建物の正面や外観を表す「ファサード」は、店舗のなかで最も人の目に触れる部分です。ファサードは顧客にどのような商品やサービスを提供する店舗なのかを一瞬で伝える役割を担っています。顧客が入りたくなる、魅力的なファサードを作るには、いくつかのポイントを押さえておかなければなりません。
そこで今回は、飲食店経営者に向け、ファサードとは何かから、ファサードのデザインを考える際のポイントを解説するとともに、飲食店の事例を紹介します。
- ファサードとは
- ファサードのデザインを考える上で重要なポイント
- 1. コンセプトを明確にする
- 2. 業態を伝えるアイテム活用などでアイキャッチ効果を高める
- 3. 店内を見せる
- 4. メニューのイメージをつけさせる
- 5. エリアや立地の雰囲気も考慮する
- 6. 看板にこだわる
- ユーザーを引き寄せる飲食店のファサードの事例
- 【カフェ】スターバックス富山環水公園店:ガラスファサードを取り入れた事例
- 【居酒屋】ダンダダン酒場:インパクトあるアイキャッチ
- 【パン屋】PAUL:コンセプトに沿ったデザイン
- 【カフェ】 トラヤカフェ・あんスタンド:開放的な入口
- ファサードで視覚的にアピールをして効果的な集客を
目次
ファサードとは
フランス語で建物の外観や正面を意味する「ファサード」は、店舗で最も人びとの目に触れる部分です。建物のなかで「顔」ともいえるファサードは、店舗の集客において重要な役割を担っています。
ここでは、ファサードの役割と顧客が入店を検討するタイミングと、顧客が「入店したい」と思うファサードの条件について解説します。
ファサードの役割
ファサードの主な役割は、店舗が「ここにあります」という存在を示し、その店舗のイメージやコンセプトを伝えるものです。たとえば、食事をする店舗を探している人がいるとして、そのすべての人がファサードをよく見ているわけではありません。そのため、ファサードは人びとの目に一瞬でとまり、どのような店舗なのかを直感的に伝えられる要素が入っているものが理想的です。ファサードを構成するものは、建物の色やデザイン、素材のみならず、看板やのれん、照明、メニューボード、ディスプレイも含まれます。
まずは店舗の個性やコンセプトを明確にし、そのコンセプトに沿ったファサードづくりが集客率アップにつながります。
そして、顧客の想像する店舗のイメージに合っているか、定期的に客観視することも必要です。
顧客が店舗に入るか検討するタイミング
顧客は、店舗の10メートル前でその店に入るか決めるといわれています。建物の場合は、その建物の高さの3倍、5階建ての建物の場合は50メートル前ということになります。
そのため、事業主は店舗の10メートル手前からでもどのような商品を提供しているのかわかるよう顧客にアピールする必要があります。
入店したくなる魅力あるファサードの条件
顧客が入店したいと感じるファザードには、以下の5つの特徴があります。
- 注目をひくデザイン:店舗の外装は、広告機能を持ち合わせています。顧客がその店舗の前で足を止めた際に個性を感じられるような外観が求められます。
- わかりやすさの表現 :どのような商品を扱う、どのような店舗なのかを顧客が一目で判断できる外装にする必要があります。
- 心地のよいデザイン:外装の第一印象が心地よいものであれば、ハロー効果(目立ちやすい特徴に影響されて他の特徴についての評価も左右される効果)が働き、顧客は入店したいという気持ちになります。
- 周辺環境とのマッチ:店舗がある街などの雰囲気と外観をマッチさせながらも、ほかの店舗と区別がつく外観にします。
- 清潔感:ファサードの周辺にごみやほこりが落ちていると、顧客に不衛生な店舗だという印象を与える可能性があります。日頃からファサードの周辺を清潔に保つとともに、店外から見える商品やディスプレイも整理整頓を心がけることも必要です。
入りたくなる店の作り方|入り口と外観が集客に結びつく
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ファサードのデザインを考える上で重要なポイント
最も人目に触れるファサードは、デザインを決めるうえでいくつかポイントがあります。デザインを考える前に押さえておくべきポイントを6つ解説します。
1. コンセプトを明確にする
店舗のコンセプトは、ファサードのデザインにおいて一番重要な部分です。コンセプトを決定するには、業態や看板メニューはもちろんのこと、ターゲット層、想定する客単価、接客スタイル、想定する利用シーンなど、実に多くの要素が必要になります。
これらの要素から店舗の明確なコンセプトが生まれ、その情報を顧客に伝えるためのファサードがデザインされます。つまり、店舗のコンセプトが明確になっていなければファサードのメッセージ性も弱くなり、うまく顧客を呼び込めないといった事態が起こることが考えられます。
