現在は、宿泊施設から飲食店まで、さまざまな場面でネット上の口コミが集客を左右する時代となりました。好意的な口コミは集客を促進し売上増加につながる一方で、事業者の評価を下げるような悪質な口コミに対しては、正しい対応に悩むケースも多いでしょう。
今回は、改めて口コミの重要性について触れた上で、悪質口コミの特徴とそれらに対する事業者の本音を紹介します。さらに悪質口コミへの効果的な対処法も解説します。
口コミの重要性
はじめに、口コミがもたらす消費者行動への影響について、データをもとに解説します。消費者がポジティブな口コミだけでなく、ネガティブな口コミにはどのように反応しているかについても知っておくとよいでしょう。
口コミが消費者行動に影響
マーケティングリサーチ事業を展開するクロス・マーケティングが実施した、ネット上の口コミ利用に関する調査によると、8割が「ネット上で口コミを閲覧する」と回答しました。レビューサイトの普及に伴い、ネットで気軽に口コミをチェックする人が増えたと考えられます。
また、ポジティブな口コミだけでなくネガティブな口コミも閲覧し、サービスや商品の良し悪しを見極める様子もうかがえます。
美容室の口コミサイト「ヘアログ」を運営する株式会社ノーマリズムの調査によると、美容室を利用する前に85%の人が口コミをチェックするとしています。値段やヘアカタログが魅力的でも、悪い口コミが多いとその美容室は選ばないなど、口コミの評価の高さが消費者に安心感を与えることが分かります。
口コミは消費者の決定を左右するだけでなく、MEO対策にも有効です。Googleで検索した際に表示されるローカル検索順位の決定には、「知名度」「関連性」「距離」の3つが関連しているとされています。
なかでも「知名度」指標には口コミ評価が影響すると考えられます。実際にGoogleは、口コミ数とレビューの評価がローカル検索の掲載順位に影響すると述べています。
悪質口コミが問題になる場合も
悪質な口コミが投稿された際には、身に覚えのないことを指摘され、一方的な意見に悔しさや恐怖を感じることもあります。法的措置を講じ投稿者を特定しようとしても、裁判に対する時間と費用がかかりすぎる上に、結果的にIPアドレスが開示できず投稿者を特定できないケースも少なくありません。
ただし、Google上に記載された口コミの場合、Googleに悪質な口コミの削除を求めても、対応されない場合もあります。Googleでは事業者から悪質口コミの削除依頼があった場合、審査をした上で口コミの削除をしますが、実際に個人に危害が及ぶような攻撃的な内容ではないと判断され、削除に至らないこともあるようです。
事業者側の本音
口コミは来店促進などに良い影響を与える一方で、一部の悪質な口コミに悩まされている事業者も多くいます。今回は、悪質な口コミを受けた事業者側の本音について、宿泊施設・飲食店・新型コロナ関連の3つのケースから紹介します。
ケース1:宿泊施設
とあるビジネスホテルでは、非喫煙者専用や門限などの独自ルールから、ネット上では「修学旅行のよう」といったネガティブな口コミをはじめ、口コミサイトで最低評価を受けました。
最低評価を受けたことについてオーナーは、悪質な口コミを投稿する人はルールを守らなかった人だろうとした上で、「悪質な場合はもう宿泊しないようはっきり伝えるなど、ネット上の悪質コメントに反論する気はない」と述べています。
ほか、低価格を目指したホテルに対し、アメニティや掃除などのサービスが劣るといった口コミが寄せられ、対応に悩む事業者の声も見られています。
ケース2:飲食店
飲食店の口コミに対する本音として、事業者側からは「端的に味の評価をすることはナンセンスであり、評価よりも自分の感覚を信じてほしい」という声が挙がっています。
味は人それぞれ好みが分かれるため、公共の場で個人的な味に対するネガティブな口コミを書き込まないでほしいとしています。事実に関する口コミだけでなく、メニューに書かれていない商品を批判する事実無根の内容の口コミも問題視されています。
ケース3:新型コロナ関連
新型コロナウイルスの感染予防対策から、現在、席数を減らして営業している店舗も多くあります。そのような状況下で、長時間並んで待つことに対し「正直、並ぶまでの価値はありません」といったネガティブな口コミをするような人には、来店してほしくないというのが店舗側の本音です。
