2019年10月の消費増税に伴う景気対策として、店舗でキャッシュレス決済をするとポイント還元などが受けられる「キャッシュレス・消費者還元事業」が導入されています。消費者にとっては決済が便利に行える一方、「クレジットカードの利用時に店舗から手数料を請求された」といったトラブルも発生しています。
飲食店がクレジットカード決済を導入するには、店側が手数料を負担する必要があり、消費者に負担させることは規約違反になります。その分利益は減少しますが、業務効率化や売上拡大などの効果が期待できます。
本記事では、クレジットカード決済の動向や概要にふれた上で、クレジットカード決済の手数料や注意点、導入におけるメリット・デメリットを解説します。
クレジットカード決済の動向
2019年11月末、日経リサーチが約1万人を対象に行なった「キャッシュレス決済に関する調査」によると、キャッシュレス・消費者還元事業実施後、クレジットカード決済を行う頻度が「増えた」と答えた消費者は19.0%であり、近年カード決済は増加していまることが伺えます。以下では、増加の背景と主要な決済方法、クレジットカードの種類や導入率について解説していきます。
増加の背景と主要な決済方法
2019年4月に一般社団法人キャッシュレス推進協議会が公表した「キャッシュレス・ロードマップ2019」によると、日本のキャッシュレス決済比率は2016年時点で約19.9%にとどまっています。しかし、主要各国では約40%〜60%台であるため、諸外国に追いつきたい考えから「2025年6月までにキャッシュレス決済比率40%」という目標を掲げています。
消費税が8%から10%に引き上げられた2019年10月1日より、対象店舗にて電子マネー、クレジットカード、デビットカード、スマホ決済などのキャッシュレス決済で支払いをすると、最大で5%のポイント還元を受けられる「キャッシュレス・消費者還元事業」が行われています。電通が2019年に行なった「キャッシュレス意識に関する調査」によると、政府がこの施策をスタートして以降「キャッシュレス決済の利用頻度が増えた」との回答を示した生活者は71.0%となり、キャッシュレス決済を行う人は増加傾向にあります。
具体的な決済方法としては、近年、スマホ決済が新たに普及し始めているものの、現在の日本ではクレジットカード決済が主流を占めています。
主なクレジットカード
世界的に主要なカードは、下記のの6種類です。- Visa
- Mastercard
- JCB
- American Express
- Diners Club
- 中国銀聯(ユニオンペイ)
クレジットカードにVisaやMastercardといった国際ブランドのマークが入っていれば、どこの銀行口座と紐づいているかに関係なく、世界各国のVisaやMastercardが使える店舗で利用することが可能です。
主要ではあるものの、高くはない飲食店でのクレジットカード導入率
MMD研究所とビザ・ワールドワイド・ジャパンは、2019年12月に合同で「【第1弾】 2020年キャッシュレス・消費者還元事業における利用者実態調査」を実施しました。キャッシュレス・消費者還元事業が始まった後の決済に関する項目では、クレジットカードの利用率が87.2%と、現金決済(97.8%)に次いで高い数値を示しています。
一方、食べログ掲載の飲食店方、食べログ掲載の飲食店 901,675店舗のうち、カード利用可能な店舗は2020年の調査時点では僅か217,374店舗 であり、これらのデータから、飲食店へのクレジットカード導入率は24.1%の値に留まっていることが伺えます。
クレジットカードによる決済は主要ではあるものの、決済端末導入済みの飲食店は依然として少ないのが現状です。
クレジットカード加盟店手数料の相場について
飲食店がクレジットカード決済を導入する際には、費用負担が必要です。そのうちの1つとして、加盟店が支払う手数料が挙げられます。以下では、加盟店手数料についての概要や加盟店手数料の相場について解説します。
クレジットカード加盟店手数料とは?
「クレジットカード加盟店手数料」とは、店舗からクレジットカード会社へ支払われる手数料を指します。
消費者がクレジットカードを店舗で利用する場合、消費者はまずクレジットカード会社へ代金を支払うことになります。
その後、消費者が支払った額から「クレジットカード加盟店手数料」を差し引いた残りの額を、クレジットカード会社が店舗へ支払うことにより、消費者から店舗への代金支払い、及び店舗からクレジットカード会社への手数料支払いが完了となります。
加盟店手数料相場は?