2. 業態を伝えるアイテム活用などでアイキャッチ効果を高める
人の興味を惹き、コンテンツに誘導する目的でメディアや広告で使用されるアイキャッチは、ファサードを使用した集客にも用いられます。海外の和食レストランに桜のディスプレイが置かれていたり、肉が売りの店舗で牛のディスプレイが設置されるのは、これらの持つアイキャッチ効果が高く、顧客の注意を惹きつける力が強いという理由があります。
アイキャッチには、自店舗のおすすめの料理や食材を連想させるアイテムを使用すると効果的です。たとえば、パン屋であればバゲット、新鮮な野菜が売りであれば野菜の形をしたディスプレイを置くなどが当たります。看板メニューをイラストで掲示し、瞬時にどのような料理を提供しているか伝えられれば、見た人の興味も惹けます。
3. 店内を見せる
店内の様子が屋外から見えるファサードには、屋外と店内の境界線をぼかす効果があります。そして、新規顧客の入店する際の心理的なハードルを下げることにもなり、集客においても有効的な方法といえます。
路面店であればファサードをガラス張りにする、ドアの間口を広めにとる、オープンテラスを設置するなどの方法で、顧客の来店を促せます。これらの方法は、店舗により開放的な印象を加えたいときに効果的です。
4. メニューのイメージをつけさせる
ファサードで提供しているメニューと価格をわかりやすく掲示することができれば、顧客の入店を動機づけることにつながります。
情報の掲出に際しては、おすすめや売れ筋の価格をわかりやすく、重点的にアピールすることを意識します。文字情報のほか、デジタルサイネージを使った画像や映像などの活用でも効果が期待できます。
視覚的なアピールという点においては、メニューを具体的に伝えられるサンプルケースを利用する方法もあります。サンプルケースは通行人の注目を容易に集められる分、汚れに気付かれてしまう可能性も高くなっています。常に清潔に保てるよう、日頃から手入れを怠らないよう注意が必要です。
5. エリアや立地の雰囲気も考慮する
ファサードのデザインは、店舗を構えるエリアや立地のほか、物件などに合わせた視認性も求められます。そして、経営者は店舗名から業態がわかる場合を除き、何を提供する店なのかをアピールしなければなりません。
周囲に飲食店が集まっているエリアではオリジナリティーが大切ですが、郊外にあり、顧客が車で来店する店舗であれば、瞬時に店舗をアピールできるファサードでなければなりません。
高層階や地下にある店舗や建物の奥にある店舗は、店舗の入り口までの導線をライトアップするなど、店舗の存在感を高める方法も有効です。
6. 看板にこだわる
店頭に置くタイプ看板は取り入れやすい広告手段の1つであり、店舗の存在感を高めて集客効果も得られます。
主な看板の種類と、その特徴や効果については以下のようにまとめられます。
- A型看板:横から見るとアルファベットの「A」に見えるこの看板は、高さや幅、奥行きもさまざまなものがあります。両面に情報を表示できるタイプが多く販売されていますが、片面のものも存在します。折りたためるため、容易に持ち運べるといった特徴があります。
- デジタルサイネージ:電子看板とも呼ばれるデジタルサイネージは、静止画はもちろんのこと、動画も流せます。表示内容を簡単に変更できるため、ランチとディナーなど時間帯で異なるメニューを表示できます。
- タペストリー:化学繊維で作られた生地が破れにくく、雨風にも強い看板です。丸めてコンパクトに収納できるため、未使用時の収納スペースを必要としません。鮮やかな発色と、複雑なデザインや画像を繊細に表現できるといったメリットがあります。
- のぼり:飲食店の定番広告であるのぼりは、店舗の存在をダイレクトに伝えられるという特徴があります。デザインや大きさ、形状、素材のバリエーションが豊富で、取り入れやすいというメリットがあります。
- 袖看板:建物から突き出た形で設置される看板です。高い位置に設置されるため、遠くからでも目に留まりやすいという特徴があります。
デジタルサイネージとは
デジタルサイネージとは、液晶ディスプレイやLEDのモニターを用いた看板で、電子看板や電子広告とも呼ばれます。アナログの紙広告よりも視認性が高く、その場にいる人に情報を的確に伝えられることなどから注目を集めています。昨今では、その用途は広告だけでなく、公共施設の案内版や災害発生時の緊急情報の発信などにも広がっています。本記事では、デジタルサイネージの仕組みや導入する上でのメリット・デメリット、導入事例などを解説していきます。デジタルサイネージとはデジタルサイネージとは、液晶ディスプレイやLE...
