イノベーター理論とは?市場普及の施策や成功・失敗・応用事例紹介

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マーケティング手法の一つであるイノベーター理論は、様々な業界で新商品プロモーション施策を実施する際に活用されます。

しかしイノベーター理論とはどのようなものなのか、実際にどうやって活用するのかわからない点も多いでしょう。

この記事では、イノベーター理論に基づく顧客分類、および実際に企業・業界を挙げながら同理論の成功・失敗・応用事例について解説します。

イノベーター理論とは

アメリカで提唱されたイノベーター理論において、市場普及の成功可否は「16%」にあるとされています。イノベーター理論の概要、および重視すべきポイントについて解説します。

顧客層を商品購入の早い順から5つの段階で分類

商品がどのように市場に浸透していくかを示すイノベーター理論は、アメリカのスタンフォード大学の社会学者であるM・ロジャース氏により提唱されました。

同理論では、新商品の購入までに至る時間に基づき、顧客を次の5つの段階(セグメント)に分類します。

  • イノベーター(革新者):新商品の「新しさ」に価値をおき、最も早く購買に至る層で全体の2.5%を占め、好奇心旺盛な性格の顧客が多い傾向。
  • アーリーアダプター(初期採用層):新商品の「ベネフィット」を重視し、情報収集の後、イノベーターに次いで購入に至る層。オピニオンリーダーとも呼ばれ、全体の13.5%を占めており、流行に敏感であるとされる。
  • アーリーマジョリティ(前期追随層):購入には比較的慎重であり、安心感を求める層。全体の34.0%を占めていることから、他の消費層への影響力が大きいとされる。
  • レイトマジョリティ(後期追随層):新商品の購入には懐疑的な層。アーリーマジョリティと同じく、全体の34.0%を占めている。
  • ラガード(遅滞層):伝統主義者とも呼ばれるように最も保守的であり、滅多なことで無ければ購入に至らない層。全体の16.0%を占める。

この5つの顧客段階のうち、新商品に対して素早く反応し購入する顧客層は、イノベーターとアーリーアダプターの2つとされ、全体の僅か16%に過ぎません。

しかしながら、新商品に積極的な姿勢を見せるこの2つの顧客段階への普及度合いが、市場全体の84%を占めるアーリーマジョリティ・レイトマジョリティ・ラガードへの商品普及可否の分岐点になるとされています。

中でもアーリーアダプターは、オピニオンリーダーとも呼ばれ、アーリーマジョリティをはじめとした後続する3つの顧客段階の購入選択に大きな影響力を持っているため、特に重要視されています。

キャズム理論とは?

商品の市場普及において大きな影響力を持っている先述の2つの顧客段階と、その他3つの顧客段階との間には、大きな溝(キャズム)があるとされています。

アメリカのマーケティングコンサルタントであるジェフリー・ムーアによるこの発見はキャズム理論として提唱され、ムーア曰く「この16%の溝を超えることができなければ、市場は拡大せず、小規模のまま終わってしまう」と説いています。

このように、イノベーター理論においては普及率16%を超えることが市場拡大の鍵を握っていますが、実際のビジネスの側面では実現が容易ではなく、さまざまな企業・業界がアーリーアダプターの開拓に尽力しています。

例として、マーケティングの自動化により業務効率化を図るツールであるマーケティングオートメーション(MA)業界が挙げられます。

デジタルマーケティングのコンサルティングを手がけるアンダーワークスが2016年8月、日経平均株価を構成する国内大手225社を対象に行った独自調査によると、導入企業は17社に留まっており、導入率にして僅か7.6%であったことが明らかになっています。

この7.6%という数字をイノベーター理論に適用すると、市場における顧客段階としてはアーリーアダプターに該当します。情報感度が高いアーリーアダプターへどのようにアプローチするのか、企業戦略によって明暗が分かれるといっても過言ではないでしょう。

