営業時間の短縮や、夜間外出や飲酒に対するネガティブなイメージを背景に、飲食業の苦境が続きます。
東京商工リサーチが発表する店舗数や飲食業の倒産件数から、コロナ禍の飲食業界の状況について解説します。
大手居酒屋14社の店舗数、1,000店以上減少
東京証券取引所に上場している大手居酒屋チェーン14社の店舗は、四半期ごとに100~200店舗ペースで閉店が続いています。新型コロナウイルス感染拡大前、2019年12月末の同14社の合計店舗数は7,200店でしたが、2021年3月末には6,152店となりました。コロナ禍を経て1,048店が減少したことがわかります。
コロナ前からの減少率が最も大きかったのは、「金の蔵」などを運営する三光マーケティングフーズです。コロナ前は108あった店舗数は2021年3月末時点で51となり、比率にして52.7%まで減少しています。
唯一店舗数が増加したチェーン店は「串カツ田中」を運営する串カツ田中HDで、コロナ前は273店舗だったところ、現在は279店舗となっています。同社では、物流の効率化で原価コスト削減に取り組んでいます。
このような状況の打開策として、居酒屋業態を展開する複数の企業では、唐揚げやチキンバーガーなどを専門に取り扱うテイクアウト店舗を開始するなど新たな業態への進出や転換が進んでいます。各社はこれにより売上減少の事態に立ち向かっています。
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倒産件数は改善、理由はコロナ禍の支援金
店舗数の減少が著しい居酒屋業態ですが、実は2021年上半期の飲食業の倒産件数は、2020年と比べて減っています。
東京商工リサーチの調べによれば、2021年の上半期の飲食業倒産は330件です。この数字は前年同期と比べると21.0%減であり、2015年同期の312件に次ぐ2番目の低水準にとどまっています。
同レポートでは、飲食業倒産件数の減少はコロナ禍の各種支援によるものであることが伝えられています。
その一方で、飲食店の倒産理由では新型コロナ関連が43.9%を占めており、コロナ禍の長期化が経営に深刻な影響を与えていることが確認できます。
倒産企業の大半が小・零細規模
倒産した企業の資本金別では「1千万円未満」の店舗が288件で構成比87.2%、負債額別では「1億円未満」の店舗が288件で87.2%でした。小・零細規模の倒産が大半を占めています。
これは、小・零細規模の飲食店は手元資金に乏しく、経営が立ち行かなくなってしまうことが原因にあると推測されます。時短営業や休業要請に関連した協力金の支給が遅れることで、こうした動きがさらに拡大することもありえると東京商工リサーチのレポートでは指摘しています。
倒産した飲食店330件を業種別に見ると、日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」が91件で最も多く、「酒場・ビヤホール」が79件、「食堂,レストラン」が52件、「喫茶店」が34件という結果になりました。
まとめ
数字のうえでは2021年上半期の倒産件数が低水準とされる飲食業ですが、その内実はコロナによる制約に太刀打ちできない小・零細企業であることが推察されます。
大手チェーンでは新たな商品を新たな売り方で切り抜けようとする動きが顕著です。「地元のお店」のような小規模な事業展開をしてきた飲食店でも、テレワークやステイホームといった新たな生活スタイルでの食事シーンに寄り添えるような商品、売り方を模索していく必要があるでしょう。
またこうした取り組みについて、顧客に気づいてもらうことも同じく大切です。張り紙等のオフライン施策に加え、ネット検索された際に気づいてもらえるようGoogle マップの情報を整えたり、デリバリーやテイクアウトのサービスに登録したりといったオンライン施策の打ち手があります。場合によってはクラウドファンディングという手法も検討に値します。それぞれの施策での成功事例など、効率よく情報収集していくとよいでしょう。
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<参考>
東京商工リサーチ:「大手居酒屋チェーン」店舗数調査 上場14社の店舗数、新型コロナ前から1000店超の減少
東京商工リサーチ:2021年上半期(1-6月)「飲食業の倒産動向」調査
Money Zine:大手居酒屋チェーン、コロナで1,048店舗が閉店 一方、飲食店の倒産件数は各種支援で低水準に