新型コロナウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が発令されている中、7月23日に東京オリンピックの開会式が行われました。
開催前からオリンピック開催による感染拡大が不安視されており、7月29日に東京都の新規感染者数は3,865人とこれまでで最大となるなど、感染者数は全国で増えています。また、オリンピック開催で気が緩み、自粛疲れもあいまって外出者数が増える、飲食店の来店者が増えるなどの影響があるのではないかともいわれています。
しかし今回の感染拡大は、本当にオリンピック開催が原因なのでしょうか。7月に入ってからの人流の増減率など、実際のデータとともに考察していきます。
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オリンピックによる感染拡大が不安視されている
7月21日から一部競技が始まり、7月23日に開会式が行われた東京オリンピックは、開催前からさまざまな媒体で新型コロナウイルスの感染拡大が不安視されていました。
市場調査やマーケティングリサーチを行うゼネラルリサーチ株式会社は5月31日、全国の20代から60代男女1,023人を対象に実施した「新しいオリンピック様式」についての調査結果を発表しています。
それによると「東京オリンピックの開催について不安視していること」という設問では、1位が「コロナ変異ウイルスのまん延」、2位が「新型コロナウイルス患者の急増による医療崩壊」、3位が「新型コロナウイルスによる死亡者の増加」という結果が出ています。
また、朝日新聞社が6月19日、20日に行った電話世論調査でも、「東京オリンピック開催で新型コロナウイルスの感染拡大に不安を感じるか」という設問には、全体の83%が「不安を感じる」と回答しています。
これらの調査から、オリンピックの開催による新型コロナウイルス感染拡大を不安視する人が多いことがわかります。
「オリンピック=感染拡大の原因」とは言いきれない?3つの事実を解説
もちろんオリンピック開催に伴う「気の緩み」なども考えられますが、すべてがオリンピックを原因としているとは言い切れない部分もあります。ここでは過去や現在のデータから考察します。
事実1. 感染者数は「2週間前の動き」を投影したもの
東京都の新規感染者数は7月29日に3,865人となり、過去最多の人数となりました。全国でも新規感染者が1万110人となり、新型コロナウイルスの感染拡大が加速していることは間違いありません。
しかし、新型コロナウイルスには1日から最大14日程度の潜伏期間があるため、感染者数は2週間前の動きを投影したものであるとされ、新型コロナウイルス感染拡大初期の段階から指標とされてきました。
したがって7月27日以降に感染者数が急増しているのは、7月23日からのオリンピック開催によって気が緩んだ結果などではなく、その前段階から感染拡大が進んでいたのではないかと考えられるのです。
事実2. 過去のスポーツイベントでは人流が減少する傾向にある
感染者数は「2週間前の動き」を投影したものであるため、今現在の感染拡大はオリンピック以前の動きを表したものであるといえます。しかしオリンピックにより人流が増え、開会式後2週間の時点でさらに感染者数が増大するという懸念はないのでしょうか。
実はこれまでに開催されてきた国際的なスポーツイベントでは、開催されると人流が減り、飲食店や小売店などの売り上げが減少しているという数字があります。
日本フードサービス協会の市場動向調査によると、東京オリンピックと同様に日本が開催国となった日韓ワールドカップが開催された2002年6月、飲食業態の全体売り上げが前年同月比で93.9%、パブ・居酒屋全体での売り上げは前年同月比90.0%、客数は88.9%と大きく減少し、概況として「サッカーワールドカップの影響でファミリーレストラン、パブ・居酒屋、ディナーレストランが苦戦」と評されています。
また、前回のリオオリンピックが開催された2016年8月の飲食業態の全体売り上げは98.3%となり、9か月ぶりに前年を下回りました。
パブ、居酒屋全体での売り上げは98.8%で、居酒屋業態では85.5%となり、概況では「リオのオリンピックや立て続けに発生した台風などが客足を鈍らせた」と評されています。
このように、過去のデータでは大きなスポーツイベントが開催されると、自宅でのテレビ観戦のために飲食店への客足が減少する傾向があるようです。
今回の東京オリンピックは無観客開催で、予定されていた大規模ライブビューイングなども中止となり、競技場での観戦客の「密」や人流の増加も抑えられています。
これらのことから、オリンピック開催により人流が増えたとはいえない、と予想できます。
では、次節で実際のデータを検証していきます。
事実3. 実際に人流は増えているのか?データをグラフ化して検証
内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策サイトで公開されている「全国主要駅・繁華街エリアにおける人流の動向」データから、競技会場に比較的近い「原宿駅」、選手村に比較的近い「品川駅」、代表的な繁華街である「渋谷センター街」の3か所における7月1日から7月28日までの21時台の人流増減をグラフ化しました。
緊急事態宣言前の7月1日時点の人流増減率* を100として、そこから何ポイント動いたかを示しています。
* 対感染拡大前比。渋谷センター街:-65.9%、原宿駅:-35.5%、品川駅:-57.3%
オリンピックをきっかけとして人流が増えたのであれば、7月23日以降のグラフが大きく伸びるはずです。
このグラフを見ると、オリンピックの開会式が行われた7月23日に渋谷センター街の人流は一度増えたものの、1.1倍程度の上昇にとどまっています。これは人流が増加しやすい連休初日であることを考慮すると、そこまで大きな伸びではないと言えます。
そして7月25日以降は、7月1日の人流を下回っています。
また、国立競技場に近い原宿駅・選手村に近い品川駅の人流は7月22日以降、7月1日の人流を超えていません。
オリンピックの開催にあたって、スタッフや選手の人流が一定程度上がったのも事実でしょう。しかし、上記で見たとおり、明らかな人流増加はデータからは見えないようです。
一方で、オリンピック参加者が密かに観光するなど、「バブル」が弾けている箇所があるとの指摘もでてきています。
事実1で確認した通り、これから2週間後にかけての感染者数については注視が必要でしょう。
オリンピック期間中も行われている飲食店に対する規制は、本当に効果があるのか?
7月後半になって感染が拡大する中で、主に取られている対策は飲食店などへの時短要請や酒類提供停止です。
しかし、過去に編集部が新型コロナウイルス感染者数の推移データと飲食店への時短要請期間とを合わせて検証したところ、飲食店への時短営業などの規制は必ずしも感染拡大抑制に大きな効果があるとはいえないのではないかという疑問の余地が残りました。
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時短要請が無意味かもしれない理由
また、飲食店への時短要請が行われた新型コロナウイルス感染の「第2波」の時期は、飲食店でのクラスターが主な感染拡大要因といわれていたため、飲食店への規制により感染拡大が抑制できていた可能性もあります。
ですが今回の「第5波」はすでに飲食店への規制が行われている中での感染拡大で、本当に飲食店の夜間営業や酒類提供が原因で感染が拡大しているのかは明らかになっていません。
感染拡大の原因が本当にオリンピックに伴う外出者増や飲食店の来店増が原因であるのかを分析するとともに、「感染拡大抑止=飲食店規制」として継続してきた施策を、今一度見直す必要があるのではないでしょうか。
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<参照>
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朝日新聞:五輪「無観客で」53% 内閣支持34% 朝日世論調査
ITmedia ビジネスオンライン:オリンピックで「人流」は増加するのか 見落とされている過去の“事実”
日本フードサービス協会:2002年6月市場動向調査
日本フードサービス協会:データからみる外食産業 [2016年8月]概況
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