イノベーター理論の成功・失敗・応用事例

イノベーター理論における「新商品」の対象は「モノ」だけに留まらず、サービス全般にも当てはまります。

本項では具体的な市場を例に挙げ、同理論の成功事例・失敗・応用事例について解説します。

コーヒーマシン市場にみる成功事例

企業戦略が功を奏し、商品の市場普及に成功した最も顕著な事例としては、コーヒーブランドのネスカフェが挙げられます。

ネスカフェを展開するネスレ日本は、自宅以外での主なコーヒー消費場所である職場に着目し、自社開発のオリジナルコーヒーマシン「バリスタ」の職場浸透を目指しました。

その際に転機となったのが、同マシン普及プログラムの一環として2012年9月から始まった「ネスカフェ・コーヒーアンバサダー」という制度の活用です。

同制度は、一定条件を満たした「オフィスを代表するアンバサダー」は、自宅と職場の両方に無料で同マシンを設置可能であり、社員はコーヒー代だけ支払えば職場にいながら様々な種類の上質なコーヒーを試すことができる、という内容です。

このユニークなプロモーション施策は、目新しさに加えて、気軽さと実用性を明確に打ち出した顧客側のメリットにより大きな注目を集め、開始から僅か4年で28万人ものアンバサダー誕生につながりました。

アンバサダーは、イノベーター理論におけるアーリーアダプターに該当します。アーリーアダプターの開拓、そして市場普及に成功した好例であるといえるでしょう。

電子書籍端末市場にみる失敗事例

現在、電子書籍といえばKindleやiPadなど海外資本の端末が主流を占めていますが、国内でも端末発売に向けた動きが無かったわけではありません。

1990年代初頭の時点で、すでにSONYとNECがオリジナルの専用端末を発売するなど、商品普及に着手しているものの、著作権のトラブルによる書籍数の伸び悩みや使い勝手の悪さにより、キャズムを突破できず売上が低迷、2000年頃には撤退を余儀なくされています。

アーリーアダプターへの普及には必要不可欠な要素である「ベネフィット」を提供できなかったということが、顕著に表れている事例だといえるでしょう。

日本企業に代わり、市場普及に成功したのはAmazonが2007年に発売開始したKindleです。

豊富なコンテンツと廉価な端末が消費者に受け入れられ、市場拡大の契機を生み出しました。さらにAppleが2010年にiPadを発売したことにより、電子書籍の導入ハードルが一気に下がり、市場拡大に拍車がかかりました。

このように電子書籍で先行した日本勢はキャズムを超えられずに撤退という結果に終わっていますが、後発のアメリカ勢はキャズム突破に成功し、電子書籍文化を根付かせるまでに市場普及を実現しています。

観光市場への応用事例

これまでの日本の観光市場において、旅行者が有する価値観や旅の志向は画一的な側面が強く、性年代やライフステージなどの属性により、購買行動はある程度分類が可能とされてきました。

しかしながら、近年の市場成熟や顧客ニーズの多様化の影響により、属性に変わり個々の価値観が購買行動と強く結びつくようになり、旅行者の定量化による分類が困難となってきています。

そのような中、JTB総合研究所は独自調査に基づき、旅行者を5つのグループ層に分類する「旅ライフセグメント5」を発表しました。

調査は、日本全国に居住する20〜69歳の男女5万6,615名を対象に、旅行やライフスタイルに関わる18の設問へ回答する形で実施され、回答内で見られた代表的な5つの価値観とその重視度により、旅行者をイノベーター理論同じく5つのグループ層に分類しています。

価値観として挙げられたのは、「情報感度の高さ」「人とのつながり重視」「等身大でいたい」「一味違った旅行がしたい」「価格合理性を重視」となっています。これらの価値観への重視度合いによって、旅行者を「高アンテナ」タイプ(5.2%)、「共感」タイプ(24.4%)、「メリハリ消費」タイプ(27.2%)、「体験重視」タイプ(6.6%)、「合理派」タイプ(36.6%)に分類しています。

なお、これらの5分類は、新しさに敏感に反応する「流行」、そして流行に流されずあくまで自己の理想を重んじる「自己納得感」という2つの要素での大別が可能であり、イノベーター理論において新しいものを積極的に導入する「イノベーター」と、保守的かつ伝統を重んじる「ラガード」に相当します。

