新形コロナウィルの影響により緊急事態宣言が発令され、自治体からの休業要請や飲食店の営業時間短縮により、多くの飲食店が赤字に追い込まれています。
場合によっては閉店を余儀なくさせられてしまうこともありますが、こうした厳しい経営状況を改善させるためにできる取り組みも多々あります。
本記事では、飲食店の現状を紹介し、そうした状況を改善するために取り組むべき施策について解説します。
相次ぐ飲食店の閉店
新型コロナウィルスの感染防止による緊急事態宣言により、売り上げが落ち込み経営が赤字化して、閉店する飲食店が相次いでいます。経営の赤字化の原因と、コロナウイルスが流行する前と比較して売り上げがどの程度落ちているのかを解説します。
収益の激減
クラウド型モバイルPOSレジの「POS+(ポスタス)」を提供するポスタス株式会社は、新型コロナウイルスの影響を受けている飲食店の影響度合いを取りまとめています。
2018年12月~2019年4月9日、2019年12月~2020年4月9日に行われた調査結果によると、飲食店における売り上げは、2019年3月と4月と比較し、2020年の同月の売り上げはそれぞれ67.7%、36.5%という結果でした。
2月までの売り上げでは大きな落ち込みは見られなかったものの、3月と4月で大きく落ち込んでおり、新型コロナウィルスの感染拡大による大きな影響がうかがえます。
エリア別の売り上げを比較してみると、3月は北海道が昨年比で55.6%ともっとも減少しています。4月は関東地方で29.4%と大幅な売り上げの落ち込みが見られます。
3月は北海道でコロナウィルス感染者が比較的多く、多くの道民が危機感を持ち飲食店へ行くのを控えたことが原因と考えられます。
また関東地方では緊急事態宣言や各自治体が要請する飲食店の休業や営業時間の短縮が来客数の減少に影響したのでしょう。
人件費や家賃などの固定費の負担
上記のように売り上げが相当減少しているにも関わらず、固定費は変わらずに支払わなければならないため、飲食店の経営は圧迫されています。
飲食店の費用には固定費と変動費がありますが、固定費は家賃や設備などのリース料、減価償却費、社員の人件費、支払いの利息など売り上げがなくても支払わなければならない費用です。
アルバイトは時給制のため勤務時間を減らせばコストを削れますが、社員に支払う給与は固定であるため人件費を削減することは難しいです。
固定費に対して、アルバイトの人件費や原材料費など店舗の稼働状況によって必要な費用が変わる変動費があります。
飲食店の売り上げに対する固定費の適正比率は15〜25%で、変動費は60〜70%が適正だと言われているので、売り上げが減少する中、固定費が変わらない状況であれば固定費の比率は高くなるので負担が大きくなります。
赤字の現状分析
上記の通り2020年の3月と4月は飲食店の売り上げは、かなり落ち込んでいます。こうした状況の中、赤字となっている店舗の経営状況を分析し、飲食店の売り上げや利益の回復のために必要な施策を行うことが求められています。
来客数の減少が一時的なものであるのか
来客数が減少している原因のほとんどは、新型コロナウイルスが理由であると考えられますが、確信を持つためにも、それぞれの飲食店が過去のデータと比較して3月、4月の来客数を比較してみることが必要です。
新型コロナウイルスの影響以外に来客数に影響をもたらしている要因が発見できる可能性があります。
新型コロナウイルス以外の要因としては、たとえば競合店の出店や従業員サービスの質の低下による来客数の減少などが考えられます。
新型コロナウイルスの影響が出る以前の期間の売り上げが前年比で減少しているのであれば、何が原因で来客数が減少しているか分析する必要があります。
人件費と食材費はどのくらいか
削減が可能な変動費である人件費と食材費が、どれくらいの割合を占めているのか確認します。
飲食店経営の指標として、「FLコスト」と呼ばれるものがあります。これは、Food(食材費)とLabor(人件費)を合わせた費用になります。
また、「FL比率」はFLコストを売上高で割った値を示します。
たとえば、月の売り上げが200万円、食材費が60万円で人件費が40万円だったとすると、FL比率は100÷200=0.5で50%になります。一般的にFL比率が50%以下であれば飲食店の経営は安定していると判断されます。
FL比率が50%を超えている場合は人件費や食材費が経営を圧迫している可能性があるため、飲食店の安定した経営のためにも、いずれかの費用を削減することを考える必要もあります。
メニューを単品別・部門別に分析
