9月13日、TableCheck社主催「グルメサイト後の飲食店検索プラットフォームラウンドテーブル」が開催されました。
本イベントでは、飲食店経営者、大学教授、口コミマーケティングのスペシャリストなどの専門家が集結。口コミプラットフォームが抱える「評価軸」「アルゴリズム」の問題、そして飲食店の「お店選び」の在り方などについて議論が行われました。
本記事では、イベントで行われた議論の様子をダイジェストでお届けします。
登壇者
- 株式会社TableCheck 代表取締役 谷口優氏(以下、TableCheck谷口氏)
- 株式会社韓流村 代表取締役 任和彬氏(以下、韓流村任氏)
- 慶應義塾大学 経済学教授 坂井豊貴氏(以下、坂井教授)
- 日経ビジネス 記者 鷲尾龍一氏(ファシリテーター。以下、鷲尾記者)
- 株式会社mov 事業戦略部 部長 新井勇作(以下、mov新井)
TableCheck社代表取締役 谷口氏より挨拶
ーーまず、TableCheck社代表取締役 谷口氏より挨拶がありました。
TableCheck谷口氏「この度はお集まりいただきありがとうございます。TableCheckでは2019年から意識調査を行っており、今回が3回目となります。今回のデータでは、飲食店検索のツールにおいてGoogleがトップになりました。
消費者行動が変わる中で、グルメサイトなどの口コミ評価はどうあるべきなのか、今回議論していければと思います」
「レーティング」の問題点と課題
ーー1つ目の議題として、慶應義塾大学経済学教授 坂井氏が現在の「レーティング(一定の基準にもとづいて数値化し、評価すること)」の課題について述べた後、登壇者同士で議論を重ねました。
坂井教授「レーティングは大幅な単純化であり、個性はわからないという問題点があるにもかかわらず、数字で分かりやすいが故に大きな影響力を持っています。もちろん、良いレーティングは良い店を選ばれやすくする重要なサービスです。だからこそ、アルゴリズムはフェアなものでなければなりません」
鷲尾記者「今回、任社長はこのレーティングについて食べログ(カカクコム)と係争中かと思いますが、簡単に経緯をお伺いできますか?」
韓流村任氏「はい。まず言っておきたいのが、食べログは我々飲食店にとってもありがたい存在だということです。食べログのようなグルメサイトのおかげで、より便利になり、集客もできるようになりました。また、以前は口コミが広がるのに時間がかかっていましたが、グルメサイトのおかげでそれが一気に広がるようになったことで、集客に大きな好影響を与えてくれているのは確かです。
ただ、そうした大きなプラットフォームであるからこそ、評価は中立であるべきだと考えています。飲食店、プラットフォーム、ユーザー全員がWin-Winとなる形が理想ですが、今回はそうでない部分があったと考えており、訴訟を起こしたという経緯です」
飲食店検索のプラットフォームは「Google一強」か?
鷲尾記者「TableCheck社のデータではGoogleがトップとなったということですが、任社長も同じように認識されていますか?」
韓流村任氏「弊社の予約のシェアでいうと、食べログ経由が約半数を占めています。検索・予約プラットフォームも多様化してはいますが、まだグルメサイトの影響は大きいですね」
鷲尾記者「新井さんは色々な業界の口コミ分析のデータを収集・分析していらっしゃると思いますが、全体のデータだとどうでしょうか」
mov新井「はい。弊社が提供している口コミ分析サービス『口コミコム 』で分析したところ、やはりGoogleの口コミが伸びていますね。業種別に見てもスーパーマーケット業界やファストファッション業界はここ数年で100倍にも伸びていますし、牛丼業界だと50倍、最近人気のサウナだとなんと300倍にもなっています。また、Yahoo!も伸びている一方で、食べログの口コミ投稿件数はあまり伸びていません」
鷲尾記者「なるほど、やはりGoogleが強いわけですね」
mov新井「ちなみに、口コミプラットフォームにおいて何も口コミ対策をしなかったときの平均投稿数は、客数全体の0.2%。わかりやすく言うと『500人に1人』しか口コミを投稿しないというデータも出ています」
韓流村任氏「つまり、一部の”インフルエンサー”によって評価が”操作”される状況だということですよね」
mov新井「それが正確に店舗の評価を表していればまだいいのですが、なかにはそうでない評価もあるわけですね。プラットフォーム側には、そういったスパム的な動きをアルゴリズムによってコントロールする権利・義務があるのではないかと思います」
坂井教授「とはいえ、アンフェアなコントロールの仕方にはならないようにしないといけないですね」
TableCheck谷口氏「悪質な運用に関しては、"インフルエンサー"側(口コミ投稿者側)にも悪い部分があるのでは?」
韓流村任氏「ブローカー(仲介業者)のような、口コミ投稿を不正に増やしていくような業者もいますね。パトロールするというけど、しきれない部分も出てくるんじゃないかと」