JTB総合研究所は、この「旅ライフセグメント5」を属性や購買行動と掛け合わせて活用することにより、適切なターゲットへのアプローチが容易になると期待しています。

16%からの跳躍を目指すには

イノベーター理論、そしてキャズム理論に基づき、新商品を広く市場に普及させ第一人者となるには、アーリーアダプターに焦点を当てた施策が有効であるとされています。企業で活用可能な施策の実例について解説します。

市場調査を行う

キャズムを突破し、0からの市場開拓に成功するためには、キャズム以前の初期段階での購入者であるイノベーターとアーリーアダプターを焦点とし、手始めに施策を講じる必要があります。

具体的には、まずは徹底的な市場調査が重要です。

市場は現在どのような状況なのか、そもそも新商品の想定ターゲットは先述の2つの客層に合致しているのかなど、足固めの策として十分に市場分析を重ね、その上で考えらえれる顧客のニーズを満たす自社および自社製品の強みについて、冷静に見極めることが肝要です。

特に、オピニオンリーダーであるアーリーアダプターへの普及は、この商品価値が十分に提示されていることが前提条件となるため、多角的な観点から鑑みる必要性があるでしょう。

顧客段階で異なるニーズを汲み取る

イノベーター理論において分類される5つの顧客段階のうち、ラガードを除く4つの顧客段階では、それぞれ「購買」という消費行動に対する動機が異なっています。

商品への「価値」判断の違いによるものとされており、全顧客を対象とした一律的な施策では効果があまり見込まれないため、それぞれの顧客段階に合わせたプロモーションの実施が有効です。

具体的には、キャズムより前のイノベーターとアーリーアダプターは、それぞれ「新しさ」と「ベネフィットに惹かれ、また3番目のアーリーマジョリティにおいては、一定数のユーザーが新商品を使用し、使い勝手や評判がいいことを確認してから購入に踏み切る傾向ににあるため、「安心感」が重要であるとされています。

さらに、4番目のレイトマジョリティでは、周囲の人間も使っていることを決め手として購買行動に移るため、流行に取り残されているというような「危機感」を喚起させる文言を使うことで、効果的に訴求することが可能となるでしょう。

アーリーマジョリティへはSNS活用が有効

「安心感」が鍵となるアーリーマジョリティを対象に効果的なプロモーションを図るには、SNSの活用が有効であるとされています。

日常の出来事や興味関心、口コミやレビューを投稿・拡散するSNS、特にインスタグラムなどでは大衆心理が働きやすく、「周囲皆が使っている」との認知には十分に効力を発揮します。

また、これらのリアルな意見などは信ぴょう性の高い情報、つまり商品の質を担保する安心材料となるため、アーリーマジョリティの購買ハードルを下げることにつながります。

インフルエンサーといったSNSで大きな影響力を持つ人材へ積極的に協力を依頼し、新商品の口コミを迅速に拡散させることで、アーリーマジョリティへの普及が期待できるでしょう。

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5つの顧客段階に合わせたプロモーション施策を

商品の市場普及を図るには、まずは徹底的に市場を分析してターゲットのニーズを汲み取り、その上で市場におけるイノベーター・アーリーアダプターに刺さるよう、商品価値を明確に打ち出すことが重要です。

その際、16%のキャズムを超えて残り84%へ訴求するには、大きな影響力を握っているアーリーアダプターに主眼を置いた策が鍵を握ります。

ネスカフェの「アンバサダー制度」のように、アーリーアダプター開拓に重点を置いた施策も有効でしょう。

市場全体をターゲットとして捉える「万人ウケ」を狙った施策は、時代遅れとなりつつあります。

今後ますます多様化していく個人のニーズに柔軟に対処し、新規市場の開拓に成功を狙うには、イノベーター理論に基づいた顧客段階に合わせてプロモーション施策を細かく調整していくことが一層求められています。

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