民泊の始め方|民泊の種類や事前準備、申請方法について解説

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日本で増え続ける空き家を有効活用する方法の1つに、民泊があります。住宅の一部もしくは全部を宿泊場所として提供するビジネスモデルで、社会問題の解決とインバウンド需要を満たす役割を兼ね揃え、今後も拡充が期待されています。

観光庁の調査によると、2018年から2019年にかけて宿泊者数は右肩上がりで、日本人利用客が大幅に増加しています。観光や旅行を目的とした宿泊以外にも、地域コミュニティやテレワーク場所として活用するなど、用途が多様化しています。(観光庁:住宅宿泊事業の宿泊実績について

さまざまな可能性を秘めた民泊サービスについて、事前準備や必要な手続きなど、知っておくべき知識を紹介します。

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民泊に必要な事前準備

民泊を開始するには、法令に則って準備を進めますが、民泊事業の内容によって対象の法令が違います。また、用途地域によっては民泊の許可が下りない場合もあるため、どれに該当するのか事前調査が必要です。

1. 民泊経営の3種類

2018年に「住宅宿泊事業法」、いわゆる民泊新法が施行され、現在3つの形態に分類されています。営業日数の制限や必要設備など条件が異なりますが、従来に比べ制限が緩くなりました。

  1. 民泊新法…使用する住宅に、台所、トイレ、浴室、洗面設備を備えていることが条件で、一戸建て、共同住宅に関わらず届け出ができます。年間180日以内の営業とすること、住宅宿泊管理業者を介して管理するといった制限があります。
  2. 特区民泊…国家戦略特別区の一部で民泊を運営でき、年間通して営業可能となりますが、2泊3日以上の滞在が必須であることと、国家戦略特別区域法に則った認定手続きに時間を要する点がデメリットです。
  3. 旅館業民泊…旅館やホテル、下宿の施設を設けて運営し、営業日数、宿泊日数の制限もありません。旅館業法に基づき申請します。

2. その土地で合法な民泊施設かを知る

対象物件についても、規制に準拠しているか見極めが必要です。

手持ちの物件であれば、そもそも民泊として利用できるかをまず確かめ、新たに物件を購入する際は以下の内容を理解した上で選ぶと良いでしょう。

土地は、許容される「用途」が決められており、住宅に適した「第一種住居地域」や、銀行や飲食店など大型施設も建てられる「商業地機」、工場を建てられる「工業地域」など13の用途地域に割り振られています。

民泊新法の物件の用途は「住宅」なので、工業専用地域以外であれば問題ありませんが、旅館民宿の用途は「ホテル旅館」なので、各住居地域、各商業地域、準工業地域のみ建設可能です。

マンション物件の場合は、管理規約で住居以外の目的での使用を禁止していることがほとんどですが、中には民泊可能の物件もあるかもしれません。一棟マンションで旅館民泊を提供する場合は、自治体が定める容積率の基準をクリアする必要があります。

3. 各設備の準備と費用計算

物件購入のほかにも、宿泊サービスを提供するために必要な設備や備品、届け出には費用もかかってきます。初期費用として、100万円程度あれば安心です。

  • 宿泊者が使う、寝具やタオルなど
  • 冷蔵庫、空調、電子レンジなど必要な家電や家具類
  • 自動火災報知機や誘導灯などの消防設備
  • 民泊届け出にかかる費用(数千円~、行政書士へ依頼する場合は30万円程度)

