ネットショッピングなど人々の生活の中でECが身近になる中、経済産業省の調査で、EC市場規模が2010年から2019年まで右肩上がりで成長していることが定量的にも示されています。
特にBtoCにおける普及が目覚ましく、コロナ禍の巣ごもり需要やIT活用の促進で、今後もさらに需要が高まる見通しです。
こういった市場の動向や顧客ニーズを受け、企業はECの特徴を理解し、顧客獲得や売上げに結びつけることが今後の競争力強化において重要です。
今回はEC市場の傾向や新たな集客トレンドについて解説します。
令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書令和2年7月経済産業省商務情報政策局情報経済課
EC(Eコマース)は3種類、取引の関係性で分類される
ECはElectronic Commerceを略した表現でEコマースとも呼ばれ、インターネット上でモノやサービスなどの売買や取引全般を指します。販売側と購入側の関係性で大きく3つに分類できます。
企業と一般消費者間の取引「BtoC-EC」
Amazonや楽天市場などのモールECや、その他一般的にイメージされるネットショップのように、EC上で企業や店舗、ブランドが販売し、消費者が購入する取引を「BtoC-EC」と言います。
企業同士の取引「BtoB-EC」と消費者同士の取引「CtoC-EC」
一方、アスクルなどに代表されるような企業間での取引は「BtoB-EC」と言い、メルカリ、BUYMAなどのフリマアプリやネットオークションのような消費者同士の取引を「CtoC-EC」と言います。
2019年の市場規模成長率と今後の市場拡大予測
経済産業省では毎年EC市場の動向について調査しており、2019年はBtoC-ECの市場規模が19兆3,609億円で前年比7.65%増になっています。
取引金額が大きいBtoB-EC市場では、352兆9千億円に上ります。日本はアメリカや中国に比べ普及が遅れているものの全産業でEC市場が伸びており、企業にとって大きなチャンスと捉えられるでしょう。
重要指標「EC化率」
ここで、EC市場の成長率を正しく把握するために「EC化率」について説明します。
EC化率とは、取引全体のうち、電子商取引がどれくらいの割合を占めているかを意味し、【EC取引総額】÷【全商取引総額】で算出したものです。
ECの割合は年々増加傾向となっており、経済産業省より公開された産業別のEC化率から、どのような分野でECビジネスが伸びているかも一目でわかります。
経済産業省調査でBtoCが好調「生活家電・電子機器」グルメ分野にも追い風
BtoCにおいては、報告書で取り上げられている2010年から2019年の10年間、市場規模は拡大し続けています。
時間や場所に捉われずに購買できるネットショップなどが多様化する消費者のニーズにマッチし、支持されていることも要因の一つとして考えられます。
成長するEC市場で見込み客獲得を狙った新規参入も増えています。BtoCは大きく3つの分野から構成されており、物販系、サービス系、デジタル系です。
前年と比べた伸び率は、物販系分野が8.09%、サービス系分野は7.82%、デジタル系分野が5.11%となっています。(第1章調査結果サマリー参照)
商品の分類ごとに2018年と2019年の市場規模とEC化率も報告されています。
物販系では、生活家電、PCや周辺機器、AV機器のEC化率が高くなっています。
市場規模が最も大きいのは衣類や服飾雑貨です。事務用品や文房具は市場規模が小さいもののEC化率が約42%と、リアル店舗に追いつく勢いです。
EC化率は商品の特性とも関係性があり、品質やスペックが実物無しでも把握できる商品カテゴリはECにシフトしやすい傾向であることがわかります。
2020年以降、コロナによる外出自粛などでグルメ商品のお取り寄せや宅配サービの利用が急速に進んでおり、さらなるEC化の加速が見込まれます。
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BtoBやCtoCも市場拡大傾向/DXやスマホ活用シーンの拡大
BtoBではBtoCの成長スピードには至らないものの、金融系を除くすべての業界でEC化率が上がり、最も高いのは輸送用機械で67%、最も低いのは建設・不動産業となっています。
働き方改革の推進やデジタルトランスフォーメーションの流れでITを導入する企業が増えており、今後も市場規模が拡大していく見込みです。
CtoCも市場は拡大傾向で、とりわけフリマアプリの伸長が顕著です。
従来は10~30代の女性がメインユーザーでしたが、最近では男性や高齢者まで利用者層が広がっていることがCtoC市場拡大の要因にもなっていると考えられます。
スマホファーストも市場拡大に拍車
ECの成長に大きく関わっているのが、スマートフォンの普及です。2015年はスマートフォンを経由したBtoC物販は30%程度だったのに対し2019年は半数に届きそうな勢いとなっており、成長率は年率10%以上で推移しています。
大手ECモールでは流通金額の7割以上がスマートフォン経由でパソコンより高い水準です。スマートフォン利用率の増加やSNSマーケティングの発展などが市場拡大に拍車をかけています。
EC事業者の集客トレンド
インターネット普及率が約9割、今や高齢者の過半数が利用している時代において、EC事業者の販売手法も細分化が進んでいます。
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トレンド1. 「ソーシャルコマース」でSNS上のシームレスな決済が実現
SNSを利用した購買は、従来SNS上で商品を検索後にECサイトへ遷移し、決済をする流れでしたが、SNSプラットフォーム内で決済まで完結できる「ソーシャルコマース」が話題になっています。
SNSでの商品選びから購入まで途切れないため離脱のリスクが低く、購入意欲を維持したまま決済できることが最大のメリットです。
FacebookやInstagramでサービスを開始しており、若い世代を中心に今後ポピュラーになるでしょう。
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トレンド2. 中国では常識化している「ライブコマース」日本でも活発化
2020年から国内のアパレルブランドで開始した「ライブコマース」は、ライブ配信で商品の魅力を伝え、オンラインや実店舗での購入を促進する手法です。
アパレルであれば着心地やコーディネート、家具であれば、商品を活かした空間作りなど、ライブならではの提案が可能です。
チャット機能により視聴者からの質問にもその場で回答でき、同時に全国の視聴者へも共有できるため、リアル店舗でのコミュニケーションとも異なる新たな顧客体験を提供できます。
中国のEC大手であるアリババが草分け的存在で、中国国内では既に常識となっているサービスです。
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トレンド3. ショールーミングとウェブルーミングで販路拡大
実店舗で見た商品をネットで安く購入する行為を「ショールーミング」、ネットで情報収集し商品は実店舗で購入する行為を「ウェブルーミング」と呼びます。
商品により傾向が異なり、生活家電の購入においては実店舗で購入決定後に、ネットで口コミ評判などをチェックして最終決済したいというショールーミングの需要が高くなっています。
衣類については若年層におけるウェブルーミングの割合が高くなっています。商品検索がしやすいネットで下調べし、その後に店舗で試着して購入したいという心理が影響しています。
ECの良さと実店舗の良さを融合した販路を提供し消費者の心理や行動に寄り添うことで、満足度を高められます。
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発展するEC市場を活かした販売で売上げアップ
社会的背景の変化やスマホ普及などにより、EC市場のスケールは今後さらに拡大する見込みです。
2025年にはBtoC-ECの市場規模が27.8兆円になる見通しとなっており、新たなマーケティング戦略や販売手法も次々と生まれるでしょう。(参照:「ITナビゲーター2020年版」「5G」サービスが本格スタートリアルとデジタルの融合で関連市場が拡大 ~2025年までの市場トレンドを予測~)
消費者の日常的なショッピングからギフト需要まで幅広いシーンでECの活用が進みますが、ECの利便性や先進性と実店舗の確実性、双方のメリットを活かした戦略が今後の集客や売上げアップに大きく貢献するでしょう。
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