レストランや販売、時間や空間を提供し対価を得るビジネス、またその他後日渡すことになる商品の受け付けなど、顧客と対面するビジネスでは、接客する人の態度も含めて評価されることが少なくありません。
商品を提供する側にとって、決められた手順で決められた商品や過程を提供すれば、仕事は完了したとみなすこともできます。
そのような共通認識がある一方で、相手のニーズをくみ取る意識の在り方や、必要なものを的確に差し出す能力を「ホスピタリティ」といい、近年ビジネスにおいても重要視されています。
この記事では、ホスピタリティの意味について、サービス業におけるホスピタリティの事例、社内においても大切なホスピタリティ提供の方法についてを紹介します。
ホスピタリティとは
ホスピタリティとは、丁重なもてなしを行うことや、歓待の気持ちを指します。
顧客や来客のニーズをくみ取った望ましい態度を生み出す精神を意味しています。簡単に言えば、おもてなしの気持ちともいえるでしょう。
思いやりを受け取った側だけでなく、提供する側が受け取り手の満足に喜びを感じることもまたホスピタリティの特徴です。
「サービス」と似たような文脈で使われる「ホスピタリティ」ですが、前者は振る舞いや行動のことであり、後者は振る舞いや行動を決める意識のあり方を意味しています。
「日本ホスピタリティ推進協会」の定義では、サービスの提供を通じた社会や自然とのかかわりも「ホスピタリティ」の中に含まれるとされています。
ホスピタリティとサービスの違い
ホスピタリティと似たような文脈で利用される言葉である「サービス」の語源は、ラテン語のservus(奴隷)にあたります。奴隷は主従関係の中で主人に頼まれた業務をこなすという役割を持っており、指示通りに行動することが「サービス」の元来の意味です。
ホスピタリティと異なる点は、提供側と享受側の力関係が対等でないことです。
たとえば、注文された料理を顧客(主人)に提供することが「サービス」だとすると、食べやすいように取り分け用の小皿を提供することが「ホスピタリティ」にあたります。
ホスピタリティはどんな業界で求められる?
ホスピタリティは、特に顧客に直接関わり合いを持つサービス業において重要とされてきました。
ホテルや旅館などの宿泊業界、料理を提供する飲食業界、観光案内などを含む旅行業界などが例に挙げられます。これらの業界をまとめて「ホスピタリティ業界」と呼ぶ場合もあります。
しかし、どのような業界であっても顧客は存在し、満足度の高いサービスの提供が求められることに変わりはないため、業界にかかわらずホスピタリティを意識した運営を意識することが求められます。
ホスピタリティを意識することのメリット
顧客がより良い状態でサービスを受けられるような行動をとることがホスピタリティです。
サービスの提供相手である顧客の考えを意識することは、サービスの受け手である顧客だけでなく、事業全体に様々なメリットが生まれます。
1. 顧客満足度が向上する
ホスピタリティを意識することの第一のメリットは、顧客に満足してもらえる可能性が高くなることです。
顧客の要望にそって必要なものを提供するだけでなく、直接的に表現されていない顧客のニーズをくみ取り、それへどのような対応ができるのかを考え抜いて接客することは、顧客満足度を向上させます。
結果として口コミサイトで良い口コミがもらえることも増えるため、その投稿を見た新規顧客の獲得につながる場合もあります。
2. リピーターを獲得できる
一度顧客がサービスを受け、満足のいく対応ができた場合、「もう一度訪れたい」と思ってもらえる可能性が高まります。
リピーターを獲得できれば、新規の顧客への宣伝よりも継続的な利用につながる確率が高くなります。
安定的な売り上げの確保を目指すには、リピーターを増やすことが大切です。
ホスピタリティは顧客のサービスへの印象を左右します。ホスピタリティは顧客がリピーターとなるかどうかを重大な要素であり、最終的に事業の売上げにも影響を与えるでしょう。
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3. 従業員のモチベーションアップにもつながる
ホスピタリティは、顧客の必要としているものを感じ取り、判断し、相手に満足してもらうことを目的とした行動指標であり、行動です。定例業務をこなすこととは異なります。
