新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、飲食業界は時短営業や休業を要請されるなど、厳しい状態が続いています。
そんなコロナ禍の中でも、業績を維持したり売上が好調な業態が、「焼肉」と「回転ずし」だといわれています。焼肉店では倒産店舗数が過去10年で最少となったほか、回転ずしチェーン大手の「スシロー」と「くら寿司」では売上高が前年度比でプラスになるなど、好調を維持しているようです。
本記事では、特にコロナ禍での「回転ずし」の好調に注目し、解説します。
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コロナ禍では「回転ずし」と「焼肉」が強い?
日本フードサービス協会によると、2020年の外食産業全体での年間売上高は、前年比15.1%減と調査開始以来最大の下げ幅となりました。
また、2020年の倒産件数も業界全体で780件となり、こちらも過去最多となったことが帝国データバンクの動向調査で発表されました。
一方、2020年の焼肉店の倒産件数は14件で、前年度比では33.3%の減少となり過去10年で倒産件数が最も少なくなっています。売上高では2020年10月と11月に2か月連続で前年同月比プラスとなりました。
回転ずしは、業界全体の2020年の売上高が約7,200億円で、前年度比で約3%の減少にとどめています。
このうち大手の「スシロー」では、2020年9月期決算の売上高が前期比2.9%増の2,049億円、「くら寿司」は2020年10月期決算の国内売上高が前期比0.5%増の1,231億円で過去最高を記録しています。
これらのことから、コロナ禍の実店舗経営において、回転ずし・焼肉の業態が比較的好調を維持していることがうかがえます。
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行きたいお店・食べたいメニューランキングで、1位2位を寿司・焼肉が占める
調査会社「ファンくる」が2020年5月に行なった「緊急事態宣言解除後に行きたいお店」調査では、1位が焼肉、続いて2位に寿司という結果になりました。また、グルメ情報サイトのぐるなびが発表した「2021年に食べたいメニューランキング」で、1位が焼肉、2位に寿司という結果が出ており、外食先としての「焼肉」と「寿司」の需要の高さが示された結果だといえます。
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回転ずし店が好調を維持する理由:プチ贅沢ニーズ・デリバリー対応
コロナ禍で回転ずしが好調を維持している理由として、「プチ贅沢」と「デリバリー・テイクアウトへの対応のしやすさ」の2点が重要なキーワードとなっていると考えられます。
<「プチ贅沢」ニーズ>
日本フード協会は、コロナ禍での回転ずしが人気に対して「ごちそう感覚を手軽に楽しめる回転ずしの需要が高まっている」と見解を示しています。
テレワークや外出自粛などによって人々が自宅での巣篭もりを強いられた結果、手ごろな値段で家では食べられないごちそう感のある回転ずしがプチ贅沢として人気が高まっているようです。
コロナ禍で増えたデリバリー・テイクアウトの需要も、回転ずしが好調な理由の一つだと考えられます。回転ずしはもともと出前に対応していたこともあり、コロナ禍で急な方向転換や対応が求められなかったことも大きいといえるでしょう。
たとえばスシローでは、デリバリーの強化を継続して行なっており、2021年1月26日の時点で、デリバリーの対象店舗をUberEatsで282店舗、出前館で211店舗、DiDi Foodで41店舗確保しています。
また2月26日には、JR我孫子駅に関東初となるテイクアウト専門店を出店しています。
くら寿司・スシローは、業界の中でもさらに好調
くら寿司とスシローが好調な一方で、二社に次ぐ大手のかっぱ寿司と元気寿司では2021年3月期に減収減益や赤字が見込まれています。また先ほどお伝えした通り、回転ずしの業界全体でも2020年の売上高は約7,200億円と前年度比約3%減少となっています。
このことから、くら寿司とスシローの好調さは、コロナ禍のニーズによる追い風だけでなく、それぞれの企業戦略やコロナ禍への対応の素早さが結び付いた結果だと考えられます。
くら寿司・スシローの戦略とは
では、コロナ禍で好調を維持しているくら寿司とスシローは、どのような戦略や対応を実施しているのでしょうか。4つの施策をピックアップしてご紹介します。1. コロナ禍で求められる「非接触」への対応
コロナ禍では、感染対策の観点から人と人との接触を減らす「非接触」でのサービスなどが求められています。
<非接触への対応:くら寿司>
