大型ショッピングモールの出店強化や通信販売の拡がりといった多様な要因により、近年百貨店は苦戦を強いられています。
それを裏付けるように、帝国データバンクによると、2019年には地方の百貨店を中心に10店舗が閉店に追い込まれ、新型コロナウイルスの影響によるインバウンド需要の落ち込みもあり、今後も厳しい経営環境が続くことが予測されています。
本記事では、百貨店の集客戦力における口コミの有効性や具体的な取り組み方法のポイントを紹介します。
※Googleマイビジネスは、2021.11.5よりGoogle ビジネスプロフィールという名称に変更されました。
これに伴い、2022年にスマートフォン向けGoogleマイビジネスのアプリが終了します。
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百貨店が口コミ集客に取り組むメリット
口コミは、自社で仕掛けを作っても、最終的にはユーザーが主体となって行われます。そのためあまり宣伝費をかけずに新規顧客の獲得につながる可能性があり、近年注目を集めています。
ここでは、百貨店が口コミ集客に取り組む具体的なメリットについて解説します。
1. 拡散力・幅広い客層にアプローチできる
情報を効率的に拡散できることと、幅広い客層にアプローチできることが口コミの大きな特徴です。
大手百貨店では、海外の口コミサイトを活用した取り組みが目立ちます。
たとえば、銀座三越、大丸心斎橋、そして伊勢丹や高島屋といった日本の大手百貨店は、中国最大級の口コミサイト「大衆点評」を活用しています。百貨店各社は「大衆点評」の公式店舗ページに登録し、クーポンなどを配布して、口コミも活かしながら中国人観光客の誘致に着手しています。
2. 新規顧客の満足度が高い・リピーターになってもらえる可能性
口コミをきっかけに来店した新規顧客は、以下の2つの理由から、その後リピーターになりやすいとされています。
一つは、その店舗の口コミを検索する消費者の興味や関心、好みがリピーターと似た傾向にある場合が少なくないためです。
もう一つは、来店時にはすでに店舗の雰囲気やサービスの良い点などをリピーターの口コミから知識として獲得しているためです。店舗に来店にした際、それらのポイントを確認し満足するという流れが生まれ、満足度が向上したりリピーターになってもらえたりということが期待できます。
このように、消費者はあらかじめ口コミなどの情報を仕入れ、その情報に基づいて消費行動を起こします。こうした一連の消費者行動は、Googleによって提唱されたZMOT(Zero Moment of Truth、ゼロモーメントオブトゥルース)という意思決定モデルで説明されます。
そのため、リピーターの口コミが新規顧客を呼び、その新規顧客がリピーターとなって口コミを投稿してさらなる新規顧客を呼び込むというサイクルを確立できれば、集客につながります。
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ZMOT とは?
口コミ集客に使えるプラットフォーム
オンラインでの口コミプラットフォームとその特徴を整理します。
1. 口コミサイト
口コミサイトに店舗を掲載することで、自社サイト以外にもオンラインの窓口を持つことが可能になります。
口コミサイトの閲覧者は、営業時間や口コミをチェックし、訪問するかどうかを判断したいと考えている場合も少なくありません。口コミサイトを通じて自社情報を目にするユーザーは、来店につながりやすい客層といえます。
さらに、SEOの観点からは、大手口コミポータルサイトは上位表示されるケースも多いため、自社の情報を検索エンジン経由で見てもらえるというメリットもあります。
2. Google マイビジネス・Google マップ
Google マイビジネスとは、無料でGoogle 検索やGoogle マップに表示される情報を掲載、編集できるツールです。
Google マップに掲載された店舗情報にはユーザーが口コミを投稿できるようになっており、検索や地図アプリを通じてユーザーの目に留まっています。Google マイビジネスを利用すればこうした口コミに返信を付けることができます。
よい内容の口コミや、サービスの質について理解できるような口コミが集まれば、ユーザーの来店意欲を高めることにもつながります。
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3. SNS
現在TwitterやInstagram、FacebookといったSNSは商用アカウントの運用が認められており、すでに多くの企業や店舗が商用アカウントから情報発信をし、それを口コミの拡散につなげています。
SNSの中でも拡散力という点で最も強いとされるのが、RT(リツイート)機能があるTwitterです。投稿がヒットすれば一気に知名度が高まったり、場合によっては実際の来客にもつながったりします。
一方Instagramの場合には、文字だけでは伝えにくい商品や店舗の魅力などを視覚的に訴えることが可能です。
