飲食店の経営に際しては、さまざまな法律が存在しています。
衛生面や安全面など店舗運営に関する法律、従業員を雇った場合の労務に関する法律、過度なサービス提供を禁ずる法律や、消費者の望まない受動喫煙を防止するための法律など、事業者はこれらの法規制に遵守して経営を行う必要があります。
新型コロナウイルスの感染拡大により、サービス提供にあたっては徹底した管理が求められている今、飲食店事業者であれば対応が必須である法律について解説します。
飲食店に必須の食品に関する法律を解説
新型コロナウイルスの感染拡大防止にあたり、飲食店では清潔で衛生的なサービス提供が一層求められています。
2020年6月から新たに義務化されるHACCPをはじめ、飲食店を運営するにあたり、必須とされる法律について解説します。
食品衛生法:HACCP義務化で高い衛生基準が求められるように
食品衛生法とは、安全な飲食提供にあたり必要な規制や措置を定め、異物混入で人の健康を損なうなどの飲食によって起こりうる危害の発生防止するための法律です。
食品や添加物、食器や割烹具、容器・包装資材に加え、幼児が口に含んでしまう可能性のある乳幼児用のおもちゃなどが規制の対象であり、安全が確保されていない不衛生な食品の販売や配布は禁止とされています。
また2020年6月、改正食品衛生法の施行により、食品を扱う全事業者に対し「HACCP(ハサップ)」の義務化が行われることとなりました。HACCPとは、「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析に基づく重要管理点)」の略で、元々は1960年代のアポロ計画に際に、宇宙空間で食事の安全性を確保するために提唱され、現在は世界中で採用されている管理手法です。
食品衛生管理手順・提供工程を「見える化」し、食品衛生管理の一連の流れである「7原則12手順」に基づいた管理基準が適切に実行されているかどうか、継続して監視・記録することにより、衛生水準の維持向上を目的としています。今回の制度改正により、対象事業者は猶予期間である2021年6月までに、HACCPの導入が必須となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大、そして翌2021年に控えている東京オリンピック開催に伴い増加が見込まれる訪日外国人への対応などの背景を踏まえ、徹底した衛生管理は飲食事業者にとって急務といえるでしょう。
食品リサイクル法:食料廃棄物のリサイクルに関する法律
食品リサイクル法は、正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」と呼ばれており、食品廃棄物の発生抑制および減量化により、最終処分量を減少させ、肥料や資料などへの有効活用推進を目的とした法律です。
再利用が難しい廃棄物に関しては、燃料として電気エネルギーにし(熱回収)、それでもなお残った物に関しては脱水・乾燥などで減量後に処理する仕組みとなっています。また、食品関連事業者は廃棄物の年間排出量が100トンを超える場合、国への報告義務が生じ、「判断基準」に基づいた再生利用促進が義務付けられています。
なお、フランチャイズチェーン事業者については加盟店も一体とみなされ、フランチャイズ展開事業者の廃棄物総量に加盟店の総量を加味し、100トン以上の多量発生事業者であるかどうかの判断がなされるため、注意が必要です。
風営法:夜間に酒類を提供する場合は届け出が必要
食品に関する上記2つの法律に加え、夜間に飲食物を提供する場合は「風営法」にも留意する必要があります。
正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」とするこの風営法は、店舗が位置する周辺環境や子供の育成において、悪影響を及ぼさないことを目的としています。
対象店舗は、キャバクラやホストクラブなど夜間のみ営業する店舗に限らず、深夜帯に酒類を提供するお店カフェやレストラン、バーなどの店舗も対象となっています。
このような事業を営む際は、保健所で「飲食店営業許可」を取り、さらに0時以降にお酒を提供する場合にはこの許可に加え、「深夜酒類提供飲食店営業」の届出も必要となっています。
アルバイトを雇う際に知っておきたい法律
飲食店におけるアルバイト雇用の際には、幾つかの法律を遵守する必要があります。
従業員の働く基本ルールが定められている労働基準法、保険について定められている労災保険法、パートタイマーの待遇について定められているパートタイム・有期雇用労働法について解説します。
労働基準法:従業員が働く際のルールを定めた法律
全ての労働者に適用される「労働基準法」は、従業員の給料や労働時間、休憩時間や休日、有給休暇など労働条件に関する最低基準を定めた法律です。
適用範囲は広く、正社員やアルバイト・パート、外国人労働者や、就労ビザを得ていない不法就労者であっても適用されるなど、店舗で雇われ給料を得ている労働者であれば、雇用形態・国籍に関係なく対象となっています。
労働基準法に違反した場合には、罰金や懲役が科せられる場合があるため、飲食店が従業員を雇う場合は、法律の内容をしっかり理解し、適切な労務管理を行う必要があります。
労災保険法:従業員を雇用している場合は原則加入
