検索エンジン、地図アプリともに日本国内のシェア率1位を誇るGoogle。近年では飲食店などの「お店探し」にも利用されるようになりました。Web上の検索・地図サービスにおいては“Google一強”とも言われる時代の中、2020年に設立されたのがマップボックス・ジャパン合同会社(以下、Mapbox Japan)です。
Mapboxは、実はGoogleと同じく「米国発」の地図サービス。Yahoo! MAPなどの国内地図プラットフォームに地図テクノロジーを提供する他、2021年8月には7社と合同で「マップアドネットワーク」を立ち上げ、独自の地図広告プラットフォームを展開しようとしています。
圧倒的な強さを誇るGoogleに対し、Mapboxの“勝算”はどこにあるのでしょうか。今回口コミラボ編集部では、Mapbox Japan 最高経営責任者CEO 高田 徹氏にお話を伺いました。
「地図にも選択肢を」“Google一強”の現状に感じる疑問
Mapbox Japanは、地図情報サービスの開発プラットフォームを提供する米国Mapbox Inc.と、世界でビジネスイノベーションを牽引するソフトバンク株式会社がタッグを組み、2020年3月に設立されました。
高田氏は、元々Yahoo! JAPANでメディア広告事業を担当、現在はソフトバンク株式会社の事業開発統括本部長を兼務しながら、Mapbox JapanのCEOとして地図サービスの革新に努めています。
高田氏「今まさにビッグプレイヤーが市場を席巻している状況ですが、『地図って、1種類でいいの?』と思っています。選択肢はあった上で、どれかを選べる方が良いはずですよね。
地図サービスがなかなか増えない理由は2つあると思っていまして、1つは『地図を作るのが大変すぎる』こと。例えば建物、お店、地点の情報を集めて…他にも道路や公共交通機関などの情報もなければいけないですよね。さらに、高頻度で更新もしていかなければならない。
もう1つの理由は、『地図でのマネタイズが難しい』こと。今のユーザーは『地図は無料で使えて当たり前』だと思っているので、地図を有料で使おうという発想は基本的にありません。
コストがかかるにもかかわらず、地図それ自体でマネタイズするのは非常に難しいことから、自社で開発・提供できる企業は当然限られてきます」
「どんな人でも地図のサービスを作れる」未来を目指して
高田氏「そこでMapboxは、地図情報をカスタマイズし、自社オリジナルの地図を開発できるサービスを提供しています」
Mapboxの地図表示システムは、地図サービス「Yahoo! MAP(Yahoo!地図)」や決済システム「PayPay」内の地図などにも導入されています。表示速度が速く、あらゆるスマートデバイスで使用可能な上、導入されるサービスに合わせた細かなカスタマイズができるといいます。
高田氏「Yahoo!のサービスだけでなく、全国紙の電子版などのメディア様でご利用いただいたり、不動産や交通系の企業様、さらには自治体様など、『オリジナルの地図を作りたい』とお考えの方に幅広くご利用いただいています」
地図を邪魔しない広告のあり方
そしてMapbox Japanは2022年10月、”地図自体でのマネタイズ”の可能性を広げるべく、「プロモーテッド・ピン広告」の有料版をリリースしました。
高田氏「Web媒体の広告といえば、検索結果のリスト上に表示する『リスティング広告』やWebページ内の掲載枠に画像や動画を表示する『ディスプレイ広告』がありますが、これらはあくまで検索エンジンやニュースサイトに特化した広告の表示方法。地図にそのまま適用してしまうと邪魔になってしまい、エンゲージメントも下がってしまうんです。
そこで、今回の新しい広告では、“地図を邪魔しない”ように表示するにはどうすればいいのかを試行錯誤しました」
プロモーテッド・ピン広告は、地図上に広告主独自のアイコンが配置され、タップすると広告主の情報が記された「広告カード」が表示される仕組みです。
地図の一角に表示するようなタイプの広告と違い、ユーザーがタップしてはじめて表示される広告であるため”地図を邪魔しない”設計に。さらに、タップすることで表示される「広告カード」上に写真やメニュー、最新のお知らせを表示できるなど、掲載できる情報が増えるという広告主側のメリットもあるそうです。
※プロモーテッド・ピン広告詳細:https://www.mapbox.jp/news/newsrelease-20221005
地図業界全体の収益化を目指す
それでも、「ピン広告が唯一の正解ではない」という高田氏。今後も広告フォーマットを増やすとともに、各社と連携して地図業界を盛り上げたいと意気込みます。
高田氏「本来、地図は書店などで購入するものだったはずですが、インターネット上の地図やスマートフォンの地図アプリの登場で、『地図は無料で使えて当たり前』の認識が消費者の間に広がりました。
『地図を売る』ということが難しくなってきた今の時代。単独で勝つのは難しいことから、『マップアドネットワーク』を立ち上げ、ヤフー株式会社、株式会社ゼンリンほか、計7社と連携して地図広告のリーチを増やす取り組みを始めました。
自社だけでは難しいかもしれませんが、業界内の多くの会社様と連携を進めておりますので、勝算はあると考えています。
今後も地図業界全体が収益化の糸口を見出だせるよう、プロダクトの開発と各社との連携を進めていきます」
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