行動経済学は消費者行動や市場に対する分析方法の観点の違いから、経済学に比べ、マーケティングなどの実社会の営みに応用しやすい学問とみなされています。
学問としては新しい分野であるものの、行動経済学の教授が2000年代に入って次々にノーベル経済学賞を受賞したこともあり、注目が高まっています。
本記事では行動経済学の代表的な理論や効果を提示したうえで、その理論に基づいた整体院の経営で活用できる集客手段を解説します。
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行動経済学とは
行動経済学とは1950年代ごろから研究され始めた学問で、経済学の知見と心理学の知見をかけあわせた分野のことをさします。
経済学の数字的概念に加えて、人間の深層心理や傾向を分析し統計学的に捉えられた学問です。
行動経済学においてはじめてノーベル経済学賞を受賞したのは、2002年のダニエル氏でしたが、2013年にはロバート氏が、2017年にリチャード氏がを獲得しています。
経済学と行動経済学の違い
経済学と行動経済学は、人間が常に合理的に動くかどうかという前提認識に違いが見られます。
経済学は、人間が利益や価値をより多く得るために合理的に判断することを前提とし、利益追求のための経済活動の仕組みを研究します。一方、行動経済学は、実際の人間は非合理的な判断をしてしまうということが前提で、そのような人間の習性や傾向を紐解く学問といえます。
行動経済学の仮説の証明は実験によって実証や分析をされることが多く、こうした研究結果は消費者行動にも通ずるものがあり、マーケティングにおけるブランディングや広告、プロモーションなどにおいても活用されています。
マーケティングは1920年代に市場の捉え方の違いから経済学とは独立して学会が形成されましたが、消費者や市場の分析は行動経済学の観点から語られるものも多くあります。
整体院の集客に役立つ行動経済学の理論とは
行動経済学には、プロスペクト理論やフレーミング効果、バンドワゴン効果、ウィンザー効果など人間の深層心理を説明する様々な理論や現象があります。これらは、整体院の集客における提供サービスの検討やメニュー名の表記、口コミ運用などの場面で重要な役割を果たすものです。
プロスペクト理論
プロスペクト理論とは、行動経済学においてはじめてノーベル経済学賞を獲得したダニエル氏が提唱した理論で、行動経済学の基礎といえるものです。
プロスペクト理論では人間は損失をおそれるため、利益を得ている場合はリスクを避け、損失している場合はリスクがあっても損失を大きくしないようにするという性向を示しており、感情などの先入観により非合理な行動をとってしまうことが言及されています。
整体院の運営においては、新規顧客を獲得したい場合に、このような人間の性質に向き合う必要が出てきます。
たとえば、リスクリバーザルという顧客の不安を取り除くことで購入を促す技術があります。整体院であれば、返金保証、分割払い、カスタマーサポートといった補償を充実させることで、リスクを回避する顧客の心理的なハードルを下げ、サービスの利用につなげられるでしょう。
フレーミング効果
フレーミング効果は、物事の伝え方を変えると、相手に伝わる印象も変わるという人間の印象に関する性質を説明した心理現象です。
たとえば、整体院でマッサージのメニュー名を決める時、「肩のマッサージ」よりも「疲労回復肩こり軽減マッサージ」とうたった方が、顧客は効果があるような気がして、施術メニューを選択する可能性が高いといえるでしょう。
こうしたメニューを考える際には、サラリーマンであれば疲労回復、女性であればむくみ解消や冷え性改善など、各ターゲット層が関心を持つ題材を盛り込むようにするとよいでしょう。
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バンドワゴン効果
バンドワゴン効果は、ある商品やサービスを高く評価している人が多いほど、その流れに便乗してほかの顧客がその商品やサービスを利用するようになる心理効果です。
口コミは、たくさんの人が応援している商品やサービスに関心が集まることを示したバンドワゴン効果の代表例といえます。
複数の店舗を掲載しているサイトでは、口コミの数が多く支持されている店舗が選ばれる可能性が高くなります。
整体院の運営においては、来店した顧客に積極的に口コミを書いてもらえるよう促し、まずは口コミを集め、口コミ数や評価が集まったら「顧客満足度◯%」「口コミ数◯件」というように、数や評点を売りにすることでサービスの信憑性が高まるでしょう。