「労災保険法」は労働災害補償保険の法律で、アルバイトやパートを雇う場合も労災保険の加入義務があることを定めています。
労働者の業務上の事由、または通勤途中の負傷・疾病・障害・死亡等に対し、治療費や補償金・遺族給付金を国が支給する制度です。
なお、2020年9月1日からは「労働者災害補償保険法」の改正法が施行となっています。複数企業に従事している労働者の休業時給付金金額、および労働時間やストレスといった労災認定の評価対象は、これまで1箇所の勤務先に限定していましたが、改正法施行後は全ての勤務先での賃金・評価を合算し行われることとなりました。
原則として、労働者を雇用している日本国内の全ての事業者が制度適用の対象となっており、仮に事業主が労働保険加入の手続きを怠った場合、従業員の労災の給付金全額を負担する可能性があるため、忘れずに加入することが重要です。
パートタイム・有期雇用労働法:パートタイマーの権利を守る法律
「パートタイム・有期雇用労働法」とは2020年4月1日から施行された、パートタイムや有期雇用労働者などの雇用形態に関わらず、従業員が待遇に納得し雇用を維持するために定められている法律です。
飲食店の事業主はこの法律に基づき、同店舗内における正社員と非正規社員の不合理な待遇の差をなくさなくてはならず、例えば基本給や賞与などの待遇差は禁じられています。
中小企業への猶予期間は2021年4月1日までとなっているため、厚生労働省による同一労働同一賃金ガイドラインを参考にし、自店舗内で不合理な待遇がないかどうか確認しておく必要があるでしょう。
その他注意が必要な法律
食品衛生法や労働基準法は、飲食業を営むにあたり主となる法律です。
こうした法律とは別に、知っておいたほうが良いとされる、飲食業に関わる法律を紹介します。
改正健康増進法:店内での原則禁煙を定めた法律
2020年4月1日から施行された「改正健康増進法」は、望まない受動喫煙を防止するために健康増進法を改正した法律であり、飲食店を含むさまざまな施設が対象となっています。
これまでの健康増進法では屋内の禁煙・分煙化が努力義務だったのに対し、改正後は完全に義務化され、施設内に設置する各種喫煙室に応じて標記の掲示なども義務となっています。
2020年3月31日時点で既に営業を開始しており、資本金が5,000万円以下かつ客席面積が100平米以下の店舗については例外となっているものの、対象施設であるにも関わらず違反した場合には罰則が課せられます。
また、「喫煙専用室は飲食不可」「加熱式たばこ専用喫煙室のみ飲食可」などの新ルールも設けられているため、遵守に際し改正法の内容を改めて把握することが重要です。
景品表示法:高額なクーポン券は法律違反の恐れも
景品表示法とは、商品やサービスについて品質・内容・価格等を偽って表示することを規制する法律です。飲食店では景品表示法に基づき、メニューや広告で原材料や写真などを偽ってしまうと、違反と見なされる場合があります。
また、景品表示法ではクーポンの利用についても規制しています。クーポン利用によって商品やサービスを無料提供することを「総付景品(そうづけけいひん)」と呼び、総付景品には顧客との取引額に応じて限度額が定められています。
取引額が1,000円未満であれば200円までのクーポン、取引額が1,000円以上であれば取引額の20%までのクーポンの利用のみが認められます。これらの規定を超える高額なクーポン券の発行は、法律違反となる恐れもあるため、注意が必要です。
コロナ禍の影響で賃料猶予などの動きも
新型コロナウイルスの感染拡大によって2020年5月に発令された緊急事態宣言とその延長などによって売り上げが減少した事業者を支援するため、政府は「家賃支援給付金」を行っています。
家賃支援給付金の対象者は、資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者を対象で、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人、個人事業者は、フリーランスも含含まれており、幅広く支援をする仕組みとなっています。
7月14日からすでに申請が開始され、中小企業には最大600万円、個人事業主には最大300万円が半年分の家賃として8月4日から支給が始まっています。
申請書類が多いことから、受給までには2週間よりかかるとしています。
飲食店を開業する際は、関連する法律をもう一度確認しよう
飲食店の開業にあたっては、食品衛生面のみならず、雇用面や利用者の健康面などさまざまな規制が存在します。また、翌2021年の東京オリンピック開催を控え、国内外から注目が集まっていることなどを背景に、健康促進に向けた法改正が活発に行われています。
営業規模や雇用有無によって努力義務なのか、あるいは法的義務なのかが変わり、違反した場合は罰金などが課せられるため、事業者は提供サービスを詳細に確認し、トラブルの無い経営を目指す必要があります。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、飲食店事業者は衛生面や雇用面には最大限の注意を払い、慎重な姿勢でサービス提供にあたることが今一層求められているといえるでしょう。
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