消費者が商品やサービスの購入を検討する際に、購入が決断ができない理由の一つに「マッチングリスク意識」があります。
マッチングリスク意識とは、購入した商品やサービスが自分に合わないのではないかと考えることや、その考えのことです。
本記事では、マッチングリスク意識について、また消費者のマッチングリスク意識を払拭して実際の購入に踏み切ってもらうための方策について、具体例を交えながら解説します。
マッチングリスク意識とは
商品やサービスのマーケティング手法を決定する際には、ターゲット層となる消費者や消費者に合わせた工夫や、その心理や意識についての理解が求められます。
購入を左右するものの一つがマッチングリスク意識です。
マッチングリスク意識とは、購入した商品やサービスが満足いかなかった場合を考慮することで、消費者が購入を踏みとどまる原因の一つです。
満足いかない要因として、商品やサービスが本当に自分にとって役に立つのか、お金を払って手に入れる価値のあるものなのかどうかといったことを消費者は考えます。
高額な商品ほど大きく影響
マッチングリスク意識は、どんな商品に対しても生じる消費者心理です。100円のお菓子から1,000万円の車まで、価格に関係なく生じるとされています。
特に、これまで購入経験のない商品について、マッチングリスク意識は強くなります。初めて購入するブランドの服、訪れたことのない飲食店など、自らがお金を支払う価値があるかどうかを判断するとき、マッチングリスク意識は消費者の意思決定に強く関与します。
また、購入額が高くなればなるほど大きくなります。100円台の商品を購入することと、何千万円もする車や家を購入することを比べた場合、後者の方が購入後のリスクを避けたいという意識が高まるためです。
購入機会の少ない、高額の商品やサービスを販売する場合には、消費者のマッチングリスク意識を軽減する対策が必要となります。
マッチングリスク意識と関連が深い心理学の効果
消費者のマッチングリスク意識を下げる場合には、ほかの心理学の要素と組み合わせることでより良い効果が期待できます。
関連性が深い心理学の効果に焦点を当て、とることのできる対策について考察します。
1. ザイオンス効果(単純接触効果)
アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱した心理効果に「ザイオンス効果」があります。
単純接触効果とも呼ばれ、商品やサービスだけでなく、あらゆる事物に対し、何度も繰り返して接触することで好感度や評価が高まるという心理効果です。
もともとは興味のない事物や人に対しても、頻繁に目にするようになると対象への警戒心が薄れ、最終的には好感を抱くようになります。
マーケティング施策としては、マスメディアへの広告出稿によりザイオンス効果が期待できます。マスメディア広告は、商品やサービスに対して興味のない消費者の視聴につながり、繰り返し目にしてもらうことで購入の可能性が高まります。
2. 返報性の原理
人は誰かから何かを無償でしてもらった際、それに対して「お返しをしなければならない」と感じます。この心理現象を「返報性の原理」といいます。
たとえば、スーパーマーケットで店員から試食を勧められ試食した場合、その場に店員が立っていることで、人から何かをしてもらったからお返し(商品を購入)しなければという意識が生まれます。
このように、店員から消費者へと人を介して無償の施しを提供することで、返報性の原理により購入される可能性も高まるでしょう。
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3. ウィンザー効果
ウィンザー効果は、当事者からよりも第三者からの意見の方が、信憑性や信頼感が高いと感じる心理効果のことです。
商品やサービスの購入や利用を検討している消費者は、スタッフにおすすめされるよりも、実際に商品やサービスを購入した第三者からの口コミやレビューの方が信頼できると感じます。
マーケティング施策としては、購入者に対してアンケートを実施して結果を公表したり、口コミをサイト上に掲載したりすることでウィンザー効果が期待できます。
ウィンザー効果とは?口コミから信頼の獲得へ・マーケティングへの活用法を紹介
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4. 損失回避の法則・プロスペクト理論・確実性効果
人は往々にして得をするよりも損をしないことを選ぶことが知られています。この心理を「損失回避の法則」といいます。プロスペクト理論はこうした人間の性質が成り立たせている理論です。
プロスペクト理論では、選択の結果で得られる利益と損失を把握している人間が、利益を手にしているかあるいは損失を被っているかという状況に応じて、決断がどのように変わるのかを説明しています。
利益が得られていればリスクを取らず、損失をこうむっている場合にはリスクを取ろうとします。また、損益について人の感じる価値は、客観的価値よりも大きいということもプロスペクト理論では説かれています。
たとえば投資の場合、うまくいっている場合には、人は現状の利益を守るためにリスクの少ない投資を選択します。ところが、損失が大きい場合にはリスクを取ってでも利益を得ようという判断を下します。
確率が高ければより確実に手に入れられるものを選び、確率が低ければ大きな利益が得られるものを選ぶ「確実性効果」もプロスペクト理論の一つです。確実性効果においては、確率は客観的に評価されず、主観的判断によって評価されています。
確実性効果とは?確率への「印象」が選択を左右する/関連する理論やビジネスシーンへの活用
人が複数の選択肢から一つを選ぶ際の判断には、数字や条件といった客観的要素だけではなく、それらから受ける印象や感情といった主観的指標の影響を受けています。ある事象の起こる確率について数字で示された場合、それに対する主観的な印象が判断に影響を与えることを特に「確実性効果」といいます。確実性効果はマーケティング施策にも取り入れられています。本記事では確実性効果について、そして関連する理論や実際の事例について解説します。目次確実性効果とは0%や100%を基準に「主観的な確率」を感じとること確率が高...
