サービス産業事業者のサービス品質を評価するシステムの1つにおもてなし規格認証があります。
おもてなし規格認証は経済産業省によって設けられた規格認証で、宿泊施設や飲食店ではおもてなし規格認証をさまざまな形で導入しています。
この記事では、おもてなし規格認証の概要、認証までの流れや基準、導入事例について解説します。
おもてなし規格認証とは
おもてなし規格認証とは、経済産業省が国内のサービス産業事業者のサービス品質を「見える化」するために設けた規格認証です。またただサービスの質を可視化するだけでなく、サービス産業事業者が規格認証の取得を目指す過程でのサービス品質底上げも目的の1つとしています。
以下では、おもてなし規格認証の狙いや概要について解説します。
目的はサービスの活性化と生産性の向上
おもてなし規格認証はサービスの活性化と生産性の向上を目的として作られた規格認証です。
日本のGDPの大部分を占めるサービス業において、サービスの質は必要不可欠な要素の1つです。
おもてなし規格認証では顧客・従業員・地域社会の満足度を高めるための取組30項目を総合的にチェックしています。
おもてなし規格認証の存在により、サービス業に携わる企業や従業員にさらにレベルの高いサービス提供を目指してもらい、業界全体を活性化させる狙いがあります。
認証は4段階
おもてなし規格認証では、提供するサービスのレベルによって4段階の認証を設けています。
4段階の認証は紅認証、金認証、紺認証、紫認証と色で分けられており、右に行くほど高いレベルのサービスを提供している証となります。
それぞれの認証に必要な基準を満たした事業者には、おもてなし規格認証を受けている事業者としての証である登録証や認証書が贈られます。
認証までの流れ
いずれの認証を目指す場合にも、まずは紅認証を受ける必要があります。紅認証を受けるには、おもてなし規格認証のホームページから確認・同意事項への承諾と確約をした上でメールアドレスの登録をします。
メールアドレスの登録によって仮登録が完了するため、その後は本登録とチェックシートの記入を済ませて登録証・マークのダウンロードができるようになります。
金認証以上の認証を目指す場合には、おもてなし規格認証への登録を行い紅認証を受けた後に、認証機関の選択および審査料の振込をして審査を依頼します。
審査によって改善が必要であると判断された場合には改善指導があり、無事審査を通過した場合には認証料の振込をして認証シールの発行が可能となります。
認証のランクをあげるには?
おもてなしやサービスの品質がチェックされることはもちろんですが、一口にサービスと言えど評価基準にはさまざまなものがあります。
認証のランクをあげるには、どのような基準を満たす必要があるのでしょうか。
以下では、それぞれの認証の基準について解説します。
紅認証の基準
紅認証は、サービス向上の取組に意欲的なサービス提供者に贈られます。
紅認証を受けるためには、サービス業務マネジメントに関する30項目のうち、「既に実施している」または「今後実施したいと思う」取組が15項目以上必要ですが、適合基準は自己判断となります。
すべての項目を既に実施していなければいけないわけではなく、今後の努力目標として設定しても良いため、紅認証を受けるためのハードルは低いと言えるでしょう。
金認証の基準【有償】
金認証は、お客さまの期待を超えるサービス提供者に贈られます。
金認証を受けるためには、サービス業務マネジメントに関する項目のうち、「既に実施している取組」が15項目以上必要です。
また、上記条件を満たした上で、インバウンド対応に関する項目のうち、「既に実施している取組」が5項目以上ある場合にはトラベラー・フレンドリー金認証の取得も可能です。
紺認証の基準【有償】
紺認証は、独自の創意工夫が凝らされたサービス提供者に贈られます。
紺認証を受けるためには、サービス業務マネジメントに関する項目のうち、「既に実施している取組」が21項目以上必要です。
また、上記条件を満たした上で、インバウンド対応に関する項目のうち、「既に実施している取組」が5項目以上ある場合にはトラベラー・フレンドリー紺認証の取得も可能です。
紫認証の基準【有償】
紫認証は、お客様の期待を大きく超える「おもてなし」提供者に贈られます。
紫認証を受けるためには、サービス業務マネジメントに関する項目のうち、「既に実施している取組」が24項目以上必要です。
また人材育成をはじめとするサービス品質向上のための取組や、業務効率化や顧客満足度向上のための独自の取組をしていることも条件となります。
紺認証よりも一層厳しい判断基準が設けられており、紫認証を取得している事業者はまさにサービス業のスペシャリストといえるでしょう。
おもてなし規格認証の導入例
おもてなし規格認証の基準については前述の通りですが、店舗レベルでは具体的にどのような形で導入されているのでしょうか。
以下では、おもてなし規格認証の導入例について、実際の店舗の取組と併せて解説します。
株式会社ワンダーテーブル ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店
株式会社ワンダーテーブルが運営するプライムリブ専門店であるロウリーズ・ザ・プライムリブ赤坂店は、2019年度の紫認証を獲得しました。紫認証は、おもてなし規格認証の最高峰にあたります。
同店が紫認証を獲得した要因とも言うべき特徴がフィロソフィー経営です。
全社員に向けたフィロソフィートークを毎週配信しており、配信内容について店舗内の営業ミーティングで意見を発表しています。
フィロソフィートークではフィロソフィーの共有だけでなく、多様なテーマについて真剣に考える機会を提供しています。
キープ・ウィルダイニング
東京都町田市を中心に飲食店を展開する株式会社キープ・ウィルダイニングでは、地域活性化を目指しており、店舗で使用する食材における地場食比率の向上や、アーティストやアスリートに対する支援の充実化による文化的な街づくりを推進しています。
上記のような店舗外へのはたらきかけもさることながら、覆面調査や社内表彰制度の導入など、店舗内での人材育成にも力を入れていることが認証獲得にあたっての評価ポイントとなりました。
株式会社西村屋 西村屋本館
兵庫県の城崎温泉近くに位置しており、創業から160年以上の老舗旅館である西村屋本館は、2019年に紫認証を獲得しています。西村屋本館ではES(従業員満足)とCS(顧客満足)のバランスを重視しており、顧客に満足してもらえる旅館を実現するために、従業員の労働環境を整備しています。
また、生産性や効率だけにとらわれず顧客の期待に応えるために部屋食を取り入れています。
AIやITなどの人の手によらない技術を各所に取り入れつつも、人が人を接客することにたしかな価値を見出しており、西村屋のおもてなしは高く評価されています。
外から評価されることでさらなるレベルアップの機会に
おもてなし規格認証は、宿泊施設のおもてなしについてさまざまな観点から評価し、一定の基準を満たした施設に対して与えられる規格認証です。
本来目に見えないおもてなしのレベルを可視化することは、宿泊施設やそこで働く人々にとってのモチベーションにつながります。
また、宿泊客が利用施設を選ぶ上でも、第三者組織によって、一定の基準に基づき評価されているということはポイントの1つとなるでしょう。
言い換えれば、飲食店や宿泊施設ではおもてなし規格認証の取得を目標として設定することにより、従業員のモチベーション向上やおもてなしの質の底上げを図ることが可能となるでしょう。
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