店内のうるさいBGMはコロナ対策に不向き?BGMのプロ・USENに聞いた「消す」だけじゃない効果的な方法

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新型コロナウイルスの流行により、意外なところで変化が起きています。

大声での会話を抑制するため、店舗内で流れるBGMを消したり、音量を小さく設定したりする店舗が出てきているというのです。

しかし、この時BGMを消してしまうと、大声での会話を抑制するという面では逆効果になってしまうおそれもあるといいます。

今回、店舗内のBGMを用いて店内の会話を抑制する方法について、店舗BGMサービスを提供するUSEN-NEXT GROUPの株式会社USEN(以下、USEN)で音量調整技術を担当されている池上 卓也さん、コンテンツプロデュース統括部編成部 サウンドデザイン課 課長の森角 香奈子さん、そしてUSENの広報担当部長であるUSEN-NEXT HOLDINGS 清水 さやかさんに取材しました。

コロナ禍で、店舗内のBGMが消えた理由

ーー新型コロナウイルスの流行により、BGMを消したり、音量を小さく設定したりする店舗が増えているそうです。これにはどういった背景があるのでしょうか?

大きな音量のBGMが流れていると、当然相手の声は聞こえにくくなりますし、自分の声も認識しにくくなりますよね。

なので、会話する音量もどんどん大きくなってしまいます。

大きな声で話そうとすると飛沫が飛びやすくなるでしょうから、BGMの音量を控えることで、会話を聞こえやすくし、小さな声で喋ってもらおう、と。

そういった理由でBGMが小さく設定されているのではないかと考えられます。

小さなBGMでも快適な店舗空間を実現する、USENの音量調整技術とは

ーーUSENさんが提供する店舗BGMサービスでは、快適なBGMを提供できるよう、特殊な音量調整技術が使われているそうですね。どのような仕組みになっているのでしょうか?

弊社の音量調整技術は、2つの技術を合わせたものになっています。

まず1つ目が、「曲同士の音量の平均値」を合わせるというものです。これは「ラウドネス技術」と呼ばれ、テレビ放送などでも使われている技術です。

2つ目は、1曲の中で「音量の大小の幅」が一定になるように調整するというものです。実は、これはUSEN独自の技術で、「ダイナミックレンジの調整」という言い方をしています。

1. ラウドネス技術:音量の「平均値」を合わせる

ーーではまず、「ラウドネス技術」について詳しく教えてください。

「ラウドネス技術」は、先ほどもお伝えしたように「曲同士の音量の平均値を合わせる」という技術です。

いくつかの楽曲を続けて聴いているとき、ある1曲だけ音量がうるさいということがありますよね。

そこで音量の平均値を一定にすることで、「小さすぎて聞こえにくい」もしくは「大きすぎてうるさい」ということを少なくできます。

ラウドネス技術 店舗 BGM 調整
▲ラウドネス技術とは:株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS プレスリリースより

また、人間の耳の特性も加味して、さらなる調整を行っています。

ーー「人間の耳の特性」というのは、どういったものなんでしょうか?

たとえば人間が高い音、低い音を同じ音量で聞くと、「高い音の方が大きい」と感じます。それで高い音の楽曲は低い音のものに比べて耳障りになってしまうことが多いんですね。基準値は満たしていても、耳につく音があるわけです。

この技術では、高い音の楽曲も低い音の楽曲と同じように聴けるよう調整しているので、どの曲を聴いても、音量差を気にすることなく聴けるようになっています。

ーーこれと同様の技術が、地デジ、BSといったテレビ放送などでも使われているんですね。安定して視聴できるようになっている理由がわかりました。

ちなみにこのラウドネス技術は、テレビ放送では2012年の秋頃から導入された技術なんですが、弊社ではいち早く、2011年からこの技術を導入しています。

もとはヨーロッパで開発された技術で、それを輸入したような形ですね。

2. ダイナミックレンジの調整:音量の「幅」を合わせる

ーー「ラウドネス技術」では、音量の平均値を合わせているんですね。では、もう一つの「ダイナミックレンジの調整」は、どのような技術なんでしょうか?