ユーザーを引き寄せる飲食店のファサードの事例
顧客を引き寄せるファサードを体現した店舗は、各々の店舗のコンセプトがしっかりと伝わるデザインが魅力的です。
ここでは、オリジナリティが溢れるファサードを紹介します。
【カフェ】スターバックス富山環水公園店:ガラスファサードを取り入れた事例
建物の正面外観がガラスで造られているガラスファサードは、開放感と透明感が最大の特徴です。
ガラスファサードを用いた店舗を多数運営するスターバックスコーヒーのなかでも、全面ガラス張りの「スターバックスコーヒー 富山環水公園店」は、その洗練された美しいデザインから「世界一美しいスタバ」と称されています。
しかし、開放感と洗練されたデザインが魅力のガラス張りの店舗には、メリットとデメリットの両方が伴います。
たとえば、表から滞在客の姿がしっかりと見えるためプライバシーを保つことは難しいといえます。一方で、店内の様子が見えることで顧客が店舗に入りやすいというメリットもあります。
店内環境に関しては、太陽の影響をダイレクトに受けるため、店内の温度が上がりやすく温度管理が難しいこともデメリットの一つです。またガラスは汚れが目立ちやすいため、定期的なメンテナンスは欠かせません。
【居酒屋】ダンダダン酒場:インパクトあるアイキャッチ
Instagram:ダンダダン酒場による投稿
元祖肉汁餃子のダンダダン酒場は、餃子を売りにしている居酒屋です。昭和の懐かしさを感じられるデザインと筆で書いたようなインパクトのある文字が特徴です。
一目で餃子が食べられることがわかるファサードと、売りのメニューを店頭で掲げている点が参考になります。
居酒屋の集客成功事例3選|気をつけたい6つのポイントを紹介
居酒屋は競合が多く、競争が激しい業界です。居酒屋事業者が集客を成功させるためには、多くの人に店舗の魅力を知ってもらい、競合他社との差別化をはかるかが重要です。本記事では、居酒屋における集客の成功事例と気をつけるべき5つのポイントについて紹介します。目次居酒屋の集客成功事例3選成功事例1. 「近江鶏料理 きばり屋」:コンセプト重視のぶれない店舗経営成功事例2. 「SAKE BAR サカナノトモ」:立ち飲みスタイルで差別化成功事例3. 「我ー喰う(がーくう)」:SNS映え「貝のバケツ盛り」イベ...
【パン屋】PAUL:コンセプトに沿ったデザイン
Instagram:PAULによる投稿
黒いファサードからパンが並んでいる店内が見えるPAULは、フランスのリールで創業し、1889年から続く老舗ブーランジェリーです。
フランスのパン屋の内装をイメージしたという店舗のデザインは、老舗ブーランジェリーとしてのコンセプトを再現しており、おしゃれさと高級感が顧客の目を引いています。
【カフェ】 トラヤカフェ・あんスタンド:開放的な入口
Instagram:トラヤカフェによる投稿
室町時代の後期に京都で創業したとらやは、五世紀にわたり和菓子屋を営む老舗店です。トラヤカフェは、自由で新しいお菓子の世界の提案をコンセプトに、とらやのあんを使ったお菓子を提供しています。
その店舗のファサードは、開放的な入口が特徴的で、白を基調としたデザインで清潔感を与えています。
ファサードで視覚的にアピールをして効果的な集客を
店舗の「顔」ともいうべきファサードは、店舗のなかで最も人の目に触れやすく、店舗の第一印象を左右するものです。そのため、ファサードをデザインする際には、明確な店舗のコンセプトが必須となります。
同時に、業態や売りとなる食材・料理を一瞬でアピールすることや、店内を見せ入店しやすくすること、立地条件にあったデザインであること、看板の活用などもファサードのデザインには欠かせないポイントです。
紹介した事例は、どれもコンセプトがしっかりしているうえ、オリジナリティも表現されています。コンセプトを固めたうえで店舗デザインにこだわり、ターゲットに来店を促すようなファサードを作り上げること、そしてファサードをきれいに保つことが集客の成功につながるでしょう。
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