街歩きイベントとは、街を歩きながら歴史や観光名所をめぐる体験型の観光イベントです。
名前の通り街を歩きながらツアーやスタンプラリーを開催するため、人同士の密集が避けられ、新型コロナウイルスの流行中でも実施しやすいといえます。また、他地域からの集客効果だけでなく地元住民が地元愛を深め、知識を得るための場としても利用できます。
本記事では、自治体が主催する街歩きイベントを実施する上でのポイントや、開催例などを紹介します。
どのような街歩きイベントがあるか
屋外で実施する街歩きイベントには、参加者が楽しめる工夫がされたいくつかの型が存在します。そこで本項では、街歩きイベントの基本の型を3つ紹介します。
参加者の年齢層や地域の観光名所に合わせて、イベントのイメージを固めてみると良いでしょう。
1. 観光ツアー
1つ目の街歩きイベントは、地域の観光名所を巡る観光ツアーです。
寺院や歴史的建造物、公園や地域のシンボルとなっている場所、漫画や映画のモデルになった場所などをピックアップし、ツアーガイドの解説とともに街を紹介します。
現在開催されているツアーには「墨田区のまち歩きツアー」や京都観光協会の「まち歩きツアー」などが挙例されます。
観光ツアー形式のイベントでは、地元住民や周辺地域に詳しい学芸員などが街の魅力を伝えるケースが一般的です。
そのためツアーに参加する観光客だけでなく、地元住民やツアーガイドを務める人も巻き込みながら、街歩きを楽しむことができます。
<参照>
自由散策まち歩きモデルコース | 一般社団法人 墨田区観光協会【本物が生きる街 すみだ観光サイト】
まち歩き・ツアー・体験イベント一覧|【京都市公式】京都観光Navi
2. スタンプラリー
スタンプラリー形式の街歩きイベントは、参加者が自由に街を散策しながら街中に設置されたスタンプを集めていくシステムです。
観光ツアー形式の街歩きより人との密集率が低く、参加者のペースで観光ができる点が特徴です。集めたスタンプの個数によって景品がもらえるなど、プレゼントを用意しておく自治体が多い傾向にあります。
また新型コロナウイルスの影響により、最近ではスタンプや台紙を使用しないスタンプラリーも増加しています。特定の場所にマーカーを設置し、ARアプリをかざすと画像や映像が表示されるARスタンプも活用されています。
ARスタンプラリーは不特定多数の人がスタンプ台に触れる可能性を軽減し、台紙の印刷代やスタンプを押す人の人件費削減などに貢献しています。
「すみだ銭湯スタンプラリー2019」は7月10日から開催!! 達成者には入浴券やTシャツを進呈! | 【公式】東京銭湯/東京都浴場組3. 謎解きゲーム
謎解きをテーマにした街歩きは、参加者自身が冒険者やトレジャーハンターとして参加するイベントです。
参加者自身が自由に地域を散策する「周遊型」と、オープニングとエンディングが用意されていて、ストーリーに沿ってシナリオが進んでいく「公演型」の2種類が一般的です。
後者の「公演型」は、遊園地や商業施設でよく採用されています。謎解きをモチーフにした街歩きはファミリー層や若年層にもアプローチしやすく、街歩きに積極的な参加者が集まりやすいといえます。
またアプリや特設サイトを利用し、スマートフォンで問題や地図を見ながらゲームを進行することも可能です。
実際に都内では「周遊型」の謎解きイベントとして「吉祥寺謎解き街歩き」や「浅草街歩き探偵録」などが開催されていました。時間制限がなく当日参加ができるため、予約などの手間がなく手軽に楽しめるイベントとして認知されています。
ナゾトキ街歩きゲーム「吉祥寺謎解き街歩き」/吉祥寺謎浅草街歩き探偵録 | 浅草STATION
4. 体験型ワークショップ
体験型ワークショップは、地域ごとに目的を設定して街を散策する街歩きイベントのことです。
代表的な例には、車いすに乗りながら街のバリアフリーに目を向けてみるイベント「WheeLog!街歩き」が挙げられます。車いす体験を通して、スーパーやコンビニの通路の狭さや坂道での大変さを共有し、異なる視点から街を見直します。
2021年3月に開催された「渋谷neo散歩」では、街を独自の視点から観察するワークショップが開催されました。同ワークショップは電線や電飾、路上の植物など、各分野に特化したマニアをゲストに迎え、街の魅力を共有するイベントです。
普段と異なる視点で街を楽しむことで、街の新たな一面に目を向けるきっかけとなります。
街歩き - WheeLog!