SNSのアカウント作成は基本的には無料です。運用には難しい技術も不要であり、手軽に取り組むことができるのも事業者にとっての魅力といえるでしょう。
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百貨店が取り組むべき口コミ集客のポイント
実際に百貨店における口コミによるマーケティングに取り組んだ場合に、どのような仕掛けを作り、どんな内容を投稿すればユーザーからの反響を得られるのかという視点から、口コミ集客のポイントについて解説していきます。
1. ストーリー・こだわりポイントを伝える
店舗や職人が、商品やサービスへ込めた思いを伝えることは、消費者への訴求という面でもとても大切です。これは、SNSを含むインターネット上の投稿でも同じです。
チラシ広告のように「この商品はお勧めです。値段も手頃です」といった点だけをただ強調しても十分な効果は上がりません。
類似した製品や、他社にはない商品やサービスのこだわりや誕生秘話などを紹介します。
これによって、ユーザーはその商品や開発者に対して思い入れを持つようになり、それが多くの人の共通認識となればブランドとして確立されます。
2. 口コミに対する返信をする
口コミを増やす方法の1つに、口コミに対して返信する方法があります。SNSの場合には手軽に返信ができますが、口コミサイトに投稿されたコメントに対しては、サービスによって返信ができるものとできないものがあります。
SNSなどで何気なく投稿したものに好意的な反応があると誰しも嬉しいものですが、これは口コミ投稿に対しても同様です。特に店から直接お礼の返信があれば、その店舗や会社に対して悪い印象を抱く人はいないでしょう。
さらに、返信されている様子をみた他のユーザーが、新たな口コミを投稿する呼び水になる可能性もあります。
通り一遍な対応はすぐに受け手に伝わり疑念に変わります。きちんと投稿内容に合わせた返信を心がけることで誠実さを証明でき、より印象が良くなるでしょう。
※口コミ返信の良い例のスクリーンショット
3. 地道に口コミを集める
口コミ投稿を増やすためには、地道にお願いするしか方法はありません。ユーザーにとって口コミを書くことは手間がかかる作業なので、出来るだけ簡単に書けるような工夫や、待ち時間などを利用して書いてもらうなどの配慮も必要です。
具体的には会計時などの待ち時間に「口コミの投稿をお願いします」と直接一言添えるほか、たとえば、飲食店であればテーブルの上、サービス関係であればレジ付近など、分かりやすい場所に口コミサイトのQRコードを掲示すると効果的です。
注意しなければいけないのが、プラットフォームによってはインセンティブの提供が禁止になっている点です。
Instagramでは、従来インセンティブ付きのキャンペーンは黙認されてきましたが、現在は「フォロー・いいね・コメントなどの見返りとして景品等を提供する行為」はガイドライン違反として扱われます。このように規約については随時変更が入るため、自社で運用しているサービスの規約については逐次確認してください。
なお、Google マイビジネスにおける口コミに関してもGoogleでは規約を設けており、特典をわたす代わりにレビューを書いてもらう行為は禁止されているので注意が必要です。
2024年6月には、消費者庁がインセンティブを用いてGoogleの口コミを集めた医療法人に対し、景品表示法(ステルスマーケティング告示)違反に該当するとして措置命令を行ったことがわかりました。詳しくは「【専門家解説】Google口コミの「ステマ」に措置命令 "★5投稿で割引"が景品表示法違反に、事業者やユーザーの責任は?」の記事で紹介しています。あわせてご確認ください。
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ポイントを押さえ、より多くの口コミを獲得
マーケティング戦略において、インターネット上で口コミを拡散することは今や欠かすことのできない手法です。SNS公式アカウントの開設、口コミサイトへの登録、インフルエンサーの活用など、口コミの獲得や拡散にはさまざまな手法があります。自社に適した方法を検討し、組み合わせながら取り組むとよいでしょう。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
そこで口コミラボでは、MEO・口コミマーケティングに役立つ最新ニュースをまとめた「Googleマップ・MEO最新情報まとめ」を毎月発行しています。
本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
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→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
<参照>
帝国データバンク:地方の百貨店は暗雲低迷 ― 2019年は全国で10店舗が閉店