くら寿司では、2020年11月17日に「非接触型新モデル店」の1号店となるくら寿司東村山店をオープンしました。
店内には人数などを入力するセルフ案内機が設置されており、席番号などが書かれた紙が出力されるため、店員と接触することなく席に着くことができます。
また、注文はタッチパネルで行いますが、さらに接触を避けたい人は表示されているQRコードを読み込むことで、自身のスマートフォンからも注文できます。
<非接触への対応:スシロー>
スシローでも、非対面型システムを導入した店舗のオープンが相次いでいます。
専用システムでチェックイン後に席まで案内してくれる「自動案内」や、セルフレジでの会計、スシローの公式アプリから注文して冷蔵ロッカーから受け取れる「自動土産ロッカー」など、非接触で安心して利用できるシステムを導入しています。
2. くら寿司:鬼滅の刃とのコラボレーション
くら寿司は2020年9月4日から10月31日にかけて人気アニメ「鬼滅の刃」とのコラボレーションキャンペーンを展開しました。「鬼滅の刃にぎり 三種盛り」「炭治郎のぶっかけうどん」などキャラクターをイメージしたオリジナルメニューや、鬼滅の刃の景品が入ったビッくらポン(※寿司5皿で1回まわせるガチャゲームのこと)、鬼滅の刃のオリジナルクリアファイルの配布などが大きな話題になりました。
Go To Eat キャンペーンの開始も追い風となり、2020年のくら寿司の国内既存店売上高は、9月が前年同月比107.9%、10月が126.1%、11月が133.8%と3か月連続で前年を上回る結果となっています。
3. スシロー:コスト管理で営業利益率を高く保つ
スシローが他の回転ずしチェーンと大きく差をつけているのは「営業利益率」の高さです。2019年度の営業利益率を回転ずしチェーン大手各社で比較してみると、スシロー(7.31%)、くら寿司(4.02%)、かっぱ寿司(0.83%)、元気寿司(5.50%)と、スシローの営業利益率が突出していることがわかります。
スシローがこのような営業利益率の高さを維持している背景には、徹底的なコスト管理を可能とした「回転すし総合管理システム」の導入があるようです。
このシステムでは、入店時の受付機で来店客の人数やファミリー数を把握してレーンに流す商品の種類に反映したり、寿司皿の裏に1枚1枚ICチップを搭載して商品の売れ行きやレーンに流れている距離によって廃棄したりと、リアルタイムで売れ筋状況を把握し、総合的なコスト管理を行っているということです。
4. スシロー:旬や季節ごとのキャンペーン戦略
スシローは季節や旬などに応じた「かに祭」や「超まぐろづくし」「てんこ盛り祭」などさまざまなキャンペーンや特別限定メニューを戦略として頻繁に展開しています。こうしたキャンペーンを次々に打ち出して販売促進をしていくことによって、リピート客や新規客を獲得しています。
また、コロナ禍でのプチ贅沢ニーズが増したことで、特別限定メニューの「お得ネタ」「豪華ネタ」は販売促進として効果が高くなっていると考えられます。
くら寿司・スシローの好調の理由は、ニーズに素早く対応する企業努力にあった
「寿司」はコロナ禍で生まれた「プチ贅沢」や「テイクアウト・デリバリー」ニーズへの親和性が高い商品といえます。しかし、コロナ禍の回転ずし市場で、実際に売上高が前年比プラスとなっているのは、大手ではくら寿司とスシローの2社に留まりました。
つまり、コロナ禍での「寿司」需要の追い風だけではなく、コロナ禍で生まれたニーズに素早く対応し、自社商品の強みを活かした戦略やキャンペーン展開などの企業努力を惜しまなかったことが、コロナ禍の厳しい状況の中でも好調を継続している理由だといえるでしょう。
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<参照>
流通ニュース:日本フードサービス協会/12月外食売上15.5%減、2020年15.1%減下げ幅過去最大
帝国データバンク:飲食店の倒産動向調査(2020年)
FNNプライムオンライン:「焼肉店」の倒産が過去10年で最少…理由は“換気”? コロナ禍でも好調な理由を担当者に聞いた
産経新聞:スシロー、くら寿司はコロナ禍でも加速 都心に出店攻勢
PR TIMES:緊急事態宣言解除後に行きたいお店 1位:焼肉、2位:寿司
PR TIMES:回転ずし、コロナ禍で初の市場縮小へ
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食品産業新聞社ニュースWEB:くら寿司「鬼滅の刃」キャンペーン終了後も好調維持、3か月連続で前年超え/2020年11月既存店売上高
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