4. 納税・確定申告の把握

利用者からの宿泊料など収入があった場合は、納税および確定申告が義務付けられています。

対象物件が自身の居住用の家や部屋であれば、所得は「雑所得」に該当し、年間の売上げが20 万円を超えると住民税を申告します。

一方、賃貸物件の場合は「不動産所得」にあたり、少しでも利益が生まれれば確定申告が必ず必要です。普段から収支を帳簿に記録しておく必要があります。

民泊を始めるまでの流れ

民泊という形態で宿泊サービスを提供するためには、見てきたように、物件が条件に適合していること、設備を整えること、各種届出が必要です。

続いて、民泊で宿泊客に来てもらうまでの具体的な工程を説明します。

1. 自治体へ事前相談

民泊事業の種類により届け出先が異なりますが、初心者にとって複雑な部分もあるため、いずれにしても各自治体旅館業法担当窓口に相談すると安心です。

所在地の用途地域や、物件が建築基準法や消防法などに適合しているかなど、正確な情報を入手できます。また、届け出様式の記載方法についても理解でき、記載漏れなどを防げます。

2. 営業許可の申請/3つの区分により異なる

民泊新法は、消防署による検査ののち、国土交通省が運営するポータルサイト「minpaku」からオンラインで登録し、その後、物件所在地の自治体窓口へ書類を提出します。

届け出から通知書発行までは1週間から10日程度です。

<参照>民泊制度運営システムの利用方法 | 民泊制度ポータルサイト「minpaku」

次に、特区民泊ですが、消防署へ申請後、物件所在地を管轄する保健所に特定認定申請を行い、認定書の交付を受けます。事前相談から営業開始まで、約2か月ほどかかります。

旅館民泊は、物件所在地を管轄する保健所に申請し、建物検査を受け、保健所から許可書が交付されたら営業開始できます。およそ2~3か月程度かかります。

3. 民泊サイトの登録

営業開始ができる状態になったら、集客のために民泊サイトや宿泊サイトへ物件を登録します。複数のサイトへ掲載する場合は、ダブルブッキングなどに注意が必要です。

また、掲載するコンテンツの中で、写真選びは非常に重要です。室内の写真は、光の量や撮影の位置など考慮が必要なため、撮影スキルのあるプロのカメラマンに委託するなどして品質の良い写真を掲載します。

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申請手続きの必要書類や注意点

最後に、3つの区分それぞれの申請手続きについて、必要な書類や注意点を解説します。

「旅館業民泊」の場合

営業許可を取るためには、旅館業法のほかに、消防法や建築基準法、都市計画法など、各種法令や自治体が定めた条例の基準を満たすことが必要です。

このため、申請先である保健所を始め、知自体の建築指導課や建築審査課、消防署での事前確認をします。

その結果、要件を満たしていることが確実であれば、保健所に許可申請の書類を提出します。

「特区民泊」の場合

特区民泊の特定認定申請には、25平方m以上の居室であることや、建物の用途が「住宅」「共同住宅」「寄宿舎」であることなど物件の詳細事項が含まれているため、図面資料などを持参して自治体の担当課へ相談します。

消防法については、延床面積で基準が設定されており、消防署窓口で確かめておくと良いでしょう。消防署への申請が完了すると、消防法令適合通知書の取得が可能です。

さらに、近隣住民に対し民泊事業について説明し、保健所へ特定認定申請を行う流れになります。自治体によって管轄窓口が違うため、ホームページなどで調べておくと戸惑いません。

「民泊新法」の場合

事前相談は、届け出先である保健所や自治体の生活衛生課、消防法の所管である消防署など各所で行います。

法律自体が施行されて間もないことと、自治体によって条例の内容がさまざまであるため、然るべき場所で確実な情報を基にチェックします。

消防法に則り必要設備を準備した上で、消防法令適合通知書を取得し、民泊制度運営システムから申請書と提出書類一式を送信します。一部、郵送での対応が必要なものもあります。

種類により形態が異なる民泊、インバウンド対策にも

民泊サービスは余剰資産を活用したものも少なくなく、不動産の所有者や経営者にとってまたとないビジネスの機会です。同時に宿泊者にとっても、コストパフォーマンスの良さやホテル宿泊とは違った体験ができる場として貴重です。

万全の状態で場所を提供できるよう設備面の準備や手続きを進めると同時に、国内や訪日外国人の利用者にとって満足度の高い空間作りを意識することも、アフターコロナでのV字回復の波にのる手助けとなるでしょう。

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