飲食店で酒類をテイクアウト用に販売するためには、本来「一般酒類小売業免許」が必要です。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食業界が大きな影響を受けていることから、国税庁は申請手続の簡素化・免許処理の迅速化を図るため、「料飲店等期限付酒類小売業免許」を新設しました。
当初この免許の期限は付与日から6か月とされていましたが、10月9日には12月末まで自動で期限が延長され、申請すれば来年3月31日まで延長できることになりました。
ただし申請期限は6月30日までとなっており、新たな申請は受け付けていないようです。
本記事では、「料飲店等期限付酒類小売業免許」を延長する方法や、6月の申請期限に間に合わなかった場合に必要となる「一般酒類小売業免許」について解説します。
「料飲店等期限付酒類小売業免許」の延長、申請方法は?
免許延長申請に必要な書類は以下の通りです。
- 料飲店等期限付酒類小売業免許の期限延長の申出書(2通)
- (酒類の受払い)記帳状況及び取引実態が確認できる書類
- 酒類販売管理研修受講証の写し
※2020年10月31日(土)までに受講したもののみ有効
受講証が未発行であれば、オンライン研修受講後に受け取った研修完了通知メールのコピーなど、受講の事実が確認できる書類を先に提出し、受講証発行後に受講証のコピーを提出 - 免許付与後に提出する書類
※免許誓約書、契約書のコピー、地方税の納税証明書、次葉3、次葉6
11月30日(月)までに、以上の書類を販売場所在地の管轄税務署に、郵送または窓口で直接提出します。
税務署による審査後、延長が適当であると認められれば、期限の延長が認められたという旨の通知書が交付されます。
「一般酒類小売業免許」申請方法は?
期限を過ぎても酒類のテイクアウト販売を続けたい場合や、6月30日までに「料飲店等期限付酒類小売業免許」の申請が間に合わなかった場合は、「一般酒類小売業免許」を取得する必要があります。
ここでは、「一般酒類小売業免許」の概要や、申請の流れを解説します。
「一般酒類小売業免許」とは
国税庁によれば、「一般酒類小売業免許」の定義は以下のように定められています。
販売場において、消費者又は酒場・料理店等の酒類を取り扱う接客業者等に対し、原則として全ての品目の酒類を小売することができる販売業免許が、「一般酒類小売業免許」です。
つまり、酒類を直接販売するために、販売者が取得する免許のことを指します。
以下の図を見ればわかる通り、通信販売で酒類を売りたい場合は「通信販売酒類小売業免許」を取得する必要があります。
申請の流れ
「一般酒類小売業免許」申請の流れは以下のようになっています。
- 申請書の提出:所轄税務署に提出
- 審査:2か月ほどかかる
- 免許付与等の通知:書面で通知される。登録免許税(免許1件につき3万円)を納付
- 酒類の販売開始
「一般酒類小売業免許」はいつでも提出可能です。審査に2か月ほどかかるため、早めに申請しましょう。
申請時に必要な書類
「一般酒類小売業免許」申請時に必要な書類は、以下の通りです。
- 酒類販売業免許申請書
※7枚あり、全てを提出する必要。申請書次葉1~申請書次葉5については、様式は問わない - 酒類販売業免許の免許要件誓約書
- 申請者の履歴書
- 法人の登記事項証明書及び定款の写し
- 住民票の写し
- 地方税の納税証明書
- 契約書等の写し(申請書次葉3付属書類)
- 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
- 土地及び建物の登記事項証明書
- 一般酒類小売業免許申請書チェック表
書類が多いため、申請の手引きをよく確認しながら準備しましょう。
記入が完了したら、国税電子申告・納税システム(e-Tax)または窓口にて提出します。
酒類販売の注意事項
以下、「料飲店等期限付酒類小売業免許」「一般酒類小売業免許」を取得した場合の、酒類のテイクアウト販売に関する注意事項です。
免許に関する注意事項
「料飲店等期限付酒類小売業免許」「一般酒類小売業免許」において定められている中で、見落としやすい点を以下に列挙します。
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記帳と報告の義務
:酒類の販売や仕入れに関して帳簿に記帳する義務が課されるほかに、販売数量の報告をする必要があります。
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2つの都道府県以上を跨ぐ宅配はNG
:「料飲店等期限付酒類小売業免許」「一般酒類小売業免許」では、電話やインターネットで注文を受けた都道府県を越えない範囲での宅配と、テイクアウトによる販売ができます。2都道府県以上を跨ぐ広い範囲のユーザーを対象とした通信販売については、別で通信販売酒類小売業免許を取得しなければなりません。
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原価割れ販売はNG
:「酒類の公正な取引に関する基準」などの原価割れ販売を禁止する規定を遵守しなければなりません。
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未開封・開封後にかかわらず販売OK
:一度開封したお酒も、未開封のお酒も販売できます。
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既存在庫・取引先からのお酒のみ販売OK
:販売数量やメーカーの制限はありませんが、販売できる酒類は既存の在庫をはじめ既存の取引先から仕入れた物に限られます。
酒類を入れる容器に注意
酒類の宅配やテイクアウト販売で気を付けたいのは、酒類を入れる容器です。テイクアウトの持ち帰り方法や、お酒を飲む環境は消費者によってさまざまです。合っていない容器を使用すると、液漏れや破損などのトラブルが発生し、店の信頼度が下がってしまう可能性もあります。
容器が衝撃に耐えられるか、液が漏れないか、さらに梱包の方法にも工夫が必要です。容器が丈夫でも、梱包に使用する物のバランスが悪いと、液漏れや破損を起こしかねません。ラップなどを用いて、厳重に梱包すると良いでしょう。
<参照>
国税庁:料飲店等期限付酒類小売業免許を受けている事業者の皆様へ
時事ドットコム:酒持ち帰り販売、3月まで延長 コロナ対策の期限付き免許―国税庁