緊急事態宣言の発令に伴う飲食店への営業時間短縮要請(以下、時短要請)について、1月26日の衆院予算委員会にて西村経済再生担当相は、段階的緩和を検討することを表明しました。
また、現在11都府県に出されている緊急事態宣言は、当初の期限である2月7日以降も延長するかどうかは2月初旬に判断される見込みで、感染状況によっては緊急事態宣言とともに時短要請の期間も延長される可能性があります。
本記事では、時短要請を乗り越えるために、営業時間やメニューなどに工夫を施している飲食店の施策8選をまとめます。
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時短要請を乗り越える、飲食店の施策事例8選まとめ
1月28日、自民党と立憲民主党は新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた関連法案で、緊急事態宣言下の時短営業の要請に従わない事業者に課する過料について、30万円以下とする修正へ合意しました。1月29日から衆議院の審議に入り、実際に施行されるのは2月中旬となる見込みです。
※参考 日本経済新聞:時短違反に過料30万円以下 入院拒否など刑事罰削除 関連法改正案
時短営業中の売上と時短要請の協力金だけでは凌ぎきれない、といった理由から今回の時短要請には従わないとしていた事業者にとって、厳しい措置となります。
制限された営業時間の中で、どのように来店客に利用してもらい利益を上げるかが課題となっているといえるでしょう。
そこで、実際の飲食店で行われている、時短要請を乗り越えるための8つの施策事例を紹介します。
1. 朝の時間帯を活用「朝ラー」「朝焼肉」
夜間営業ができなくなった分、営業時間を朝方に移行して営業を始める飲食店が出てきているようです。
たとえば吉祥寺のラーメン店「洞くつ家」では、朝に提供をはじめる「朝ラー(朝ラーメン)」の取り組みを始めています。
朝にラーメンを食べる習慣は、元々福島県や静岡県で発祥したといわれています。福島県の喜多方ラーメンの広まりとともに、朝にラーメンを食べる「朝ラー」も全国に知られることとなりました。
今も夕方から深夜にかけて営業することが多いラーメン店ですが、コロナ禍で朝営業を始めたラーメン店が増えたことにより、1月29現在ではInstagramのハッシュタグ「#朝ラー」で検索すると、約10万件の投稿が見つかります。今後またブームが訪れるかもしれません。
また、他の業種では、焼肉チェーンの「焼肉ライク」が「朝焼肉セット」を税抜き500円で提供しています。もともと2020年8月から一部の店舗で提供していたものを、2021年1月から首都圏を中心として大幅に対応店舗を増やしたということです。
2. 「昼飲み」喚起
夜間の営業が中心となる居酒屋などの店舗では、時短要請で酒類提供が19時までとなることから、ランチタイムでの「昼飲み」を提供している店舗もあります。
上野のアメヤ横丁(アメ横)にある立ち飲み屋「魚草」では、「滞在時間は30分、一人2杯まで」とルールを設けて感染対策を行っているようです。
また、宮古島の中華料理店では居酒屋ではランチタイムに「せんべろ(俗に、「1000円でべろべろに酔える」ような価格帯の酒場のこと)」をもじった「ゼロベロ」というキャンペーンでドリンクを割引しています。
昼間にも居酒屋に来店してもらえるよう、それぞれ独自のルールやキャンペーンで需要を喚起しようとしているようです。
3. 一人飲み専門居酒屋
北海道函館市に2月オープン予定の居酒屋「充電ハイボール」は、一人飲み専門居酒屋です。一人飲みを専門とした居酒屋は、業界初だといいます。
座席は全席1名専用の半個室で区切られ、注文もセルフオーダー形式とすることで、人との接触を最大限減らしながらも外食ニーズに応える新しい形式の居酒屋店舗です。
4. 黙食POP
飲食時の飛沫感染を防止するため、黙って食事をする「黙食」を推奨する「黙食POP」がSNS上で話題となっています。
Twitter:ミツジ@マサラキッチン さん @masala_mitsujiによる投稿
この「黙食POP」は福岡県福岡市で「マサラキッチン」というカレー店を営むミツジ@マサラキッチン(@masala_mitsuji)氏が作成したもので、「黙食POP」のTwitter投稿は、1月29日時点で4.7万リツイートと8万「いいね」がされるなど、大きな反響を呼んでいます。
黙食POPのデータは誰でも自由に使用でき、印刷用のPDFデータのほかに、編集したい方向けのAdobe Illustrator CCデータも公開されています。
飲食店での会話を抑制する「黙食POP」がSNS上で話題:「おひとりさま需要」取り込む鍵に?