売り上げが低迷する中、食材費の削減するのであれば、メニューを「単品別」、および単品をまとめた「部門別」に分析することが有効です。
売り上げにあまり貢献していないメニューや部門を特定することで、人気を集められない品は他メニューと入れ替える、もしくは提供をやめる必要もあるかもしれません。
たとえば、単品別に分類するのであれば、売り上げの20%を占めるメニュー群をA、80%までを占めるメニュー群をBとします。
これら以外のメニューはCとして、人気がなく売り上げに貢献していないため提供を辞めて食材費のコストカットを図るといった施策も考えられます。
また、部門別での分類としては個々のメニューを同一ジャンルにまとめます。ラーメン屋であればラーメン、餃子、トッピングなどに分類され、カフェであればドリンク、フード、デザートにまとめられます。
上記の分析のためには、メニューの売り上げを記録するレジの活用が有効です。上述したPOSレジでは売れた商品の「時間帯」、「個数」、「値段」を記録することができます。
現状を踏まえた営業方法の変更を
来客数が減少している飲食店では、デリバリーやテイクアウトを始める店も増えています。こうした施策は、今だけでなくアフターコロナでも飲食店にメリットがある施策だと考えられます。デリバリー開始
新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響を受けて、対面での店舗営業を見直し、テイクアウトやEC販売といった非対面での営業に活路を見出している飲食店もあります。
既存の飲食店がデリバリーを始める際は改めて許可を取る必要は基本的にありませんが、単体で飲食のデリバリーを始める場合は一般の飲食店と同様に、保健所への「食品営業許可申請」が必要です。
テイクアウト開始
売り上げの改善を図るためには、テイクアウトを開始することも効果的です。
デリバリーと同様に、既存の飲食店では「食品営業許可申請」のみでテイクアウトを開始できるので、新たに許可を取る必要はありません。
しかし、調理場所と販売場所が異なる場合や、アイスクリームやベーコンなどの加工食品を単体で販売する場合には別途手続きが必要になる可能性があります。
また、移動車や屋台などで店舗で調理した料理を別の場所で販売すると、食中毒など衛生的に問題が生じる可能性があるので別途の許可が必要です。
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商品限定をして販売
先に述べた通り、売り上げに貢献していない商品をメニューから除外することも食材費の削減のためには有効です。
商品別の売り上げを分析するには「ABC分析」という手法が使われます。
ABC分析を行う手順として、まず累計売り上げが大きい商品からA、B、Cの順に分類します。たとえば、店舗のメニューがa、b、c、dの4種類があるとします。売り上げの合計が100万円であり、内訳としてaが40万円で、bが30万円、cが20万円であり、dが10万円と仮定します。
ABC分析ではAを累計売上が0~70%を占めるメニューとし、Bは累計売上が71~90%を占めるメニューで、Cは91~100%のメニューになります。上記の例では、aとbが合計で70万円であるので全体売り上げの70%を占めています。
Cは売り上げ全体の20%でdは10%になります。したがって、aとbがAランクになり、cがBランク、dがCランクになります。この場合、商品dをメニューとして除外することが考えられます。
注意点として、Cランクのメニューだからと言って安易にメニューから除外するべきではありません。
たとえば、原価率に着目した時にAランクは売り上げが大きいものの、原価率が高く利益が少ない可能性があります。一方、Cランクは売り上げに大きく貢献してはいませんが、原価率が低く高利益な場合もあります。
閉店を決める前に現状分析から
飲食店の売り上げは新型コロナウイルスの影響を大きく受けており、そのような状況の中でも人件費や家賃といった固定費は支払い続けなければなりません。
売り上げを少しでも改善するためには、デリバリーやテイクアウトのサービスの提供が効果的で、顧客のニーズも高まっています。
場合によっては閉店を余儀なくされてしまう可能性もありますが、経営状況を少しでも改善するためには現状の分析が欠かせません。
ABC分析などの手法を用いて売り上げに貢献していない商品や原価率の高いメニューについての対応を検討し、少しでも食材費を抑えることが重要です。
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