ICTを導入した観光とは?具体的なICT活用方法や導入事例を紹介

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日本政府が社会課題や事業発展のためのICT利活用を推進していますが、業界によってさまざまなメリットがあります。

例えば観光においては、訪日外国人に対し多言語対応がスムーズにできたり、キャッシュレス化の促進で利便性や生産性を向上したりできます。さらにプロジェクションマッピングのような高度なコンテンツの提供も可能となりました。

ICT通信技術を使って生まれるコミュニケーションや産業、サービスを表す総称で、身近なものではSNSやメールも該当します。

今回は、観光分野におけるICTの重要性について、消費者動向を踏まえて解説し、活用方法や事例も紹介します。



観光分野で高まるICT需要

旅行者はどの程度ICTを利用しているのでしょうか。観光業に焦点を当て、その実態を解説します。

旅行者のICT利用実態

観光庁が、国内の20代から40代の男女に対し、旅行中とその前後でICTを活用しているかどうか実態を調査したところ、各シーンで情報収集や情報共有に利用していることがわかりました。

旅行前は、9割以上が旅行の計画などを目的にパソコンや携帯電話を使っており、旅行中は7割以上の人がナビゲーションや観光情報収集を目的とした利用です。

旅行後は約半数の人が、自身の体験をソーシャルメディアなどへ共有するために利用し、大半が20代男女となっています。

観光のAISCEASモデル

AISCEAS(アイセアス)モデルとは、消費者の購買決定プロセスを表すマーケティング理論です。

Acknowledge(知る)、Interest(関心をもつ)、Search(調べる)、Compare(比較する)、Examine(検討する)、Action(行動する)、Share(共有する)の頭文字をとったものです。

これを旅行に当てはめると、旅行前のリサーチ、旅行中のモバイルデバイスでの検索、旅行後の口コミ投稿など、ICTが重要な役割を果たしていることがわかります。

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ICTが観光に重要な理由3つ

ここではICTがなぜ観光にとって重要なのかを解説します。

1. 観光地のプロモーション

ICTサービスは、プロモーションにおいて大きな役割を果たします。

観光地のリアルタイム動画や、魅力スポットに特化した動画をSNSやウェブサイトなどで発信すれば、見込み顧客の来訪意欲を掻き立てることができ、集客に効果が見込めます。

さらに、現地でも、スマートフォンをかざして解説が聞けるサービスがあれば、本を開いたり有人のガイド案内を待つ必要なく、手軽に理解を深められます。コロナ危機以降増加することが期待される訪日観光客に対する多言語サービスも、看板や案内板などの物理的な準備に比べはるかに効率的です。

2. インバウンド対策

インバウンド対策に着目すると、多言語対応以外にも現状さまざまな課題があります。

外国人が抱く課題で、2019年を含め3年連続首位は、ホテル観光施設、商業施設などで、スタッフとうまくコミュニケーションが取れないという問題です。そのほか、現地での情報収集に不可欠なWiFi環境が行きわたっていないなどの不便さが実感としてあるようです。

ネット環境確保のためWi-Fiを整備するのと同時に、通訳サービスや詳細の位置がわかるサービス、現金不要の電子決済サービスの導入などを急速に進める必要があります。

3. コロナ禍での集客

コロナ禍で観光客が減り、現地が閑散としてしまう替わりに注目されているのが、バーチャルツアーなどのオンラインサービスです。ネット環境さえあれば現地を体感できるため安全に参加でき、国内だけでなく海外の人にもアピールできるメリットもあります。

ほかにも、東京ディズニーランドなど大型施設で提供しているような、リアルタイムに混雑状況を把握できるアプリなど、人の集中を避けて楽しめるサービスは重宝されます。

このように、観光にICTを導入することは、コロナ収束後を見据えた集客方法として大きな役割を果たし、さらにコロナ中も観光の楽しみを維持できます。

具体的なICT活用方法5つ

ICTを利用したアイデアはさまざまですが、顧客のターゲット層に合わせて効果的にサービスを提供すると有効です。

1. 観光情報を発信するウェブサイト

観光情報のウェブサイトは旅行前の情報収集に利用されるため、多くの旅行予定者へ現地の魅力を届けられます。

おすすめスポットやモデルルートなど顧客層に合った内容を掲載すれば、現地での楽しみ方の参考になり来訪につながります。

また、パンフレットの発行では必要な印刷費も不要で、リアルタイム性の高い情報を発信できるのもメリットです。この利点を活かし、運営担当者は旬な情報を更新して信頼性を高め、サイト訪問のリピーター増加につなげると良いでしょう。

