行動経済学とは、人が無意識にとる行動や選択とその理由を解き明かした学問です。「経済学×心理学」とも呼ばれ、人間の心の動きと経済行動を結び付けて理解することができます。
飲食店では、呼び込み、席への案内、メニューの案内、退店時などスタッフと顧客の接点は少なくありません。顧客の判断は時に非合理的でありそれに法則性があることを知れば、各段階で注意すべきポイントをおさえることができ、集客や売り上げにポジティブな結果が生まれます。
本記事では飲食店で活用できる行動経済学の理論を8つ解説します。
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飲食店経営に活かせる行動経済学の理論8選
行動経済学は人間心理の理論として構築されており、人が判断して行動を起こす際の直感と感情を重視した仕組みを明らかにする学問とされています。行動経済学の手法を活用すれば、どの店舗を利用しようか迷っている顧客の無意識や顧客の印象を変えられるようになります。
1. ハーティング効果:人は行列や賑わいに惹きつけられる
人は何か選択するときに賛同者が多い方を選んでしまうことがあり、この現象をハーティング効果といいます。たとえば昼食をとろうとお店を探していた際、客がいないように見えるハンバーガー店と、行列のハンバーガー店が同程度の距離に存在する場合、多くの人は後者に並んでしまう傾向にあります。
顧客の行動の背景には、人がいない店舗に対して「評判が悪い」「美味しくないのでは?」と不安を感じることがあります。また同時に、自分が大勢と同じ選択することで選択に間違いが無いだろうと安心感を持つ心理が働きます。
ホールスタッフが顧客に座席を誘導するタイプの飲食店の場合、顧客を窓側に通し、外から見た際に店内に人がいることがわかるようにするのは、ハーティング効果を基盤とした戦略です。
aurant-2-2">2. 決定回避の法則:選択肢が多いと選ぶことを避ける
「決定回避の法則」とは、人は選択肢が多すぎると、選択すること自体を避けがちになる心理現象のことです。この心理現象が表れる有名な実験に「ジャム実験」というものがあります。24種類のジャムと6種類のジャムを売った場合、24種類のジャムでの試食率は約60%、購買率は約3%と低めになりました。一方、6種類のジャムでの試食率は約40%、購買率は約30%と高く、ジャムの種類を絞って販売した方が購買率が高いという結果が出ました。
決定回避の法則から考えると、顧客の様々な好みに合わせられるように幅広く商品を用意したつもりが、逆に裏目に出てしまうケースもあります。
店舗が売りたい商品に絞って選択肢を用意することで、結果として顧客の選ぶストレスを軽減させ、売上が良くなることもあるでしょう。
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3. 松竹梅の法則:無難な真ん中が好まれる
価格や品質において「松竹梅の法則」による心理効果が働き、人は中間の商品を選ぶ傾向があります。性能と価格が高い順にA、B、Cの商品を準備し、どれを買いたいかを100人に問う実験をした結果があります。
その結果、選択肢をAとBのみにした場合は半分ずつに回答が分かれ、3種類の選択肢にした場合のBを選ぶ人が過半数となり、残りの半数はAとCほぼ同程度となったそうです。
このような結果になるのは、選択を失敗しないように無難な中間の商品を選ぶという「損失回避の心理」や1番高い商品と1番安い商品を無意識に回避する「極端の回避性」といった心理的習性が働くためです。
飲食店で応用する際は、一番売りたい商品やセットメニューを中間に設定し、商品が高いという感覚を薄れさせて狙った商品の購入率を上げられるようになります。
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4. アンカリング効果:価格の印象は変えられる
多くの消費者は何かを選択する際に、主観や感情に左右されることが多いです。ここで、「アンカリング効果」を活用すれば、消費者の意思決定に強い影響を与えられるようになります。
アンカリング効果は船がいかり(アンカー)のつながれた範囲でしか移動ができない関係性から由来しています。最初に得た対象の特徴や価格、情報などの印象が強く頭に残り、意思決定に影響をおよぼす心理効果のことをいいます。
たとえば、値引き後のただ「3,000円」と表示された商品と、「5,000円を割引し、3,000円で販売」と元値も表示された商品が陳列している場合、ほとんどの消費者は後者の方がお得だと感じます。
消費者は最終的な損得を考えて商品を購入するため、情報の断片でも強力な判断基準として強い影響力を持っています。
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5. バンドワゴン効果:顧客の心を掴む情報発信
流行や口コミといった評判や社会的評価を判断材料にする心理を「バンドワゴン効果」と呼び、バンドワゴンに乗るという表現は流行に乗る、勝ち馬に乗るという意味があります。
この効果は、人間は周りの意見にどのくらい影響されてしまうのかを検証する「アッシュの同調実験」によって実証されています。
