人間は判断したり行動したりするとき、無意識に何らかから影響を受けることがあります。こうした現象を解き明かした理論の一つがアンカリング効果です。
アンカリング効果は、ある情報について、最初に見聞きした情報を基盤にして受け止め考察する現象を指します。本記事ではアンカリング効果と、飲食店での活用例について、またアンカリング効果を活用する場合に気をつけるべきことを解説します。
アンカリング効果とは
アンカリング効果とは、船を停泊させる時に海底におろすイカリにたとえ、脳が受けとった最初の認識を基準とし、無意識にその後の思考が左右されてしまう人間の心理のことです。
アンカリング効果とは?意味やマーケティングへの活用事例を業種別に紹介
たとえば2万円の予算で掃除機の購入を考えていたときに、元値が4万円の掃除機が在庫処分のため2万8,000円で売られていたら予算をオーバーしているのにもかかわらず購入を検討してしまうことなどが挙げられます。 この場合、元値の4万円が基準となるため顧客にお得感を感じさせます。
最初に見た情報が基準となる
アンカリング効果とは最初に見聞きした情報が人間に印象づけられ、その後の判断に影響を及ぼすという心理作用で、これを利用したテクニックがサービスや商品を販売する際に使われます。
生ビールをセール期間200円で提供する場合を考えます。200円の価格だけを載せた広告を見る場合と、通常は500円であるという情報を把握してから200円と知る場合を比較すると、後者であればお得に感じるということは誰しも共感できるのではないでしょうか。
aurant-2-2">アンカリング効果の語源
アンカーとは船を停泊させる時に海底におろすイカリを意味しています。
イカリにロープでつながれた船はイカリを中心とした範囲にとどまることから、最初にみた情報をイカリに、その後の判断を船にたとえて、アンカリング効果と呼びます。
プライミング効果も影響
アンカリング効果で数値などの情報を基準に考えてしまうのは、プライミング効果というもう一つの心理作用が働いているためです。
プライミング効果とは、最初に受けた情報によって、無意識に脳に蓄積された関連性の高い情報を引き出してしまうことです。
有名な例として、相手に「ピザ」を10回言わせたあと、ひじを指して「ここは?」と尋ねると響きが似ている「ひざ」と答えてしまう遊びがあります。
飲食店のアンカリング効果活用例
アンカリング効果は、普段の料金と比べていかに価格が安くなっているのかを表記したり、限定数や販売期間が限定されていることを強調したりすることに活用されています。
活用例1. 看板やメニューへの価格表記
アンカリング効果を活用した看板やメニューへの表記方法のコツは2つあります。
1つ目は、メーカーが小売店に提示している価格や普段の料金と比べていかに価格が安くなっているのかを表記することです。
2つ目は高い商品の上下や隣に比較的安価な商品の価格を掲載することです。高いメニューは一番上に記載するとオーダー率の向上につながります。
活用例2. 店舗の内装
数字だけでなく店舗の設計においてもアンカリング効果を活用できます。アンカーを価格にするのではなく、店舗の内装や雰囲気からこのお店にはこれだけの価値があると顧客に認識させることで、他店よりも高い価格が顧客獲得に不利にはたらくことを軽減できます。
たとえば内装を高級な雰囲気で整えると、入店した顧客は「高価な店」という印象を抱きます。内装だけでなく、入り口付近に高級感のある商品を置くことにも同様の効果が期待できます。
アンカリング効果を利用した内装づくりの代表例にスターバックスがあります。スターバックスのコーヒー一杯の価格を他のコーヒー系列店と比較すると高めですが、店内はこの価格をよしとする顧客であふれかえっていることも少なくありません。高級で落ち着いた雰囲気を漂わせる資材やレイアウトも、顧客がブランドの価格設定に納得する一因となっていると考えられます。
アンカリング効果を活用する際の注意事項
アンカリング効果を活用する際に架空の価格を用いると、景品表示法に反し二重価格表示として消費者庁より注意が入る可能性があります。
長期的なキャンペーンに応用するとサービスへの顧客満足度にかかわる可能性があります。販売したい商品やサービスがアンカリング効果に適しているかを見極める必要があるでしょう。
1. 二重価格表示に注意
基準となる価格に架空の価格を用いると景品表示法に反し二重価格表記として消費者庁から指導が入る可能性があります。
過去にも野球チームの優勝おめでとうセールで、小売店が通常提供していない価格を持ち出し大幅な値引きをしたように見せて販売したことが話題になりました。
アンカーとなる価格は一定期間販売した実績がないと通常価格とは呼べないため注意が必要です。
2. 長期的なアンカリングは効果がない
Amazonは当初一定料金以下の商品に対しては配送料を有料としていましたが、2010年頃に期間限定で配送料を無料とすることを発表しました。特別期間終了後も配送料無料をつづけ、6年程立ってから有料に変更しました。
顧客ははじめのうち、配送料無料をお得に感じていたものの、次第に当たり前になってしまい、有料に戻されるとサービスに不満を持ちました。
アンカリング効果により顧客に利益を受け取っていると感じ取ってもらえる期間として、数年間という期間はこの場合は不適切であったということがわかります。
3. 相場が知れ渡っている商品やサービスには向かない
アンカリング効果がすべての商品やサービスに通用するわけではありません。
たとえば、自動販売機の飲み物のような市場における商品の価格がある程度明確になっている商品はアンカリング効果に不向きでしょう。飲食店でいうと、コーヒーはおおよそ500円以内、居酒屋ではアルコール飲料がおおよそ700円以内など、標準価格がわかりやすいものにも作用しづらいといえます。
逆に、コンサルティングなどの無形資産の価値を提供するサービス業はアンカリング効果に向いているでしょう。
飲食店がアンカリング効果を活用できるシーンを理解
アンカリング効果は同じ商品でも見せ方を変えるだけで、顧客の購買意欲を促進させるテクニックです。飲食店のメニュー表や店舗内装など、購買行動の場面で幅広く応用されています。
アンカリング効果を活用する場合は、基準となる最初の情報が適正であることが求められ、二重価格表示にも注意が必要です。ほかにも、市場において画一的な料金で販売されている商品はアンカリング効果がききづらいということもあります。
飲食店においては、店舗のレイアウト、価格表示や接客など、アンカリング効果を意識できる場面がいくつかあります。現状の経営に課題があるのならば、それぞれのシーンで、何を基準にし顧客にどのように受け止めてほしいか狙いを立てて取り組むことで改善につながることもあるでしょう。
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