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ウィンザー効果
ウィンザー効果とは、当事者から得た情報よりも第三者から得た情報に強い信頼を寄せる心理効果です。
昨今口コミマーケティングが注目を集めるようになりましたが、口コミがほかの顧客の購買行動に影響を与える重要な情報源であることも、ウィンザー効果によって説明されることがあります。
バンドワゴン効果やウィンザー効果の観点から、集客数を伸ばすために口コミを増やすことは有効な手段といえるでしょう。
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行動経済学を顧客満足度の向上に活かす
行動経済学には、顧客満足度向上に関係する人間の性質を説明した法則や心理効果があります。
人間が経験を判断するときに盛り上がりと終わりの体験に最も影響を受けることを示したピーク・エンドの法則に基づき、顧客が退店する瞬間までサービスに気を配ることで、顧客に良い印象を残せます。
損失が出ると認識していても、投資した分を惜しんで投資を継続してしまうコンコルド効果を応用して、割引券を配布することで、再来店につながる可能性が高まります。
ピーク・エンドの法則
ピーク・エンドの法則とは、人間が経験を判断するときにピーク、つまり盛り上がる部分とエンド、つまり終わりの部分の体験に最も影響を受けることを示した法則です。
たとえば、全体としてつまらない映画でも、佳境と終わり方が面白いと良い映画であったと判断してしまう場合があります。整体院のサービスでも同様に、施術後の接客がおざなりになると、施術自体は良くても接客がいまいちと判断されてしまいかねません。
顧客が退店するエンドのところまで「サービスはいかがでしたか。」「お身体をお大事にしてください。」というように丁寧な接客や声かけを心がけることで、サービスを的確に評価してもらえ、再来店につなげられる可能性が高くなるでしょう。
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サンクコストとコンコルド効果
コンコルド効果とは、投資を続けた結果損失が出ると認識していても、投資した分をもったいないと感じて投資を続けてしまうことをいいます。
たとえば、クレーンゲームで500円を投じて挑戦した商品が獲得できないとき、人は先に500円使ったのだからなんとしても入手したいと考えます。
これは商品そのものに価値を感じているのではなく、それまでに投じた資金を惜しく感じるからです。投資額に比例してその商品を獲得できる確率があがるわけではありません。
このように投資した分を回収できない支出のことをサンクコストといいます。
整体院であれば、たとえば施術中のための衣類を購入してもらい施設で預かるようなシステムがこの効果を発揮するでしょう。専用の服を購入したのだから使わなければと考え、来院回数の向上が期待できます。
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サンクコストとは
行動経済学の理論で戦略的な整体院経営を
経済学は、合理的に判断する人間が利益追求のための経済活動の仕組を研究する学問ですが、行動経済学は、非合理的な判断をする人間がどのような習性や傾向があるのかを紐解く学問です。
行動経済学を整体院の経営に活かす場合、損失を過大に評価してしまう人間の心理を説明したプロスペクト理論に基づき、満足できなかったら返金を保証することで、利用機会の損失を抑えられます。
フレーミング効果に基づき、新たなメニュー名を検討し、ターゲット層に与える印象を良い方向に変化させるといった活用方法が考えられます。
ほかにも、盛り上がりと終了時の経験が人間の印象に最も影響を及ぼすことを説明したピークエンドの法則に基づき、退店時の接客を意識することでリピーター獲得に繋げられる可能性もあります。
さらに、口コミの重要性については、第三者の顧客の評価の数や内容を意識してしまう心理を示したバンドワゴン効果やウィンザー効果によって説明されています。
このような消費者心理を知っておくことで、理論的に整体院の集客を進められるようになるでしょう。
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