賛否分かれる「ワクチンパスポート」その問題点を3つの立場から探る

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ワクチン接種が完了していることを証明する「ワクチンパスポート」について、飲食店観光施設などへ入る際、提示を義務化する動きが各国で広がっています。国によって適用範囲は多少異なるものの、実施国にはイタリア、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリア、スイスなどが挙げられます。

このようなワクチンパスポートの先行国へ日本から向かう場合に備え、政府も7月26日から「接種証明書」が「海外渡航を目的とした人」を対象に発行を開始しました。

海外ではワクチン接種証明を、海外渡航時のみならず店舗・施設利用時に活用できるようにしており、日本でも「接種済証または接種記録書」を活用している自治体がすでにあるなど、今やワクチンパスポートの本格的な導入はすぐそこまで来ています。

しかし先述の通り海外で急速な広がりを見せている一方、様々な問題が浮き彫りになってもいるのです。

本記事ではその問題点について、「ワクチンを接種できない・したくない人」「行政」「店舗・施設」という3つの立場から見つめ、そこから見えてくる事象や懸念すべきことを考察します。

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1. ワクチン接種できない・したくない人の立場から見たワクチンパスポートの問題点

日本トレンドリサーチは2021年9月12日から17日にかけて、2,000人の男女を対象に新型コロナに関する考え方についてアンケートを実施しました。これによると、ワクチンパスポートには52.9%が「賛成」と半数以上を占めた一方、「どちらともいえない」が25.1%、「反対」が22.1%となりました。

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なぜこのように意見が分かれているのでしょうか。その理由の一つとして挙げられるのが、「ワクチン接種できない・したくない人」の人権的な問題です。

ワクチンは、体質や持病などの理由で接種できない人がいます。

また、接種を受けることは強制ではなく、感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けるものであるとされます。

現在、日本の法務省のホームーページにも「新型コロナウイルス感染症及びワクチンの接種に関連した誤解や偏見に基づく不当な差別は許されません」と明示され、それ以外の機関もこうした啓発を呼び掛けているほどです。

そうした中で登場したワクチンパスポートは、接種しているか否かの2者を分断してしまうのが現状で、海外ではワクチンパスポートの提示義務化へ反対するデモ参加者が多くなっているところがあったり、アメリカの一部の州ではワクチンパスポートの提示義務化自体を法律で禁止しているところもあるなど、すでに義務化を進めている先行各国でも証明書の是非を問う最大の争点になっています。

しかし、個人とは違う視点に変えると、観光業飲食店のことを考え、経済を保つためには、これ以上引き延ばすことはできないという見方もできます。

経済の循環にも繋がる「新型コロナ感染拡大防止」と、接種の自由が認められている中での「個人の人権保障」。これらを両立させることの難しさが伺えます。

2. 行政の立場から見たワクチンパスポートの問題点

日本では、9月1日、各省庁を統率する司令塔組織として行政のオンライン化をはじめデジタル改革を推進する目的でデジタル庁が発足しました。

その大きなミッションの1つに「ワクチンパスポート」のデジタル化があり、同庁は年内の稼働に向け、動きを見せています。

専用のスマートフォンアプリで申請から交付、電子証明書の表示までを完結する仕様で、マイナンバーカードと紐付けて申請させることを想定しているようです。

しかし9月22日付の日本経済新聞の報道によれば、マイナンバーを用いてワクチンパスポートをオンライン申請するシステムを採用した場合、「かえって職員の手間が増える」ことが指摘されています。

その背景として、

  1. オンラインで申請を受け付けても、職員がいったん紙に印刷してからワクチン接種証明書の発行作業を行う仕様になっている点
  2. マイナンバーの記入を求める場合、利用開始前に特定個人情報保護評価(個人情報の漏えいを防ぐため、リスクを分析しそれを軽減するための適切な措置を講ずること)を行う必要がある点
  3. 自治体側のマイナンバーの各種手続き申請に使われる「ぴったりサービス」の普及が進んでいない点

の3点が挙げられているといいます。

さらに、マイナンバーカードの普及率は全体の半分以下と決して高いとは言えず、マイナンバーを必須とした場合ワクチンパスポートの利用者も限定されてしまうでしょう。

利便性を考えると、ワクチンパスポートのデジタル化は必須ではあるものの、プラットフォームとなる具体的な専用アプリの有無、有効期間、利用方法などのそれぞれと、これらに対応しなければならない行政の側でも課題は多く残されているとみられます。

3. 店舗・施設の立場から見たワクチンパスポートの問題点

ワクチンパスポート導入は、新型コロナウイルスに苦しんだ飲食・観光等の業界にとって、希望の光でもあります。すでにワクチンの普及を好機と捉え、ワクチン2回接種者を対象に最初のドリンクを無料にするなど、サービスを実施している店舗もあります。

しかし、先行事例である海外の飲食店を見てみると、課題も見えてきます。

まず大前提として、規制対象となる屋内施設の従業員は、定められた期間までにワクチン接種完了が義務付けられることになります。

次に本題となる経営面ですが、ワクチンパスポート先行国で、バー及びレストランでの提示を義務化しているフランスでは、コーヒー1杯を飲むのにも提示が必要になるため、煩わしさを感じている人も少なくないようです。

そんな中、Webメディア「Impress Watch」にて解説されていたところによると、ワクチンパスポートを必須とする屋内飲食はだいたい3分の1か半分程度の埋まり具合なのに対し、制限のない屋外飲食で「満席」となっているような状況が見られたといいます。

日本でもこのような状況になった場合、ワクチンパスポートの提示を必要としない店舗での「密」が増えることも考えられます。そうした店舗・施設では、それによる感染拡大を防ぐ対策が求められることになるかもしれません。

政府・自治体主導の実証実験も 今後の動向に注目

10月以降、政府や自治体が主体となり「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験が行われており、運用面での課題が探られているところです。

新型コロナの影響で苦しんだ店舗・施設にとっては、離れてしまった顧客を再び呼び込む起爆剤として期待がかかるワクチンパスポートですが、課題も多く残されていると言えそうです。

これから政府がどのような仕様で規定し、社会に取り入れていくのか、その対応次第でも店舗・施設側に変化が求められることがあるかもしれません。その動向に注目し、柔軟に対応できる準備が必要だと言えるでしょう。

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<参照>
ABEMA TIMES:飲食店での“ワクチンパス”提示義務化「面倒くさい」の声も徐々に定着 同時に反対デモも大きく 仏
Impress Watch:ワクチンパスポートの国内利用はどうなるか。先行国の現状
日本経済新聞:ワクチン接種証明、紙より作業増えるオンライン申請
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    口コミラボ編集部

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