プラスチック新法案、来月4月から施行 脱プラスチックに向けた企業の取り組み事例3選

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消費者庁によると、日本では年間約9,400千トンのプラスチックごみが排出されています。

環境省は、国内におけるプラスチック資源循環を促進する重要性が高まっていると指摘し、プラスチック新法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)を2022年4月1日から施行することを発表しました。

これを受け、各企業ではプラスチック削減や新素材への切り替えといった様々な取り組みが行われています。

本記事では、プラスチック新法の概要と企業の取り組みを3つご紹介します。

プラスチック新法の内容

プラスチック新法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)は2021年6月11日に交付され、2022年4月1日から施行されます。

2020年の容器包装リサイクル法の関連省令改正ではレジ袋有料化が行われましたが、今回の新法はプラスチック製品全般に対し、プラスチック製品の環境配慮設計や廃棄物排出の抑制、資源循環の仕組みづくりなどを目指すものです。従来のリサイクル法に比べ、より多くの企業が取り組む必要があります。

対象となるプラスチック使用製品

「プラスチック使用製品」は、プラスチックが使用されている製品(プラスチック製容器包装を含む)が該当します。

環境省は、商品の販売などに付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品12品と、製品ごとの対象業種を指定しています。

対象製品

対象業種

フォーク、スプーン(レンゲ、先割れスプーン含む)

テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー

各種商品小売業、飲食料品小売業宿泊業

飲食店持ち帰り・配達飲食サービス

ヘアブラシ、くし、かみそり

シャワーキャップ、歯ブラシ

宿泊業

衣類用ハンガー、衣類用カバー

各種商品小売業(無店舗のものを含む)洗濯業

企業の取り組み事例3選

環境省は、今回の取り組みの事業者の役割として、

  1. プラスチック使用製品設計指針に即してプラスチック使用製品を設計すること
  2. プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること
  3. 自ら製造・販売したプラスチック使用製品の自主回収・再資源化を率先して行うこと
  4. 排出事業者としてプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を実施すること

に努めることをあげています。では、実際にどんな取り組みが行われるのか、いま現在行われている各チェーン店や企業の取り組みについて見ていきましょう。

1. ドリンクを蓋なしで提供 スターバックス

スターバックスコーヒージャパン株式会社は2022年春から、カップ、リッド(蓋)、カトラリーなどの使い捨てプラスチックの削減の施策拡大および新素材への切り替えを行うとしています。具体的には以下の4つの取り組みが行われる予定です。

  1. お持ち帰り時に発生する使い捨てカップ削減を目指す「借りて・返して・再利用する」カップ循環プログラムが渋谷エリアのスターバックス9店舗に拡大(4月4日より開始)
  2. 使い捨てカップの更なる削減に向けたアイスビバレッジの店内用グラスでの提供を国内106店舗で試験導入(4月18日より開始)
  3. 使い捨てリッド削減に向けたアイスビバレッジのリッド(蓋)なし提供を国内のスターバックス113店舗で導入(4月18日より開始)
  4. 店内利用時のステンレス製リユーザブルカトラリーとお持ち帰り時の100%植物由来素材のカトラリーを全国店舗で提供(3月末頃から順次切り替え)
▲環境配慮型素材への切替やリユースを促進:スターバックスコーヒージャパン株式会社プレスリリース
▲環境配慮型素材への切替やリユースを促進:スターバックスコーヒージャパン株式会社プレスリリース

2. ペットボトルリサイクル事業強化 ウエルシア・キリン

キリンホールディングス株式会社、キリンビバレッジ株式会社、ウエルシア薬局株式会社は、「ボトルtoボトル」のリサイクルモデルの確立に向け、使用済みペットボトル容器回収の実証実験を2022年6月より埼玉県内のウエルシア約190店舖で順次実施することを発表しました。

「ボトルtoボトル」とは、ペットボトルからペットボトルへ再生されることを指します。 日本では、使用済みペットボトルは回収された後に用途を指定せずに売却されることが多いため、多くが食品トレーや衣類などの他のPET製品に再生されていますが、こうしたペットボトル以外のPET製品は、その後繰り返して再生することは困難とされています。

