ホームセンター大手・カインズが躍進を遂げています。2019年度の売上高では、DCMホールディングスを抜き1位となりました。
また、カインズ、ワークマンなどを擁するベイシアグループは2020年10月、年間総売上1兆円を達成しています。
コロナ禍でも好調な売上を記録するカインズ。その理由はどこにあるのでしょうか。
関連記事
コロナ禍の「ホームセンター」消費動向は?カインズ・コーナンが支持される理由
【DX成功事例5選】カインズのDXとは
カインズが躍進
ホームセンター大手・カインズは、2019年度の売上高でDCMホールディングスを抜き1位となりました。
その後コロナ禍でも好調を維持しているようで、カインズのほか作業服専門店ワークマンなどを擁し、スーパーのベイシアを中核とするベイシアグループは2020年10月をもって、2020年の総売上1兆円を達成したことを11月に発表しました。
さらに2020年6月には雇用を拡大することを発表しており、事業の好調ぶりがうかがえます。
カインズは全国的に支持を得ている
ソフトブレーン・フィールド株式会社によるコロナ禍のホームセンターにおける消費者行動分析のデータをみてみましょう。
「日常的に利用するホームセンター」をエリア別に集計すると、九州以外の全国でトップ3にランクインしており、全国的に人気を得ていることがわかります。
コロナ禍でカインズの「1人あたり購入金額」がアップ
また、カインズにおける2020年1-3月と2020年7-9月の消費行動を比較すると、1人あたり購入点数が0.5点、1人あたり購入金額が485円アップしています。
ドラッグストアにおける1人あたり購入金額は136円にとどまっていることから、カインズの1人あたり購入金額の上昇は大きいといえるでしょう。同じホームセンターのコーナンと比較しても、もともとあった差をさらに広げていることがわかります。
カインズの好調、3つの理由
では、カインズの好調の理由はどこにあるのでしょうか。以下で解説します。
1. 業界全体が好調、なかでもカインズは若年層の利用取り込む
ホームセンター業界では「コロナ特需」により、以下のような商品の売上が増加しているといい、そもそもホームセンター業界全体が好調となっているという背景があります。
- 感染防止用のアクリル板やビニールシート
- 水や日用雑貨など生活関連商品の買いだめ
- テレワーク関連商品
- 「おうち時間」を快適に過ごすための家具、DIY用品、ガーデニング用品、ペット用品など
なかでもカインズは、新たな需要を獲得している傾向にあるようです。先述のソフトブレーン・フィールド株式会社による消費者行動分析によれば、カインズでは男女ともに30代以下、さらに40代男性の増加傾向がみられたといいます。
新型コロナウイルスの流行が追い風となり、今までホームセンターに行く習慣がなかった若年層の利用を取りこんでいると考えられます。
また、通販サイトもよく利用されています。ヴァリューズの調査によれば、カインズのオンラインショップは2020年3月以降ユーザー数が急増しているといいます。もともとホームセンター業界では圧倒的なユーザー数を維持していましたようですが、コロナ禍がさらなる追い風となりました。
2. PBが支持されている
PB(プライベートブランド)は、小売店など本来であれば自ら商品を企画・生産しない業態の企業が、独自のブランド(商標)で販売する商品のことを指します。
先述のソフトブレーン・フィールド株式会社による消費者行動分析では、アンケートモニターの自由回答で「カインズのPBの消臭剤は安くてパッケージも可愛い」など支持する声が上がっています。
同調査のレシートの購入商品カテゴリーをみると日用品以外の購入割合が高くなっており、食品や飲料、酒類といったPB商品が日用品と同時に購入されることで、客単価が高くなっているのではないかということです。
3. 「DX」推進
カインズはDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めています。その中でも特徴的なものを3つ解説します。
<1. システム開発担うエンジニアの拠点オープン>
2020年1月には、東京・表参道にIT技術者を集めたデジタル戦略拠点「CAINZ INNOVATION HUB(カインズ イノベーションハブ)」を立ち上げました。ここでは店舗とオンラインとを結ぶシステム開発など、デジタル戦略の根幹を担うITエンジニアが勤務しているということです。
