新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や休業要請などで、観光地や旅館を訪れる人は激減しました。
また2019年秋より施行された消費税増税による個人消費落ち込みの影響も大きく、苦境に立たされている旅館をはじめとした事業者への対策として、政府は国税の納税猶予、および消費税課税に関する事業者の立場変更の柔軟な受け入れなどを打ち出しています。
本記事では、営業自粛や消費税増税、宿泊税の導入など旅館を取り巻く現状、そしてアフターコロナで経営回復を図る上では活用必至である政府の支援策について解説します。
旅館を取り巻く環境
緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響は、旅館業にも大きな爪痕を残しています。
観光地での動き、そして消費税増税や宿泊税の導入による旅館業への影響について解説します。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛の影響
4月16日に全都道府県に拡大した不要不急の外出自粛を促す緊急事態宣言は、5月14日に大都市圏以外の39県で、さらに5月25日に首都圏と北海道と、段階的に解除されました。
それに伴い、これまで休業要請を受けていた飲食店を含むいくつかの施設の営業が緩和され、臨時休業していた創業90年を誇る甲府市の「常盤ホテル」でも営業時間を縮小して再開しました。臨時休業中は新規予約はほとんど入らなかったものの、宣言解除後は徐々に予約件数に回復の傾向となっています。
一方、首都圏の観光客が8割とされている草津温泉では、宣言解除後も8割の旅館で休業継続を決めており、東京・神奈川などの特定警戒地域からの観光客に対する警戒を強めていました。
消費税増税で宿泊費や飲食の税率が10%に引き上げ
新型コロナウイルスに加え、2019年10月1日から施行された消費税増税も、旅館業の営業に影響しています。
今回の増税では、軽減税率8%と標準税率10%が混在する形で開始されており、旅館などをはじめとした宿泊施設では飲食品の提供場所が複数にまたがっており、状況によって税率が異なるため、顧客にサービスを提供する上で理解しておく必要があります。
具体的には、標準税率10%対象となるのは宿泊費をはじめ、旅館が提供する宴会場や施設内の飲食店、さらにルームサービス利用時の飲食などが対象となります。
一方、軽減税率8%対象としては、旅館の施設内に設置された自販機での購入や、客室内の冷蔵庫内にある酒以外の飲料などが挙げられます。
増税による経済への影響について目を向けると、内閣府の発表によれば2019年10〜12月の実質国内総生産(GDP)は6.3%減と、1年3ヶ月ぶりにマイナスに転じています。
消費税増税により、個人消費を示す民間最終消費支出が同11.0%減と大幅に低下したのが主因と見られており、旅館業は今後顧客に対し消費喚起を促す施策の導入が必要不可欠です。
宿泊税の導入
宿泊税とは、各自治体が財源確保のため独自に実施している地方税であり、該当地域の宿泊施設を利用した宿泊者に課せられ、その後宿泊施設が税務署に納税します。
現在では東京都、大阪府、京都府京都市、石川県金沢市、北海道倶知安町(くっちゃんちょう)、福岡県、福岡県福岡市、福岡県北九州市などで導入されています。特に東京は「国際都市・東京の魅力を高める」ことを目的とし、最も早い2002年10月に導入を決定しました。
他地域でも宿泊税導入の動きが見られており、宮城県や奈良県奈良市で審議が進められていましたが、価格高騰による予約の落ち込みを懸念した宿泊業界による猛反発、および新型コロナウイルスの感染拡大により、3月2日導入見送りが報じられました。
また、東京都では2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、2020年7月1日から9月30日の3か月間は宿泊税を徴収しないとしていましたが、新型コロナウイルスの影響により、この課税停止期間を翌2021年9月30日までに延長することを発表しました。
税率や条件などは地域によって独自に定められており、例えば東京の場合、対象となる宿泊施設は「旅館業法第3条第1項に規定する旅館・ホテル営業の許可を受けて営業を行う宿泊施設」となっています。また、課税条件としては1泊あたりの宿泊料金(税抜き)が1人1万円以上の場合とされ、税率は10,000円以上15,000円未満が100円、15,000円以上なら200円と定められています。
なお、宿泊税の納税にあたり、事業者は「宿泊税特別徴収義務者登録申請書」の提出が義務付けられています。
新型コロナウイルス感染拡大による旅館の納税
老後2,000万円問題や消費税増税、さらに新型コロナウイルス感染拡大と、国民の消費量が落ち込む要因が立て続けに起こり、飲食業や観光業などで深刻な打撃を受けています。
収入が減って納税に困難をきたす施設も少なくなく、政府は納税や課税選択の猶予に関する特例を制定しました。
納税の猶予
新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減少した事業者に向けて、国税の猶予制度に特例が制定されました。
対象となる事業者は、新型コロナウイルスの影響で事業等の収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少し、なおかつ一時に納税を行うのが困難であることを条件としています。
猶予の期間は1年間で、担保や延滞税も免除となっており、事業は法人個人問わず、要件を満たしていればパートやアルバイトの方も対象になります。
また、対象となる国税は、2020年2月1日から2021年1月31日までの間に期限となる、所得税・法人税・消費税などほとんどの税金であり、すでに納期限が過ぎている未納の国税についても、遡って特例の適用が可能です。
なお、申請にあたっては、令和2年(2020年)6月30日、又は納期限のどちらか遅い日までとなっており、申請書と収入の状況が分かる書類が必要ですが、収入の減少度合いを資料で提出するのが難しい場合は口頭での状況説明も受けるとしています。
加えて、特例の要件を満たしていなくとも、状況に応じでその他の猶予制度を受けられる可能性があります。国税庁など担当機関へ問い合わせることで、宿泊施設は資金繰りを楽にすることができるかもしれません。
課税選択の猶予
上記の国税猶予に加え、事業者が消費税納税における立場の選択を、課税開始期間開始後であっても変更可能であるとしました。
通常、課税期間の基準期間における課税売上 高が 1,000 万円を超えた場合は課税事業者となるため、課税期間開始前に「消費税課税事業者届出書」の提出が義務付けられています。また逆の場合も同様に、課税事業者から免税事業者になる前には、届出のタイミングが厳密に規定されています。
しかしながら、新型コロナ感染拡大により売上が大きく減少し通常の業務体制の維持が困難となる、あるいは感染拡大防止のため緊急に課税仕入れが生じるなどの事態が生じ、課税における立場変更を余儀なくされるケースが発生したため、このような対策が取られました。
そのため、課税事業者から免税事業者または免税事業者から課税事業者へと変更を希望する場合、課税開始期間開始後にも届け出が可能となっています。
基準としては、前年の同期と比べて概ね50%以上減少していることとされており、また、簡易課税制度の適用に関しても特例が設けられています。
コロナ禍での納税猶予を活用し旅館の適切な営業を
旅館の事業者は消費税増税による個人消費落ち込みで厳しい状況に置かれていたことや、新型コロナウイルスの感染拡大により政府は国民に「ステイホーム」という言葉とともに外出自粛を呼びかけ、観光地から人の姿が消えました。
それにより多くの旅館業でも経営が厳しい状況が続いており、緊急事態宣言が解除された今も、感染リスクを懸念し、営業を自粛している旅館も多くあります。
このような状況を受け、政府は新型コロナウイルス感染拡大による事業者の納税について、特例を制定しました。
前年比で売上高が一定の割合で減少していることなどを条件に、国税の猶予や課税・免税事業者選択の期間延長などの策が取られており、このような特例を活用しない手はありません。
旅館業は経営難を脱するため、業界を取り巻く環境を適切に把握することが求められるでしょう。
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