「狙い撃ち」時短命令に賛否、グローバルダイニング訴訟を読み解く2つのポイント

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大手飲食チェーン・グローバルダイニングは3月22日、東京都から出された営業時間短縮の「命令」が違憲・違法だとして、都に「104円」の損害賠償を求め提訴しました。

本記事では、グローバルダイニングが都を提訴するに至った背景や、訴訟について考える上でポイントとなる、時短要請の問題点について詳しく解説します。

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グローバルダイニングが東京都を提訴

グローバルダイニングは、イタリアンレストラン「カフェ ラ・ボエム」、エスニック料理店「モンスーン カフェ」など、50店舗(海外3店舗、ウェディングサロン1店舗含む)を展開する飲食チェーンです。

今回、グローバルダイニングはなぜ都を提訴するに至ったのでしょうか。東京都がグローバルダイニングに「命令」した理由から順に解説していきます。

東京都がグローバルダイニングに「命令」したのはなぜか

東京都は3月18日、改正特別措置法に基づき、時短要請に応じなかった27店舗に対し、21日まで午後8時以降の営業停止を命じました。時短営業の「命令」が出されたのは、これが全国で初めての事例です。

命令は「要請」より強制力の強いもので、時短営業の命令を拒否した場合は30万円以下の過料が科せられます。

これに先立って3月15日、グローバルダイニングへ東京都から営業時間短縮命令の事前通知書が届いていました。グローバルダイニングが運営する26店舗に対し「命令」を行った理由として、この通知書では以下の2点が挙げられています。

  1. 20時以降も対象施設を使用して飲食店の営業を継続し、客の来店を促すことで、飲食につながる人の流れを増大させ、市中の感染リスクを高めている
  2. 緊急事態宣言に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある

時短要請に応じなかった飲食店は都内で2,000店舗にも及ぶといわれていますが、その中でもSNS上で夜間営業について積極的に発信していたことなどを問題視したと考えられます。

グローバルダイニングは、なぜ東京都を提訴したのか

グローバルダイニングは命令が出されてから緊急事態宣言が解除される21日までの4日間、午後8時までの時間短縮営業に切り替えましたが、命令が出された27店舗中、26店舗がグローバルダイニングの店舗だったことを知り驚いたといいます。これについて同社は、不当に「狙い撃ち」されたとして、東京都を提訴しました。

また、「命令」が出される前に都知事に宛てて送られていたグローバルダイニング側の弁明書では、感染した場合にハイリスクとなる高齢者の方々と若い世代との制限が統一されていることや、不要不急の外出を制限しているにもかかわらずテーマパークなど他の業界に対しては営業を許可していることなど、飲食店に向けた時短要請に対する違和感を指摘しています。