こういったネガティブな口コミに対し店舗側は、あらかじめ混雑時は他店を利用することを強く勧める旨の案内板を店頭に掲示していることや、限られた時間と限られた席だからこそ常連客や店舗を評価してくれる人のために、一席でも多く用意したいといったコメントをSNSで発信しています。
口コミに書かれるポイントと対処法
根拠のないネガティブな口コミが投稿されるケースも増えていることから、いざ投稿された際の対処法を講じておく必要があります。悪評価にみられる特徴と、悪評価の口コミが投稿された際の対処法について解説します。
1. 口コミで見られる悪評価意見の特徴
よくある悪評価の口コミの内容として「写真のイメージや事前情報が実際と違う」「値段に見合わない」などが挙げられます。
提供イメージと事実が異なるという悪評価は、宿泊施設の部屋から見える眺望や飲食店の料理に関し、「ホームページやレビューサイトに掲載されている写真が実際と異なる」といった内容が多くを占めるようです。写真だけでなく、文章も同様です。宿泊施設の設備や部屋のアメニティなど、もともと提供されていた情報と違ったことに対し、悪評価が付いてしまう場合があります。
値段に関する悪評価は、サービスを利用する前の期待値が高い分、予想外のキャンセル料や費用などが発生したことで、このサービスに対しこの料金は見合わないといった口コミにつながるという特徴があります。客室やサービスの質、接客、衛生面についての不満が、悪評価を招くケースも多いようです。
2. 悪い口コミに対処するには
悪い口コミに対処する際に注意すべきは、「最終的にお客様に納得していただくことが目的である」ということです。
悪い口コミに対してまずは謝るといった手段も考えられますが、それは一時的に投稿者の不満や怒りを抑える手段でしかありません。投稿者も、店舗を利用したお客様のひとりです。最終的にお客様である投稿者が納得し、負の感情が収まるような誠実な対応が重要です。
ただし、事実に基づいた悪い口コミが投稿された場合は、指摘された点に対し真摯に向き合い謝罪した上で、今後のサービス改善策なども返信することが求められます。
悪い口コミに対して感情的に反応するのではなく、真摯に対応することで、信頼の回復やイメージアップにつなげられます。
3. あまりに悪質・営業妨害に繋がる恐れがある場合
嫌がらせのような根拠のない口コミなど、あまりにも悪質で営業妨害につながる恐れがある場合には、悪質な口コミが投稿されたレビューサイトの運営者への削除依頼と投稿者の特定、損害賠償の請求などができます。
最初の対応としては、口コミが投稿されたサイト運営者への削除依頼が推奨されます。悪質な口コミが不特定多数の人の目に触れ続けることを防ぐためにも、サイト運営者に連絡し口コミの削除を依頼しましょう。必ずしもすぐに対応してくれるとは限らないため、その場合は書面にてプロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼を送ることで、真剣さを伝えられます。
悪質口コミを投稿した人を特定し、損害賠償を請求することも可能です。犯人特定の際には、サイト運営者やプロバイダに対し、開示請求訴訟の申し立てといった法的な手続きを講じたのち、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求をしましょう。
ただし、犯人特定には費用と時間がかかる一方で、起訴まで辿り着けなかったケースも少なくないため、専門家のアドバイスをもとに慎重に対応策を考えることが重要です。
どのような口コミでも真摯に対応することが重要
ネガティブな口コミの投稿を未然に防ぐためには、事前に店舗やサービスの詳しい情報や店舗の方針を、公式ホームページや店頭などに明確に掲載しておくことが求められます。
基本的には、悪い口コミに対してただ謝るだけでなく、最終的に投稿者が納得できるよう誠実に対応することが重要になります。ただし、悪質かつ営業妨害の恐れがある口コミが投稿された際には、口コミが投稿されたサイト運営者へ削除を依頼するほか、場合によっては慎重に法的措置を検討する必要もあるでしょう。
<参考>
- クロス・マーケティング:オンライン上の口コミ利用に関する実態調査
- 株式会社ノーマリズム:85%のお客様が口コミは重要であると回答。美容室の口コミに関するアンケート調査
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