店側に連絡なく無断で予約を取り消してしまう無断キャンセルは、店舗の売り上げや営業費用に大きな打撃を与える深刻な問題です。
多くの事業者では無断キャンセルに対して100%のキャンセル料を徴収することを定めているものの、無断キャンセルをした顧客側と連絡が取れなかったり、顧客側がキャンセル料の支払いに応じないことで、泣き寝入りを迫られる事例も数多く発生しています。
このような無断キャンセルは、どのようにして起こるのでしょうか。また、無断キャンセルが各業界に与える影響はどのようなものなのでしょうか。
この記事では無断キャンセルを防ぐ効果的な対策を紹介するとともに、無断キャンセルの実態について解説します。
※2021年5月27日追記:PayPayはこれまで決済システム利用料について、無料で店舗にサービスを提供していましたが、2021年10月1日より有料になります。利用料率は8月31日に発表される予定です。
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店舗に打撃を与える無断キャンセル
無断キャンセルが店舗に与える打撃は深刻で、経営悪化の一因となり得るほどの大きな影響を及ぼすこともあります。
ここ数年、無断キャンセルが社会問題の一つとして取り上げられるにつれ、各業界でも無断キャンセルへの対応を強化しており、その中には刑事訴訟に発展した例も見受けられます。無断キャンセルが店舗に与える損害は多岐にわたります。
1. 人件費のロス
無断キャンセルにより予定していた売上が水の泡となってしまう他にも、大人数での予約を無断キャンセルされた場合、予約に合わせて増員した分の人件費がそのまま損害となります。
また、無断キャンセル後にキャンセル料を徴収する業務も本来は発生しなかったはずの業務であるため、これに対応する人員の人件費もそのまま損害となってしまいます。
2. 原材料費のロス
飲食店では予約に合わせて用意した料理も多くの場合は廃棄することになるため、材料費にも大きな損害が発生します。
3. 席の確保による機会損失のロス
さらに、大人数の予約に対応すべく席数を確保していた場合に、他の団体客の予約を受けられなかったり、当日客の案内調整をしていたりすると大きな機会損失となってしまいます。
無断キャンセルをする背景:「とりあえず予約」
このように、無断キャンセルは犯罪行為にもなり得る悪質な行為であるにもかかわらず、未だにその被害は報告され続けています。飲食店の予約システムを提供しているテーブルチェックが2019年に実施した調査によると、無断キャンセルをする理由で最も多かったのは「とりあえず場所を確保するために予約」でした。
また「人気店なのでとりあえず予約」が次に並んでおり、無断キャンセルにより発生する店側の損失は考えずに「とりあえず」席を抑えるために予約をしている現状が明らかとなっています。
「とりあえず予約」は予約サイトの手軽さと普及も一因に
無断キャンセルをしてしまった際に利用した予約手段はグルメサイトが最も多く、次に公式ホームページなどのネット予約、SNSと並んでおり、インターネットを利用した予約では比較的無断キャンセルが発生しやすいことが分かります。インターネットでは数回の操作で手軽に予約が取れてしまうことや、キャンセル料の徴収に関する条項が見落とされやすいこと、そして店員と会話をしないため無断キャンセルに対する心理的障壁が低いことなどが、無断キャンセルが起こってしまう主な理由として考えられます。
無断キャンセルが訴訟に発展するケースも
無断キャンセルに際し、キャンセル料を支払ってもらえれば良いものの、支払いを拒否された場合は訴訟へと発展してしまいます。
しかし、訴訟には時間も費用もかかるため、諦めて泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれている事業者が多いのが現状です。
特に飲食業は他業種と比較して客単位の利益率が低い場合も多く、無断キャンセルで受けた損害と失った売上を取り戻すには莫大な時間がかかってしまいます。
他業種でも同じく無断キャンセルの挽回は容易なことではないため、多くの事業者は無断キャンセルへの対応に苦慮しています。
刑事訴訟が起こるまで拡大
無断キャンセルは民法第415条の債務不履行や民法第709条の不法行為に当たるため、無断キャンセルのキャンセル料を支払わない者に対して事業者は民事訴訟を提起できます。
また、事業者に損害を与える意図で行われた悪質な無断キャンセルの場合、刑法第233条の偽計業務妨害に問えるため刑事訴訟に発展することもあります。
実際、2019年には居酒屋計5店舗に対し偽名を用いて1人1万3,000円のコース料理を17人分予約し、無断キャンセルをした男が偽計業務妨害容疑で逮捕・起訴されています。
偽計業務妨害は3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるほか、民事上の責任も負う必要があるため、刑事事件になった無断キャンセルの当事者は多額の賠償金に直面することとなります。
各業界での無断キャンセル被害例
無断キャンセルはどの業界にも大きな損失を与えますが、業界によりその被害の形はさまざまです。
実際に無断キャンセルをされてしまうとどのような被害が出るのか、宿泊施設と飲食店を例に解説します。
1. 宿泊施設
2020年1月、栃木県にある8軒の温泉旅館が同一の予約客から無断キャンセルの被害に遭いました。
