新型コロナウイルスの世界的な流行は、国内旅行はもちろん海外旅行にも影響を与えました。ホテル業界への影響は深刻です。
さらに東京オリンピックに向けホテルは建設ラッシュを迎えていたものの、東京オリンピックの延期が決まり自粛ムードが高まるにつれ、ホテルからは客足が遠のいているのが現状です。
本記事では、新型コロナウィルス流行前後のホテル業界の動向を紹介するとともに、ホテル業界が今後どうすべきかについて、そして収束後の見通しについて解説します。
新型コロナウイルスでホテル業界に大打撃
新型コロナウイルスの流行はホテル業界に大きな打撃を与えています。
最初にコロナ前後で比較し、実際にどれほどの影響が出ているのか解説します。
コロナ以前のホテル業界の動向は
新型コロナウィルスが流行する前の数年間、東京オリンピック開催に向けホテル業界は建設ラッシュの真っ只中にありました。
東京だけでなく大阪や京都といった訪日外国人客に人気の都市では続々ホテルがオープンしています。
ホテルのタイプはビジネスホテルのような手軽に泊まれるものだけでなく、ラグジュアリーなホテルも多く建設されました。
新型コロナウイルス流行以前訪日外国人客は年々増え続けており、2018年には3,000万人を超えました。
急激な需要の高まりを受け、政府が宿泊業に関する規制緩和を進めたことで、民泊やゲストハウスなどの新興宿泊施設が登場し、ホテル業界は競争が激化しました。
コロナショックで大打撃の現状…2020年2月の客室利用率は前年比13.1%減
新型コロナウイルスの流行を受けホテル業界は苦境に立たされています。
4月7日に発令された緊急事態宣言はそれまでの自粛ムードを一層高め、休業や営業規模の縮小を決めるホテルが続出し、中には倒産した旅館やホテルもありました。
全国241のホテルが加盟している全日本シティホテル連盟は、136ホテルの協力のもと調査を実施しました。
この調査によると、2020年2月の客室利用率の全国平均は69.6%と前年に比べ13.1%減となり、同3月の全国平均客室利用率は32.3%と、前年に比べ52.7%も減少しています。
ホテル業界の事業者はどうすべき?3つのポイント
新型コロナウィルスの収束の目処が立たない中、引き続き厳しい状況にあるホテル業界ですが、現在の状況だからこそできる対策や活用できる助成金があります。
本記事では3つのポイントに焦点を当て解説します。
1. 営業中のコロナウイルス対策
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会などの業界団体が主体となり「宿泊施設における新型コロナウィルス対応ガイドライン」を発表し、新型コロナウィルス流行下でのホテルの対応について方針を示しています。
ガイドラインでは、基本原則として対人距離の確保やマスクの着用、施設の消毒や換気、従業員の健康チェックの実施を呼び掛けています。また、エリアごとにも詳しい対策が掲載されているのが特徴です。
ロビー、エレベーター、客室、食事関連といった顧客が利用するスペースだけでなく、従業員休憩室といった従業員専用のスペースでの対策についても言及しています。
エリアごとの対策はさらに場面ごとに分けられ、それぞれに対する対策についても細かく掲載されています。
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2. 雇用調整助成金の活用
休業や営業規模を縮小しても固定費や人件費は払い続けなければなりません。
人件費が経費を圧迫することを防ぐために活用できるのが雇用調整助成金です。
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動を縮小せざるをえない状況に陥った事業主が申請できる助成金です。
従業員に対して休業や教育訓練、出向などの方法で従業員の雇用を継続した場合に、休業手当や賃金が助成されます。
現在新型コロナウィルスの影響を受け雇用調整助成金において特例措置が実施されており、緊急対応期間である4月1日~6月30日は全国すべての業種の事業主に対象が拡大しています。
また、生産指標要件が1か月で5%以上の売上ダウンへと緩和されたり、雇用保険被保険者でない従業員の休業も対象に含めるなど、申請できる基準も緩和されています。
申請手続きも簡素化し、事業主の負担軽減が図られました。
3. 広告費などの経費削減
売上が低迷し今後の先行きも不透明な今、事業を継続させるためにはオンライントラベルエージェント(OTA)などの広告費、販売促進費といった費用の可視化と削減を視野に入れなければなりません。
これまで活用していたさまざまな広告宣伝費の現状確認を行い、本当に必要な出費とそうでない出費を確認すると良いでしょう。
例えば現在は呼び込みが難しいのにも関わらず、インターネット広告などを継続して掲載し続けていないかなどを注目すると良いでしょう。
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アフターコロナを見据え、今できる対策について紹介しました。対策と同時に、実際に新型コロナウィルス収束後に旅行業界はどう変わっていくのか見通しを持つことが必要です。
訪日外国人、コロナ収束後に日本旅行を希望
現在大きな落ち込みが続くインバウンド業界ですが、収束後に日本旅行を希望する人は少なくありません。
株式会社アジア・インタラクション・サポートが、タイ人向けの日本旅行情報サイト「Chill Chill Japan(チルチルジャパン)」と、台湾人向けの日本旅行情報サイト「歩歩日本(ブーブーニホン)」で、「新型コロナ禍×日本旅行に関する台湾人・タイ人の意識調査」を4月15日から4月20日に行いました。
同調査では、新型コロナウィルス流行中の状況下において「今は何も日本の旅行情報はいらない」と答えたのはタイ人で0.9%、台湾人で1.1%という結果になりました。
旅行ができない現状でも約99%の人が日本の旅行に関する情報を求めており、その中でも観光スポット情報が求められています。
中国で実施された調査では、約79%もの人が収束後の旅行に対して積極であるという結果が出ています。
さらに「新型コロナウイルス肺炎の終息後に行きたい国」として44%もの人が日本と答え、2位のタイを大きく引き離し1位となりました。
JATAが新型コロナ対策室を設置
日本旅行業協会(JATA)は新型コロナウィルスの流行を受け対策室を設置しました。
対策室では新型コロナウィルスに関する正確な情報の収集や公開、収束後の旅行のリカバリー策についての検討が行われます。正確な情報を発信することで、真偽不明の情報により市場が過剰反応することを防ぐことが可能です。
今後は収束に向けた各フェーズで適切な対策を講じるほか、対人距離の確保や手洗いうがいといった防止策を通して一日も早い収束を目指しています。
その後は、観光庁や日本政府観光局(JNTO)とも協力し、東京オリンピックに向け日本の安全性を伝えるプロモーションや大規模なリカバリーキャンペーンに取り組む考えであると発表しています。
万全のコロナ対策・収束後を見据えたプロモーションを
新型コロナウィルス感染拡大の影響によりホテル業界は苦しい状況に立たされていますが、雇用調整助成金の申請、経費の削減といった方法がこの状況を乗り越える契機となるでしょう。
日本旅行協会も対策に乗り出し、正確な情報発信やリカバリー策の検討がおこなわれる予定です。政府とも協力し、旅行業界復興に向けて動き始めているといえます。
また2021年に東京オリンピックを控えている日本には他国と比べてアドバンテージがあることを強調する意見もあり、収束後のインバウンド回復に期待がされています。
一方で回復した需要に答えるためには、万全の感染予防対策が必要です。今後の旅行では3密を避け、「安全」で「安心」な旅行が好まれるニーズに変化しています。
万全のコロナ対策や収束後を見据えたプロモーションを実践し、アフターコロナに備えることが重要です。
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