首都圏の非常事態宣言は2021年3月21日にようやく解除されましたが、変異種の流行の拡大に伴い、早くも第4波に対する懸念が高まっています。
特に関西での流行拡大が顕著で、2021年4月5日からは大阪を中心に「まん延防止等重点措置」が施行されました。
しかし一部では感染レベル1を維持している地域もあり、Go to トラベルに代わる独自の施策を導入し、観光業の回復を支援しています。
本記事では、2021年3月の宿泊業界の動向についてまとめます。
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3月の宿泊業界
2021年3月の宿泊業界は、首都圏の緊急事態宣言解除が3月下旬にずれ込んだこと、さらに関西圏で第4波が懸念される規模の新型コロナウイルスの流行の拡大などがあり、相変わらず厳しい状況が続きました。
ここでは、宿泊業界全体の最新の動向を紹介します。
観光庁、「地域観光事業支援」の実施を発表。1人1泊あたり5,000円を上限に、都道府県へ補助金交付
2021年3月26日、観光庁から新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いている都道府県に対し、県内旅行の割引事業を財政的に支援する「地域観光事業支援」が発表されました。予算規模は3,000億円です。
これは政府のコロナ対策分科会が示した感染状況を示す4つのステージにおいて、「ステージ2」以下に感染が抑えられていると判断される都道府県の住民が、居住地と同一県内の旅行をする場合に適用されます。
具体的な支援内容や制度設計は各都道府県に委ねられていますが、国からは1人1泊あたり5,000円を上限に補助金が交付されるもので、実施期間は宿泊の場合で4月1日から当面6月1日チェックアウト分までとなっています。
※地域の土産物店など幅広い産業に併せて支援策を行う場合には、1人泊当たり2,000円を上限に追加施策あり
こうした国の補助により、財政が厳しい地方自治体でも観光割引事業を行うことが可能になります。Go To Travelキャンペーンが停止された状態の今、少しでも観光業の回復につながると期待が集まります。
関連記事
観光庁、県内旅行1人1泊5,000円まで補助 感染状況落ち着いている都道府県が対象
各都道府県で地域限定の旅行割引
一方、宿泊業界の回復の起爆剤として期待が寄せられるGo To Travelキャンペーンですが、2021年3月19日に行われた赤羽一嘉国土交通大臣の閣議後記者会見の中で、「再開は当面難しい」との見解が示されました。
そこで比較的感染が抑えられている地域では、自治体独自の取り組みが行われています。
たとえば鳥取県と島根県では、「お得に泊まって応援!鳥取市宿泊キャンペーンⅡ」の取り組みを行っています。
これは鳥取および島根県民が鳥取市の対象宿泊施設(34店)を利用すると割引を受けられるもので、宿泊に関しては1人あたり宿泊価格の1/2(上限額3,000円、現地支払いのみに適用)の割引が適用されます。
実施期間は2021年3月1日~2022年1月31日です。
他にも北海道、秋田県、山形県、群馬県、新潟県、石川県、福井県、静岡県、和歌山県(検討中)、兵庫県、岡山県、山口県、徳島県、香川県、高知県、福岡県、大分県、熊本県、鹿児島県、沖縄県が都道府県単位での旅行割引・クーポン配布などのキャンペーンを行っています。
なお、市町村単位で支援を実施しているところもあるようです。
※4月6日時点の情報です。
企業動向…2月に引き続き長期滞在プランが登場
宿泊業界では先月に引き続き、高級ホテルを中心に「長期滞在プラン」が続々と登場しています。テレワークや、コロナ禍で支出が減ったことに起因する「プチ贅沢ニーズ」など、新たな需要を捉えようとするものです。
たとえば東京都品川区「東京マリオットホテル」の「30 Days Staycation(サーティ デイズ ステイケーション)」では、快適なリモートワークを提供する観点からインターネット環境の整備に加えて大きめのデスクを準備しています。
さらに仕事帰りや仕事の前に利用する人向けに、ホテル内のフィットネスルームの利用、ホテルレストランでの朝食、さらには1台分の駐車場の無料提供といったサービスが提供されます。
料金は30泊で1名435,600円(2名利用の場合は592,900円)、予約受付は5月31日までで、宿泊期間は6月30日までとなっています。
また多くの長期宿泊プランが30泊単位であるのに対し、7・15・30泊と3種類の滞在期間が選択可能なのが「京都東急ホテル」が提供する長期滞在向け宿泊プラン「LONG STAY ~KYOTO TOKYU HOTEL~」です。
このプランでは滞在日数に加えて部屋タイプもスーペリア・コンセプト・プレミアムの3つのタイプから選択可能になっており、7泊でスーペリアを選択した場合の宿泊料金は49,000円で1泊当たり7,000円ですが、30泊31日の場合は15万円で1泊あたり5,000円と、宿泊日数が増えるほど割安で利用できる価格設定になっています。
そして、阪急阪神ホテルズが運営する「第一ホテル東京」「第一ホテルアネックス」でも長期滞在プラン「DAI-ICHI HOTEL STAY」が実施されています。
施設内のプールやフィットネスを無料で利用でき、さらに予約時に要望されれば電子レンジを客室内に設置します。さらに追加で1人あたり月6万円を支払えば、食事などのルームサービスも付けられるということです。
料金は5連泊で7万円〜、30連泊では30万円〜となります。
3月の主な宿泊業倒産情報
ここでは、3月の主な宿泊業倒産情報を紹介します。
3月11日、ビジネスホテル「ホテルビスタ」の運営会社「ビスタホテルマネジメント」が、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。新型コロナウイルスの影響によりホテルの稼働率が低下した状況において緊急事態宣言が発令され、さらに資金繰りが悪化したことが主な原因となっており、負債総額は37億円です。
