4月中旬に全国を対象範囲に広げた緊急事態宣言が、今週、解除されました。緊急事態宣言の発令前、そしてそのさなかでは、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、外出自粛や営業自粛、リモート勤務の推奨が呼びかけられてきました。
こうした「自粛モード」を受けて、消費のトレンドにも変化が現れてきました。外出を控えながらも、自宅でできる娯楽や気分転換に対する需要が高まってたようです。
飲食店では店内営業を中止すると同時に、持ち帰り(テイクアウト)やデリバリーサービスの提供を始めたところも少なくありません。
緊急事態宣言の解除に伴い、政府は基本的対処方針が示しています。これを受けて、東京都では、外出、事業者、学校などで、段階を経て感染拡大前の状況に戻していくことが示されています。
飲食店に対する営業時間の短縮要請の緩和は比較的早い時期に行われる予定ですが、これまでの感染を警戒する心理からすぐに足を運ばない人もいるでしょう。政府の専門家会議の提言でも、持ち帰りやデリバリーの利用が推奨されています。
また、引き続きリモート勤務を継続する企業もあるとみられ、こうした場合には、住宅エリアに近い飲食店に対するテイクアウト、デリバリー需要が引き続き高まると考えられます。
本記事では、デリバリーサービスが拡大している世界の状況や世界におけるデリバリー需要、そして日本国内の飲食店が使うべきサービスについて解説していきます。
デリバリーサービス需要が高い国、普及の理由は?
フードデリバリーは、生活スタイルの多様化や、家事の外注の流れを受け、世界的に見ても市場規模が増えています。経済力の向上により、外食が身近なものになった地域もあります。
それ以外にも、スマートフォンの普及による「手軽な注文」や、多数の企業参入による「質の向上」も影響しているといわれています。アメリカのモルガンスタンレーの発表によると、世界のフードデリバリー率は2022年までに11%に拡大するといわれています。
住居の一般的なレイアウトなども食習慣と関係しています。例えば、香港では、夫婦共働きは当たり前であり、狭いキッチンで自炊するという文化も持たないため、デリバリーサービスに対する需要も大きくなっています。
以下、3つの国についてデリバリーサービスが普及した背景やいきさつについて紹介します。
1. 中国
中国のデリバリー市場は、2015年にはその市場規模は日本円にして約3兆9,850億円と、2010年の市場規模に比べ約4倍近くに拡大しました。2018年は11兆円以上になると見込まれ、今後さらなる拡大が予想されています。
中国で食事のデリバリーの普及を後押ししたのは「食の安全が確保されている」サービスの登場でした。中国では、美団外売や餓了麼といったフードデリバリーのサービスが普及しており、アプリ経由で簡単にデリバリー注文ができます。
スマートフォンが普及する前からも、デリバリーサービスは中国国内で広く利用されていました。ただし、当時は実店舗を持たない違法業者が利用登録をし、質の悪い商品を販売するといった被害も少なくありませんでした。
上述のサービスは、食品の提供者に対する規制を厳しくして商品の安全性を確保しています。配達員に対する評価をつけられるシステムもあり、消費者・提供する側・配達員それぞれの信用を勝ち取り、市場シェアを拡大しています。
2. アメリカ
アメリカでは「DoorDash」「Grubhub」「Uber Eats」「Postmates」の4社がデリバリーサービスのシェアを拡大しています。
2018年の市場規模は日本円にして約1兆1,000億円と、前年から42%も増加し、アメリカにおけるフードデリバリー市場は、近年さらに拡大を続けています。中でもDoorDashは、ソフトバンクグループを中心に複数の投資会社から融資を受けていることから、今後、日本への参入も期待できるサービスです。
もともとピザの宅配サービスなどを日常的に利用してきたアメリカ人にとって、昨今のオンラインプラットフォームを使ったデリバリーサービスの多様化は歓迎されています。
アメリカはマンハッタンのような都会でないかぎり、飲食店やスーパーへの足は車となります。こうした居住地のロケーションの特徴も、フードデリバリーの普及を後押ししたようです。
スマホの操作だけで簡単に食事が届くデリバリーサービスは、利便性や合理性を重んじ、スピードを求めるといわれるアメリカ人の性格にマッチしているという意見もあります。
3. インドネシア
インドネシアでは「GO-FOOD」「GrabFood」の2つのデリバリーサービスが人気です。インドネシアでは家庭内で調理することは頻繁ではないこと、また夫婦の共働きが増加し家事に割く時間が多くないことから、フードデリバリーの需要が一気に増えたといわれています。24時間配達可能なサービスもあり、市内の至る所で配達員の姿が見られます。
インドネシアでは以前から外食や出前をする人が多かったのですが、スマートフォンの普及とともにGO-FOODとGrabFoodの登録店舗数が拡大し、フードデリバリー需要が高まっています。
何よりも、インドネシアで多く見られる「バイクタクシー」がデリバリーを担ってくれることが、一番のデリバリーサービス普及理由といえるようです。「GO-JEK」と「Grab」という2社のバイクタクシーがインドネシアでは台頭しており、彼らがタクシーとしてだけでなく、フードデリバリーの配達員を兼ねています。
日本国内のデリバリーサービス事情:出前館、Uber Eats
海外のデリバリーサービス市場は、「共働き夫婦の増加」「外食文化」「生活環境」「配達員」といった要素に影響を受けながら拡大しています。
