緊急事態宣言が解除され、全国のホテルや旅館などの宿泊施設で営業再開の動きが広がっています。
しかしながら、宿泊需要回復には時間がかかる見通しとなっており、熊本県観光協会連絡会議が5月31日から6月2日の3日間にかけて実施し、3,041件の有効回答を得た第2回「新型コロナウイルス感染症収束後の旅行・観光に関する意識調査」によると、今年度の旅行再開の時期を問う設問では「9月~11月」の秋頃が59%と最も多い回答となりました。
一方、直近の「6~7月」を挙げた層は「9〜11月」に次いで多い25%を占めていることから、旅行に前向きな層も一定数存在することが伺える結果となっており、7月22日から施行予定の「Go To Travel キャンペーン」が後押しする形での宿泊需要喚起に期待が高まっています。
本記事では、今後増加が見込まれる宿泊客受け入れに際して、対策必至の衛生管理方法や消毒方法について事例を交えながら解説します。
コロナによるホテル業界への影響
さまざまな業界に打撃を与えた新型コロナウイルスの影響は、ホテル業界にも暗い影を落としており、多くのホテルで苦戦を強いられています。本項では、新型コロナウイルス感染拡大によるホテル業界を取り巻く状況について解説します。
新型コロナウイルスが与える影響
新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限と外出自粛要請により、宿泊需要は大きく落ち込みました。加えて、感染拡大地域からの宿泊者への懸念から、自主的に休業を決めたホテルなどの宿泊施設も少なくなく、売上が見込めず多くのホテルが厳しい経営状態に置かれています。
大手コンサルティングファームのPwCコンサルティングがまとめたレポート「COVID19:ホテル業界への影響」によると、2020年4月の月次稼働率の日本全国平均は前年比83.5%減、平均客室単価は前年比47.5%減、全体の宿泊者数は77%減と、著しい影響が見られました。
また、帝国データバンクの調査によると、7月20日時点での「新型コロナウイルス関連倒産」は全国で357件に上っており、業種別では「ホテル・旅館」が46件と、「飲食店」の51件に次いで多くなっています。
特に経営基盤の弱かった施設や小規模宿泊施設などで顕著であり、兼ねてからの資金繰り悪化にコロナウイルス感染拡大が致命打を与えたと見られています。
宿泊施設向け「新型コロナウイルス対応ガイドライン」の発表
感染第2波への懸念は高まるものの、5月25日の緊急事態宣言の全国解除を受け、ホテルでは衛生管理を強化した上で営業を再開する動きが広がっています。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会・日本旅館協会・全日本シティホテル連盟は2020年5月14日、「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を発表し、宿泊施設に注意喚起を行いました。
策定にあたっては、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言に従い、留意すべき基本原則と各エリア・場面の共通事項と各エリアごとの留意点に分けられています。
基本原則としては従業員・宿泊客の接触を可能な限り避けることや、チェックイン・チェックアウト時の密の回避、マスク着用、消毒設備の設置、施設・客室の換気、従業員の健康チェックなどが明記されており、新型コロナウイルス感染拡大防止にあたっての具体的な対策が示されています。
また各エリアごとの留意点については、入館・送迎・チェックイン・チェックアウト・清掃時の場所、加えてエレベーターや客室、大浴場、食事処、従業員の休憩室などに細かく分け、具体的な注意事項が記されています。
特に感染リスクの高い、宴会や会食などの食事の場面においては細かく規定されており、横並び席の推奨や食事開始までのマスク着用の要請、酒類回し飲みの規制、下膳と同時に料理提供をしないことなど、徹底した予防策が示されています。
各ホテルの消毒実施事例
アフターコロナでの宿泊者誘致にあたっては、感染防止対策の基本となる衛生管理は、非常に重要な要素となっています。
コロナウイルスに対する旅行者の不安を和らげるため、アパホテルやヒルトン・ホテルズ&リゾーツなどの大手ホテルチェーンで行われている徹底した衛生管理について解説します。
アパホテル
大手ホテルチェーンのアパホテルでは、社内で新たに「衛生検査組織」を発足し、「特別衛生検査官」の全国配置や、「接触感染、飛沫感染対策を強化した衛生基準」に基づく消毒・清掃管理の強化、最先端IT導入にあたり、多方面からコロナウイルス予防対策に取り組んでいます。
具体的には、手指用アルコール消毒剤の共有スペースへの設置や複数人が触れるドアノブやエレベーターボタンなどのこまめな消毒、客室内の換気徹底などの基本的な策に加え、アパホテル公式アプリ「アパアプリ」を活用した事前チェックインや、ルームカードキー投函による自動チェックアウト処理システムの導入などにより、非対面接触でのサービス提供にも力を入れています。
加えて、ビュッフェ形式で食事を提供する一部のレストランでは、顧客が料理取り分け時に使い捨て手袋着用を要請、さらにソーシャルディスタンスを確保した上での食事など細心の注意を払っており、徹底した衛生管理を心がけています。
ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ
