ぐるなびが2020年5月に同サイト会員を対象に行ったアンケート調査では、4割以上の人が「直近1カ月のテイクアウト利用が増えた」と答え、3割以上の人が「今後利用が増えると思う」と回答しました。
テイクアウト需要が高まる中、原価率の設定で悩む事業者も多いでしょう。
本記事では、飲食店がテイクアウトを始める際に必要となる原価率の計算方法や器などの包装費、原価率を抑えるポイントなどを解説します。
「テイクアウトやデリバリ」「お取り寄せ」今後利用したい約4割、「オンライン飲み会」は減少傾向|ぐるなびリサーチ部
ぐるなびの食のオンライン利用動向株式会社ぐるなびが運営する「ぐるなびリサーチ部」では、定期的にぐるなび会員を対象に様々な調査を実施しており、今回は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響下における、オンラインによる食体験の利用動向」を調査しました。調査は2020年6月19日~6月20日に、20代~60代のぐるなび会員1,000名に対しインタネット調査が行われました。食のオンライン利用は、「テイクアウトやデリバリーの注文」と回答した人は利用経験者が28.8%、利用希望者は38...
原価率の基礎知識
原価率とは、売上に対して原価が占める割合のことを指します。
経費などを計算する際に必要な原価率は、テイクアウトの場合、食材だけでなく容器や包装代なども考慮する必要があります。
また業態によって目安となる原価率は異なるため、業態にあった価格設定や原価率を設定することがテイクアウトを始める際にポイントとなります。
原価とは
原価とは、一般的に「商品(料理)やサービスを作る際に使用する費用」のことをいいます。
定義に関しては、さまざまな考え方があります。
食材や調味料などの材料費のみを指す場合もあれば、材料費以外にも外部に調理を委託した場合の外注費、水道代や調理器具を購入した際の経費、従業員などの給料や社会保険料負担費などの人件費などを、原価に含む要素として考える場合もあります。
本記事では、原価とは「調理に直接使用する費用」、すなわち材料費と定義し、テイクアウトの場合は、材料費内に料理をいれる袋や手持ち帰り用容器などの包装代も含むものとします。
原価率の計算方法
原価率とは、売上に対する原価の割合のことを指し、基本的な計算式は以下となります。
「原価率=原価÷売上金額×100(%で示す場合)」
例えば、原価40円のサンドイッチを160円で販売した場合、 40÷160×100=25%となり、原価率は25%になります。
通常は一品ずつ計算するのではなく、月ごとなどまとまった期間で売り上げと原価を計算し、原価率を出すことが一般的です。
定期的に原価率を割りだすことで、季節によって値段が大きく変わる食材費などによる原価の変動をくみ取れるようになり、店舗経営に役立ちます。
原価率は業態によって異なる
実際に飲食店.COMが2017年に行った「飲食店の原価率に関するアンケート」では、多くの飲食店で25%から35%前後の原価率を回答しました。
しかし飲食店の中でも業態によってこの原価率には差があります。
例えばドリンクの種類が豊富なカフェや喫茶店などは25%から30%、弁当屋では35%から45%が多いと言われています。
この原価率の差には食材ロスが生まれやすいかなどの要因が関係します。
さらにテイクアウトを行う場合は、包装代が含まれるため原価率が高くなる傾向にあります。
ただしテイクアウトでも原価率を30%程度に留めることが、安定した利益を出す上での一つの目安とされています。
テイクアウトの原価に入る費用とコストを抑えるポイント
テイクアウトを導入することで、原価率を含めたお店の経費にどのような影響があるか、また、テイクアウトの原価率を下げるための方法について解説します。
テイクアウト特有の経費
テイクアウトには通常営業時の資材に加えて包装用品などを用意する必要があり、新たな経費が発生します。
一方で、テイクアウトを導入することで経費削減、効率化できる費用もあります。
ここでは「本記事で定義した原価率(売上に占める材料費と包装費の割合)に関わる要素」と「原価率には関わらないが経費に関係する要素」に分けて紹介します。