日本でも蕎麦の出前や宅配ピザが以前より利用されていましたが、インターネットサービスに伴い、デリバリーアプリの代表ともいえる「Uber Eats」や、「出前館」、大手通信会社やインターネットプラットフォームを提供している企業による「dデリバリー」「楽天デリバリー」「LINEデリマ」、「ごちくる」「ファインダイン」など様々なサービスが登場しています。
こうしたサービスでは利用者・出店数共に増加傾向にあり、今後飲食店で売上の拡大や、事業リスクを低下させたい場合、検討に値します。
また、新型コロナウイルスの影響による「巣ごもり消費」は今後も縮小しながらも続くと考えられます。店内飲食への心理的障壁のある消費者に対して、デリバリーサービスは大きな魅力を持っているといえるでしょう。
1. 出前館
1999年に設立された、株式会社出前館がおこなっている日本初のフードデリバリーサービスです。「出前館」の加盟店は2020年3月の時点で2万1,609店舗、アクティブユーザーは2019年4月末時点で288万人以上となり、国内最大手です。出前館の特徴の一つとして、シェアリングデリバリーサービスを導入していることが挙げられます。シェアリングデリバリーサービスとは「配達代行サービス」のことで、出前館が店舗の代わりに配達を担います。
配達のための人員確保や交通手段の確保が難しい店舗でも、「出前館」に加盟するだけでデリバリー事業に参入できます。
2. Uber Eats
2016年9月に日本参入した「Uber Eats」もシェアリングデリバリーサービスの国内の代表格です。
Uber Eatsは2015年にアメリカでスタートしたサービスで、翌年に日本市場にも参入しました。現在は首都圏を中心に配達エリアを拡大し、「Uber Eats」と書かれた緑色のボックスを背負う配達員の姿を見る機会も増えました。
同社に登録するメリットとしては、配達パートナーの数に。Uber Eatsの配達は各飲食店のスタッフではなく、Uber Eatsに登録している配達パートナーが担当します。
配達エリア内にいると最も近い加盟店から、配達員に配達依頼が届く仕組みとなっており、空いている時間に気軽に働くことができることから、多くの人が配達パートナーに登録しているようです。人材不足が問題となっている飲食業界において、Uber Eatsの取り組みは画期的といえるでしょう。
店舗がUber Eatsに登録するには?
飲食店がUber Eatsを利用する方法を解説します。まずは、加盟としてレストランパートナー申請が必要です。申請は、申請フォームに入力し送信します。公式サイトから申し込み可能です。登録に必要な項目は下記の通りです。
- 飲食店名
- 店舗所在地
- 階数/部屋番号(任意)
- 申請者氏名
- 電話番号
- メールアドレス
- 店舗数
- 料理の種類
送信後、Uber Eatsによる加盟店審査がおこなわれます。加盟店として適しているか判断後、提携の連絡があります。
Uber Eats申請時に対応エリアを確認する
Uber Eatsへ加盟店申請をおこなう際、対応エリアの確認をしましょう。
現在、東京23区をはじめとした全国の都心部を中心に、徐々に対応エリアが拡大しています。2020年2月18日から、中国地方初となる広島市の一部地域も対応エリアとなりました。
現状では対応エリア外の場合はウーバーイーツに加盟することは難しいですが、このように順次店舗エリアが拡大されているため、対応されたのちに加盟店申請も視野に入れておくといいでしょう。
まとめ
店舗経営者は、売上を伸ばすためにも多角的な取り組みをする必要があります。そのひとつとして、デリバリーサービスの導入検討が挙げられます。新型コロナウイルスの感染拡大によって、デリバリー需要は以前に比べて大きく高まりました。デリバリーサービスを提供するプラットフォーム側も利用促進の施策を進めており、こうした機運に乗じて自店舗の売り上げアップも狙えるでしょう。例えばアメリカのUber Eatsは「#eatlocal」というハッシュタグで「地元のレストランを応援しよう」というキャンペーンを展開しています。こうしたプラットフォーム側のキャンペーンは、SNSを通じた消費者に対する認知拡大の機会となります。
新型コロナウイルス感染拡大が起こるまで、訪日観光客数は右肩上がりで成長してきました。新型コロナウイルスが収束すれば、インバウンド市場も再び盛り返すと考えられます。インバウンドを視野に入れた対策にも、デリバリーサービスを活かすことができるはずです。
例えば、訪日観光客の中には、予算の関係で外食が出来ない人や、ホテルでゆっくりと日本食を味わいたい人もいるでしょう。デリバリーサービスは、こういった需要も満たす一つの解決方法となります。訪日観光客向けのメニューを作ったり、英語メニューを用意したりすれば、新たな売り上げの軸を確立できるかもしれません。
<参照>
CNET Japan:フードデリバリー、市場拡大と生き残りのカギは--混戦模様の香港に学ぶ
NPD Japan:<外食・中食 調査レポート>成長する出前市場、2018年は4,084億円で5.9%増
株式会社出前館:経営指数
WIRED:新型コロナウイルスの影響で宅配アプリが大人気、それでも飲食店の苦境が続く理由
Uber Eats:Uber Eats、広島でサービス開始!
Business Insider:2018年には11兆円市場に——中国でなぜフードデリバリー革命は起きたのか
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