分析ツールで、サイト内のどの内容に興味を持っているのかなどニーズが把握できます。

2. SNSを活用

日常的に使われるようになってきた各種SNSも、写真や短いテキストで簡単にコンテンツを準備して投稿でき、すぐに始められる対策の1つです。Facebook、Twitter、LINE、TikTokなどが代表的なプラットフォームです。

ウェブサイトと比べ拡散力が高く、共感を得た内容は閲覧者から知人や似たような趣味を持つ人へ自然に広がっていき、少ない稼働で多くの人へアピールできます。

ただし、内容によっては炎上したり悪評が伝搬する可能性もあるため、表現には留意しなくてはなりません。

3. モバイル観光案内サービス

観光客がスマートフォンにアプリをダウンロードし、そこで提供されるコンテンツを観光に役立ててもらうサービスです。沖縄や札幌、東京都墨田区や熊本で実績があります。

リアルタイムに観光情報が得られるように、現在位置に合わせてスポット紹介や飲食店などの広告を出したり、その場で使えるクーポンを配信し顧客の行動を喚起します。

このようなスピード感あるプロモーションは、顧客も敏感に反応し、価値の高い情報として捉えます。そして、行動パターンなどデータを蓄積し、傾向を掴むことで、観光地のサービス向上に役立ちます。

スマートフォンを持ち、アプリのダウンロードや操作に慣れていることが前提となるため、そうではない層をターゲットにしたい場合には導入を慎重に検討すべきでしょう。

4. キャッシュレス決済の導入

海外でのキャッシュレス決済の普及率は非常に高いです。日本でもここ数年で、普及率は高まっていますが、未だアメリカや中国ほど普及していません。キャッシュレス決済は、通貨の異なる訪日外国人にとってとても便利なため、未導入の場合、機会損失につながる可能性があります。

両替要らずで決済できるほか、現金授受が発生しないため衛生面で安心な点や、レジ業務が効率化できる点など、事業者側にとってもトが多くあります。

ただし、スキミングのリスクもあるため、個人情報の扱いなどセキュリティ対策も必要です。

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5. Wi-Fi環境の整備

日本を訪れる外国人観光客の9割はスマートフォンを携帯しています。無料でインターネット接続できるWi-Fi設備がない場合にはストレスに感じるでしょう。

Wi-Fiの恩恵で、集客や長く滞在する可能性が高まるなどの効果が期待できますが、地域により提供事業者が異なったり、手続きの手間などが発生します。

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観光のICT導入、日本国内の事例2つ

日本の観光名所でもICTを駆使し、コロナ禍の苦境においても顧客の関心を集めている事例を紹介します。

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事例1. VRを使った湯めぐり映像を発信(群馬県草津温泉)

温泉地として有名な草津では、コロナの影響を受け、地域の経営者が有志で湯めぐりのバーチャルツアーを作成し、2020年6月にYouTubeで動画配信を行いました。

魅力的なのは、VR用ゴーグルを装着して自宅のお風呂に入ると、草津温泉の映像とともに風や温泉が注がれる音など聴覚でも楽しめるBGMが流れ、草津温泉の風景が思い浮かぶようなリアル体験を味わえる点です。

有馬温泉でも、同じく2020年4月からVRを利用した動画を配信し、特に海外視聴者から反響がありました。今後の集客にも期待できる事例です。

<参照>JR Iレビュー 2020 Vol.11, No.83

事例2. 城跡と過去の姿を見る

日本各地の城跡は、日本国内外で観光地として人気を博しています。こうした日本を代表する観光コンテンツである城跡では、城郭そのものだけでなく、VRARで当時の姿を体感してもらう観光コンテンツが各城跡で展開されています。

2016年には、東日本大震災の被災地である東北で、震災前の様子をスマートグラスに映し出し、現在の町並みと比べながら現地を体験する試みがありました。

現在と過去の様子をその場でリアルに比較する観光体験は、通信技術の向上により実現したといえるでしょう。

<参照>普及する城系(!)VR・ARアプリ

ICTの導入で国内外に観光地の魅力をアピール

コロナは観光業界に大きな打撃を与えました。しかし、これをきっかけにさまざまな企業や自治体が動き、ICTを本格活用した新たな観光の価値を生み出しています。

現地で五感を使った体験は何物にも代えがたいですが、これまで課題だった不便さや顧客数の限界などをICTは解決してくれます。現状をポジティブに捉え、顧客目線のサービスを一から考える貴重な機会とすることで、新たな市場開拓にもつながるでしょう。

<参照>観光庁 観光地域振興課:ICT活用による観光振興サービスガイド

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