マッチングリスク意識を低減させるには?5つのマーケティング施策
ここからは、実際にマッチングリスク意識を和らげるためのマーケティング施策を解説します。
先ほど取り上げた心理学の要素も織り交ぜながら施策に落とし込むことで、売り上げだけでなく、購入をためらう消費者の満足度も向上させられるでしょう。
1. マッチングリスクを低減させる接客の工夫
マッチングリスク意識の高い潜在顧客に対しては、購入を積極的に勧めるような攻めの営業は避けるべきといえます。マッチングリスク意識の高い人は、商品やサービスの良さやメリットを把握したうえで、何か別の不安を抱えているため購入に至れないという場合があります。
接客の際には商品やサービスの良さを強調するのではなく、顧客が何に対して不安を感じているのか、その不安を解消するためにどんな方法があるのかを意識して提案するとよいでしょう。
商品やサービスを購入した後のポジティブな未来を説明してイメージを膨らませることも大切となります。根気強く消費者に向き合う姿勢が求められるでしょう。
2. 返金・返品に対応する
消費者のマッチングリスク意識を和らげるためには、商品やサービスを購入した後のリスクを回避できるという安心感を与えることも有効です。
返金、返品対応を保証すれば、消費者は購入に踏み切りやすくなります。
消費者に自らの判断で購入を決断したという意識が強い場合、返金や返品の請求は多く発生しません。マッチングリスク意識の軽減のためにも、返金・返品保証をつけることはメリットの方が大きいといえるでしょう。
販売店やメーカーにとっては、返金や返品に対応することでクレームに対応する時間も削減できるという場合もあります。
3. サンプルなど無料版の商品、お試し期間を設ける
無料でのお試し期間を設けることで、消費者は購入したあとのメリットを実際に体験でき、結果としてマッチングリスク意識が低減し購入へとつながることがあります。
化粧品やスキンケア用品のサンプル配布、オンラインサービスの無料期間等は、こうした効果を期待した施策です。
また最近では家電などは月数千円の支払いで期間限定でお試しで使用できるレンタルサービスなども提供されています。不要であればレンタルを中止し返還できるので、マッチングリスク意識は購入するよりもかなり小さくなると考えられるでしょう。
4. 商品に対して長期保証をつける
家具や家電など数万円以上の支払いが生じる商品に対しては、長期保証制度がよく見られます。これもマッチングリスク意識を軽減し、購入を後押しすることのできる施策です。
万が一故障した場合にかかる修理代や手間といったコストをリスクととらえる意識を低減する効果があると考えられます。
5. 参考にされる中立的意見
実際に商品やサービスを購入したり利用したりした消費者の声を公開することもマッチングリスク意識の軽減へとつながります。
口コミは商品やサービス購入決断のための判断材料として活用されています。ネットショッピングの際には口コミやレビューを必ずチェックするという人も多く、肯定的な意見と否定的な意見と双方を掲載することで、購入を検討している消費者に信頼感を与えることができます。
口コミマーケティングとは?店選びで重視する情報源1位の「口コミ」を集客に使う方法
具体的には、口コミ投稿のページへ誘導するQRコードを店内に設置し、口コミを収集します。そうすることによって、その収集した内容をもとにサービスの改善につながったり、投稿した口コミは第三者にも見られるため、そのユーザーに対する宣伝機能も担うという効果がもたらされます。
消費者のマッチングリスク意識を払拭する工夫が大切
消費者に商品やサービスの購入を決断してもらうためには、マッチングリスク意識をいかに払拭できるかが非常に大切な要素となります。
マッチングリスク意識を和らげるために活かせる心理現象を知り、実際の販売現場や宣伝に応用すれば、消費者のマッチングリスク意識を効果的に低減することができ、商品の売上げにもつながるでしょう。
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