被験者と仕掛け人が提示された線と同じ長さの線を選択するテストです。実験の結果、被験者は周りの選択に同調してしまい、明らかに間違った選択肢であっても選ぶ確率が高まりました。
バンドワゴン効果をビジネスに取り入れると店舗イメージや集客力の改善を期待できます。
たとえば、「当店一番人気!」や「テレビで取り上げられました!」など人気なメニューを情報発信したり、実際に売れた数字を表記したりします。多くの人が購入している情報を追加することでハンドワゴン効果によって、顧客は興味を持ちやすくなります。
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6. ピーク・エンドの法則:印象づけとタイミングの関係
ピーク・エンドの法則とは、ピーク時と最後に起こった出来事が全体の印象になる心理現象のことです。ピークとは最も感情が動いた瞬間で、エンドとは最後の瞬間のことを指します。たとえば、映画を観終わった後に、ほとんどの人は面白かったシーンや最後のシーンが頭に残り、感情が動いたシーンが最終的な印象や評価につながります。
飲食店のようなサービスや気遣いが必要な職種がピークエンド効果を取り入れると、ちょっとした心遣いが顧客満足度に大きく影響し、リピーターになる可能性が高まります。
顧客が帰る際に丁寧に挨拶したり、天気が悪い日であれば「気をつけておかえりなさいませ」と一言添えるだけでもエンドの印象は大きく違います。
ピーク・エンドの法則は、基本的には仕入れや店内レイアウトを変更する必要はなく、接客の心がけのみで得られる効果です。すぐに取り入れられる手法なので、今日から接客態度を改善し、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
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7. ブーメラン効果:顧客に合わせた接客の重要性
ブーメラン効果は、営業や接客において、売りたい商品についてあまりに熱心に伝えることで、結果顧客の契約や購買など当初目的としていたゴールとは正反対の結果に終わってしまう現象を指します。自分からの働きかけが、ブーメランの飛行軌道のように自分に返り、ネガティブな結果を受け止める様子から名付けられています。
たとえば旅行先のお土産屋で、店員があまりに熱心に商品をおすすめしてくると、どんどん買う気がなくなることがあるでしょう。
飲食店から顧客に対するおすすめも同じです。顧客の要望を汲み取りつつ、受け入れられるトーンでおすすめを提案するスキルが重要になります。
8. ウィンザー効果:第三者からの情報のほうが信頼される
ウィンザー効果は、当事者からの情報よりも第三者からの情報を信頼する心理現象です。
消費者にとって、口コミなどの第三者の意見は客観的評価を知れる指標と感じられ、購買を決断する際の重要な参考情報の一つです。店舗のセールスポイントを伝える際にも、第三者がどのように評価しているかを含めることで、より強い印象を与えることができるでしょう。
ウィンザー効果を飲食店の集客に活かすには、たとえば口コミサイトであれば、複数の顧客の声が掲載されていて、なおかつその意見が心からのものであると伝わることが重要です。自作自演のように感じられてしまう場合には、たとえ第三者の意見を紹介していたとしても、サービスや商品についてポジティブに受け止めてもらえません。
自作自演のように感じられてしまう状況の一つに、口コミサイトにポジティブな口コミばかりが評価として残っているという場合があります。店舗にとって都合の悪い口コミだからといって、削除することは必ずしも得策ではありません。
口コミが書き込めるプラットフォームには、店舗の都合で口コミを消去できないものもあります。このような場合でも、口コミで寄せられた不満に正面から謝罪する、あるいは改善策を提案すれば、口コミをチェックする消費者に好印象を与えられるでしょう。
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aurant-2">行動経済学で飲食店の集客に新たな戦略を
行動経済学の理論では、顧客の意思決定において、決断を後押ししたり、あるいは店舗側が望む選択肢を手に取るように調整したりするためのヒントが説かれています。行動経済学は人間の非合理的な判断について扱ったものも少なくありません。もし現在の集客や接客で課題が解決されていないのならば、こうした理論に基づいた取り組みを採用してみることが打開策となるかもしれません。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
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→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
<参照>
NIKKEI STYLE:「選択肢が多すぎると選べない」は間違いだった?
立命館大学:心理学×経済学?昨今注目されている行動経済学とは
集客・接客に役立つ行動経済学をわかりやすく解説!リンク集
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