鷲尾記者「そこはプラットフォーム側も頭を悩ませているところだと思いますが…」
mov新井「そうですね。アルゴリズムの”操作”の問題についても、スパム対策を始めとしてGoogleにはGoogle、グルメサイトにはグルメサイトにとっての正しさがあると私は考えています。
難しいですが、関わる人全員が口コミ評価に対するリテラシーを上げ、自分でも必要な判断をしながら使うことが必要なのではないかと思います」
これからのグルメサイト・口コミ評価のあるべき姿とは
鷲尾記者「これからのグルメサイトのあるべき姿についてなんですが、Googleがトップになりつつも、グルメサイトも『セカンドオピニオン』として参照されていたりしますよね」
mov新井「確かに、複数プラットフォームを参照する動きは増えているかと思います。今後でいうと、同じ属性や趣味・思いを持った人同士がつながる『特化型検索』などがあってもいいですよね。Z世代専用のグルメサイトなどがあっても面白いと考えます。そして何より、そうした選択肢が増えることはいいことだと思います」
TableCheck谷口氏「確かに、好みってありますよね。口コミは平均であって、自分に合ったコメントが見られる状況など、選択肢がもっとあるといいのかもしれませんね。
とはいえ、プラットフォームが多様化する中で、お店の負担も増えています。お店と消費者をダイレクトにつなぐサービスとして、弊社のTableCheckも利用してもらいたいですね」
ーーここで議論は終了。質疑応答に移りました。
Q.中国では、こうしたテック系の企業はすべてアルゴリズムを国に登録しないといけない決まりになっています。日本でもプラットフォームを法で縛るべきなのかについてはどう思われますか。
坂井教授「なんでも法で規制するというのは、発展を阻害する良くない要素だと思います。ただ、今問題になっているグルメサイトの評価というのは、これまでの社会にはなかったものですよね。例えば近年の人権問題と同じく、新しく問題として認識されるようになったものであり、法で縛るまでいかなくても議論はされていくべきものなのではないでしょうか」
mov新井「信頼できないプラットフォームからは、自然と人は離れていくんじゃないでしょうか。そこは自浄作用がはたらくと思います」
Q.飲食店探しのチャネルが多様化していますが、情報活用はどうなっていくべきなんでしょうか。
鷲尾記者「ここまで多いと、店舗側も情報統合が大変ですよね」
韓流村任氏「DXをやっていかないといけませんが、今飲食店はまさに大変な時期にあるわけですよね。やっとインバウンドが戻るかもしれないけど、まだ外食産業の回復までは至っていないわけです。
これだけ凹んだままの国も珍しい…今、日本全体が変わるべきです。どうすれば外食産業を守っていけるのか、その岐路に立たされていると思います」
ーー口コミラボ編集部所感ーー
本イベントでは、グルメサイトをはじめ多くのプラットフォームが採用している「口コミ評価」における課題、そしてプラットフォーム・店舗事業者・ユーザー(消費者)の三者が幸せになるような口コミプラットフォームの在り方について語られました。
イベント内にもあったように店舗事業者・仲介業者による「ステマ」などの悪質運用の問題もあり、Googleなど各プラットフォームは対応に頭を悩ませている状況だといえます。そしてGoogle・グルメサイト・SNSなど、プラットフォームの多様化が進む中、どうすれば店舗の情報整備を簡単にしていけるのか、そしてどうすれば外食産業全体が回復するのか、といったことを考えさせられるイベントとなりました。
主催企業のTableCheckはお店と消費者をダイレクトにつなぐ予約サービスを提供、口コミコム はGoogle・グルメサイト・SNSなどの情報を一括で管理でき、管理コストを削減するとともに売上を伸ばす支援を行っています。
任氏の言う「どうすれば外食産業を守っていけるのか」という命題は、今後も飲食業界、そして我々のような飲食店を支援する業界全体で考えていくべきなのではないでしょうか。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
そこで口コミラボでは、MEO・口コミマーケティングに役立つ最新ニュースをまとめた「Googleマップ・MEO最新情報まとめ」を毎月発行しています。
本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
※ここでの「MEO」とは、Google上の店舗・施設情報の露出回数を増やしたり、来店行動につなげたりすることで、Google経由の集客を最大化させる施策を指します。
※『口コミアカデミー 』にご登録いただくと、レポートの全容を無料でご確認いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】