日本国内におけるEC市場は好調で、BtoCにおいては10年連続右肩上がりで成長しており、2019年には19.4兆円規模に達しています。2020年以降はコロナ禍の休業要請などにより、ECサイトを開設し売上げを維持しようと試行錯誤する事業者が増加中です。
ECサイトでの販売促進は、サイトヘの流入を増やすことと、サイト上で購買に至る率を上げることの両輪が必要です。前者は、Web広告やSEOなど既に対策を講じている企業が多いですが、後者で問題視すべき「カゴ落ち」が盲点になりやすい傾向です。
本記事では、「カゴ落ち」の意味や主な要因、具体的な対策まで解説します。
カゴ落ちは機会損失を招く
「カゴ落ち」という響きからは深刻さをイメージしにくいですが、購入せずに離脱する事象は高い確率で発生しており、企業にとって機会損失となります。
ECサイトへの訪問数をいくら増やしても売上げに寄与しづらくなるため、早急な対策が必要です。
カゴ落ちとは
カゴ落ちとは、ECサイトに訪問したユーザーが特定の商品を選び「商品をカゴに入れる」「カートに追加」などのボタンを押してカートに入れ、その状態を保ったまま購入せず離脱することです。
カート放棄やカート離脱とも呼びます。
ECサイトのカゴ落ち率、日本は平均68.2%
米国のBaymard Instituteが調査したところ、世界でECサイトのカゴ落ち率は平均69.57%で、実際に決済まで完了しているのはわずか3割です。
またイー・エージェンシーによれば、日本においても平均68.2%と高い確率でカゴ落ちが起きており、機会損失額は平均で売上げの2.5倍と、大きなインパクトを与えています。
年々増加傾向のカゴ落ちの要因として、商品選びから購入までのプロセスで、ユーザーの購買意欲が変動しやすいことが挙げられます。カゴの中に商品をキープできる点や購入タイミングを自由に決められる点、入力作業が伴うなど実店舗とのギャップが、ユーザーの手を止めてしまっている可能性があります。
カゴ落ちを減らすには、購買意欲が高い状態を維持したまま決済完了に到達させることがポイントになります。
<参照>
Baymardレポートシリーズ vol.1|お客様が「カゴ落ち」する理由 | Amazon Pay Blog
ECサイト、売上の約2.5倍がカゴ落ちによる機会損失 ~ イー・エージェンシー|カートリカバリー>お知らせ|CART RECOVERY|さぶみっと!|株式会社イー・エージェンシー
カゴ落ちの原因はECサイトの改善と適切なアプローチで解決できる
ECサイトの仕組みを工夫し、ユーザーへのリマインド通知を追加したり、わかりやすいUIに変えることで、カゴ落ちを回避できます。
そもそもカゴ落ちは、自社サイトに訪問し、商品選びまで済んでいる状態のため、ある程度熱量があるユーザーです。購入を阻害する操作や不安要素を取り除けば、購買率アップが見込めます。
カゴ落ちに至った代表的な理由と対策6選
カゴ落ちの理由はさまざまですが、代表的な6つの理由と改善策を紹介します。ユーザーがどこでつまづいているのか、どんな心理で購入に至らなかったのかを把握し、一つひとつ潰していくことが早道です。
理由1.サイトを回遊しているだけで、買う心構えが無かった
調査で約6割のユーザーが、カゴ落ちの理由として「回遊していただけ」と答えています。こういったユーザーはサイトへの再訪で購入につながる可能性が高く、リマインドメールを送りアクセスを促すなど攻めの対策が有効です。
また、他の商品と比較中であることを想定し、早い段階でのアプローチは購入率が上がりやすくなります。
カゴ落ち時点から3時間後、24時間後、7日後の3回配信は高い効果が期待できます。メールを送る際は「カートの中にお買い忘れの商品はありませんか?」「お探しの商品は見つかりましたか?」などの件名で気付きを与えると良いでしょう。
ファッションECの事例では売上げの11.2%がカゴ落ちメール経由との結果も出ており、有効な手段として実証されています。
<参照>EC業界で流行りの「カゴ落ちメール」とは?実現方法と効果を出すコツ | 通販通信ECMO
理由2. 送料や税金、手数料の追加費用が想定より高かった
ECサイトの特徴として、商品の代金以外に送料や手数料が別途発生するため、ユーザーは支払いが想定より高いと感じる傾向にあります。
2021年4月より消費税を含む総額表示が義務化されましたが、合わせて送料も含めた代金を示すことで「送料無料」と表示できるようになり、割高感を軽減できるだけでなく得をしたような気分を抱いてもらえます。
また初期の画面で実際に支払う代金を表示する形式であれば、より誤解が生まれません。
価格で選ぶユーザーも多くいることを年頭に置き、支払合計金額を早い段階で伝えることと、可能であれば追加費用自体を減らすことでコストによる断念を食い止められます。
理由3. 購入するためにはアカウント作成が必要で手間に感じた
ECサイトの手軽さにメリットを感じ、利用しているユーザーも多いため、購入時のアカウント作成が手間で離脱してしまう場合があります。
解決策としては、アカウントを作らず購入可能とするか、アカウント作成は必須なまま、会員限定クーポンやポイント制度などメンバーが得られる特典を明確に示し魅力を伝える方法があります。
また、郵便番号を入力すると住所を自動表示したり、氏名を入力すると自動でふりがなが入るなど手順を簡略化することで、入力途中での離脱を防げます。
