な数字を設定し記載します。
その後、金融機関からの借入などで資金を調達します。
4. 店舗内外装施工(2か月前)
開業2か月前には、店舗内外の工事に着手します。設計事務所と施工業者の選定は、知人の紹介を受けたり、インターネットや雑誌で探したりすることで決定します。
その際、一つの業者に問い合わせてすぐに決定してしまうのではなく、複数の業者から見積もりを取り、どの業者が自分のコンセプトに近いデザインを得意としているか、価格帯や業者の対応も含めて検討する必要があります。
複数社との比較の上で業者を決定した後には、コンセプトをしっかり共有し、設計・施工を行ってもらいます。
5. メニューを決める(2か月前)
店舗内外の工事と同時期に、メニューのラインナップ、ビジュアル、価格などについて、顧客の視点も意識しながら決定します。
メニューのビジュアルに関しては、ターゲットとする年齢層にもよりますが、現代ではインスタグラムなどのSNSで投稿、拡散されることで、飲食店の知名度が上昇するケースがよく見られています。そのため、写真映えするメニューを開発することも、集客・売上増のための戦略として効果的です。
メニューの価格設定については、原価率を30%以内に抑えることを一指標にするとよいと言われています。原価率とは売上に対する原価の割合のことで、原価÷売上×100で求められます。このとき、歩留まり(原材料のうち実際に商品に使える部分)やフードロスも考慮したうえで価格設定をする必要があります。
6. 備品の発注、求人、各届出や手続き(1か月前)
開業1ヶ月前には、食器や調理器具を中心に備品を発注します。店舗の雰囲気や客単価に加え、店内に収納できる量も考慮したうえで、コンセプトにあったものを選ぶことで統一感が出せます。
また、店舗の運営に必要な社員やアルバイトの募集も始めます。チラシやWebなどの媒体に広告を掲載する、あるいはハローワークで無料で募集するなどの方法が有効です。
これらと同時期に、飲食店を開くにあたって必要な資格や届出についても手続きをする必要があります。これについては、次項目で詳しく説明します。
開業に必要な資格と手続き
飲食店を開業するにあたっては、取得必須の資格が2つあります。以下では、必要になる資格や各種手続きについて解説します。
1. 食品衛生責任者の資格
取得必須の資格1つ目として、食品衛生責任者の資格があります。これは、飲食店や食品を販売する小売店を開業する際には、必ず1人置くことが義務付けられている資格です。
各地域の保健所で6時間ほどの講習を1日受ければ取得できるもので、取得にかかる費用は1万円前後となっています。
この資格は全国共通であるため、開業する飲食店とは異なるエリアで取得しても問題はありません。また、調理師免許や栄養士免許を持っている人は取得する必要がありません。
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2. 防火管理者の資格
取得必須の資格2つ目として、防火管理者の資格があります。これは、従業員含めた収容人数が30名以上の場合に取得が必要です。
取得にあたっては、各地域の消防署の講習を受ける必要があります。講習は1日から2日、取得にかかる費用は7,000円から8,000円程度です。
飲食店開業に必要な申請
飲食店の開業にあたっては、飲食店営業許可申請が必須であり、保健所へ提出する必要があります。
流れとしては、まず保健所への事前相談を行ったうえで、保健所に飲食店営業許可申請と合わせて営業設備の配置図、登記事項証明書、水質検査成績書、許可申請手数料、食品衛生責任者の資格を証明するものを提出します。
続いて、施設完成の確認検査を行い、許可証の交付をされれば晴れて営業開始となります。
そのほか業種によっては、深夜における酒類提供飲食店営業開始届出(警察署へ提出)、個人事業の開業届出(税務署へ提出)などの届出も別途必要です。
開業直前にやるべきこと
飲食店の開業準備には多くの段取りが必要ですが、飲食店の開業を目前にしてもやるべきことは存在します。以下では、開業直前にやるべきことを3点解説します。
1. 届出の確認
開業直前には、まず各種届出の確認をする必要があります。営業許可が下りているか、開業に必要な資格はすべて取得しているか、保健所・消防署・税務署等に出すべき申告書や届出を提出しているかなどを確認します。
2. 設備や備品の確認
各種届出が揃っていることを確認した後は、店内の設備や備品を確認する必要があります。食器やテーブルなどの備品は足りているか、防火システムや自動ドア等の設備は問題なく作動するか、店舗の銀行口座を作ったかなどについて、最終確認を行います。
3. レセプション・プレオープンを行う
店舗の運営準備が万全になった後には、レセプションやプレオープンを行います。レセプションとは、関係者へお披露目をする場のことです。オープン後の口コミ集客を狙ったり、店舗について率直な意見を聞くことで改善につなげたりできる効果が見込めます。
プレオープンとは、開業前の試験的な営業のことです。従業員の接客レベルが目標に達しているか、お店の回転率は理想的かなどをチェックすることで、開業後のスムーズな営業につなげられます。また、事前に改善点を見つけたうえで、正式なオープン日までに修正もできるため、開業後のネガティブな口コミを防止できる効果も見込めます。
余裕を持った準備で繁盛する飲食店に
飲食店の開業準備の手順は多く、遅くとも1年前から開業に向けて準備していく必要があります。事業者は、できるだけ早めにスケジューリングし、開業手続きや資格取得に向けて動いていくことで、余裕をもって開業を迎えられます。
店舗のコンセプトをしっかり持ちつつ、顧客のニーズに応えていくことが、安定的な集客と店舗の繁盛にもつながります。開店後は顧客に認知されるためのオンライン、オフラインでの情報発信と整備についても注意を払うとよいでしょう。
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<参照>
東京都福祉保健局:食品衛生責任者
日本食品衛生協会:全国の食品衛生協会
日本防火・防災協会:防火・防災管理講習
渋谷区公式サイト:営業許可等手続きについて