観光庁は4月27日、「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」について、5つの事業を採択したことを発表しました。
観光DXの推進に向け、デジタル技術の開発やモデルとなるケースを構築することが目的となっています。
採択されたのは以下の5事業です。
- 鹿島アントラーズを基軸としたエリアマネジメントの変革
- XR技術 を用いた屋外周遊型 XR テーマパーク開発事業
- 顔認証と周遊eチケットを融合した手ぶら観光の実現
- 次世代型ガイド価値拡張プラットフォーム事業
- 5G・自動運転・xRが創る「どこでもテーマパーク」
本記事では、これら5つの採択事業について、わかりやすく概要を解説します。
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1. 鹿島アントラーズを基軸としたエリアマネジメントの変革
- 地域:茨城県鹿嶋市
- 応募者名:鹿嶋デジタルトランスフォーメーションコンソーシアム
- 代表企業等名:株式会社 鹿島アントラーズ・エフ・シー
茨城県鹿嶋市は、観光に関して「誘客促進の不足」「低い観光消費額」「短い地域滞在時間」などの課題を抱えているといいます。
そこで本事業では、鹿島アントラーズサポーターをターゲットにした実証実験として、リアルタイム混雑情報を用いた渋滞回避やダイナミックプライシング*1 、5G・XR*2 技術等を活用した高付加価値体験などを提供し、観光振興とエリアマネジメントの変革の実現に向けて取り組むということです。
*1 ダイナミックプライシング:消費者の需要と供給に応じて価格を変動させること
*2 XR:仮想世界と現実世界を融合し、新たな体験をつくり出す技術のこと
2. XR技術を用いた屋外周遊型XRテーマパーク開発事業
- 地域:神奈川県横浜市
- 応募者名:世界へ発信する屋外周遊型 XR テーマパーク開発プロジェクト
- 代表企業等名:京浜急行電鉄 株式会社
神奈川県横浜市は赤レンガ倉庫や元町・中華街など豊富な観光スポットを持つ都市ですが、実はインバウントが弱い、外国人宿泊客が少ない、観光客の消費金額が少ないといった課題を抱えているといいます。
そこで本事業では、XR技術と高精度位置認識技術を用いた、移動中でも酔わずにXR体験ができるバスツアーを開発し、地域観光バスツアーによるビジネスモデルを実現するため実証実験を行います。
XRバスツアーの内容としては、海外ファンを抱えるクールジャパン* コンテンツを活用するということです。
* クールジャパン:外国人がクールととらえる日本の魅力のこと。ゲーム、漫画、アニメなどのサブカルチャーを指すことが多いが、食文化や街並みなど、日本人の身近に何気なく存在している「実は外国人にとって魅力的なもの」を総称したもの
3. 顔認証と周遊eチケットを融合した手ぶら観光の実現
- 地域:山梨県富士吉田市ほか
- 応募者名:富士山エリア観光DX革新コンソーシアム
- 代表企業等名:パナソニックシステムソリューションズジャパン 株式会社
富士山エリアは自然と歴史的文化が融合した観光スポットとして有名です。しかしエリアが広大で各施設の距離が離れていることから、特定の施設のみ訪れて帰ってしまう観光客が多く、周遊観光*1 につながっていないといいます。
そこで本事業では、顔認証や周遊eチケットの発行、さらにはダイナミックプライシング・混雑回避・クーポン発行・自動着券精算などが可能となるようデータ解析を行う"手ぶら観光プラットフォーム"を開発します。
また、旅マエ*2 の旅程プランを作成する技術も併せて開発するということです。
*1 周遊観光:複数の観光地、観光スポットを巡る観光形態のこと
*2 旅マエ:旅行前におおまかな訪問地を選んだり、宿泊先を探したり、訪問地での観光名所やショッピングスポットを検索したりしている段階のこと
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4. 次世代型ガイド価値拡張プラットフォーム事業
- 地域:兵庫県姫路市
- 応募者名:観光ガイド活性化連携協議会
- 代表企業等名:株式会社 JR西日本コミュニケーションズ
「モノ消費」から「コト消費*」に移行したインバウンド消費において、地域における観光体験を創出できる通訳ガイドは、観光資源として重要となっています。しかしコロナ禍で、そうした通訳ガイドの活躍の場はなくなってしまいました。
そこで本事業では、VR技術を基盤とし、360°の仮想空間を体験できるオンライン多言語ガイドサービスなどを開発します。
こうした技術によりオンラインでの通訳ガイドとの体験が生まれることで、インバウンドが復活した暁にはリアルのガイドを活用してもらえると考えられます。今後は訪日観光拡大とガイド活用による、観光消費額の増加を目指すということです。
* コト消費:商品を購買する「モノ消費」と対比して、何らかの体験をすることに価値を見出し、それに対価を支払うことをいう。近年は訪日中国人による「爆買い」の傾向が収まり、インバウンド消費における「コト消費」への移行が指摘されていたが、コロナ禍で訪日旅行ができなくなったことにより「モノ消費」に対する見直しも始まりつつある
5. 5G・自動運転・xRが創る「どこでもテーマパーク」
- 地域:福岡県北九州市
- 応募者名:コンフォートデジタルツーリズム事業化推進協議会
- 代表企業等名:株式会社ゼンリンデータコム
世界遺産など魅力的な観光コンテンツを持っていても、それを集客に活かしきれていない観光地というのも存在します。
そこでゼンリンデータコム、久留米工業大学、NTTドコモ、コンピュータサイエンス研究所の技術が結集され、5Gを用いた「屋外自動運転技術」と「xR技術」を融合した先進アトラクションや、ユーザーの趣味嗜好・混雑状況に合わせて最適な観光・物販サービスを提案する「AI観光コンシェルジュ」を開発。
エリア全体を一つのテーマパークのように機能させる「エリアテーマパーク化手法」を提案します。
まずは北九州エリアで実証試験を行い、その後は同様の課題を抱える全国の自治体への導入可能性を探りつつ、事業化準備を進めるということです。
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<参照>
観光庁:観光DX推進に向けた技術開発及び地域観光モデルの構築 ー 「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」における採択事業の公表 ー