10月23日、iPhone 12が発売されました。それに先駆け、9月中旬にはiOS 14のアップデートが実施されています。
実は、今回のアップデートでは実施されなかったものの、近々iOSアップデートでプライバシーが強化され、ターゲティング広告の精度が低下するなどの「弊害」が起こる可能性があります。
本記事では、iOSアップデートでプライバシーが強化されると何が起こるのか、詳しく解説していきます。
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iOSでのユーザー行動データを利用する際、ユーザーの許可が必要に
今後、iOSでのユーザー行動をトラッキングする際に活用される「IDFA」を取得する際、ユーザーの許可が必要になります。
IDFAの取得にユーザーの許可が必要になると何が問題なのか、以下で詳しく解説します。
「IDFA」とは
IDFA(Identifier For Advertising)とは、AppleがiOS端末に割り当てている広告識別子(広告用の端末識別ID)のことです。AndroidOS端末の場合は、AAID(Google Advertising ID)が割り振られます。
広告プラットフォームは、これらのIDを利用してユーザーを識別し、個人情報を隠したままユーザー行動をトラッキングします。
取得されたユーザー行動は、ターゲティング広告の配信や、広告キャンペーンへのエンゲージメントの計測などに活用されます。
今後、ユーザーの許可を得ないと「IDFA」を取得できなくなる
Appleは、近々「ユーザーの明確な許可を得なければIDFAを利用できない」仕様にすることを発表しており、その場合IDFA取得前に、その可否をユーザーに選択させるダイアログを表示することが義務付けられます。
言い換えれば、ユーザーがダイアログで「IDFAの利用を許可する」を選択すれば、IDFAをこれまで通り利用できるわけです。
しかし、「〇〇によるトラッキングを許可する」といったよくわからない許可を求められたら、「許可しない」を選択したくなる人が多いのではないでしょうか。
よって、ダイアログの表示が義務化されると、取得できるIDFAはかなり少なくなってしまうと考えられます。
ターゲティング広告の精度が低下し、広告費用が上がる可能性も
ユーザーの許可が得られず、IDFAの情報が取得できなくなると、広告プラットフォームは各ユーザーがどんな情報を求めているのかを判断できません。そのため、広告のターゲット以外にも無差別に配信せざるを得なくなります。
こうしてターゲティングの精度が下がると、広告に興味を持ってクリックする人が減少します。そのためCTR(表示回数に対するクリック率)が低下し、広告を打ってもコンバージョンにつながりにくくなると考えられます。
これにより広告1本あたりで得られる成果が減少してしまうため、以前と同じ広告効果を得るにはより多くの費用をかけなければならなくなってしまいます。
9月のiOSアップデートでは延期、2021年初めから実装へ
当初Appleは9月にリリースしたiOS 14から、IDFA取得の許可を得るダイアログの表示を義務化することを発表していましたが、少なくとも2021年初めまで延期となりました。
これには、AppleがApp Storeにあるゲームアプリ内の購入から、30%の手数料収入を得ているというのが背景としてあるようです。
IDFAの情報が取得できなくなりターゲティング広告の精度が低下すると、ゲームアプリの販促も滞ってしまい、Appleがアプリ内購入から得る手数料も減少します。IDFAに制限を設けることで、自らの首を締めるような形になるわけです。
また、ターゲティング広告の精度が低下することについてFacebookは、同社の主要広告主であるモバイルゲーム会社が打撃を受ける可能性があるため、「iOSとFacebookのツールで収益を上げている開発者やパブリッシャーに深刻な影響を与える可能性」があるとして、Appleに対して警告を発していました。
プライバシー強化を実現したいAppleですが、こうしたニーズを受け、いったんはIDFA取得時のダイアログ表示義務化に猶予を設けたようです。
それでも、IDFAの取得数が減少するおそれがあるという問題は、目前まで迫っているといえます。
今年3月、Safariによる「サードパーティCookie」のブロックでは、解決方法が見出された
今回の「IDFA取得の許可が義務化される」という件で思い出されるのは、2020年3月にSafariで実施されたサードパーティCookieのブロックでしょう。これによりサイトをまたいだユーザー行動のトラッキングができなくなりました。
しかしこの時は、新たなトラッキング方法が見つけ出され、サードパーティCookieを利用しなくてもユーザー行動をトラッキングすることが可能となったようです。以下で詳しく解説します。
