新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着き、自治体の補助もあって県内旅行が活発に行われつつあることから少しずつ回復傾向を見せている宿泊業界ですが、政府施策の目玉である「Go To トラベル」の再開時期はまだ先となるものとみられます。そのような中で各企業や自治体は、旅行業の活性化に向けた施策を打ち出しています。
ただし、11月末にはオミクロン株の国内感染者が発見され、今後の旅行再開には不安もみられます。
本記事では、11月の宿泊業界の動向についてまとめます。
「Go Toトラベル」をめぐる動き
宿泊・観光業界の回復を後押しする「Go Toトラベル」について、さまざまな動きが出ています。
「Go Toトラベル」再開は来年以降
政府は「Go Toトラベル」について、年内の再開はせず、来年1月以降の再開となることを発表しています。これは現在、日本国内における新型コロナウイルスの感染数は落ち着いていますが、年末年始で感染が拡大する可能性が懸念されていることや、コロナ用の経口薬の完成を待つ方針によるものです。
帝国データバンクの調査では、2021年内の「Go Toトラベル」を再開を望む企業が32.2%、2022年1〜3月までに再開してほしい企業が25.4%と、年度内の再開を望む声が過半数を超えています。なかでも観光・宿泊業界からは早期再開を求める声が挙がっています。
JATA(日本旅行協会)の志村理事長は、12月上旬の旅行需要が低調であることを受け、年末年始の旅行ピーク期の需要を分散させる意味や、対応のための準備期間なども考慮したうえで、なるべく早期の再開を発表してほしい旨をコメントしています。
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地方自治体による「独自Go To」
政府事業としての「Go Toトラベル」の再会が待たれる中、各地方自治体は独自の割引キャンペーンを展開するなどして観光・宿泊需要の喚起に努めています。
各都道府県がさまざまな県内旅行の割引を展開する中、17日には大阪府でも独自キャンペーンである「大阪いらっしゃいキャンペーン2021」の実施が発表されました。これを受け、ホテルニューオータニ大阪は部屋代が実質無料になるプランを打ち出しています。
そのほか、三重県では在住者限定のキャンペーンとして、宿泊料金の5,000円〜2万円を割り引くクーポンを発行しています。使い方によっては還元率が100%を超える場合もあるようです。
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隣接県民でも「県民割」適用、政府方針
これまでの各自治体による独自キャンペーンでは、県民に対して県内旅行限定で割引が行われてきました。
政府は今後、これらの「県民割」の対象を県内から隣接する都道府県へと広げる方針を明らかにしています。
実施にあたっては感染拡大防止の観点から、ワクチン接種証明やPCR検査の陰性証明を活用することが条件となります。
宿泊業界主要ニュース
ここでは、宿泊業界の主要なニュースをまとめます。
年末年始予約は好調
現在は新規感染者が落ち着いており、自治体主導で旅行需要の喚起策が様々に出されていることから県内旅行を中心に年末年始の予約は好調で、満室となったホテルも出てきているようです。長引くコロナ禍で旅行控えが長期化しており、ワクチン普及後初めての大型連休となる年末年始への期待が高まっていることが見てとれます。
ただし11月30日には新たな変異株で「リスクが極めて高い」とされるオミクロン株の感染者が日本で初めて確認されたほか、「第6波」への懸念も同時に強まっており、警戒が必要とされています。
東京都、LINEでワクチンパス 京王プラザなど協賛
東京都はワクチン接種率の向上を目的として、提示すればホテルやレストランで優待を受けられるワクチンパスのサービスを11月1日にリリースしました。ワクチンパス「TOKYOワクションアプリ」というスマートフォンアプリをインストールした後、当該サービスのLINE公式アカウントから登録を済ませることで利用できるようになります。
宿泊業からは京王プラザホテルや東部ホテル、ハイアットリージェンシー東京などが参加しています。優待内容はドリンククーポンやレイトチェックアウトサービスの無料化、宿泊料金の割引など多岐にわたります。