ダイナミックレンジ、つまり「1曲の音量の幅(最大値・最小値)」が一定になるように調整するというもので、これはUSEN独自の技術です。

ダイナミックレンジの調整 店舗 BGM 調整
▲ダイナミックレンジの調整とは:株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS プレスリリースより

ラウドネス技術で曲同士の音量の平均を合わせることはできるわけですが、曲ごとに「一番大きい音量・一番小さい音量」というのは違います。

たとえばクラシックの楽曲だと、ピアニッシモ(小さな音)で演奏することも多いので、どうしても聴こえにくくなってしまう部分がありますよね。

これを楽曲の雰囲気を壊さないようにしつつ、大きすぎる音量や小さすぎる音量を一定の幅におさめるという処理をしています。

先ほどお話しした「ラウドネス技術」により音量の平均を一定にし、さらにこの「ダイナミックレンジの調整」で音量の大小の幅を一定にすることで、BGMとして聴きやすいように調整しているんです。

期待される効果は:音量を一定にすることで、静かな声での会話を楽しめるように

ーーこれらの技術は、コロナ禍で要求される「店内での会話の抑制」に対し、どういった形で効果を発揮するのでしょうか?

BGMには「マスキング効果」というものがありまして。たとえば飲食店だと調理時の音や、空調の音、外界の音などを音楽で包みこむことで、雑音が少なく、過ごしやすい環境を作り出せるという効果です。

このマスキング効果により、周囲のお客様の声なども包みこめるため、一緒にいるお客様同士の会話を邪魔しにくくなり、静かな声での会話を楽しめるようになると思います。

一部報道では、飛沫対策として「BGMを消した方が良い」とするものもありましたが、BGMを消してしまうとマスキング効果は得られないので、むしろBGMは流した方が効果的なのではないかと思います。

また、本来は楽曲によって音量の幅が違うため、音量が小さくなってしまった時などにマスキング効果が薄れてしまいますが、弊社の技術なら音量を一定の範囲に保ち、マスキング効果も一定にすることができます。

曲の中で音量が大小するような楽曲でも、マスキング効果を損なうことなく流し続けられるというのがメリットですね。

店舗BGMの可能性を広げた「コンテンツ力・技術力」

ーー音量調整の他に、店舗BGMによるコロナ対策としてどのようなものが考えられますか?

BGMとは少し違いますが、店内放送でコロナ対策を呼びかけるという方法があります。

弊社では、「声で広げる!ソーシャル ディスタンス プロジェクト」と題し、賛同いただいた著名人の方々からソーシャルディスタンスやマスク着用などを呼びかけるメッセージをいただき、各施設、店舗に適したコメントを選んで放送するなど、伝えたいメッセージをお届けすることもあるんです。

ーー店内放送で感染対策を呼びかけるという方法もあるのですね。他に、店舗BGMをより良いものにするために取り組んでいることはありますか?

いろいろありますが、たとえば「業種によって適正な音量はどの程度なのか」を明らかにするための実験を行っています。

一般の方に「居心地が良い音量になるよう、BGMを調整してもらう」という実験では、業種により快適なBGMの音量は異なることがわかりました。

たとえば医療施設やオフィスでは、飲食店ヘアサロンよりも小さめの音量が好まれるといったものです。また、アパレルでは女性の方が比較的大きめの音量を好む傾向にあり、「音楽によって気分を向上させたい」ニーズがあることなどがわかりました。

これらのデータは弊社が運営する「音空間デザインラボ」で公表しており、その結果をもとに、オススメのチャンネルも紹介しています。

他にも店舗BGMにはいろいろな可能性が考えられます。曲のテンポを上げることで顧客の回転率をアップさせたり、反対に長く滞在してもらったりといった効果も期待できます。同じ商品でも、BGMがあった方が印象が良くなるという実験結果もあります。

この効果を最大限にするためには商品店舗に合ったBGMを選択できるようにしなければなりませんが、弊社の店舗BGMサービスは番組数が多く、約500万曲の楽曲を提供しています。そのコンテンツ力と、それを支える技術により、今後もさまざまな効果を提供できればと思っております。

店舗BGMも「新しい様式」へ

コロナ禍における「新しい生活様式」へ対応するべく、店舗経営はさまざまな変化が求められています。

その中で感染対策には直接関係がないようにみえるBGMも、店内の安心・安全な空間作りに役立っているということがわかりました。

今後は店内放送やBGMも、本記事で紹介したような技術を活用し、「新しい様式」へと転換していくのかもしれません。

<参考>

PRTIMES(株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS):音楽配信(BGM)を活用した店内の感染対策 を新たに公開


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