【テイクアウト導入にあたり追加でかかる費用】
原価に関わる
- テイクアウト用梱包材:容器、割りばし、ナプキン、お手拭き、袋など
原価には関わらないが、経費に関係する
- 作業コスト:料理を容器に詰める時間、同梱する備品の準備
- 開発コスト:テイクアウトのための料理開発・検討にかかる時間や費用
- 廃棄コスト:売れ残った商品の損益、廃棄費用
【削減または効率化できる費用】
※すべて本記事で定義した原価には関わらず、経費に関係します。
- 食材ロス削減:受注経路が広がることで食材を使用する機会が増えるためロスを軽減できます。
- 回転率関係なく、売上を上げられる:通常営業では売り上げアップのために回転率を高めなければなりませんが、テイクアウトでは席数や滞在時間などを考慮することなく売上アップにつながります。
- 作業時間、光熱費、食材管理時間の軽減:販売するメニューと個数をあらかじめ決められるテイクアウトでは、同一商品を一斉に作る事ができ、調理時間を短縮並びに光熱費の節約が可能です。また、あらかじめ使用する材料が分かっているテイクアウトでは、食材管理時間も短縮できます。
- フロアでの接客に関わる作業、人件費の削減:通常営業で必要になる接客、配膳、片付けなどにかかる時間を軽減し、人件費の節約につながります。
テイクアウトを行うことで原価は単純に上がってしまいますが、人件費や光熱費においては逆に削減できる費用もあるため、テイクアウトを始める際には、原価率だけでなくその他の経費についても事前に見積もることが大切です。
テイクアウトの原価率を下げる方法は?
テイクアウトの原価率を下げるには経費や管理を徹底することが重要です。
材料費を下げる方法もありますが、野菜など季節や市場によって仕入れ価格が変動するため、通年で行うことは厳しいでしょう。
これに対し容器などの包装材は価格変動が少ないため、見直しやすいポイントです。
さらに食材や包装材の在庫管理を徹底し、必要な分だけ適宜発注すれば、余剰分を廃棄する必要がなくなり原価率を抑えられます。
他にはメニュー構成の再検討、オペレーションの見直し、汎用性の高い食材を使ったメニューを考案するなどが、原価率を下げる方法として挙げられます。
普段から意識すべき原価率を抑えるポイント
お店全体の原価率を抑えるためには、テイクアウト以外でも普段から意識しておいた方が良いポイントがあります。
1. FLコスト
飲食店経営時、特にコントロールが重要になるといわれているのがFLコストです。FLコストとは、食材コスト(Food cost)と人件費(Labor cost)を合わせた経費を指します。
通常人件費、食費共に30%前後が目安といわれ、FLコストを55%から60%に抑えることを目標にすべきとされています。
2. フードとドリンクメニューの比率
ドリンクメニューはフードメニューと比べ原価が安く、仕入れ価格が安定しているという特徴があります。また、ドリンクオーダーによる客単価アップも狙えます。
ドリンクメニューを充実させたり、フードメニューとのセット割引を設けたりと上手く活用すれば、原価率を抑える上で有効でしょう。
3. 原価率の目安に縛られすぎない
原価率は30%が目安といわれていますが、全メニューを目安内に当てはめてしまうと、店舗の売りとなる特徴や他店との差別化がはかりづらくなる可能性があります。
看板料理では目安を超えて材料や質にこだわり、他で原価率を抑えたメニューをつくるなど、全体のバランスを見ながら原価率にメリハリをつけると、店のアピールポイントを作りながら原価率を抑えられます。
原価率を抑えつつ売り上げアップを
原価率とは、売上に対する原価の割合のことを指します。
原価には直接商品に関係する費用と水道光熱費など間接的にかかる費用とがあります。
原価率は業態によって異なりますが30%前後に設定するのが一般的です。
テイクアウトは、店内飲食で提供するメニューよりもも原価率が高く場合があります。
そのため、導入前に包装コストの見直しや原価率が高い商品と原価率を抑えた商品を作り全体のバランスをとるなどなどさまざまな工夫が必要です。
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