「ゴンチャ(貢茶:Gong cha)」は2006年に台湾の都市・高雄で生まれた台湾茶のティーカフェブランドです。
2021年現在で世界20か国に1,500店舗を出店しているゴンチャは、日本国内の店舗数が7月16日のセブンパークアリオ柏店のオープンをもって100店舗を突破しました。
タピオカミルクティーブームが去り、さらにコロナ禍で飲食店には厳しい状態が続いている昨今でも、ゴンチャ ジャパンは数年以内に国内400店舗展開を目標として今後も出店を加速していくとしています。
本記事では、ゴンチャが店舗数を伸ばし、売り上げをあげている理由を解説します。
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タピオカの現在 ブームは去り、"定番"の人気メニューに
2018〜2019年は「第三次タピオカブーム」とも言われます。
実はタピオカが1992年頃に一度目のブームを迎えており、その後諸説あるものの2000年代に第二次ブームが起きたとされます。
しかし「第三次タピオカブーム」後の2020〜2021年には、タピオカ人気はいったんの落ち着きをみせています。
東京商工リサーチによると、2019年9月から2020年3月までの期間にタピオカ関連事業に参入した企業数は52社(うち新設法人は24社)であった一方、2020年4月から8月では13社(うち新設法人は2社)にとどまりました。
しかし2020年4月から8月は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けていることから、新規出店数が減少したのはタピオカの人気が極端に下がったためということでもなさそうです。
各ブランドはブームを一過性で終わらせないようタピオカ入りドリンクの種類を増やしたり、その他のメニューを用意したりなど模索を続け、タピオカは人気メニューとして定番化してきています。
ゴンチャが店舗数を伸ばし、売り上げをあげ続けている5つの理由
ゴンチャはタピオカブームに乗りつつも、ブームが過ぎ去った後も店舗展開に支障がないよう戦略を固めていたようです。
ここでは、ゴンチャがタピオカのブーム後も日本で好調を維持できている理由を5つの戦略にまとめて解説します。
1. ブランディングでは「王道を外す」戦略
2019年の東洋経済新聞によるゴンチャ ジャパンの葛目良輔社長(※1)への取材によると、ゴンチャは日本市場への進出にあたっていくつかの「王道を外す」ブランディングを実施したと語っています。
<ブームだったタピオカミルクティーを前面に押し出さない>
ゴンチャでは主役はあくまでお茶であり、タピオカはトッピングの1つとして扱われています。
タピオカミルクティーは確かに大きなブームとなりましたが、終わるとすぐに飽きられてしまうため、カフェという市場の中で「お茶のチェーン」という潮流を作りたかったということです。
<コーヒーをメニューから外す(※2)>
ゴンチャが出店している20か国のうち、当初は日本でだけメニューからコーヒーが外されていました。
海外では「コーヒーがあれば男性が頼めるからカップルでも入れて客層が広がる」という考えがありますが、日本ではお茶好きな男性やコーヒー嫌いな人のための選択肢の1つとなるように「お茶のお店」であることを前面に出し、「お茶におけるスタバ」のようなポジションを目指してきたといいます。
<初期の出店先に競争が激しい竹下通りやショッピングモールを選択しない>
たとえば原宿の竹下通りや、ショッピングモールなどではタピオカ店の競争が激しく、家賃のコストもかかる一方で飽きられたらすぐに廃れてしまうため、初期の出店先には選択していません。
ゴンチャでは、ユーザーの自宅から学校や勤務先などの目的地までの動線内で「(自宅近くの)日常」「ターミナル駅」「(目的地近くの)非日常」の3つを選択肢にそれぞれ出店しているとのことです。
※1 葛目社長は退任され、現在は前田仁志氏が社長を務めています。
※2 現在ではカフェオレなど、一部コーヒーメニューが追加されています。
2. フード拡充など、タピオカに頼らないメニュー展開
ゴンチャでは2020年10月より初めてのフードメニューとして三種類のお粥の提供を開始し、ストレートティーとのセット価格もメニューに登場しています(2021年7月7日に販売終了)。
また、出店当初は提供していなかったコーヒーメニューも2020年6月以降順次取扱店舗を拡大して、顧客層の拡大と来店頻度の向上をはかっています。
タピオカドリンクは夏場に需要が高く冬場に需要が落ち着く傾向があるため、冬場には「生姜入りホットスムージー」のようなホットドリンクも提供するなど、随時ニーズに合わせたメニュー開発を行なっています。
3. テイクアウトに元々対応していたことがコロナ禍で強みに