ホスピタリティは顧客の満足度を高めることにつながり、満足した顧客は従業員に感謝の言葉をかけたり、直接声をかけずとも、口コミを通じて良い評価をつけたりします。
従業員にとってもは、自分で考え行動した結果、顧客から感謝されたと感じ、仕事へのモチベーションが高まります。
従業員にも顧客のニーズに的確に応えるためにはどのような行動が必要かを自発的に考える習慣が身に着き、工夫して業務を進めることができます。
サービス業におけるホスピタリティの例
ホスピタリティが特に必要とされる宿泊業やレストラン業では、顧客がどのようなものを必要としているのかを見極めることが大切になります。
レストランとホテルを舞台とした場合に、ホスピタリティに基づけばどのような発想ができ、どのような行動がとられるのかを一例として紹介します。
1.レストランの事例
レストランにおいて、来店客の顕在的でないニーズをくみ取り、サービスの形に落とし込む一例に「サプライズの演出」があります。
サプライズの演出は、事前予告のない記念日への祝福を意味します。たとえば予約を受けたときに「恋人の誕生日祝い」などの情報があれば、デザートのお皿に特別なデコレーションを施したり、その提供の際にBGMを通常と異なるものに変えたりといった方法が考えられます。
要求しなくても特別扱いをされることで、来店客はレストランに対して良い印象を抱くだけでなく、同じく特別な店舗として記憶することになるでしょう。
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2. ホテルの事例
予想外のサービスをすることだけがホスピタリティにあたるわけではありません。たとえばホテルであれば、徹底的に清潔で快適な環境を提供することもホスピタリティの一部です。
机やベッドの上など目に見える範囲はもちろん、床など見えにくい部分までごみを残さず、徹底的に綺麗な状態にすることで、利用する顧客は安心して快適に過ごすことができます。
他にも、ごみ箱にあるもの以外は、宿泊客にとって重要な物品である可能性があると判断し、清掃業務などの必要がある際にだけ、最低限の移動にとどめる行動もホスピタリティの1つの形です。
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職場におけるホスピタリティの例
ホスピタリティの意識はサービスの提供現場だけでなく、職場でもポジティブにはたらくことがあります。
1.認識を共有し、職場環境を改善する
従業員が楽しくやる気をもって仕事に向き合うためには、職場での人間関係が重要な要素となります。
良い人間関係を築くためには、経営者、管理職、従業員など、職場で働くすべての人がお互いに思いやりを持って働くことのできる環境や、共通認識を打ち立てることが重要です。
企業側としては、「どうすれば従業員が楽しみながら快適に業務を遂行できるか」に焦点をあて、ホスピタリティをもって接する行動が求められます。
2. 労働条件を見直す
ホスピタリティを表現する簡潔な方法の1つに、労働条件をより良くすることを目的に見直すことが考えられます。
具体的には、給与体系や労働時間、福利厚生が牛業員にとって満足のいく条件であるかを検討したり、長期的な休暇を取りやすい環境をつくったりすることです。
「従業員を大切に考えている」という事実を表現することが重要です。
ホスピタリティはサービス業だけでなくすべての事業者にとって大切
ホスピタリティは事業の差別化につながります。顧客の満足度が高ければ、リピートにつながったり、口コミでいい評価がもらえたりなど、プラスの効果が期待できます。
サービス業において特に注目を集めてきたホスピタリティですが、相手の立場に立ち考えふるまうことは、様々な場面で物事をスムーズに運ぶのに役立ちます。
たとえば、企業の内部でホスピタリティが発揮される場合に、ポジティブな変化をもたらすことがあります。従業員の立場に立った待遇の考案により、結果として生産性があがったり、消費者に提供する商品の品質や接客態度が改善したりといったことも考えられます。
消費者と直接的にかかわりのない事業であったとしても、ホスピタリティに対する理解と実践について理解を深めることが、事業の成長を左右することもあるでしょう。
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