外資系大手ホテルチェーンのヒルトン・ホテルズ&リゾーツは、衛生管理や消毒基準強化のため「ヒルトン・クリーンステイ・ウィズ・Lysolプロテクション」プログラムを全世界のホテルで導入しました。
このプログラムは、世界的に有名な「ライゾール(Lysol)」や「デトール(Dettol)」といった洗浄・消毒製品ブランドの製造メーカーである「RB社」と共同で開発され、メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の感染予防管理の専門家チームのアドバイスの下、策定されました。
内容としては、照明スイッチやドアハンドル・リモコン・温度調節機など頻繁に触れる客室内エリアへの徹底した消毒や紙のアメニティの撤去、デジタルキーを活用した非接触でのチェックイン・チェックアウト手続きに加えて、消毒用ミストの静電噴射機やUVライトによる物体表面の除菌などが挙げられます。
ヒルトンは、このような世界基準の衛生管理導入により、現在の衛生基準改善、および顧客への安全な宿泊体験提供にあたっています。
熊本ホテルキャッスル
国内の地元ホテルでも感染対策に余念がなく、熊本ホテルキャッスルでは、アルコールの5倍以上、次亜塩素酸ソーダの約6〜8倍の除菌力があるとされる「弱酸性次亜塩素酸水ステリPRO」を噴射し、衛生管理に努めています。
対象エリアは、バスルームではバスタブやベーシン、トイレといったスペース、客室ではライティングデスクや丸テーブル、イス、ソファー、電話機など、頻繁に触れる各エリアの念入りな消毒にあたっています。
なお、この弱酸性次亜塩素酸水ステリPROは、安全性も高いことからホテルや学校、医療の現場でも使用されている他、客室清掃員にも弱酸性次亜塩素酸水ステリPROを配布しており、業務中1時間に1回以上の消毒を義務付けています。
ホテルでの消毒方法と消毒作業を支援するサービス
消毒作業の実施にあたっては、基本的な概念である「特別衛生対応」に留意した上で、状況に応じては効率的な作業推進にあたり代行サービスの活用なども視野に入れる必要があります。
「特別衛生対応」
感染拡大が続く中、万が一ホテルの利用者や従業員に感染者が出てしまった場合、利用者数の制限や施設の全館休業はやむを得ず、顧客の評判低下にもつながりかねません。
このようなリスクを最小限に抑えるためには、厚生労働省によって定められている「旅館業における衛生管理要領」以上の「特別衛生対応」が重要です。
特別衛生対応の例としては、顧客が利用可能な消毒液の設置や、衛生面に配慮した朝食メニューの変更、清掃作業の消毒強化や、利用者・従業員の体調管理などが挙げられます。
宿泊施設内での感染を防ぐためには、この「特別衛生対応」について管理者のみならず従業員にも認知を徹底し、万が一のリスクに備えて早期に対策を講じておく必要があるといえるでしょう。
「HESTA Smart Clean 新型コロナウイルス対策ソリューション」
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、不動産事業を展開している株式会社大倉はマンションやホテル・商業施設を対象に、感染予防の除菌・消毒代行サービス「HESTA Smart Clean」を開始しました。
消毒方法としては、消毒剤による変色の心配のない床面や壁面は消毒マシーンを利用して直接噴霧、ドアノブや照明スイッチなどは消毒用エタノールや次亜塩素水を利用して手作業で除菌するとしています。
なお、新型コロナウイルスのみならず、インフルエンザやノロウイルスなど他の細菌由来の感染症予防にも効果があるとされ、業務効率改善に有効であるとして注目が集まっています。
Airbnbの「ホスト向け清掃・衛生強化プログラム」
民泊サービスを展開しているAirbnbは、効果的に清掃するための「Airbnb清掃強化イニシアチブ」を実施しています。
このイニシアチブは、ユーザーへの注意喚起を目的に専門家の監修による詳細なガイドラインがついた清掃手順を掲載しています。
ゲストのチェックアウト後、24時間部屋を空きにしておくなどのガイドラインを遵守しているホストには、ゲストからも確認が可能な特別なマークが表示され、衛生管理の可視化および促進にあたっています。
プログラム策定に際しては、元米国公衆衛生局長官であるビベック・マーシー氏や、医療衛生に関する清掃基準に関する知見を持った企業による指導を参考に、新しい清掃方法が示されています。
正しい消毒作業でポストコロナの集客を図る
東京都では7月17日、新規感染者数が過去最多となる293人を記録しました。18日の全国新規感染者数は664人に上っており、第2波到来への懸念が深まっています。
しかしながら、旅行再開に前向きな層も一定数存在しており、ホテルは正しい消毒による衛生管理を徹底し、安心安全な宿泊体験の提供が今一層求められています。
熊本県観光協会連絡会議が実施した調査において「宿泊施設における基本的な感染症対策に加え、「ないと嫌だ」と思うもの」への回答として、「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」が最も多い52%を占めたという事実からも、使い回しのものに対する感染リスクへの懸念が伺えます。
消毒にあたっては、「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」や、アパホテルやヒルトン、Airbnbなどの大手企業の事例活用により、ポストコロナの集客向上に役立てることが重要です。
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