近年、欧米を中心に広がりを見せ、経済的視点からも注目を集めているワードの一つに「シェアリングエコノミー」があります。
日本語では「共有経済」とも表現されるシェアリングエコノミーは、個人が保有する遊休資産を、インターネットなどを通じて貸し出すことや、その仲介をするサービスのことを指します。
本記事では、シェアリングエコノミーの中身や、飲食店におけるシェアリングエコノミーの活用事例などを詳しく紹介します。
シェアリングエコノミーとは?
シェアリングエコノミーとは、個人間で不要になった物を売買することや空き部屋を民泊として活用すること、そしてカーシェアといった、モノ、スペース、移動、時間、スキルなどの個人や団体が所有するあらゆる遊休資産を、インターネットをプラットフォームとしてシェア(賃借や売買や提供)していく新しい経済の動きを指します。
ここでは、シェアリングエコノミーのメリットや、現在注目を集めている背景について解説します。
シェアリングエコノミーのメリット
ユーザーがシェアリングエコノミーを活用する最大のメリットの一つに、価格面が挙げられます。企業を介在させず、インターネットを通して個人間で取引することで中間マージンが抑えられるため、従来より低料金でサービスが利用できたり、商品を購入したりすることが可能になるためです。
そしてシェアリングエコノミーは、個人に限らず、企業にとってもメリットがあります。
その一例が「クラウドソーシング」で、これはプロジェクトを回すために、自社の中ではまかなえないフローやスキル、人材が一時的に発生した場合、外部に必要なサービスや人材を求めるものです。必要な時に必要なものだけを調達できるため、無駄なコストを抱え込まずに済みます。
シェアリングエコノミーが注目されている理由
シェアリングエコノミーが注目されている背景には、やはりデバイスの発達が挙げられます。
通信技術の発達によりスマートフォン、タブレット端末などが普及し、個人が場所や時間に縛られず、必要な時に必要なサービスをスマートフォンひとつでいつでも利用できるようになったことが、シェアリングエコノミーの発展の大きな要因となっています。
こうしたデバイスの普及は、ユーザーに限らずシステムの供給側にとってもメリットがあります。従来電話や窓口などいくつもの受付チャンネルがあったものが、インターネット上やスマートフォン向けに絞って提供すればよくなったことでユーザーや情報を管理しやすくなっており、こうした点もシェアリングエコノミーが拡大する要因となっています。
拡大し続けるシェアリングエコノミーの市場規模
一般社団法人シェアリングエコノミー協会の調査によると、2020年度の日本におけるシェアリングエコノミーの市場規模は2兆1004億円となっています。
2020年度は経済全般で新型コロナウイルスの影響が深刻だったこともあり、前回調査予測を下回る結果になりましたが、同協会による予測では、現状のペースで成長した場合には、シェアリングエコノミーの市場規模は2030年には7兆4719億円に、さらに新型コロナウイルスによる影響など、現在シェアリングエコノミーの普及の足かせとなっている要因が解消された場合には、14兆1526億円規模に達する見通しになると発表しています。
<参照>シェアリングエコノミー経済規模は過去最高の2兆円超え。新型コロナウイルスで新たな活用の広がり、SDGsへも貢献。|一般社団法人シェアリングエコノミー協会のプレスリリース
シェアリングエコノミーの5つの領域
シェアリングエコノミーの対象には、あらゆる遊休資産が含まれると上述しましたが、ここではより具体的に、シェアリングエコノミー協会が規定している、シェアリングエコノミーに含まれる5つの領域について紹介していきます。
モノをシェアする
シェアリングエコノミーの中でも、最もわかりやすいのが「モノ」のシェアです。具体的には物々交換やリサイクルなど、自分にとっては不要になったものを、ニーズのある人に流通させることを指します。
このモノのシェアの代表的なビジネスモデルが、「メルカリ」に代表されるフリマアプリで、これらのサービスはまさに、個人が不要なものをインターネットを介してニーズのある人に販売、譲渡するシェアリングエコノミーの典型例です。
移動をシェアする
移動のシェアの代表的な例は、海外のUber(ウーバー)やLyft(リフト)に代表される「ライドシェアサービス」です。これは移動の足として車が必要な人と、その近辺で、個人で車と運転を提供している人をインターネットを介してマッチングさせるサービスです。
そして最近日本でも市場が拡大しているものには、アプリを使って電動アシスト付き自転車をシェアできる「シェアサイクルサービス」などがあります。
お金をシェアする