ゴンチャはテイクアウト中心のティースタンド形式の店舗をメインとしており、店内にイートインスペースを設置している店舗でも席数を数席しか設けていない店舗がほとんどです。
タピオカブームが全盛期だったころは、タピオカドリンクを片手に持ち歩くことが一種のファッションアイテムのような扱いだったこともあり、駅前ではテイクアウトしたタピオカドリンクを持つ若い世代の姿が多く見られました。
コロナ禍でテイクアウトの需要はこれまでよりも高くなったといえます。ゴンチャのドリンクは密封されていてストローを刺さずに持ち帰ることもできるので、持ち運びのしやすさなどがコロナ禍での強みとなっていると考えられます。
4. スタッフに応募するのは9割が「ゴンチャのファン」高い接客力を維持
ゴンチャ ジャパンの葛目良輔社長は2019年の東洋経済新聞のインタビューの中で、ゴンチャのスタッフ求人に応募してくる人のうち9割がゴンチャのファンだと語っています。
ブランド自体のファンであるスタッフのブランディングへの理解や情熱に支えられて、ゴンチャの単価に見合うサービス品質と店舗での体験という価値を利用者に提供しています。
編集部が以前実施した「口コミ」に関する調査では、飲食店で低評価の口コミがついてしまう理由の第一位は「接客」という結果が出ています。
関連記事【独自】飲食店口コミ 低評価の原因は?130件の口コミ分析調査
接客レベルを高く維持できていることも、ゴンチャのブランディングに大きく影響していると考えます。
5. 何より「美味しいタピオカ、お茶を提供している」ことが一番の理由
ゴンチャは店舗展開のブランディングや季節的なキャンペーンの取り組みなど、さまざまな顧客にリーチする運営を行っています。
しかし、ゴンチャが顧客の人気を集める第一の理由は「美味しいタピオカと茶を高品質で提供している」点であると考えられます。
もともと、ブランド名の「ゴンチャ:貢茶」は、お茶の発祥地である中国で古来に、希少な再高品質のお茶を皇帝に献上する「貢茶」が由来です。
店舗で提供されるお茶は上質なお茶の産地と名高い台湾の阿里山(ありさん)の茶葉など、厳選された上質な茶葉を毎日店舗で丁寧に抽出し、抽出後4時間以内のものだけを提供しています。
また、人気の高いタピオカは本場台湾から直輸入して店舗で丁寧な仕込みを行い、作ってから5時間以内のものを提供している自慢の逸品です。
ドリンク提供時には「タピオカが固くなってしまいますので1時間以内にお召し上がりください」とスタッフからの声かけがあり、美味しく飲んでもらうための工夫を欠かさない細やかな心配りが感じられます。
このように飲食店において「サービスの品質が高い」ことは何よりも重要です。いくらマーケティングに力を入れていても、サービス自体の質が悪ければ顧客に売り込むのは難しいでしょう。
反対にサービスの質が良ければ、いずれ消費者の口コミを通じて広まっていきます。
Twitter:ゴンチャ@gongcha_japan の投稿
まとめ
グローバルに20か国で展開し日本国内では100店舗を達成したゴンチャは、ブームだったタピオカにのみ比重を置くのではなく主役はあくまでお茶として「お茶のお店」であるというブランディングを大切にしてきました。
また、安定した質の高いサービスがファンを作り、そのファンをスタッフとして獲得することでさらに質の高い接客力の確保につながったのです。
2021年7月8日からは、コロナ禍で国内の多くの人々が旅行を自粛せざるを得ない中、旅行気分を味わえる「旅するゴンチャ」という期間限定商品を販売開始しています。
コロナ禍でも様々な商品やキャンペーンを打ち出し、さらに新規出店も加速しているゴンチャに今後も注目です。
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<参照>
PRTIMES:世界有数のグローバル ティーカフェ ブランド「ゴンチャ」が 日本国内100店舗目となる「セブンパークアリオ柏店」を7月16日(金)オープン
東洋経済新聞:タピオカドリンク「ゴンチャ」が大人気のワケ
ITmediaビジネスONLINE:第3次タピオカブームを振り返る
東京商工リサーチ:「タピオカ屋さん」動向調査
NIKKEI STYLE:原田流「ゴンチャ改革」 おかゆとコーヒー出す狙い
日本経済新聞:タピオカ、意外に粘り腰? 都心部で失速も企業は倍増
ゴンチャ:「ゴンチャ」がコーヒー?! 2020年6月17日(水)よりグランデュオ立川店にて販売開始!「黒糖ミルク カフェ オ レ」も
マイナビニュース:タピオカ「まずい」の噂の真偽は? 嫌い派の意見を調査
ゴンチャ公式サイト:世界のゴンチャで人気のメニューが日本上陸!「旅するゴンチャ」7/8(木)開始!