理由4. 購入完了までの工程が複雑だった、長すぎた
決済までの画面遷移や入力項目が多かったり、読まなくてはならないテキストが長いと、途中で意欲が失われてしまいます。
最近ではスマートフォンで利用するユーザーも増えており、小さい画面でもストレスなく操作できるサイトにする必要があります。
具体的には、入力フォームを1ページにまとめる、Amazon Payなど他サイトのアカウント情報を引き継げるようにする、色合いや幅を調整しスマホ画面に最適化した表示にするといった対策が有効です。
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理由5. クレジットカード情報の入力に抵抗があった
カード情報の不正利用を恐れ、入力に抵抗を感じるユーザーもいます。事実、ECサイト担当者の約半数が「サイバー攻撃を受けたことがある」と回答しているほどセキュリティリスクは確実に存在し、万一漏洩した場合は社会的信用を失うなど重大な事態になります。
対策としては、根本であるセキュリティ対策が充分かどうか見直し、導入しているセキュリティサービスをサイト上に表示します。例えばNortonのロゴが目立つところに表示されていれば、ユーザーの目からも安全だとわかり、躊躇しにくくなるでしょう。
他にも、通信を暗号化し「https」で始まるURLで公開することや、ページ内にリンク切れや画像の読み込み不可などの事象が起きないように運用することが信頼獲得に結びつきます。
理由6. 入力途中でエラーが表示されたり、動作が遅くストレスを感じた
商品画像の表示や入力内容のチェック処理などで動作が遅いページは、購入意欲を失う要因になります。
ECサイトでは、読み込み時間が0.5秒長くなるだけでコンバージョン率が7%悪化する可能性があると言われており、性能の良し悪しは重要な観点です。
そもそも不正な文字を入力できないhように規制をかけておくことで、エラー発生の予防になります。また、単に「エラー」と表示するのではなく、どの部分が対象なのかやエラー理由について赤字で表示するなど、アシスト機能を充実させると混乱が起きにくくなります。
新商品発売やセール期間などアクセスの集中が見込まれる場合は、あらかじめサーバー処理を強化しておくと良いでしょう。
<参照>【簡単】カゴ落ち率は70%も!各原因・理由と対策ですぐに改善|w2ソリューション株式会社
ユーザーの利便性を考えた対策で購入を促進
ユーザーの声で多かった要因以外にも、安心感や手軽さにつながる対策で購入ハードルを低くすると、離脱率低下やリピート利用が見込めます。
決済方法の選択肢を増やす
便利に感じる決済方法はユーザーによってさまざまなため、バリエーションを増やし選択できるようにします。クレジットカードのほか、コンビニ支払い、電子マネー、代金引換、キャッシュレス決済など複数用意し、柔軟に選べるようにすると利便性が上がります。
ランキング上位のECサイトでは4つ以上の決済方法を導入しているものが多く、顧客満足度が高い理由の1つになっていると考えられます。
返品交換の条件を明記する
ECサイトでは、商品到着後に「イメージと違った」「サイズが合わない」などが一定数起こるため、返品や交換がスムーズにできることがわかれば、購入に踏み切りやすくなります。
例えば、返品、交換の対象となる条件を「よくある質問」としてまとめて記載したり、ご利用ガイドに内容として含めたりするとユーザーも事前に把握しやすく親切です。
ツール利用でサイト分析やカゴ落ちメールを自動化
ECサイトは、ユーザーのアクセスログが残るというメリットがあるため、収集したデータを基にサイトを改良を繰り返したりアプローチを仕掛けると、PDCAの精度が上がります。
Googleアナリティクスで離脱傾向の高いページを特定
カゴ落ちが多い商品や、離脱率が高いページの特定など、Google アナリティクスなどのアクセス解析ツールを利用すればあぶりだすことが可能です。また、施策前後で比較して評価でき、次の一手を考えやすくなります。
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カゴ落ち対策専用のMAツールでリマインドメールを自動送信
カゴ落ちメール専用のツールやMA(マーケティングオートメーション)を導入し、メールを自動配信すると、必要なタイミングで漏れなく催促できます。
カゴ落ちメールは、配信時期や再アクセスを促す内容、送信回数で効果が左右するため、精度高く確実に送れる自動処理は有益でしょう。
カゴ落ち対策は売上げアップだけでなく、ECサイトの最適化も実現
商品の置き去りを防止するカゴ落ち対策により、スムーズな購買が促進され売上げ向上につながります。
カゴ落ち対策で得られる効果はそれだけでなく、サイトの利便性や信頼度が改善することで、これまでよりも多くの商品を閲覧したり、ついで買いをしたり、快適さからおすすめをしてくれるユーザーが増えたりするなど間接的な効果も期待できます。
処理の高速化やセキュリティ対策など、品質改善も心がけながらECサイトを育てていくことが長く活用されるポイントになります。
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