加盟店手数料は、取り扱っている商品やサービスにより未回収リスクや決済数が異なるため、業種ごとに異なります。
加盟するカード会社や業種によっても異なりますが、カード会社のホームページでは各業種の手数料を公開していないため、実際と異なる可能性があります。主要業種での一度の決済額に対する加盟店手数料率は以下の通りです。
加盟店の業種 | 加盟店手数料率 |
コンビニ | 1~2 %程度 |
家電量販店 | 1~2 %程度 |
デパートや百貨店 | 2~3 %程度 |
一般小売店や専門店 | 3~5 %程度 |
飲食店 | 3~5 %程度 |
クラブやバー、居酒屋 | 4~6 %程度 |
ECサイト | 5~7%程度 |
風俗店 | 7~10 %程度 |
加盟店手数料は、売上回収リスクの高さと比例する傾向にあります。
クレジットカード決済導入のメリット・デメリット
クレジットカード決済の導入には消費者・店舗両者にメリットがある一方で、デメリットや導入の注意点も存在します。以下で詳しく解説していきます。
メリット:業務効率化、売上拡大
メリットの1つとして、店舗の効率化や売上拡大が挙げられます。2020年1月に経済産業省が発表した「キャッシュレスの現状及び意義」によると、1店舗当たり平均153分もの時間をレジ現金残高の確認に費やしています。クレジットカード決済を導入した場合、レジで取り扱う現金が減ることから、レジ締めにかかる作業時間の短縮が見込めます。それと同時に、従業員による売上現金紛失や盗難等のトラブル減少も期待できます。
また、同調査によると、訪日外国人の約7割が「クレジットカード利用可能店舗が今より多かったら、もっと多くお金を使った」と回答しています。こうした需要をつかむことでインバウンド消費増加も見込めます。
他のメリットとして、データの利活用も挙げられます。クレジットカード利用者の購買情報を分析することで、マーケティングやターゲット層向けの商品・サービスの開発が可能になりま
す。
デメリット:客単価が安い店には痛手、手数料上乗せは規約違反
店舗がクレジットカード加盟店手数料を支払うことは、その分の利益を減らすことと同義です。そのため、客単価が安い店舗にとっては、クレジットカード決済の導入は痛手になってしまいます。
また、クレジットカード加盟店手数料は、カード会社と加盟店との間で発生しているものであり、顧客に手数料分を上乗せすることは加盟店規約で禁止されています。クレジットカードの導入時には注意が必要です。
実際に導入する場合の手続き
クレジットカード決済の導入には、カード会社と直接契約する場合と、決済代行業者を仲介する場合の2通りがあります。
カード会社と直接契約する場合は、店舗が仲介業者を介さずに契約を行います。間に入る業者がいないため、決済手数料は抑えられるものの、この手法をとれる企業は売上額が大きい大手企業に限られます。
決済代行業者を仲介する場合は、決済代行業者が代理交渉を行い、管理システムを提供します。複数のカードブランドとの契約交渉、売上代金の決済管理・入金処理などの運用をすることができます。大手企業に限らず導入できますが、決済代行業者に支払う決済手数料がかかります。
両者を比較すると、売上額がそこまで大きくない企業の場合は、決済手数料はかかりますが業務効率化を図れる決済代行業者を利用する方法、売上額の大きい大手企業の場合は上記に加え、直接契約のいずれかの方法を取ることが望ましいといえます。
顧客の傾向や、各会社の契約内容を踏まえて導入の検討が必要
2019年10月より政府が実施している「キャッシュレス・消費者還元事業」の影響もあり、近年クレジットカードによる決済は増加傾向にあります。クレジットカード決済は店舗のレジ締めなどの事務作業時間を短縮させるほか、マーケティングデータとして購買情報を有効活用することもできます。
また、不特定多数が手にした現金を触ることもないので、店舗の従業員・顧客両者にとってコロナウイルス感染予防にもなります。これらの理由から、クレジットカードは今後より一層利用者が増える可能性が高いといえます。
店舗がクレジットカード決済を導入する場合には2種類の契約方法が存在し、事業規模に合わせて適切な契約方法を選択する必要があります。また、顧客に対する加盟店手数料の上乗せは禁止されています。
店舗は、顧客単価や導入時の注意事項をふまえてクレジットカード導入を検討し、場合によってはPayPayなどのキャッシュレス決済の導入も検討していくことが必要です。
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