オムニコマースは、インターネットを介してさまざまな窓口で買い物ができる販売スタイルです。
新型コロナウイルスの影響でオンラインショッピングが増えたことから、楽天の「RMP」を含めオムニコマースを取り入れる企業が増えており、野村総合研究所は2026年にオムニコマース全体の市場規模は80兆円に上ると予想しています。
本稿では、小売業などBtoCに従事する人は知っておきたいオムニコマースについて解説します。
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オムニコマースとは?あらゆる購買窓口を顧客に提供
オムニコマースの意味や注目されたきっかけ、マルチチャネルやユニファイドコマースとの違いについて解説します。
オムニコマースとは?
オムニコマースは、一般消費者がオンライン上の情報を閲覧し、オンラインまたは実店舗のどちらで購入するか選べる販売スタイルです。インターネットを利用した、あらゆる消費活動がオムニコマースに含まれます。
オムニコマースは「オムニチャネル・コマース」の略称で、「オムニ」は「あらゆる」という意味があることから、複数のチャネルで顧客と接点を持ちつつも最終的な購買経路は消費者が自由に選べます。
消費者にとっては商品を買う場所が選べるため、行動やニーズに合わせて場所の変更が可能です。
オムニコマースの特徴として、事業主が保有するすべてのショッピングチャネルが連携しているという点があります。消費者が深夜オンラインで商品購入を予約し、週末に実店舗を訪れ、商品のオーダー番号を伝えてその場で支払いや受け取りを完了する、といったことが可能になります。
また顧客が店頭で購入した商品を履歴として登録し、好みを把握してダイレクトメールを送付するといったことも可能になります。
オムニコマースは消費者の利便性が向上することから、小売事業者を中心に広く活用されています。
オムニコマースが注目され始めたきっかけ
オムニチャネルをはじめて使いだしたのはアメリカの大手百貨店「Macy’s(メイシーズ)」です。アメリカで百貨店の業態が時代遅れだと指摘される中、顧客とのつながりを深めるためにオムニチャネル戦略を2011年に打ち出しました。
実店舗とECサイトの顧客や在庫情報を一元管理するためのシステムを構築し、接客中の在庫確認や商品調達オペレーションに改善を重ね、実店舗やモバイル、店舗キヨスク、インターネットといった複数チャネルでショッピングを楽しめる環境を整備しました。
その結果、オンラインでの売り上げが2011年で前年比40%増加、2021年は51%増加を達成し、オムニチャネル化がアメリカだけでなく世界で注目されるようになりました。
マルチチャネルとの違いは?
マルチチャネルとは、さまざまな販売経路や集客媒体を活用し、顧客接点を増加させます。例えば、ターゲット属性に合わせて店頭販売、テレビショッピング、ECといった複数の方法を使います。
オムニコマースも複数のチャネルを活用しますが、それぞれのチャネルが連携している点が特徴です。一方、マルチチャネルは個々で独立していて、小売事業者がターゲットに応じて販売チャネルを変える点が、オムニコマースとの大きな違いです。
ユニファイドコマースとの違いは?
ユニファイドコマースは、複数のチャネルを連携させるオムニチャネルを構築したうえで、ユーザー体験の向上を目的とした取り組みです。
実店舗やECサイトといったさまざまなチャネルから顧客情報を取得し、ユーザーの好みや傾向に合わせてパーソナライズするために顧客データを活用します。
オムニチャネルは顧客のシームレスな購買体験にフォーカスされていますが、ユニファイドコマースではシームレスな購買体験にプラスしてユーザー体験を向上する点が異なります。
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オムニコマースが支持される理由
オムニコマースが支持される理由を2点解説します。
1. 多様化するユーザーのニーズを満たす
ユーザーの購買行動は多様化しており、オムニコマースでは実店舗やECサイトなど場所やツールを問わず買い物ができるという点が大きなメリットです。
ユーザー接点が増えるため、購入の利便性が高まります。
2. 顧客データが蓄積される
オムニコマースは何らかの形でインターネットを経由しているため、ターゲットの属性や位置情報、購入履歴といったデータが蓄積されます。
例えば位置情報データが蓄積されれば、顧客がいつ来店しどれくらい滞在したか把握できるようになるため、今後のキャンペーンなどマーケティング施策に活用できます。
オムニコマースの事例
オムニコマースは今や、プラットフォーマー、小売ブランド、商業施設、アパレルといったさまざまな業種や業態に広がっています。
ここではオムニコマースの実例を3点解説します。
事例1. 楽天「RMP - Omni Commerce」
楽天には2021年3月現在で1億以上もの楽天IDがあり、点在したオンラインとオフラインのデータを連携しより深く顧客を理解する取り組みを強化しています。
その一環としてオムニコマースの仕組みを構築し、集めたデータをPRや販促、顧客育成に活用する「RMP- Omni Commerce」サービスを2019年より始めました。
RMPを活用し、顧客それぞれに最適化されたポイントやクーポン配信を実施するなど、さまざまなサービスを提供しています。
事例2. 無印良品「MUJI passport」
無印良品はスマホ対応のオムニチャネルアプリ「MUJI passport」をユーザーに提供しています。同アプリを使うと、在庫検索やクーポン獲得ができるほか、マイルが貯まる仕組みを構築しています。
この「MUJIマイルサービス」では商品を購入してマイルが貯まるのはもちろんのこと、実店舗へ来店しただけでも貯められるので、ポイントやクーポンに還元でき次の購買活動につなげられます。
事例3. 渋谷PARCO「PARCOCUBE」
初めてオープンした1973年以来、人気スポットになった「渋谷PARCO」では、リアルとインターネットをシームレスにつなぐオムチャネルの要素を加えた未来型のショッピングフロア「PARCO CUBE」を開設しました。
各ショップには大きなモニターが設置されており、画面に映し出される商品から気になるものをタッチすれば、詳細を確認できます。
画面上の商品と一緒に表示されているQRコードをスマホで読み取ると、スマホからECサイト「PARCO ONLINE STORE」の商品ページにアクセスできます。このように、店頭で気になった商品からスムーズにオンラインのショップにアクセスし、購入完了できます。
オムニコマースで顧客データ取得・顧客体験価値向上
オムニコマースではあらゆるチャネルから顧客データを取得できるため、分析してマーケティングや宣伝に活用するとユーザーの利便性や満足度が向上します。その結果、ファンが増えこれからも選ばれ続けるブランドへと成長します。
今後小売業界で生き残っていくために、「実店舗かネットか」を問わずあらゆるチャネルで商品を提供し、ハイテクを商品販売システムに組み込みながら新たな体験価値を生み出す取り組みが重要です。
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