SafariでサードパーティCookieがブロック
Cookieとは、ユーザーがWebサイトを閲覧するときに、端末内に自動的に保存される履歴や入力情報などの情報を指します。サードパーティ(ユーザーが閲覧しているWebサイトのことをファーストパーティといい、それ以外の第三者を指す)が発行・管理するCookieを「サードパーティCookie」と呼びます。
サードパーティCookieはユーザーの興味関心に合った広告を配信するために用いられるものですが、ユーザーが訪問したサイトとは関係のない企業が発行するもので、データ利用の不透明性が問題となっています。GoogleやAppleは、ユーザーのプライバシーを強化するため、サードパーティCookieの制限に乗り出しています。
2020年3月24日にアップデートされたSafari 13.1では、サードパーティCookieがブロックされ、サイトをまたいだユーザー行動のトラッキングができなくなりました。
これにより、広告のターゲティング精度が低下したほか、広告のコンバージョンを計測できなくなりました。広告効果が低下する上にその推移を計測できないということで、広告主、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ:企業から広告の提供を受け、アフィリエイト広告として配信する事業者のこと)双方が困惑する事態となりました。
対策は:「ファーストパーティCookie」を利用するプラットフォームでデータ取得
サードパーティCookieのブロックに対する対策として、以下の3つが挙げられます。このうち、広告コンバージョンの計測やターゲティングに関わるのは1、2です。
一方、3はユーザー行動をトラッキングせずにターゲティング広告を配信する仕組みです。
- アドレサブル広告を活用する
- Google アナリティクスをGoogle 広告に連携する
- コンテンツディスカバリー広告を配信する
以下で1つずつ解説していきます。
1. アドレサブル広告を活用する
「アドレサブル広告」とは、広告プラットフォームが持つファーストパーティデータと広告主が持つ顧客データを連携させ、ユーザーを特定して広告を配信する手法を指します。
※SafariでブロックされているのはサードパーティCookieのみであり、広告プラットフォームはユーザーが閲覧しているWebサイトそのもの、つまり「ファーストパーティ」であるため、ファーストパーティCookieを発行してユーザー行動をトラッキングすることが可能となっています。
Facebook広告、Instagram広告、Twitter広告、Google 広告、Yahoo!広告といった大手広告プラットフォームなどで、アドレサブル広告の活用が可能です。
2. Google アナリティクスをGoogle 広告に連携する
Google アナリティクスは、ユーザーのアクセス情報を正確にトラッキングするために、ユーザーがアクセスしているWebサイト自体が発行した「ファーストパーティCookie」を解析のために利用しています。
Google アナリティクスをGoogle 広告に連携することで、ユーザーが広告をクリックしたり閲覧したりした後にサイト内で取った行動を分析できます。
3. コンテンツディスカバリー広告を配信する
「コンテンツディスカバリー広告」とは、あるコンテンツを閲覧し終わったユーザーに対し、関連する広告をレコメンドする手法です。
あくまでコンテンツ自体に関連する別のコンテンツを薦めるものであるため、Cookieで取得するユーザー行動を活用せずとも、ユーザーの興味関心に合わせた広告を配信することが可能となります。
以上、サードパーティCookieのブロックに対する対策を解説しました。
今後IDFAの取得が難しくなる件についても、こういった形で何らかの対策が取られ、ユーザーにとっても広告主にとっても最適な手法が生み出されていくのでしょう。
<参照>
Google ヘルプ:IDFA または AAID を使ってモバイルアプリ広告枠をターゲットに設定する
Google 広告 ヘルプ:Google アナリティクスと Google 広告アカウントをリンクする
Apple Developer Program:User Privacy and Data Use
Engadget:アップル、iOS 14の「トラッキング要求を許可」を延期。大手ゲーム会社に配慮か
INTERNET Watch:ブラウザー「Safari」がプライバシー保護を強化、サードパーティCookieを完全ブロック
エムタメ!:Google、Chromeで2年以内にサードパーティCookieを完全に廃止する計画を発表
Column by Heartlass:Cookie利用制限とは?-Web広告に与える影響や対策をご紹介
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