フードデリバリーサービス「UberEATS(ウーバーイーツ)」の配達員のトラブルが問題となりつつあります。
コロナ禍で日本中の飲食店が悲鳴をあげるなか、テレワークの推進、感染予防の観点から「外食から中食へ」と需要がシフトしています。経済危機的状況で、このような需要のシフトを捉え躍進を続けたのがウーバーイーツです。
しかし、コロナ禍で需要や規模が拡大するとともに、様々な問題点もあらわになったように思われます。
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ウーバーイーツ、事故多発でついに警察が:2時間で16人に警告
愛知県警は9月10日、名古屋市内で総勢20名で出動し、自転車の危険運転の取り締まりを実施しました。
東海テレビの報道によれば、8月に住民から配達業者の信号無視など運転に関する苦情が警察に寄せられたころから取り締まりを実施。わずか2時間の取り締まりで、警告を受けたのは52人、そのうち16人がウーバーイーツの配達員だったといいます。
交通違反以外でもウーバーイーツ関連の警察の取り締まりが続きます。7月30日、広島中央署は国への届け出をせずにバイクで宅配業を営んだとして、ウーバーイーツの配達員だった男性を貨物自動車運送事業法違反の疑いで書類送検しています。
コロナ禍追い風に拡大するウーバーイーツ:1年弱で2倍以上に
警察による取り締まりが続くウーバーイーツですが、その背景にはコロナ禍の「追い風」による事業拡大があると考えられます。
そもそもウーバーイーツとは、配送サービスプラットフォームです。
- 食事を配達してほしいユーザー
- 食事を配達したいが出前サービスを自前で用意できない飲食店
- 個人事業主で仕事のほしい登録配達員
という3者をマッチングする役割を果たしています。
日本でのサービス開始の2016年9月以降、堅調な拡大を見せていましたが、新型コロナの感染拡大、それに伴うリモートワークの推進や外出自粛によるデリバリーサービスの需要拡大で大きな成長を遂げているといいます。
東洋経済の8月4日公開の記事によれば
サービス開始時に150店だった提携レストラン数は、2017年9月に1000店、2018年9月に3500店、3年経った2019年9月で1万4000店にまで増えていた。それが足元では3万店を超えている。この3万店は、他社の数字と違って(登録だけでなく)実際に受注しているアクティブなレストランを指す。
とのことで、1年弱でアクティブ店舗数が2倍以上に増加という数値を叩き出しています。
ウーバーイーツが内包する3つの問題点
拡大を続けるウーバーイーツですが、冒頭の警察の取り締まりが強化されるむきがある他、SNS上でもウーバーイーツの配達員のマナーや配達の質について疑問視する声があがっています。
では、なぜこのような批判的な声が上がるのでしょうか?ウーバーイーツの仕組みから見えてくる問題点を3つの視点で見ていきます。
1. 個人事業主制度による「指揮命令」系統の不在
前掲の通り「ウーバーイーツ」とは、消費者と飲食店、配達員の3者をマッチングするプラットフォームサービスです。そのため、ウーバーイーツとしては、配達員は個人事業主であり、配送業務の委託先というスタンスになります。
正規雇用でないので、当然ウーバーイーツは配達員に指揮命令権を持ちません。よって、配送業務において何かしら問題が発生しても「配達員がやったこと」となってしまい、これを「責任逃れだ」という声もあります。
実際に、この状況を問題視したアメリカ・カリフォルニア州では、ことし8月10日、「ウーバーイーツ」の本体であるライドシェアサービス「UBER(ウーバー)」と競合サービス「lyft(リフト)」について、運転手を従業員扱いするように仮命令が出されました。
2. 報酬制度によって急かされる配達員
2つめの問題点は配達員に支払われる報酬体系にあります。
ウーバーイーツの配達員が得られる報酬は、時給や固定給ではなく、1回の配達ごとで決まります。都市や時間帯などによって異なりますが、目安としては1回の配送で500円程度と言われています。つまり、移動スピードが収入に直結することになります。
さらに、昨今「若者の車離れ」といわれるなか、配達員の担い手である若者層の運転免許取得率が低かったり、それにより交通ルールを知らなかったりする状況です。
この2つの要因があいまって、「時給1000円以上にするなら1時間で2件以上配らないといけないから…この信号は無視しないと…」という動機につながっていると考えられます。
3. 「第三者」の利害や社会コストの無視
最後が、第三者や社会に与えるコストの無視です。再度の言及になりますが、ウーバーイーツは消費者と飲食店、配達員の3者をマッチングするサービスです。この3者間ではwin-win-winの関係が成り立っており、この3者とウーバーイーツの利益は考慮されています。
一方、その関係外の第三者、例えば歩行者や道交法を遵守する周囲のドライバーの利害については考慮されておらず、これが社会的なコストになっています。
この第三者の利害や社会的コストの無視についてはウーバーイーツに限ったことではなく、特にシェアリングサービスでは度々問題になります(Airbnbに関連した「闇民泊」問題が記憶に新しいところです)。ここまで問題にする声が大きくなっていることを考えるに、社会コストが「閾値」を超えた結果だと考えられ、今後対策が必要になってくるでしょう。
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ウーバーイーツなどシェアリングサービス活用にはメリット・デメリットを考慮し慎重に
コロナ禍における飲食店の生存戦略として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からもウーバーイーツのようなデリバリーサービスの活用は積極的に検討したいところです。
社会的に見れば、現在のコロナ不況の中で雇用の受け皿になっている一面もありますが、今回解説したとおり、ウーバーイーツの仕組みには一定の課題が残ります。
配達員に関するトラブルは交通マナーだけでなく、配達した料理が崩れていた、配達員の対応が悪かった、など様々な事例が出てきています。
消費者にとっては、うけた不利益がウーバーイーツに起因するものであるかどうかは関係ないともいえるので、サービスを活用した飲食店の不評も買いかねません。そのため、総合的なメリット・デメリットを考慮して判断することが重要です。
<参照>
- 東海テレビ:ウーバーイーツ配達員の危険運転…警察がついに取り締まり わずか2時間で配達員16人に「警告」
- 中国新聞:無届けバイクでウーバーイーツ配達の疑い 広島県警、初の摘発
- 東洋経済:ウーバーイーツ日本代表が語る「急成長」の裏側
- JETRO:米加州上級裁判所、ウーバーとリフトに運転手を従業員と扱うよう仮命令
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