日本初エコツーリズムの宿 星野リゾート運営の「西表島ホテル」
世界自然遺産にも認定された西表島にある星野リゾート運営の「西表島ホテル」は、「日本発エコツーリズムの宿」をコンセプトとしており、環境への配慮を全面に打ち出した取り組みを行うことで話題となっています。
ホテル内には自販機や冷蔵庫内にペットボトルを一切置かず、さらにプラスチック製の使い捨てアメニティもありません。代わりに無料のウォーターサーバーを設置してマイボトルに水を入れてもらうようにするなど、利便性や快適さが損なわれないような配慮を進めています。
すでに来年4月からは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の施行が決まっており、プラスチックごみの排出量が5トンを上回る企業にはそれらの削減が義務化されます。この西表島ホテルの取り組みは、それらに先駆けたものと言えます。
「持続可能な開発」はすでに世界的な潮流として各所で取り組みが求められており、「ゼロ・エミッション」が提唱される中、このようなエコをテーマにしたキャンペーンは有効な取り組みとなっています。
ワクチン検査パッケージ実証実験に参加「びわ湖大津プリンスホテル」
滋賀県の「びわ湖大津プリンスホテル」では、新型コロナウイルスの感染予防と日常生活回復の両立を図る政府の「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験として、11月15日からワクチンの接種証明を提示することでホテル代を割引にするなどの取り組みが始まっています。また、レストランの利用客に接種証明や抗原検査を求めた上で食事を提供するなどしています。
ワクチン接種歴の提示には県のシステムである「もしサポ滋賀」を客にスマートフォンで読み取らせることで行います。ワクチンの接種証明がない場合は、別途設けられた抗原検査コーナーで検査を受けてもらうことで対応します。
これを導入したことにより、レストランでは評判であったにもかかわらずコロナ対応のために中止されていたビュッフェの提供を復活させることができました。さらに、座席に設置されていたアクリル板を撤去するなど、少しずつコロナ前の対応に戻す動きが出ています。
病院とホテルが一体に、新タイプの療養施設(大阪府)
大阪府の吉村知事は、病院がホテルを運営する「一体運営型」のホテルの開設を発表しました。ホテル療養の新しいモデルとして注目を集めています。
「北大阪ほうせんか病院」が運営にあたるホテルで、JR新大阪駅のホテルの中に整備されています。コロナ陽性者向けの療養宿泊施設として、府の委託により看護師の確保や患者の健康観察、診療などが行われます。また救急車を常備配置することで、迅速な患者の搬送を実現するように努めています。
大阪府はコロナ対策としての医療対応を複数の関係先に委託していましたが、病院とホテルにその機能を一括化することで対応のスピードアップを図る狙いです。
500円から利用可、ホテルでのテレワーク 相模原市が支援事業開始
神奈川県相模原市では、11月15日から在住者及び市への在勤者を対象に、市内の宿泊施設でテレワークを行う際に安く利用ができる「リモ~っと お得! テレワーク相模原」を開始しました。
これはテレワークの促進と市内宿泊施設の利用促進を目的に行われたもので、市内10軒のホテルが参加しています。利用料金はホテルによって異なりますが、1日500円から利用できるホテルもあるなど格安での利用が可能です。
すでに各地でホテルをテレワークの場所として利用する取り組みは行われており、客数が戻らない宿泊業者にとって収益を確保する手段の一つとなっています。
旅行大手2社、依然厳しい経営状況
旅行大手2社の売上はコロナ前の水準には戻っておらず、苦しい状況が続いています。
HIS、赤字530億円・売上は前年度から70%減
HISは10月までの決算で過去最大となる530億円の赤字を計上しています。売上は1,250億円で、前年度から70%減となりました。昨年末に「Go To トラベル」が中止され、以降感染者も高止まりしたことから旅行需要は伸びず、苦しい状況となっています。
そんな中、HISは11月2日に第三者割当増資と新株予約権の発行による215億円の資金調達を発表しました。昨年にも香港のファンドなどから200億円以上を調達しており、そのほかにも有志枠の増加や投資計画の大幅な縮小を行うなど、資金繰りの苦しさが見られます。