店内飲食で、黙って食べることを推奨する「黙食POP」がSNS上で話題となっています。▲黙食POP:ミツジ@マサラキッチン さん @masala_mitsujiのTwitter投稿よりダウンロード緊急事態宣言に伴う外出自粛の影響で、飲食店が売上減少など多大な影響を受ける中、少しでも店内でのコロナ感染リスクを減らそうという取り組みです。関連記事緊急事態宣言、飲食店の売上減少を食い止めるには…今こそ取り組みたいオンライン施策6選時短要請が無意味かもしれない理由:悲鳴あげる飲食店、効果ある対策を目...
5. 1組限定で営業
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、飲食店では使用可能な客席を制限して間隔をとったり、営業時間を短縮したりなど様々な対策が必要とされています。
その中で、「1日1組限定」「完全予約制」であることを強みにしたり、期間限定で営業形態を変えている飲食店もあります。
神奈川県横浜市にある会席料理「おかべ」は、ランチとディナーでそれぞれ1組限定の完全予約制会席料理店です。コロナ禍において感染を気にせず安心して食事ができると、多数の口コミが投稿されています。
6. 1時間で食べられる「ショートコース」
時短要請への対策の1つとして、コース料理の品数を減らしたショートコースを設けている飲食店があります。
東京都新宿区の鉄板焼き店では時短要請中の期間限定で、通常コースでは9品の料理を5品1時間で終了するショートコースを新しく設定しています。
「19時から食事をしたい」という来店客から問い合わせが多数あったため、時短要請と客からの要望の両方に合わせて、19時からの食事開始でも閉店時間の20時に間に合うよう工夫したそうです。
7. 「おひとり様」メニュー
多人数での会食や料理のシェアを避けて一人で外食をする「おひとり様」がコロナ禍で増えているといわれています。その「おひとり様」需要に応えるため、新しく一人用のメニューを設けている飲食店があります。
東京都千代田区にある自然薯料理の「裏神田 自然生村」では、一人用の鍋やハーフサイズのメニューを用意したり、おひとり様へお酒の割引をしたり、新しい需要を取り込む工夫を行なっています。
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外出自粛の影響で飲食店や宿泊施設、娯楽施設などが軒並み苦境を強いられる中、他人との接触を避けつつ一人で店舗や施設を訪れる人、いわゆる「おひとり様」の消費行動が注目されています。一方、どの業界・業種でも「おひとり様需要」を捉えられるのかというと、そうではないようです。本記事では、Google 検索におけるトレンドの推移を見られるツール「Google トレンド」を利用し、「おひとり様需要」が業界や業種ごとにどのように推移しているのか、また2回目の緊急事態宣言前後でどう変わったのかを分析します。...
8. 「千円定食」限定メニューのみ提供
新型コロナウイルスの感染拡大による時短要請を受けて、店舗で提供するメニューを一時的に限定して営業している飲食店があります。
東京都赤坂にある居酒屋「ごはんや 松毬(まつぼっくり)」では、時短要請期間限定で「定食や 松毬」と称してメニューを税込1,000円の松毬定食とテイクアウトの松毬弁当に限定して営業をしています。
メニューを限定することで注文と配膳の時間が短縮され、17時から20時までの3時間しかない営業時間の中で、新型コロナウイルスへの感染対策と客側の回転率の両方に対応できる工夫だといえます。
時短要請でも店舗に来てもらうには
新型コロナウイルスの第3波による時短要請で飲食店はなおも厳しい状態が続いていますが、夜の営業時間の分を早朝に移行して新しい客層を取り入れたり、コロナ禍で増えた「おひとり様」などの新しい需要に対して柔軟に対応したりなど、できる工夫はまだまだあるはずです。
新型コロナウイルスの感染拡大後、コロナ禍で「新しい生活様式」が根付いた中で、飲食の需要を生み出す工夫や新しい食形式の提案などが引き続き必要となるでしょう。
<参照>
日刊スポーツ:西村再生相、飲食店時短の段階緩和検討を表明
日本経済新聞:時短違反で30万円以下の過料 自・立、刑事罰削除で合意
朝日新聞:時短営業の奇策「朝ラー」 開店早めたら…直後に満席
JR東日本:喜多方市民のパワーの源!生活に溶け込んだ朝ラー文化
焼肉ライク公式サイト:1月12日(火)朝焼肉の販売店舗を追加(1月22日更新)
宮古新報ニュースコム:飲食店「昼飲み」喚起で工夫 時短要請下で
JIJI.COM:「昼飲み」「バーゲン」自粛色なく 首都圏、宣言下も街混雑
PR TIMES:新しい生活様式への変化。『業界初』一人飲み専門居酒屋が新オープン
ミツジ@マサラキッチン さん @masala_mitsujiのブログ(いマサラすんません):「黙食」がバズってアワアワしている件とメディア対応など
JIJI.COM:「おひとり」優先、早朝営業も 生き残り懸け、知恵絞る飲食店―新型コロナ
テレ朝news:「昼も控えて」苦難の飲食店 集客UPへ独自の工夫
一休.com:一日一組限定の一軒家会席料理 おかべ
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