シェアリングエコノミーの中でも、今後市場の拡大が期待されているのが「お金をシェア」する金融サービスです。
この分野の代表的なサービスが「クラウドファンディングサービス」で、これはビジネスの企画やアイディアを実現したい人がインターネット上で賛同者を募り、金銭的支援の見返りとしてリターンを提供するビジネスモデルです。
これ以外にも、お金を投資したい人と借りたい人をインターネットを介して結びつける「ソーシャルレンディング」も、既存の金融機関では対応できなかった、中小企業や個人向けの融資の新しい形として今後の成長が期待されています。
スキルをシェアする
この分野にはペットシッター、家事代行から、DIY代行やイラストを描くといったスキルの提供まで、多様なサービスが存在しています。
代表的なプラットフォームには「クラウドワークス」や「ココナラ」などがあり、仕事を依頼したいクライアントと、自分のスキルをビジネスとして提供したい個人や組織を結びつけるサービスを提供しています。
空間をシェアする
空間のシェアとは、空いたスペースを「場所の時間貸し」として提供するもので、時間単位で借りられるレンタルオフィスや貸し会議室などがこのサービスに含まれます。
代表的なプラットフォームには、シェアリングエコノミーの火付け役となったといわれる空室を宿泊スペースとして提供する「Airbnb」があるほか、最近では「ecbo cloak(エクボ クローク)」のように、店舗の空きスペースを活用して旅行者のスーツケースといった荷物預かりを行うサービスなども登場しています。
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飲食店がシェアリングエコノミーを活用するには
ここまでシェアリングエコノミーの概要について解説してきましたが、ここからはその内容を踏まえ、飲食店がシェアリングエコノミーを活用するための方法を、実例を交えて紹介していきます。
空間シェア
飲食店における空間シェアの事例として最近注目を集めているのが、「シェアキッチン」です。これはひとつの厨房設備を、複数の人や店舗でシェアしながら料理を提供する施設のことで、コロナ禍において、フードやドリンクのデリバリーサービスの拠点としての利用も増えています。
飲食店にとって、開業のネックとなる大きな要因の一つが、厨房設備にかかる初期費用です。シェアキッチンでは、家賃のほか厨房設備が共有できるので、コストの大幅な削減を実現できます。
さらに最近増えているのが、「二毛作」とも称される、ランチタイムはレストラン、ディナータイムはバーといったように、店舗の構えや設備は全てそのままに、2つの異なる店舗が営業を行うスタイルです。
また、飲食店の場合、ランチタイムとディナータイムの間のいわゆるアイドルタイムは店を閉めているケースが目立ちますが、この時間を活用し、レンタルスペースサービスを行う「Spacee(スペイシー)」などに店舗を貸し出すといった方法も考えられています。
モノシェア
近年、循環型の社会の実現が叫ばれ、飲食業界においてはフードロスが大きな課題となっています。
この問題の解決にもシェアリングエコノミーは活用されており、規格に合わなった食材や、味や品質面では問題がないにもかかわらず、最終的には廃棄せざるを得ない売れ残った商品を、店舗がインターネット上のプラットフォームに出品し、それを消費者がリーズナブルな価格で購入できるフードシェアリングサービス「TABETE」などが注目を集めています。
スキルシェア
飲食業に関連するスキルシェアの代表的な例は、「Uber Eats」に代表されるデリバリーサービスです。
配達員は、いわば移動のデバイスである自転車やオートバイ、そして運転するスキルや時間をシェアして料理の配達を代行するもので、こうしたサービスは一般的に「シェアリングデリバリー」と称されています。
シェアリングデリバリーも新型コロナウイルスの影響下において需要を伸ばしたサービスの一つで、Uber Eats以外にも、フィンランド発祥の Wolt(ウォルト)など、新規企業の進出も目立っています。
飲食店業界もシェアリングエコノミーを活用
新型コロナウイルスによる経済的な打撃を最も受けている業界である飲食業界にとって、シェアリングエコノミーの活用は新たなビジネスチャンスにつながるだけではなく、コストの削減など、経営の立て直しにも有効な手段です。
営業時間外に他店舗に施設貸しをする、デリバリーサービスを導入してデリバリーを強化する、フードロスになる分を売り切ることで利益率を上げるなど、飲食店がシェアリングエコノミーを活用して取り組めることは多いため、自店の現状を正しく分析し、できることから取り組む姿勢が求められます。
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