会見では「法的根拠、科学的根拠があいまいなまま、飲食店の営業を一律に制限することの是非」を問うとしており、問題提起の意味も含めて提訴したということです。

主要な目的が損害賠償を得ることではないため、請求額は1店舗1日あたり1円、26店舗×4日間の計104円にとどめています。

SNS上の反応は

Twitter上では、「支持したい」と訴訟に対して好意的な意見が相次いでいます。

グローバルダイニング 訴訟 時短 命令
▲「支持したい」と訴訟に対して好意的な意見:Twitterより

Twitter:IKEDATAKUYA127 さん @iketaku127 の投稿

命令が出された27店舗のうち26店舗がグローバルダイニングの店舗だったことに対し、「見せしめにしているとしか思えない」と同情する意見もみられます。

グローバルダイニング 訴訟 時短 命令
▲「見せしめにしているとしか思えない」と同情する意見:Twitterより

Twitter:Arshad Karim さん @arshad_esq の投稿

一方で感染対策を重視する意見も多くありました。以下のツイートのように、人によって考え方が異なるだろうと冷静にみる声もあります。

グローバルダイニング 訴訟 時短 命令
▲裁判官によって見方が異なりそうだ、という声も:Twitterより

Twitter:Go Mizumoto/Divide inc. CEO さん @GO7thJ の投稿

今回の提訴を考えるにあたっての2つのポイント

都の時短命令が違憲・違法かどうかの判断は、東京地裁に委ねられます。

ここでは今回の提訴について考えるにあたり、飲食店に向けて出されていた時短要請や、それに伴う協力金の問題点について解説します。

1. 大企業への協力金が不足している

新型コロナウイルスの影響により、飲食業界全体が厳しい状況にさらされています。

日本フードサービス協会によれば、2020年の飲食業全体の売上高は前年比84.9%で、1994年の調査開始以来最大の下げ幅となりました。

グローバルダイニングも例外ではなく、同社の2020年12月期決算資料では、11億円を超える赤字となったと報告されています。

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その一方、支援は中小企業に集中してしまっているといわれています。

都の時短要請協力金は一律で1店舗あたり1日6万円でした。本部の運営費や大規模店舗の維持費などがかかるチェーン店と、小規模な店舗では必要な金額が異なると考えられ、事業規模に応じた支援が求められます。

※ただし雇用調整助成金の緊急事態宣言対応特例など、大企業向け支援も徐々に拡充されてきているようです。

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2. そもそも時短要請の効果はあったのか

時短要請については、今まで分散していた客が、短くなった営業時間で集中してしまうのではという懸念もあります。

飲食店向け予約・顧客管理システムを提供するTableCheckの調査によれば、飲食店内のディナー時間帯の密度(18:00~22:00)が、その前後の期間と比較して約1.5倍に高まることがわかりました。同社は、時短要請が店内の人口密度を上げる「逆効果」をもたらしているとしています。

また、時短要請を行えば陽性者数が減少するのか、詳細な検証がなされないまま要請が行われたことに疑問を呈した専門家もいました。

2月4日付の日本経済新聞によれば、東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授は「感染経路不明者の割合が高く、科学的根拠が明確でない」として、時短営業を要請する根拠となる国内のデータや説明が足りないと指摘しています。

さらに、時事関係のトピックを中心としたWeb調査を行っている紀尾井町戦略研究所株式会社によるアンケート調査からは、緊急事態宣言に対する市民の正直な声が見えてきます。

調査では、緊急事態宣言の効果について尋ねたところ、「有効でない・あまり有効でない」を合わせた数が57.8%で過半数を占める結果となりました。

また、緊急事態宣言が解除された場合の外出回数については「変わらないと思う」との回答が1番多く726人となっており、宣言が出されたことにより外出が制限され、感染が抑制されたのかどうかについては、疑問の余地が残ります。

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今後も夜9時以降の時短要請は続く…適切な支援は行われるのか

1都3県でも緊急事態宣言は解除されたものの、夜9時以降は引き続き営業時間の短縮が要請されることとなります。飲食業界の完全な回復には、しばらく時間がかかるかもしれません。

そのような中でグローバルダイニングによる東京都を相手とした訴訟は、飲食店への支援や時短要請自体の効果といった問題点にも目を向けさせるものとして、注目が集まります。

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<参考>
日本経済新聞:時短命令は違法か グローバルダイニングが東京都提訴へ
ーー飲食店の時短営業効果、科学的検証は道半ば 新型コロナ
TBS NEWS:「納得できない」時短命令を受け都を提訴のグローバルダイニングが会見
YouTube:【速報】東京都を提訴 グローバルダイニング会見
ITmediaビジネスONLINE:「狙い打ち時短命令は違憲・違法」 グローバルダイニングが“104円”の損害賠償求めて東京都を提訴した理由
東京新聞:都、時短営業拒否の27店に命令 改正特措法で全国初
グローバルダイニング:弁明書
ーー2020年12月期通期 決算説明資料
TableCheck:【代表ブログ】時短営業で、店内密度1.5倍に。データに基づく有効な施策を都に求める

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    口コミラボ編集部

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