カインズ社長・高家正行氏は立ち上げのねらいについて、「デジタル戦略を確実に、よりスピードアップして進めるにはスキルを持った人材の確保と、最先端の情報をいち早くキャッチアップできる環境を整えることが必要」だったと説明しています。
<2. 売場を案内するロボットを試験導入>
2020年11月にオープンした「カインズ朝霞店」は、デジタル施策が多数導入された店舗です。売場を案内するロボットを試験導入しており、ロボット上部に設置しているタッチパネルで探したい商品を選ぶと、その商品の近くまでロボットが案内してくれます。
また、店内には経路案内用のサイネージを4台導入しており、探している商品の売場までの最短経路を案内しています。
広い店内から商品を探す煩わしさを解消し、買物をより快適にしているということです。
さらに、店舗・オンラインショップの商品を取り置きできる「CAINZ PickUp」サービスを実施し、受け取り専用の「CAINZ PickUpロッカー」を店内・屋外に設置しています。
<3. アプリを活用し、顧客利便性を向上>
カインズでは、顧客一人ひとりの異なる需要に応える「ワン・ツー・ワン・マーケティング」を掲げていますが、それを実施するためにはそもそも分析および施策の対象となるユーザーが必要です。そこでアプリ会員数を増やすために店頭にて販促活動を実施し、2か月でアプリ会員を50万人増加させました。
こうして増やしたユーザーに向け、アプリのプッシュ通知で来店を促進する、商品の陳列場所がわかる機能を搭載し買い物の利便性を向上させるといった施策を実施しています。
特に商品の陳列場所がわかる機能は、流通や在庫管理など店舗の裏側のデータと消費者をつなげることで実現したものです。デジタル化改革により消費者の利便性を向上させたという点で、DXの好事例だといえるでしょう。
関連記事:カインズのアプリ施策【DX成功事例5選】
「社会のインフラ」としてコロナ禍でも営業を継続
DXの推進やPB商品の開発など改革を続けていたところに、新型コロナウイルスの流行が追い風となりましたが、ホームセンター業界の好調は予測できないものでした。外出自粛が原因で売上が減少するとみて、休業するという選択肢もあったでしょう。
しかし、1回目の緊急事態宣言下の営業についてカインズ社長・高家氏は、DIAMOND Chain Storeの2020年7月の報道で以下のように話しています。
カインズとしては社会のインフラとして営業を継続すると決断した
ここでHCの使命をまっとうしないで、いつやるのかという気持ちがあった
社会のインフラとして使命をまっとうしたいという思いのもと、コロナ禍でも営業を続けたカインズ。結果的にコロナ特需をつかみ、売上を上げることとなったのです。
※HC:ホームセンター(Home Center)の略。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
そこで口コミラボでは、MEO・口コミマーケティングに役立つ最新ニュースをまとめた「Googleマップ・MEO最新情報まとめ」を毎月発行しています。
本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
※『口コミアカデミー 』にご登録いただくと、レポートの全容を無料でご確認いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
<参照>
DIAMOND Chain Store online:2019年度のホームセンター業界、売上高トップはカインズに 4.7%増の4410億円
ーーカインズ 「カインズ朝霞店」オープン、売場案内ロボットを試験導入
ーーカインズ高家正行社長が語る!コロナ禍でのホームセンターの役割
ベイシア:「ベイシアグループ売上1兆円達成」のお知らせ
流通ニュース:カインズ/新型コロナによる雇用悪化に対応、3000人の雇用枠
ビジネス+IT:コロナで大躍進「ホームセンター」の好調は続く? 業界再編は必至なワケ
ソフトブレーン・フィールド株式会社:エリア別勢力図、カインズ・コーナン好調の理由をレシートから分析
日経クロステック:DXに舵切ったカインズ、「あの場所」にデジタル戦略拠点を新設した狙い
マナミナ produced by VALUES:カインズの通販サイトがコロナ影響でユーザー急増!成長を遂げるホームセンターEC市場を調査