渋谷neo散歩 Powered by 渋谷渦渦 |
街歩きイベントのメリット
街歩きイベントを開催することで、自治体や主催団体は地域の活性化や魅力の発信などの恩恵が受けられます。
本項では、街歩きイベントに参加することで得られるメリットを3つ解説します。
1. 地域への集客効果
街歩きイベントの開催に伴い、告知や広告を打ち出すことで、他地域からの観光客誘致が見込めます。特定地域や歴史ある街を知るツアーを謳っているため、学生の社会科見学としての参加や遠足の一環としての参加が期待できるでしょう。
またスタンプラリーや謎解きを開催する場合は、街歩きに要する時間が長くなる傾向にあります。
その際の休憩場所として、飲食店や商店街の店を利用する人も増加し、街が活気を取り戻すきっかけにもなり得ます。
2. 低コストで開催できる
2つ目のメリットは、現時点での街をベースとしているため、低コストで開催できるという点です。
街歩きイベントに参加者が求めているのは、街が現在の姿になるまでの歴史や、その街にちなんだ観光名所の理解を深めることです。
そのため街自体がビジネスとして機能しており、新たに観光施設を建設するなどの必要はありません。街の魅力を伝えるための下準備や人員の確保、魅力的な街歩きシステムの開発に注力できます。
3. 地域のつながり・郷土愛の増加
3つ目のメリットは、地域や住民同士のつながりを増幅できるという点です。
街歩きイベントを開催するにあたって重要となるのは、マップの作成やボランティアの募集など、住民の方々の協力です。準備段階から市民同士が協働し、コミュニティ内での関わりが増えることで、住民同士がより密接した関係を築くきっかけとなります。
また、街歩きイベントの開催は、改めて自分の住んでいる街を見直すことにもつながります。地域の良さを多くの人に伝えようと思考することで郷土愛が増し、より良い街歩きイベントが誕生しやすくなります。
街歩きイベントのデメリット
地域独自の魅力を題材にできる街歩きイベントですが、開催場所や費用面での問題など、抑えておきたいデメリットも存在します。
本項では、街歩きイベントの代表的なデメリットを2つ紹介します。
1. 天気に左右される
屋外での開催が基本となる街歩きイベントは、天候に左右されやすいというデメリットがあります。
悪天候の場合中止に追い込まれる、天候によりスタンプ台の位置が変更になるなどのアクシデントが想定されます。参加者には事前に雨天時の対応や、レインコートの着用を求める注意事項に目を通してもらうなどの工夫が必要です。
2. 時間とお金がかかる
街自体がビジネスとして活用でき、新施設の開発などに費用がかからない反面、イベントツアーの内容や謎解き問題を考えるのには時間がかかります。
時間をかけないためにイベント会社へ外注し、高クオリティのものを用意することもできますが、注文する範囲や予算を決定しておかないと、コストが予想以上にかかってしまう可能性もあります。
ツアー内容や謎解き問題は他地域の実例を参考にし、住民やボランティアの方の協力を仰ぐことで、時間とコストの両方が抑えられるでしょう。
街歩きイベントをするには
地域をアピールする街歩きイベントは、開催する際にいくつかのポイントを抑えておくとスムーズに進行できます。
本項では、街歩きイベントを開催するにあたって重要となる2つのポイントを解説します。
1. 地域の協力が必要
参加者に街の魅力を最大限に伝える際に、自治体関係者だけで街歩きイベントを開催するのは得策ではありません。一般市民や学芸員、街に関する専門知識を持つ人に協力を仰ぎ、できるだけ大勢の人を巻き込むことが重要です。
街歩きイベントの目的には地域でのつながり強化も含まれているため、多く人が参加できると理想的です。
また、時間とコストを抑えるために、専門家や自治体職員以外にボランティアの人を募っても良いでしょう。
2. ターゲットに合ったイベントを実施する
せっかく街歩きイベントを開催しても、ターゲットを決めていないと誰の目にも止まらないイベントとなってしまいます。
例えば学生団体向けであれば街の歴史を学ぶツアーの開催や、若年層向けとしてインスタ映えするスポットを巡るツアーなどが挙げられます。どんな世代の人たちが、どんな内容であれば興味を持ってくれるのかを考え、地域に合った街歩きイベントを企画すると良いでしょう。
また1つの自治体でも、世代や性別に合ったツアーをいくつか用意しておくと、広い世代にアプローチできます。
まちおこしにもなる街歩きイベント、難易度やテーマで客層さまざまに
街歩きイベントにはスタンプラリー形式のものや謎解きをモチーフにしたもの、周遊型、公演型などさまざまな種類があります。
参加者に地域特有の魅力を知ってもらうことや地域住民や経済の活性化も大切な目的ですが、地域住民同士のつながりの強化や郷土愛の増幅などのメリットも挙げられます。
また屋外での開催や参加者数の制限を設けることで、感染症のリスク回避と観光コンテンツとしての役割を両立できる可能性があるでしょう。
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