新型コロナウイルスの影響を受けて苦戦が続く飲食業界ですが、その波は大手チェーン店にも及んでいます。
中華系の大手外食チェーン・熱烈中華食堂日高屋(以下:日高屋)を経営する株式会社ハイデイ日高は、首都圏600店舗展開を目標に掲げて強気の経営戦略を推し進めてきました。しかし新型コロナウイルスの影響からは逃れられず、昨年12月末に2004年12月の上場以来、最終利益が初めて赤字になる見込みだと発表しました。
では、これまでにない逆境に置かれた日高屋は、今後どのような経営戦略を実施していくのでしょうか。
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2004年以来、初の赤字に転落
日高屋が上場したのは、1999年のことです。それ以降売上高が前年同期を下回ることはなく、さらに営業利益についても、2004年2月期からずっと増益を続けてきました。しかし2021年2月期の売上高速報では、営業、経常、当期全てにおいて損益が赤字に転落しました。
この赤字への転落の背景には、ラーメン業界全体が苦境に立たされている現実があります。
2021年1月に帝国データバンクが発表した内容によると、2010年1~12月間のラーメン店の倒産は46件で、過去20年間で最多を更新しています。
成長を続けてきた日高屋、これまでの経営戦略とは
では日高屋は、これまでどのような経営戦略をとっていたのでしょうか。
低価格で提供
日高屋の強みの中でも特筆すべきは、やはり美味しい料理を徹底して低価格で提供している点です。
中華そばが390円、餃子が1皿6個で230円(いずれも税込)、これに半チャーハン270円をつけ、1,000円でもお釣りがくるというコスパの良さで他店を圧倒してきました。
この低価格を実現するため、セントラルキッチンで大量にプレクッキングを行うことにより店舗での調理を簡単にし、人件費を抑制しています。
競合の近くに出店
そして低価格の実現により可能になったのが、駅近で、しかも競合関係にあるファストスード店のそばに出店するという戦略です。これはあえてマクドナルドや吉野家といった人気のファストフード店の近くに出店することで、「今日は気分を変えて日高屋へ」という消費者のニーズを狙ったものだといいます。
それが実現できるのも、コストパフォーマンスの点でそれらのファストフード店に対抗することが可能だからだといえるでしょう。
アルコールの販売に力を入れている
一方「薄利多売」と称されるように、低価格の場合は利益の幅が狭いのが一般的です。ところが日高屋の場合、昨年まで10%以上の営業利益率を10年も継続するなど利益率の高さでも知られています。
その秘密は、利益率の高いアルコールの販売に力を入れている点にあります。「中華そば+餃子+ビール」でも1000円以下という価格設定にしたことでついでに頼もうという消費者心理を刺激し、アルコール飲料が売上高に占める割合が約15%にも達しています。
さらに駅近という立地を生かし、仕事帰りや一次会後の客を取り込むことを狙った営業時間の設定を行っています。基本的な営業時間が11時から翌2時までで、24時間営業の店舗も存在します。
コロナを乗り越えるための秘策は?