JTBは黒字67億円も、旅行事業は厳しく
一方、JTBは対照的に、2020年9月中間連結決算で67億円の黒字を計上し、2年ぶりの黒字となりました。
しかしこれには本社ビルの売却益である311億円が大きく寄与しており、本業の旅行業での売上は回復していないということです。
11月に発表された宿泊業関連のデータ紹介
ここでは、11月に発表された宿泊業界に関するデータを紹介します。
宿泊旅行統計調査/国土交通省
国土交通省が発表した宿泊旅行統計によると、10月の延べ宿泊者数は3256万人泊と、前年同月比で5.5%減少しました。またコロナ禍前の2019年比で18.2%減です。
緊急事態宣言が解除された後も、宿泊者数は回復していません。しかし9月の宿泊稼働率が31.2%だったのに対し、10月が42.1%と、2か月ぶりに上昇しました。
政府主導の「Go To トラベル」の再開が来年以降に延期されたものの、各自治体が独自に宿泊業支援に乗り出しており、今後もゆるやかに回復していくものと予測されます。しかしオミクロン株の影響で、依然としてインバウンド需要の回復は見込めません。
博報堂生活総研 [来月の消費予報・12月](消費意欲指数)
博報堂のシンクタンクである博報堂生活総合研究所は、20~69歳の男女1,500名を対象に調査した「来月の消費予報・12月」を発表しました。2021年12月の消費意欲指数は56.1ポイントで、前月比で8.2ポイントのプラス、前年比では1.2ポイントのプラスといずれも上昇しました。
12月はもともと消費意欲が高まる月であり、今年の最高値であることは例年通りですが、前年比で見ても消費意欲が下がったカテゴリーがなく、深刻なコロナ禍からの反動が出ていると見られます。
中でも買いたいモノ・利用したいサービスとして「旅行」を挙げた人が前年比で増加しており、ここでも旅行需要への高まりが見られます。
ただし、先述の通り11月末にはオミクロン株の国内感染者が発見され、今後の旅行再開による「第6波」への不安も指摘されています。各宿泊施設では、感染対策を引き続き徹底する必要がありそうです。
口コミラボ 最新版MEOまとめ【24年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
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本記事では、主に2024年9月・10月の情報をまとめたレポートのダイジェストをお届けします。
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→「ポリシー違反によるビジネスプロフィールの制限」が明文化 ほか【2024年9月・10月版 Googleマップ・MEOまとめ】
<参照>
毎日新聞:GoToトラベル、再開は22年1月以降 政府が方針固める
PRTIMES:GoToトラベル、企業の約6割が早期の再開を希望
トラベルWatch:Go To トラベル再開は「12月上旬が理想」。日本旅行業協会 志村理事長が言及
PRTIMES:「大阪いらっしゃいキャンペーン2021」参画決定! お部屋代が“実質無料”の宿泊プラン販売決定!
読売新聞:【独自】旅行「県民割」を隣接県に拡大、政府経済対策で…ワクチン証明など条件
毎日新聞:岸田氏「GoTo2.0を」 野田氏「子ども債」意欲 自民総裁選
FOOD CHANNEL:東京都、LINEでワクチンパスポート開始。事業者の申請方法と外食・宿泊業の優待内容まとめ
東京都:ワクションに協賛する|TOKYOワクション 公式サイト
乗りものニュース:歯ブラシ持参!? 「日本初エコツーリズムの宿」西表島ホテルへ エコでもクオリティ低下皆無のワケ
環境省:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について
相模原市:リモ~っと お得! テレワーク相模原
東洋経済オンライン:HIS、わずか1年で2度目の「コロナ増資」に走る事情
NHK:HIS 過去最大530億円の赤字見通し 旅行需要の落ち込み長期化
河北新報:JTB、2年ぶりに中間黒字 本社売却で、旅行は低迷
国土交通省:令和3年9月分(第2次速報値)報道発表資料
博報堂:博報堂生活総研[来月の消費予報・12月](消費意欲指数)