ある旅館では10人分の料理を用意したにもかかわらず無断キャンセルに遭い、被害総額は250万円にものぼりました。
これら8軒の温泉旅館は2020年6月、無断キャンセルをした予約客を相手取り280万円の支払いを求め訴訟を提起しました。
無断キャンセルの訴訟には費用も時間もかかるため諦めて泣き寝入りする事業者が多いものの、旅館側は今回の訴訟を通して無断キャンセルを一掃したいと話しており、世間に問題を提起する意味合いも含めて訴訟に踏み切ったようです。
また、静岡のとある旅館では10件にも及ぶ無断キャンセルを受けてしまったことが原因で従業員の関係が悪化してしまうなど、お金では代えられないものを失ってしまう場合もあります。
2. 飲食店
東京都のある唐揚げ専門店では、1万5,000円分の注文を受けて大量に丼物や唐揚げを作ったにもかかわらず後からキャンセルすると告げられ、作ってしまった商品は食品衛生上どうしても廃棄せざるを得ませんでした。
キャンセルを受けた従業員は体調を崩して早退してしまい、金銭的な損害よりも精神的な苦痛の方が多かったと語りました。
また、千葉県のあるイタリアンレストランでは、電話によりオムライスやステーキ丼など計10食の注文を受けたものの、受け取り時間になっても注文を入れた顧客は現れず、無断キャンセルにより1万円以上の被害を受けました。
予約の際に控えた電話番号は別人のものであり、元の人物に連絡がつくことはありませんでした。
このレストランでは無断キャンセルの窮状をその場でSNSに掲載したところ、SNSユーザーが無断キャンセルされた食事を全て購入したため、大きな被害にはなりませんでした。
無断キャンセルを予防するには
無断キャンセルは不法行為であり、悪質な場合は犯罪にもなり得ます。
無断キャンセルの被害に遭った場合は訴訟を通して損害賠償などの請求が可能ですが、まずは無断キャンセルを予防することが一番の対策となります。
無断キャンセルの予防には、事前決済サービスの利用やキャンセルポリシーの確認などの手段があります。
それでも無断キャンセルの被害を受けてしまった場合は、無断キャンセル対応サービスを利用することで安価に無断キャンセルの損害を取り戻せます。
1. 事前決済サービスの利用
事前決済とは、予約や注文の際に支払いを済ませられるシステムです。
注文を受けてから食事を作る場合でも、顧客に支払いを先に済ませてもらうことで無断キャンセルを予防できます。
また、万が一無断キャンセルが起こってしまった場合でも支払いは済んでいるため、店側の損失にはなりません。
多くのオンライン予約システムは事前決済やデポジットを採用していますが、現在広まりつつある持ち帰り形式の店舗でも「PayPayピックアップ」などの事前決済サービスを導入することで顧客に先に代金を支払ってもらえます。
2. リマインドメール・キャンセルポリシーの確認
インターネット経由での予約は、キャンセルポリシーを見落としていたことが原因で無断キャンセルに繋がったり、店員と会話をしないことから無断キャンセルに対する心理的障壁が低くなってしまいがちです。
そのため、予約を受けた際には必ず電話で折り返して予約の内容をもう一度確認したり、キャンセルポリシーを明確に伝えることで無断キャンセルを予防できます。
また、予約の当日にリマインドメールを送信することで「うっかり忘れ」による無断キャンセルも予防できます。
3. 無断キャンセル対応サービスの利用
これらの対策を講じたにもかかわらず無断キャンセルに遭ってしまい、顧客がキャンセル料の支払いに応じない場合、無断キャンセル専門の債権回収代行サービスの利用も考慮すると良いでしょう。
無断キャンセル対応サービスの「ノーキャンドットコム飲食版」では、無断キャンセルを受けた事業者に代わり弁護士が顧客と連絡を取り、キャンセル料を回収します。
回収後はキャンセル料から手数料を引いたものが事業者の口座に振り込まれるため、事業者が自ら無断キャンセルに立ち向かう必要はありません。
無断キャンセルを未然に防ぎ、被害を減らす
ここ数年、無断キャンセルは社会問題の一つとして注目されており、SNSでは無断キャンセルを受けた店が助けを求め、拡散された投稿を見た他のSNSユーザーがその店に食事などを買いに行くことで大きな被害を免れる例も見受けられるようになりました。
無断キャンセルを防ぐには、事前決済の徹底や予約の確認など、無断キャンセルを発生させない環境を作ることが重要です。それでも無断キャンセルが発生してしまった場合は、無断キャンセル対応サービスなどを利用することで効率良くキャンセル料を回収できます。
また、無断キャンセルを無くすには店側の対策だけでなく、顧客のモラルを向上させることも必要です。無断キャンセルが与える損害の大きさは広く世間に知られているとは言い難いため、各事業者が無断キャンセルを受けた際の被害を目に見える形で示すことで、社会全体のモラル向上を目指すことも大切となるでしょう。
<参照資料>
TableCheck: 【2019年版】第3回「飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査」
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
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