しかし新型コロナウイルスの影響で、これまで実施してきたアルコール需要の取り込みを狙った深夜営業といった戦略が活かせなくなったことが、今回の赤字転落の大きな要因になっています。
では、コロナ禍を乗り越えるために、どのような策を講じているのでしょうか。
新業態「パスタ店」展開
厳しい局面の中、日高屋が取り組み始めたのが経営の多角化。その第一弾となるのが、新業態「パスタ店」の出店です。
2020年8月、東京都町田市に同社初めての店舗形態となるスパゲッティ専門店「亀よし食堂」を出店しました。小田急線町田駅から徒歩5分以内と、駅近出店というコンセプトは日高屋と同様ですが、日高屋が男性会社員がメインターゲットであったのに対し、同店では「女性」「若年層」といった、新たな顧客層の開拓を狙っています。
さらに同社では、中華料理分野においても日高屋とは異なる形態の店を出店し続けています。
2020年2月に「おばあちゃんの原宿」として知られる東京都豊島区の巣鴨地蔵通前にラーメン専門店「中華そば神寄」1号店をオープン、さらに炒め物を中心にメニューを展開する「炒爆中華食堂真心」を東京都新宿区と埼玉県大宮市にオープンしており、今後新たな出店計画もあるとしています。
テイクアウト・デリバリーの展開
コロナ禍における利益確保のために、多くの飲食店が力を注いできたのが「テイクアウト・デリバリー」です。
しかし日高屋の場合、そもそもラーメンがテイクアウトには適さないメニューだといえます。さらに主力の客層が男性会社員で、新宿や池袋といった会社の最寄りの主要駅からテイクアウトの袋を下げて電車に乗り込む需要は少ないと見込んでいたといいます。
これらのことからテイクアウトやデリバリーにはあまり重きを置いておらず、売り上げに占める比率も2%以下でした。
しかし日高屋には餃子のようにテイクアウトに適したメニューもあり、需要の高まりもみせていたことから、実は新型コロナウイルスの強い影響を受ける前の2019年10月から検索&予約受付サイト「EPARK」に参加し、同12月にはLINEと連携したテイクアウト予約サービス「LINEポケオ」にも参加するなど、テイクアウトにも力を注ぐ経営戦略に舵を切っていました。
その結果、新型コロナウイルスの強い影響下にあった2020年5月には、店外飲食の売上比率が9%強にまで上昇し、従来の顧客層とは異なる女性客の取り込みにも成功しています。
今後課題になるのは「Uber eats」に代表される外部デリバリーのさらなる活用ですが、その場合手数料分などを上乗せすると低価格路線の維持が難しくなる一方、自社で配達員を抱えるのも難しいという岐路に立たされています。
同社の本格的な経営回復案は未だ発表されていませんが、今後テイクアウト向きのメニューの開発などを含め、どのように店外飲食の比率を伸ばしていくかが経営回復のカギだと見込まれています。
他のラーメン店の生き残り戦略は?
それでは日高屋以外のラーメン店では、この時期に生き残りをかけてどのような経営戦略を展開しているのでしょうか?
あるアンケート調査によると、「コロナ禍でも食べたい外食」1位がラーメンで、根強い人気を見せています。このようにラーメンに対する需要そのものが落ちているわけではないという現実を踏まえ、デリバリーに適したラーメンの新商品を開発することにより、デリバリーやテイクアウトを強化している店舗があります。
その代表格が横浜・家系系列の「町田商店」で、デリバリー用に麺とスープを別パッケージにしてコンビニのチルド麺のような状態にすることで、配達中に麺が伸びたりこぼれたりするのを防止することを可能にしました。
こうした新商品の開発で売上を伸ばす事例が出てきたことから、ラーメン店「一風堂」のように、それに追随する動きも活発になっています。
店内飲食だけに頼った売り上げ回復に限界が見える中、店外飲食需要を掘り起こす戦略も必要となっているようです。
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<参考>
株式会社ハイデイ日高:IR情報
株式会社ハイデイ日高:2021 年2月期2月度売上高速報についてのお知らせ
東洋経済ONLINE:日高屋が「圧倒的に儲かっている」根本的な理由
ーーあの日高屋が「パスタ店」に乗り出す切実な事情
PRTIMES:ラーメン店の倒産、初の年間40件超えで過去最多 コロナ禍で客足戻らず厳しさ浮き彫りに
熱烈中華食堂日高屋:ビジネスモデル
マネー現代:日高屋、王将に町中華…「ワンコインラーメン」が実現できる理由
Business Journal:「餃子の王将」と「日高屋」、なぜ業績に明暗?テイクアウト&デリバリー需要の獲得で大差
Rocket News 24:【Uber Eats】家系ラーメンデリバリーを急速に拡充中の「町田商店」を自宅で味わってみた