これに対し、キリングループとウエルシアは、回収した使用済みペットボトルの用途を確実にペットボトルへの再生に活用するリサイクルモデルを確立することでPETボトル資源循環に貢献するという意志を示しています。

本実証実験の流れは以下の通りです。

  1. ウエルシア店頭に回収ボックスを設置し、使用済みペットボトルを回収・分別
  2. 協力会社である株式会社アラインのオンラインシステム上で、店舗ごとの回収ボックスで集められた回収量およびリサイクラーへの搬入量をリアルタイムに可視
  3. ウエルシアの物流拠点へ集められたのち、リサイクラーの遠東石塚グリーンペット株式会社へ搬入
  4. 再生PET原料を製造する工場にて粉砕・洗浄などの工程を経て、ペットボトルの原料として再原料化

キリンビバレッジはリサイクラーに供給した上でこれら一連のリサイクル工程を管理します。

回収・再原料化・商品化までの流れ:キリンホールディングス株式会社プレスリリース
▲回収・再原料化・商品化までの流れ:キリンホールディングス株式会社プレスリリース

今回の埼玉県内での実証実験の結果検証を経て、同エリア内のドラッグチェーン業界に対象を広げ、将来的には業界を問わず活動の規模を拡大させていく方針を示しています。

3. リサイクルで「ポイント」貯める ユニリーバ・東急電鉄

東急電鉄株式会社とユニリーバ・カスタマー・マーケティングジャパン株式会社は、「UMILE(ユーマイル)プログラム」の回収ボックスを田園都市線南町田グランベリーパーク駅において、設置・リサイクルする実証実験を開始することを発表しました。この取り組みは2022年3月28日から開始予定です。

「UMILE(ユーマイル)プログラム」とは、ユニリーバ製品の使用済みプラスチック容器を回収ボックスに入れて「リサイクルしてためる」、またはユニリーバのつめかえ製品を「買ってためる」の2つの方法で「UMILE」というポイントを貯めることができるエコ活プログラムです。2020年11月よりユニリーバ・ジャパンが開始し、今回東急電鉄と連携しました。

以前までは小売店を中心に回収ボックスを設置していましたが、本実証実験で新たに駅に回収ボックスを設置することで、より幅広い方々がさまざまなシーンで気軽にプラスチックをリサイクルできる環境を提供するとしています。

回収ボックスのイメージ:ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社プレスリリース
▲回収ボックスのイメージ:ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社プレスリリース

ホテルのアメニティ有料化に反対意見も

プラスチック削減への動きが見られる一方で、ホテル旅館に置かれているアメニティ類の撤去、有料化に関しては反対意見も出ています。

ホテルアメニティのプラスチック使用製品はヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシといった、法律で具体的に特定プラスチック使用製品として挙げられているもののほかに、シャンプーやリンスなどのミニボトル、綿棒、コットン、ヘアゴムなどにもプラスチックが使用されています。

充実しているホテルアメニティの無償提供がなくなった場合、フロントでチェックインを行う際のアメニティ確認・販売の手間や、知らなかったお客様のクレームまで対応しなければないと、現場からは悲痛な叫びが寄せられています。

このホテルアメニティ有料化問題の2つの対策として、プラスチックを木や竹などの代替品にしていくこと、フロントなどで希望者にだけアメニティを配ることが考えられます。

今回のプラスチック新法においては、実施が容易なものから取り組んだりするなど事業者の対応の仕方は自由とされています。そのため、直ちにプラスチック使用製品を有償提供にしなければならないわけではありません。ただし、プラスチック資源循環に向けた事業者、自治体、消費者の協力は不可欠であるため、新法の趣旨を理解し、それぞれができることに取り組むことが求められています。

<参照>
環境省:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律
スターバックスコーヒージャパン株式会社プレスリリース:カップ、リッド、カトラリーなど使い捨て資材削減を目指す4つの施策を、2022年春に開始および拡大
キリンホールディングス株式会社プレスリリース:ペットボトルのリサイクルに関する実証実験を開始
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社プレスリリース:駅に日用品プラスチック容器(※1)回収ボックスを設置・リサイクルする実証実験を開始

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