そして町家ホテルを運営する「レアル」は、京都府内で16件目となる新型コロナ関連の企業倒産(負債総額1千万円以上)となりました。負債総額は18億円で、京都府のコロナ関連倒産の中でも最大の負債金額となっています。
さらに3月10日付で、ホテル運営の「株式会社フェリーチェ」が大阪地方裁判所より破産手続の開始決定を受けました。 同社は「FELICE(フェリーチェ)」「イチホテル」のブランド名でホテルだけではなく併設の飲食店運営を手掛けており、北海道、東京、大阪、福岡、沖縄など全11ホテル(2018年12月時点)を展開していました。
同社の場合、インバウンド需要の取り込みで順調に業績を伸ばしていたところ、新型コロナウイルスに先立ち日韓の関係悪化による韓国人観光客の減少を要因とし、すでに2019年12月期に営業利益ベースで赤字に転落していました。そこで事業縮小に方向転換を始めた矢先の新型コロナウイルスの流行で、完全に体力を奪われる形になったといいます。
負債総額は約36億7000万円で、同社の倒産は沖縄県内のコロナ関連倒産としては11件目ですが、負債総額が10億円を超える大型倒産は同社が初ということです。
3月に発表された宿泊業関連のデータ紹介
ここからは、2021年3月に観光庁や各企業から発表された、宿泊業界にまつわる各種データについて紹介します。
観光庁が「宿泊旅行統計調査」2月第1次速報発表
観光庁が毎月発表している「宿泊旅行統計調査」の令和3年2月分第1次速報が、このほど発表されました。
2021年2月の延べ宿泊者数は1785万人泊(前年同月比52.3%減)で、まだ新型コロナウイルスによる影響を強く受ける以前であった昨年2月と比較すると大幅に減少しているものの、前月との比較では少し上向きをみせる結果となりました。
このうち、日本人の延べ宿泊者数は1761万人泊(46%減)で、1月の減少幅(49.7%減)からは3.7ポイント回復しました。
一方で国際的に人々の往来の禁止が続く状況ではインバウンド需要の回復は厳しく、2月の外国人延べ宿泊者数は95%減の24万人泊に留まっています。
そして2月の客室稼働率は26.9%で、この数字も前月(23.4%)からは3.5ポイント回復しました。新型コロナウイルスの影響が続く現状では、やはりレジャー需要に回復の見込みがみられず、客室稼働率においても旅館は前年同月比で15.9%、リゾートホテルは17%と、数字にもその影響が強く表れています。
JCB、ナウキャストが「JCB消費NOW」による2021年2月の消費動向を発表
JCBとナウキャストが、消費動向指数「JCB消費NOW」を用いた2月分の消費動向速報を発表しました。
首都圏など大都市では緊急事態宣言下であったものの、少しずつ人出は増加していました。その影響もあってか外出型消費に改善傾向が見られ、特に「旅行」が前年同期比-47.1%と、前月より21.5ポイント改善しました。「宿泊」にも同様の傾向がみられ、前年同月比-40.2%であるものの、前月からは回復がみられます。
ただし前年の2月は一部ですでに新型コロナウイルスの影響で「旅行」が減少し始めていた時期であるため、前年同月比で計測しているJCB消費NOWは上振れする傾向にあり、前月比では回復していないのではないかとの指摘もなされています。
博報堂が「来月の消費予報・4月」を発表
博報堂生活総合研究所が、1,500名を対象に毎月行っている消費の先行きに関する調査「来月の消費予報」の2021年4月分を発表しました。
それによると2021年4月の消費意欲指数は全体で47.7点で、前月比+1.2pt、前年比でも+2.4ptと、ともに増加しています。
特に買いたいモノ・利用したいサービスに関する質問に対して「旅行」と回答した人は、男女合わせた全体で前月比プラス30人、前年比でもプラス39人と大幅に数字を伸ばしており、安全に旅行できる環境さえ整えば旅行をしたいと考えている潜在的人数の多さを改めて示す結果となりました。
先述の通り、観光庁による地方自治体の旅行割引支援事業「地域観光事業支援」が導入されるなどの新たな追い風もあり、感染が抑えられている地域ではマイクロツーリズム需要の回復が期待されます。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
そこで口コミラボでは、MEO・口コミマーケティングに役立つ最新ニュースをまとめた「Googleマップ・MEO最新情報まとめ」を毎月発行しています。
本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
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<参考>
観光庁:地域観光事業支援について
鳥取県:【鳥取・島根県民限定】#WeLove山陰キャンペーン
MARRIOTT TOKYO:30連泊長期滞在型宿泊プラン 30 Days Staycation
京都東急ホテル:LONG STAY〜KYOTO TOKYU HOTEL〜
阪急阪神第一ホテルグループ:DAI-ICHI HOTEL STAY
日本経済新聞:阪急阪神ホテルズ、第一ホテル東京などで長期滞在プラン
帝国データバンク:倒産速報 株式会社ビスタホテルマネジメント
東京商工リサーチ:大型倒産速報 (株)レアル
ーー「ホテルストーク」「ホテルリリーフなんば」などを経営する(株)フェリーチェが破産、新型コロナ感染拡大の影響を受けて利用者が激減
観光庁:宿泊旅行統計調査
PR TIMES: 2021年2月の国内消費動向指数、「旅行」「娯楽」「外食」「百貨店」といった外出型消費が改善
博報堂生活総研:[来月の消費予報・2021年3月](消費意欲指数)